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カメラアーカイブ

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カメラアーカイブ
巷に溢れる新製品情報。そんな情報の波に埋もれてしまっている魅力的なカメラたちがある。メーカー開発者たちが、心血を注いで創りだした名機の魅力を蓄積していく。
公開日:2013/06/24

オリンパス OM-4 Ti/OM-3 Ti

photo & text 赤城耕一

OMの進化とオートフォーカス化の遅れ


オリンパス OM-4 Ti(1986年)
初期のOM-4Tiは、シャンパンカラーのチタン外装採用で、美しいカメラであった。最大の特徴はOM-4から引き継いだ8点までのマルチスポット測光に加えて、専用ストロボを使うことで2000分の1秒まで同調が可能なフルシンクロフラッシュを装備していたこと。オリンパスはTTL自動調光ストロボのパイオニア的な存在であるから、さらなる飛躍を遂げたかにみえた。

しかしである。フルシンクロフラッシュはストロボ側の閃光時間を長くして対応させようというものだから、シャッター速度が高速側になると、ストロボのGN(ガイドナンバー)は極端に小さくなった。理論的には被写体までの距離が近く、なおかつ絞りを開かないとその効果はあまり認められなかったのだ。このこともあり、さほど高い評価は得られなかったようだ。

縦走りの金属シャッター採用による高速シンクロが一般的になってきたのだがOM-4Tiはあくまで横走り布幕のシャッターのまま、高速シンクロを実現しようとしたのだ。しかもOM-2と同様に絞り優先AE時しかTTL自動調光は機能しないので、任意のシャッター速度を選ぶことができないため、スローシンクロ撮影では、依然として、外部オートかマニュアルに頼るしかなかった。いろいろと機能的な制約はあるけれど、2000分の1秒までストロボを同調させようとした執念は評価してもいいかもしれない。

OM-4からのマルチスポットは任意に測光した数カ所のスポット測光値から演算して露出を割り出そうというもので、輝度差の大きいところでもバランスのよい露出になるというふれこみではあった。最大で画面内で8カ所の測光が可能で、それぞれの値を記憶し演算する。しかし、画面内で8点まで測光してしまうと、平均測光と何ら変わらないということにもなりかねない。またフィルムの違いによるラチチュードの差が加味されるわけでもない。しかも、TTL測光は被写体の色や反射率によって、大きく左右されることもあり、これも経験則によって大きく左右されることがあった。

しかしながら、OM-1からのボディサイズにこれだけの機能を凝縮することができたのだから大したものである。1989年にはチタンブラックボディが登場してシャンパンカラーのモデルは製造が中止される。モータードライブやワインダーはすべて互換性があるが、最高性能を発揮させるには「モータードライブ2」を使用するのがベストだ。


レリーズボタンとスポットボタン/ハイライト/シャドーコントロールボタン

レリーズボタンは大型になり、より押しやすくなった。すぐ脇にスポットボタンがある。測光値はファインダー内に表示される。ハイライトボタンは白を白く、シャドーボタンは黒を黒く再現させるためのもの。カメラが読む適正値からそれぞれオーバー側、アンダー側に1.5EVほど振れるようになっている。測光値のクリアはシャッターボタン外周リングを回すことで機能する仕組みだ。また同じ測光値で撮影を続けたい場合はメモリーしたままにすることも可能である。フィルム巻き戻しのRボタンはシャッターボタン下部に位置している。

ISOダイヤルと露出計スイッチ

OM-2からの切り替えスイッチに似た感じである。ファインダー内表示はタイマー方式だから、ある程度の時間が経過すると表示が消える。しかしスイッチがオフのままでも、シャッターボタンを押せばそのまま撮影が可能である。バッテリーチェック位置にするとLEDランプの点灯と音で知らせてくれる。フィルム感度ダイヤルはISO/ASA併記だ。外周は露光補正ダイヤルを兼ねている。スポット測光を使用しない場合に使うと便利である。





