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カメラアーカイブ

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カメラアーカイブ
巷に溢れる新製品情報。そんな情報の波に埋もれてしまっている魅力的なカメラたちがある。メーカー開発者たちが、心血を注いで創りだした名機の魅力を蓄積していく。
公開日:2012/12/27

レフレックスレンズ大全 第1回

photo & text中村文夫


写真撮影用レンズの世界では、反射式の光学系を採用した望遠レンズのことをレフレックスレンズ(またはミラーレンズ)と呼ぶ。具体的には光学系に2枚の反射鏡を用いた設計で、対物レンズから入った光線は後部に配置した反射鏡(主鏡)に反射。さらに対物レンズ裏面中央にある凸面鏡(副鏡)に反射した後、屈折式光学系を経て像を結ぶ。広義では天体観測で活躍する反射式望遠鏡の仲間だが、反射鏡に屈折式光学系を組み合わせていることから、反射屈折式と呼ぶのが正しい。

レフレックスレンズは光路が鏡筒内で往復(正確には一往復半)するので鏡筒長が短くでき、通常の屈折式望遠レンズに比べ、大幅なコンパクト化が可能である。そのうえ理論的に色収差がなく赤外線フィルム使用時のピント位置修正も不要。光学的に理想的な特徴を備えているが、この一方で写真撮影用レンズとして多くのデメリットを抱えている。たとえば構造上絞りが組み込めないので、シャッタースピードの変化あるいはNDフィルターで露出の調節をしなければならない。さらに対物レンズ中央に配置された副鏡が光を遮るのでボケがドーナツ状になってしまう。そのうえコスト的に大口径化が難しく、500ミリで8程度とF値が暗いレンズがほとんど。早い話が、コンパクトだけれど写りにクセがあり、おまけに使いにくい。以前は多くのメーカーがラインアップしていたが、AFにも馴染まないことから撤退するメーカーが続出。現在に至っている。ところがトキナーが最近になってミラーレス機用の新製品を発売したところ予想外の反応があり、再評価の動きが高まっている。


レフレックスレンズ(カタジオプトリック)の光学系
青いエレメントが反射鏡で、これに屈折系を組み合わせた設計になっている。右端の平面ガラスは内蔵フィルター。向かって右側に像を結ぶ。
KENKO NEW Skystage
天体観測用の反射望遠鏡。ニュートン式と呼ばれる最も単純なタイプで、主鏡に反射した光線を光軸上に置かれた平面鏡で90度曲げ、鏡筒側面にあるアイピースを覗く。いわばレフレックスレンズの原形である。

復活の兆しがあると言え、新品で手に入るレフレックスレンズの種類は意外と少ない。だが中古市場に目を向ければ、非常に多くの多くの商品が出回っている。なかでもレフレックスレンズは何故かアメリカ市場で好まれたようで、ebayなどのネットオークションで検索すると大量の商品がヒットする。ブランドはさまざまだが、そのほとんどが日本製。輸出専門メーカーがOEM生産し、現地の商社が自社ブランドが販売したものだ。このほか数は少ないが、海外の有名光学メーカーが製造したレンズも見つけることができる。とにかくレフレックスレンズの世界は想像以上に深く、いちど足を踏み入れると、後戻りできなくなる。

かく言う私は、その泥沼にはまった一人。目に付いたレンズを買い求めるうちに、50本近いレフレックスレンズが集まってしまった。



カメラファンでレフレックスレンズを探してみる


レフレックスレンズ・500ミリ

焦点距離で分けると、いちばん多くの製品が見つかるのが500ミリだ。1万円以下で買える安価なものから10万円越えの高級タイプまで顔ぶれは多彩。いわばレフレックスレンズの激戦区だ。作り方によっては売価が低く抑えられるうえ、屈折式に比べると非常にコンパクト。レフレックスレンズのメリットが訴求しやすい。さらに使用頻度の少ない超望遠レンズに高いお金を出したくないという初心者向けの製品が多いのも、このクラスの特徴だ。


Reflex-NIKKOR・C 500mm F8
ニコンFの時代に登場したレフレックスレンズ。写真のレンズはマミヤ645用に改造してある。イメージサークルに余裕があり、645判でもわずかに四角がケラレるだけで済む。



Reflex-NIKKOR(New)500mm F8
数年前まで現役だったレフレックスレンズ。主鏡の中央に穴を開けた非常にコストの掛かる光学系により、画面周辺部でもボケの形がドーナツ状に保たれる。ヘリコイドの動きも軽く操作性も抜群。



YASHICA ML  REFLEX 500mm F8
ヤシカ/コンタックスマウント用レフレックスレンズではカール・ツァイス製ミロターが有名だが、ヤシカブランドのレンズも製造していた。




MINOLTA AF REFLEX 500mm F8
世界初のAFレフレックスレンズ。つい最近までソニーブランドで発売されていた。トランスルーセント式マウントアダプターを使用すれば、NEXシリーズでもAFが利用できる。




RIKENON MIRROR LENS 500mm F8
シグマがリコーにOEMしたレフレックスレンズ。レフレックスレンズにしては鏡筒が長い。



SIGMA-XQ MIRROR ULTRA-TELEPHOTO 500mm F8
シグマが自社ブランドで販売した製品。ここのほかSIGMA-XQシリーズには500mmF4という大口径レンズもある。



