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カメラアーカイブ

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カメラアーカイブ
巷に溢れる新製品情報。そんな情報の波に埋もれてしまっている魅力的なカメラたちがある。メーカー開発者たちが、心血を注いで創りだした名機の魅力を蓄積していく。
公開日:2013/03/14

ハッセルブラッド500C/M

photo & text 赤城 耕一

ヴィクター・ハッセルブラッドが生み出した名機

ハッセルブラッド500C/M


ハッセルブラッド 500C/M(1970年発売)

ハッセルブラッドの6×6判カメラは「Vシステム」とよばれる。現在はデジタル化とともにHシステムに移行、Vシステムは残念ながら製造中止となったが、それでもハッセルの中ではもっともプリミティブな歴史を築いたカメラシステムであると言ってよいだろう。

今から30年ほど前、私が最初に購入したハッセルブラッドは500C/Mだった。交換レンズがコンパーシャッター内蔵のCレンズからプロンターシャッターを採用したCFレンズへ移行した時期であった。しかし、実際の仕事では、主に6×7判フォーマットカメラが幅をきかしていた時代である。ハッセルはステータスがあり、名前は広く知られていたけど発売から10余年経ち、しかもほぼ基本機能を同じくする前機種の500C登場から考えると20年以上が経過しており、この当時でもクラシカルなものにみえた。
当時、すでにプロのアイテムというより、趣味人の道具として捉えられていた面もあることは否めない。とはいえ、プロでもまだまだハッセルユーザーは数多くいた時代であり、私自身もハッセルに固執し、たしか3年にも渡る長期ローンを組んで500C/Mを入手したが、その支払いに毎月汲々としていた。生活苦のために幾度か質草にもなったけれど、この時の500C/Mは今も私の元で元気に活躍している。まさにハッセルは一生もののカメラであると言ってよい。

レンズシャッターのカメラゆえにボディ側を巻き上げ、レンズ側もシャッターチャージしておかないとレンズの装脱着ができないとか、低速シャッター時には露光終了までシャッターボタンを戻せない、クイックリターンミラー仕様ではないなど、使い勝手にいくつかの約束や制約がある。普通ならば非難されかねないところだが、ハッセルに関しては文句を言う人は少ない。

いまなぜハッセルなのか。


ハッセルブラッドはいくつかの特殊な製品を除けば、中古市場ではボディ、レンズとも驚くほど廉価に販売されている。廉価な理由はよくわからないが、フルメカニカルカメラということで、操作設定が面倒なものと誤解されているのか。操作に慣れることで、次第に撮影者とカメラが一体化することができるのがハッセルの魅力。撮影者の努力にこれだけ素直に報いてくれる中判カメラを私は他には知らない。6×6判一眼レフの中では軽量な部類に属し、デザインが美しく、慣れれば一連の操作もシンプルに感じる。これに加えてツァイスレンズの描写特性の魅力もある。一度撮影すればその魅力が必ずや誰にもわかるはずだ。

これに加え“バコッ”というミラーとバックシャッターの個性的な動作音はハッセルの象徴的なもので、これもまた人を魅了する。フィルムバック交換式の利点で、最新のデジタルバックも装着でき、フィルムとデジタルのハイブリッドカメラとしても使えることは大きなメリットであろう。ただし、デジタルバックのイメージセンサーは正方形ではないのは残念だ。

いくつかの約束事はあるものの、これを守ればハッセルはたいへん使いやすいカメラである。手持ちでの撮影では、間違いなく6×6判の一眼レフカメラの中でナンバー1だといってよい。
とにかく私と同年代の人ならわかっていただけると思うが、かつて手の届かなかったあの憧れの“ハッセル”を入手する大チャンスが到来したと考えるべきであろう。

レンズまわり
写真のCFレンズはCレンズと異なり、レバー操作を行うことなくシャッター速度と絞り値それぞれを設定できるメリットがある。フォーカスリングのトルクも軽い。しかし、レンズ外装の作り込みや、仕上げはCレンズのほうが上である。シャッターはプロンター製になり耐久力が増した。1/15秒までの低速シャッターを切る場合は露光が完了するまでシャッターボタンを押しっぱなしにする必要がある。レンズシャッターなので、ストロボは全速に同調する。


巻き上げクランク
フィルム巻き上げ部は交換式で、初期のものはノブ式。写真のクランクは旧型の金属製のもの。これを探すのにかなりの時間を要した。レバーが長く操作しやすいのが特徴でデザインもよい。後にプラスチック製の味気がないものに“改悪”されているのは残念。また、露出計を内蔵したノブも用意されていた。

ファインダー
ノーマルのウエストレベルファインダー。プリズムファインダー、メーター内蔵ファインダーなど様々な交換ファインダーも用意されている。これは後期のタイプで、折り畳む時の収納がラクになっている。視度補正レンズの取り付けが可能になったことも特徴。この個体のルーペは「ー1」のものに取り替えてある。


マウント、レンズシャッターについて
向かって左側がシャッターボタン。右がレンズ着脱ボタン。シャッターボタンの形状は尖っていて、大量撮影すると指が痛くなる。レリーズボタンを取り付けるなどすれば問題はない。マウント形状が大型。ボディ側はチャージしておかないとレンズ装着はできないので注意したい。


スクリーンマットの交換と清掃について
500Cからの大きな改良点はファインダースクリーンが交換可能となったこと。ミノルタ製のアキュートマットスクリーンも加わった。スクリーンを外す場合はスクリーンを抑える両側のツメをずらす。装着時はスクリーンを落とし込んだ後にファインダーを装着するとツメが自動的に出現し、スクリーンを抑える仕組みである。

フィルムチャージマークについて
マガジンスライドを挿入しないとマガジンの装脱着ができない。ボディ側では巻き上げるとチャージマークが赤から白色へ変わる。シャッターを切ると両者は赤色になる。フィルムマガジンも巻き上げ設定状態で白色になる。つまり、両者のマークが白色になっている時が、正しい装着時ということになるが、後にコストダウンのためか、このマークは省略されてしまう。

フィルムの装填方法
マガジンの本体を取り出し、板バネを持ち上げフィルムを入れる。ロックレバーをまわして、圧板面の脇にあるガイド板を持ち上げる、裏紙を引き出し、ガイドの下をくぐらせ、スプールに裏紙の先端を挿入する。スタートマークが指標値に合うまでスプールをまわし、本体をマガジンに入れる。カウンター表示に「1」が表示されるまでフィルム巻き取りクランクを回せばセットは完了。

スプールに裏紙の先端を挿入する。
スタートマークがの指標(△)に合うまで巻く。




ハッセルブラッドのフィルム装填方法


撮影後のフィルム巻き戻し動作


赤城耕一+ハッセルブラッド500C/M
しっかりとしたフォールディング、フィルム巻き上げ、フレーミング、ピント合わせ、シャッターレリーズ。赤城氏の流れるような所作をご覧ください。

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赤城耕一
東京生まれ。出版社を経てフリー。エディトリアルやコマーシャルの撮影のかたわら、カメラ雑誌ではメカニズム記事や撮影ハウツー記事を執筆。戦前のライカから、最新のデジタルカメラまで節操なく使い続けている。

主な著書に「使うM型ライカ」(双葉社)「定番カメラの名品レンズ」(小学館)「ドイツカメラへの旅」(東京書籍)「銀塩カメラ辞典」(平凡社)

ブログ:赤城耕一写真日録




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