OM-4 Ti + モータードライブ2

最高5コマ/秒の連写が可能で、フィルム自動巻き戻し機能つき。ただし、フィルム終了時の感知装置はないので、巻き戻し時にはボディ側のRボタンとモータードライブ側のレバーを操作する必要があった。またモータードライブ側にはボディー側のメータースイッチの連動機能がないため、メーター表示を機能させるにはボディー側のいずれかのボタンに触れる必要があった。これはモータードライブ使用時の大きな欠点だが、モータードライブ側のメインスイッチがオンになっていれば撮影は可能である。フィルム自動巻き戻し時には自動停止機能がついているが、パトローネにフィルム先端が巻き込まないようになっている。おそらく自動現像機対応のためだと思うが、再装填のミスに注意が必要だ。私はさらに巻き戻しクランクを使用し、フィルムを完全にパトローネ内に巻き込んでいる。モータードライブ側のパネルに操作のアイコンやフィルム残数がそれぞれ液晶で表示されるのでわかりやすいが。このためにはモータードライブ側にもSR-44電池を2個必要とした。電源はニッカドのバッテリーパックを使う。単三電池が使用できるグリップも用意されているが、現在中古市場で見つけるのはきわめて難しい。





モータードライブ背面液晶


36枚撮りのフィルムを装填した時の画面表示。カウンター表示は減算式。任意のコマ数にセットして途中停止も可能。またコマ数セットをフリーにしたままにすることもできる
 カウンターが0を差すと、カメラの裏蓋を開けて、フィルムを交換せよというアイコンが表示される。  


 オリンパス OM-4Ti+モータードライブ2の使い方 解説:赤城耕一





OM-3 Ti(1994年)

OM-3のチタン外装バージョンと思われるかもしれないが、大きな特徴はOM-3にはないTTL自動調光機能を内蔵していることである。しかも、ストロボ撮影にも任意のシャッター速度が選択できるように大幅な改良が施された。OMシリーズでTTL自動調光設定でシャッター速度が選択できるのは、実は本機以外にはないのである。そういう意味でも貴重なカメラである。
外装は落ち着いたグレー塗装で、ガンメタリックな感じもある。ファインダースクリーンは明るいスプリットマイクロタイプのものが新たに用意され、ピントのヤマの掴みやすさと明るさを両立させている。発売時定価が20万円と高価であり、このためもあってか生産台数が少ないためか、中古市場では現在も高価である。

当時はすでにAF一眼レフが全盛の時代だったために、完全なMFメカニカル一眼レフで、マルチスポットを採用するというのは相当な冒険だったと思う。シャッターはOM-4Tiと同様に横走り布幕のフォーカルプレーンシャッターだったから、この発売時にもレトロな感じがしたものである。なおセルフタイマーは省略されている。

実質的にOMはOM707でAF化を果たしたが、性能はいまひとつで後が続かなかった。OM101はパワーフォーカスシステムで、おそらくはAF化への布石的なカメラになるはずだったが、これは実現されなかった。機能的には個性を放ったけれど、これも一般的には受け入れられなかった。こうしてOMはAF化の対応に遅れととったために、こうした先祖帰り的なカメラを出すしかなかったのであろうか。開発にあたってはオリンパスは中古市場でOM-3を購入して検証したという逸話も残っている。ある意味では復刻版カメラと言ってもいいかもしれない。



レリーズボタンとスポットボタン

OM-4Tiとほぼ同じレイアウトだが、マニュアル露出のメカニカルカメラで、ここまで凝った測光機能を内蔵した機種はこれのみである。実際に1点スポットで設定して使うほうがはるかに使いやすいし、露出のコントロールも容易だと思う。

ISOダイヤル

フルメカニカルカメラなのに、露光補正ダイヤルがあるのも不思議だが、TTL自動調光時はマルチスポット測光はできず、ストロボ本体にも露光補正機能がなかったため、本体側の露光補正ダイヤルを使用するしか方法はなかったのだろう。なお純正のストロボを使用してTTL自動調光を行う場合には「TTL AUTO FLASH」位置にレバーを合わせ、通常のストロボを使用する場合には「X」位置に合わせる。下部は大型のバッテリーチェックボタン。

開発者 米谷美久氏のサイン

OMの生みの親である米谷美久氏には生前、何度か実際にお会いして、取材をさせていただいた。そのおりにメモホルダーにダイヤモンドカッターでサインを入れていただいた。2002年なのでOMの終焉が発表された年だったと記憶している。


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赤城耕一
東京生まれ。出版社を経てフリー。エディトリアルやコマーシャルの撮影のかたわら、カメラ雑誌ではメカニズム記事や撮影ハウツー記事を執筆。戦前のライカから、最新のデジタルカメラまで節操なく使い続けている。

主な著書に「使うM型ライカ」(双葉社)「定番カメラの名品レンズ」(小学館)「ドイツカメラへの旅」(東京書籍)「銀塩カメラ辞典」(平凡社)

ブログ:赤城耕一写真日録
 
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