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カメラアーカイブ

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カメラアーカイブ
巷に溢れる新製品情報。そんな情報の波に埋もれてしまっている魅力的なカメラたちがある。メーカー開発者たちが、心血を注いで創りだした名機の魅力を蓄積していく。
公開日:2013/05/29

オリンパス OM-1N / OM-2N

photo & text 赤城 耕一

フィルム一眼レフカメラの「三悪」を追放したOMシステム


オリンパス OM-1N(1979年)
OM-1の改良型。専用ストロボT20、T32を装着した場合、チャージ完了時にファインダー内にLEDが点灯するようなった。他はOM-1と同じだけど、細かいところにデザイン的な改良点がある。初期のOM-1はモータードライブ仕様にするには改造が必要だったが、OM-1Nでは改造を施さずともモータードライブ、ワインダーの無調整装着が可能である。

「大きい・重い・ショックが大きい」というのが一眼レフの三悪だった。この三悪に果敢に挑戦してこれを解決した小型軽量一眼レフの元祖的存在となるのが1973年に登場したM-1である。M-1はライツ社からクレームがつき、OM-1と名を変えて発売される。それにしても今年はOM誕生から40年の節目の年となるわけだ。設計はオリンパスの伝説的エンジニアである米谷美久氏によるもの。

大きいとか重いとかいう問題はあくまでも個々の印象で違いも出てくるとは思う。しかし、35ミリ判カメラの始祖的存在であるライカをみればわかるとおり、機能向上とかシステム性とか堅牢性を理由にして、35ミリ判カメラが大きく重くなるのは本筋を外れているという見方もあるわけで、OM-1の開発の方向性は、機能向上のために肥大化した一眼レフのアンチとして、実によいところを突いている。

OM-1の凄さは、小型軽量だけではなくて、膨大なレンズとアクセサリーを有する将来を見据えたシステムカメラとして開発されたことである。交換レンズは当然のこと、マクロ、モータードライブなどをグループ分けして構築された広大なシステムはオリンパスの広告キャッチにもあるとおり「バクテリアから宇宙まで」を撮影領域としていた。

OM-1はメカニカルのマニュアルカメラである。開放測光TTLメーターを内蔵しているものの、往時としても機能的なスペックには特筆すべきところは少ない。しかし、アクセサリーの互換性、ファインダースクリーンの交換、モータードライブシステムが用意されていたことなど、ミドルクラスの一眼レフカメラに属していたにも関わらず、他社のフラッグシップクラスのカメラにしかできないシステムの拡張性をすでに成し遂げていたわけである。

OMシステムは、私が高校生のころはじめて入手した。大学で写真を学んでいたころはもとより、フリーのカメラマンとして仕事をはじめてからもメイン機材として愛用しており、今でもレンズをはじめアクセサリーも手放さずに保有している。現場でOMを下げていると、プロカメラマンらしくないと疑われたこともあり、「見せカメラ」としてニコンも使っていたが、単独で行わなければならない取材ではいつもメインカメラであった。今もなお心強い相棒であることには変わりはない。



OM-1Nブラック
これは私が30年以上愛用している実機。今もなお現役で使用している。いくたびかのオーバーホールは行っているが一度の故障もないという優れものだ。通したフィルム本数は1000本は軽く超えていると思う。カバーは真鍮製で地金がみえているが、これもまたカメラの歴史を刻んでいるようで貫禄十分だ。



シャッターダイヤルと絞りダイヤル
シャッターダイヤルはマウント基部にある。ファインダー内には、何の情報表示もないため、ファインダーを覗いてシャッター速度を変更するのは難しい。正統派のOM使いはシャッターダイヤルのローレットの位置で、シャッター速度の設定がわかったらしい。

ASA感度ダイヤル

従来の一眼レフカメラのシャッターダイヤルの位置にはASA(ISO)感度ダイヤルとなっている。カメラを低くできた理由はここにもあったようだ。OM-1Nでは、フィルム巻き上げレバーの角にアールがつけられ、連続撮影しても指が痛くならないように工夫されている。

マウント部

マウント径はかなり大きい。将来的な発展性を見込んでのことか、カメラ全体に対する比率からすれば、かなりの占有面積となる。ミラーも大型で長焦点レンズを使用してもミラー切れが少ないように工夫されている。