シグマはフード内蔵だが、リコーは非内蔵。光学系は同じだが、外観デザインが微妙に違う。



SIGMA TELEPHOTO 500mm F8
初期のシグマ製レフレックスレンズ。



TAMRON SP 500mm F8
主鏡に裏面鏡を採用すると同時に屈折式光学系の役目をさせることで、大幅なコンパクト化に成功した。マウントはアダプトール2



Kenko MC MIRROR LENS 500mm F8
韓国のサムヤン光学製。ケンコー以外にもさまざまなブランド名で販売されている。現在、世界中で販売されているレフレックスレンズの大半はサムヤン光学製だ。



Vivitar MIRROR LENS 500mm F8
アメリカのビビターが発売する製品。



サムヤン光学がOEMしたレンズは、外観の色とブランド名だけを変えたものがほとんど。だがビビターだけはゴムリングのパターンを変えるなど、他社との差別化を図っている。



REFLEX MAKINON MC 500mm F8
日本のマキナ光学製レンズ。鏡筒に入った3本線がマキナのトレードマーク。レフレックスレンズはマウント交換式が一般的だがマキナは固定式。このほかトキナーやシグマ後期の製品もマウント固定式だ。



CHINON 500mm F8
輸出やOEMをメインにしていたチノンの製品。このクラスではかなり大型。ターレット式のNDフィルターを内蔵している。



PROMASTER SPECTRUM7 MIRROR LENS 500mm F8
アメリカの写真用品商社プロマスターブランドで販売された日本製レンズ。製造元は不明。



SEIKANON MIRROR LENS 500mm F8
聞き慣れない名前だが、アメリカのオークションサイトでよく見かけるブランドだ。



PROMASTER SPECTRUM7 MIRROR LENS 500mm F8 (写真左)と
SEIKANON MIRROR LENS 500mm F8 (写真右)
商品名の刻印が違うだけで、まったく同じ製品だ。



SPIRATONE MIRROR LENS 500mm F8
アメリカの写真用品商社スピラトーンブランドで販売された日本製レンズ。製造元は不明。



SOLIGOR C/D MIRROR LENS 500mm F8
日本ではミランダのレンズ名として有名だが、このレンズとミランダは無関係と思われる。



HANIMEX MIRROR LENS 500mm F8
オーストラリアのハニメックスが販売した製品。とてもコンパクトで鏡筒の仕上げも高級感がある。



MC РУБИНАР 500mm F5.6
旧ソ連はレフレックスレンズの宝庫。さまざまな製品が発売されている。このレンズはF5.6と明るい設計だ。



レフレックスレンズ・250〜400ミリ

300ミリは35ミリフルサイズ用の望遠と超望遠の中間に位置する焦点距離。それほど高い望遠効果が期待できないうえ、このクラスの屈折式望遠レンズは意外とコンパクト。レフレックスレンズのメリットが訴求しにくく商品の種類は意外と少ない。だが実際に使ってみてハズレがないのが、このクラス。ゴーストによるコントラスト低下が少なく像もシャープ。F値も5.6クラスが主流で、ファインダーが暗くならずピントも合わせやすい。またAPSCサイズの一眼レフに組み合わせたときの画角が500ミリに相当するなど、デジタルカメラと相性が良い。


LENTAR 250mm F5.6
レンターはebayでよく見かけるブランド。形が似ていることからチノン製でないかと思われる。いずれにしても250ミリのレフレックスレンズは珍しい。同じ焦点距離ではミノルタ製が有名だ。



OSAWA MC REFLEX 300mm F5.6
総合商社の大沢商会が販売した製品。



REFLEX MAKINON MC 300mm F5.6
マキナ光学製レンズ。デザインは500ミリF8と共通でマウントは固定式。



SOLIGOR C/D MIRROR LENS 300mm F5.6
コンパクトなレフレックスレンズ。スライド式フードを内蔵している。



CPC PHASE2 MIRROR LENS 300mm F5.6
アメリカのCombined Products Corporationが販売した製品。このブランドもebayでよく見かける。鏡筒の仕上げがつや消しで高級感がある。



HANIMEX MIRROR LENS 300mm F6.3
鏡筒がシルバーで仕上げられた珍しいレフレックスレンズ。



MC РУБИНАР 300mm F4.5
500ミリと同様、他社よりF値が明るい旧ソ連製レンズ。



TAMRON SP 350mm F5.6
500ミリの姉妹レンズ。F値が明るいので使いやすい。お勧め1本だが、製造期間が短かったためか中古品は意外と見つからない。



SIGMA MIRROR-TELEPHOTO 400mm F5.6
新世代のシグマ製レンズ。差別化を図るためシグマは他社より焦点距離が長くF値が明るいレンズをラインアップしていた。マウントは固定式。



REFLEX MAKINON MC 400mm F6.7
マキナ光学製レンズ。デザインは他の2本と共通でマウントは固定式。F値は暗めだがコンパクトなので機動性が高い。


カメラファンでレフレックスレンズを探してみる


中村文夫カメラ博物館のコレクションが膨大すぎるため、第2回につづきます。



中村 文夫(なかむら ふみお)

1959年生まれ。学習院大学法学部卒業。カメラメーカー勤務を経て1996年にフォトグラファーとして独立。カメラ専門誌のハウツーやメカニズム記事の執筆を中心に、写真教室など、幅広い分野で活躍中。クラシックカメラに関する造詣も深く、所有するカメラは300台を超える。日本カメラ博物館、日本の歴史的カメラ審査委員。