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カメラアーカイブ

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カメラアーカイブ
巷に溢れる新製品情報。そんな情報の波に埋もれてしまっている魅力的なカメラたちがある。メーカー開発者たちが、心血を注いで創りだした名機の魅力を蓄積していく。
公開日:2012/05/31

ライカ M3 / M2 / M1 /M4

Photo & text 中村文夫
機材協力:松坂屋カメラ(東京・品川) /ジェイダブリュー(東京・日本橋)

ライカの35ミリカメラは、バルナック型とM型に大きく分けることができる。1925年に登場したライカI型(日本では通称A型)から1957年発売のIIIg型までがバルナック型。1954年に登場したM3から現在に至る商品名に「M」が付いた製品がM型である。

ライカM3(左)とライカIIIf
 
バルナック型とM型にはさまざまな相違点がある。なかでも最も大きな違いはレンズマウントだろう。バルナック型のマウントがねじ込み式のライカスクリューマウント(L39と呼ぶことがあるが、これは俗称)であるのに対しM型はライカMマウント。3本爪のバヨネット式なので、スクリューマウントのようにレンズを何回も回転させることなく、わずか30度回転させるだけで、スピーディかつ確実に着脱できる。さらにMマウントはスクリューマウントと高い互換性を備えていて、Mマウントカプラーを使用すれば旧タイプのスクリューマウントレンズも装着できる。


レンズ後端のカムがボディ内のローラーを押し距離計を連動させる。レンズの焦点距離によってバヨネットの爪の長さが異なり、これをボディ側で検知。ファインダー内のプライトフレームを切り替える。
Mマウントカプラーを用意すれば、バルナック型時代のスクリューマウントレンズが装着できる。
ライカスクリューマウントのレンズは、ニコンやキヤノンをはじめ世界中のカメラメーカーが作っていた。Mマウントカプラーがあれば、ライカ製以外のレンズでも撮影が楽しめる。

バルナック型は1932年発売のライカDIIで初めて二重像合致式の距離計を内蔵。レンズのヘリコイドの回転に連動して、距離計視野内の像が動き、二重になった像をぴったり重ね合わせるとピントが合う。ただ構図を決めるためのファインダーと距離系用の光学系が独立しているので、ピント合わせとフレーミングを同時に行うことはできない。

ライカM3(1954年)


向かって左側にある大きなレバーがセルフタイマーで、その上にある小さなレバーが、フィルム巻き戻しレバー。右側にあるレバーを操作するとファインダーのフレームを一時的に切り替えられる。  

これに対しM型は距離計とファインダーの光学系が合体。ファインダー視野中央に距離計がある。そのためバルナック型では2つあったファインダーアイピースが1つになり、ピント合わせ後、ファインダーから目を離さず撮影が続けられる。さらにバルナック型のファインダーは50ミリ専用で、撮影範囲を示す視野も曖昧だった。だがM3は明るい枠で視野を示すブライトフレームを採用。装着したレンズの画角に合わせてフレームが自動的に切り替わるうえ、近距離撮影時でも正確な視野を示すパララックス自動補正機能を搭載した。
フィルム巻き上げは速写性に優れたレバー式。それまで高速と低速に分かれていたシャッターダイヤルが1つになり、シャッターを切ったときに回転しなくなった。今では当たり前の機能だが当時としては非常に画期的で、まさに近代カメラの原型は、ライカM3が創り出したと言っても過言ではない。



 フィルム巻き上げはレバー式で小刻み巻き上げも可能。シャッターダイヤルは等間隔目盛で、バルナック型のようにいちいち持ち上げてセットする必要がないうえ露光時も回転しない。

ライカM3のファインダーは、50ミリ、90ミリ、135ミリ用のブライトフレームを搭載していて、取り付けたレンズに応じて自動的に切り替わる。ただし35ミリ用フレームは内蔵していていないので、このレンズを使うときはアクセサリーシューにビューファインダーを付ける。しかしこの方法は不便なので、後にファインダーの視野を拡大するアタッチメント付きレンズが登場した。


ライカM3と交換レンズ
左からエルマー135ミリF4、エルマー90ミリF4沈胴、ズミクロン50ミリF2沈胴(M3に装着)
 35ミリの広角レンズを使用する場合は、アクセサリーシューにビューファインダーを取り付ける。


ライカM2(1958年)



M2はM3の次に登場した製品で、35ミリ用のフレームをファインダーに搭載。ただし視野を広げるためファインダー倍率を下げた結果、ピント検出能力が低下。望遠撮影時のピント精度が保証できないとして135ミリ用フレームが省略された。つまり標準〜望遠撮影用のM3に対し、M2は広角〜標準レンズ用という位置付けである。またM3の廉価版という側面もあり、フィルムカウンターの自動リセットが省かれたほか、セルフタイマーなしのバージョンも存在する。

ライカM2正面
フィルム巻き戻しレバーがボタン式だったり、セルフタイマー有無のバージョンがある。



ライカM1(1959年)


M2からレンジファインダーを省いたモデル。ブライトフレームは35ミリと50ミリのフレームが常時出たままだが、パララックス補正機能だけは備えている。

M1は、M2から距離系を省略するなどコストパフォーマンスを追求したモデル。購入後に距離系を追加してM2に改造することができたが、実際には、それほど行われなったようだ。


ライカM4(1967年)

巻き上げレバーにプラスチック製の部品が付き、収納時邪魔にならないようこの部分がくの字に折れ曲がる。

M4は、M2に135ミリ用フレームを追加したモデル。測距精度が保てないという理由で、M2では135ミリ用フレームが省略されたが、ピント精度が悪くても135ミリレンズをビューファインダーなしで使いたいというユーザーが意外と多く、これに応える形で実現した。ただしファインダーの倍率はM2と同じなので、135ミリ用の視野はとても小さい。

M2までのフィルム装填は、底板を開けてスプールを取り出し、これにリーダー部分を巻き付ける方式だったが、M4はボディに固定されたスプールにスリットを設け、ここにリーダー部を差し込む方式に改良された。またフィルムを確実に装填するため、風車のような形をしたガイドが底板に取り付けられた。さらにM型ライカとして初めてクランク式巻き戻し採用。フィルムの巻き戻しがすばやくできる。なおクランクが斜めに取り付けられているのは、クリップオン式専用露出計のMRメーターを取り付けたまま、巻き戻しができるようにするためだ。



巻き戻しノブをクランク式に変更
専用露出計のMRメーターを装着。いちいち取り外さなくても巻き戻しができるよう、巻き戻しクランクが斜めになった。

ムービーギャラリー

 ライカ M3フィルムの入れ方


ライカ M3のシャッター音をお楽しみください。1/1000秒〜バルブまで



次回、M5からM7へつづきます。

機材協力:松坂屋カメラ(東京・品川) /ジェイダブリュー(東京・日本橋)

※小改良を施した機種や限定モデルなど、ライカのカメラには、同じ機種でもさまざまなバージョンが存在するが本稿では省いてある。



中村 文夫(なかむら ふみお)

1959年生まれ。学習院大学法学部卒業。カメラメーカー勤務を経て1996年にフォトグラファーとして独立。カメラ専門誌のハウツーやメカニズム記事の執筆を中心に、写真教室など、幅広い分野で活躍中。クラシックカメラに関する造詣も深く、所有するカメラは300台を超える。日本カメラ博物館、日本の歴史的カメラ審査委員。