露出計スイッチ

露出計のスイッチも大型。メカニカルカメラであり、受光素子もCdsだから、消費電流が小さい。けれどこれだけの大型のスイッチを設けたのは何か理由があったのだろうか。

底部

電池室。当初は水銀電池1個を使用したが、水銀電池の製造が廃止された後、オリンパスは長くOM-1を使ってもらうようにするため、SR-44(LR-44)型の電池が使用できるように有償で改造を行っていた。これは改造済みの電池室である。これも米谷氏による提案だったという。

リワインドレバー(ボディ前面)

左がリワインドレバー、右がミラーアップレバー。いわゆるRボタンの代わりになるもの。ミラーアップは必然がないと米谷氏が述べていたのを読んだ記憶があるが、OM-2では廃止されている。






オリンパス OM-2N(1979年)
OM-2の改良型でOM-1Nと発売時期は同一。TTLダイレクト測光を装備。低速シャッター時にはフィルム幕面の反射をそのまま測光する。またTTL調光ストロボを世界ではじめて採用。撮影距離や使用レンズの制約がなく、またストロボをカメラ位置から離しても露出制御が可能であったため、とくにマクロ撮影分野の写真家には大歓迎された。もっとも調光精度は現代のそれとは比べものにはならないし、スローシンクロができないという欠点もあったが、画期的な測光システムだったことは確かである。

ペンタプリズム部

米谷氏は取り外せるものは全部着脱可能にしようという設計思想を持っていたらしい。巻き上げレバーも着脱式にして、モードラ使用時には取り外せるように考えていたという。OM-2Nにはシューの4型を使用する。


フィルム感度ダイヤル部

フィルム感度ダイヤル部。OM-1、OM-1Nと同じ位置だけど、露光補正用の指標がついている。OM-2Nでは露光補正中には戻し忘れがないようにシグナルが出るように改良されている。なおTTLダイレクト測光方式のためAEロック機構は存在しない。

露出計スイッチ部分

OM-1、OM-1Nと同位置にある。スイッチを入れなくても、ある程度の明るさがあればAEで制御されるようになっている。AEによる長時間露光も可能で、露光中に光の変化があればそれに合わせてAEは制御された。電池の容量チェックレバーも兼ねる。下部は電池容量のチェック用LED。

OM-2Nの乱数パターン(シャッター幕前面)

高速秒時にはフィルム面が全開にならないため測光用にシャッター幕に乱数パターンが印刷された。OM-2のものとは分布が異なる。ダイレクト測光はフィルム面の濃度により反射率に影響を受けるはずだが、オリンパスのアナウンスでは無視できる程度とされた。またOM-2、OM-2Nはマニュアル露出時にはCds受光素子を使い、ダイレクト測光AE時にはSBC受光素子を使用。この2者の特性でも露出は変わる。
本格的なハーフミラーが登場する前だったので過渡的な措置だったのだろうか。


OM ZUIKO レンズ
OMズイコーは20ミリマクロから250ミリの超望遠まで、開放値F2のレンズを用意していた。これは画期的なこと。ただし、私の経験からすれば、一部を除くレンズはF値の暗いほうが高性能だったと思う。


試作機MDN


OM-1登場前には、MDNという試作機も考えられた。各種のモジュールを組み合わせた画期的なものであり、使用目的に応じて姿を変えることができたのであろう。同様のコンセプトを本当に実現したカメラにローライフレックスSL2000Fがあるが、それよりもはるか前に同様のカメラが考えられていたことは凄いことである。フィルムマガジン式のようだが、ここにデジタルバックが装着できたら、などと夢想してしまう。残念ながらこのカメラは実現せず、一体型のOM-1となったわけだ。随所にOM-1と同様のパーツがあることがわかる。


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赤城耕一
東京生まれ。出版社を経てフリー。エディトリアルやコマーシャルの撮影のかたわら、カメラ雑誌ではメカニズム記事や撮影ハウツー記事を執筆。戦前のライカから、最新のデジタルカメラまで節操なく使い続けている。

主な著書に「使うM型ライカ」(双葉社)「定番カメラの名品レンズ」(小学館)「ドイツカメラへの旅」(東京書籍)「銀塩カメラ辞典」(平凡社)

ブログ:赤城耕一写真日録
 
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