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ポートレート・テクニック

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ポートレート・テクニック
公開日:2017/04/26

広角レンズでポートレートの表現領域を広げよう!

photo & text 青山裕企

キヤノン EF16-35mm F2.8L III USM & EF35mm F1.4L II USM
「衣装」でも「背景」でもなく「画角」を変えるという発想

「広角レンズを普段から使いこなせば、ポートレートの腕は確実に上がる」と青山裕企は語る。画質や性能の面で絶対の信頼感があれば、それは長くあなたのポートレート撮影の武器にもなる。青山裕企が納得したキヤノンの2本の広角レンズ、EF16-35mm F2.8L III USMと、EF35mm F1.4L II USM。ポートレートの表現領域を広げてくれる2本を紹介しよう。
 
キヤノンEOS 5D Mark IV + EF16-35mm F2.8L III USM
焦点距離:35mm 絞り優先AE(f3.5 1/160秒)
+0.67EV 補正 ISO400 スポット測光 WB:オート

標準に近い画角からスナップポートレートふう、ダイナミックなデフォルメまで使い得な広角ズーム! EF16-35mm F2.8L III USM

 
キヤノン EF16-35mm F2.8L III USM
価格:29万9,000円(ケース・フード付/税別)
昨年10月に発売された超広角ズームレンズ。大口径ガラスモールド両面非球面レンズ2枚や研削非球面レンズ1枚、UDレンズ2枚を含む11群16枚のレンズ構成と、独自の特殊コーティングで、色にじみの原因となる倍率色収差やゆがみの原因となる歪曲収差、フレアやゴーストの発生を抑制。画面周辺部に至る全画面域で高画質を実現した。
主な仕様:●画角(水平/垂直/対角線):98°〜54°/74°10'〜38°/108°10'〜63° ●レンズ構成:11群16枚 ●絞り羽根枚数:9枚(円形絞り)●最小絞り:22 ●最短撮影距離:0.28m(ズーム全域)●最大撮影倍率:0.25倍(35mm時)●フィルター径:82mm ●最大径×長さφ88.5mm×127.5mm ●質量:約790g
 
キヤノンEOS 5D Mark IV + EF16-35mm F2.8L III USM
焦点距離:16mm 絞り優先AE(f4 1/800秒)
+1.33EV 補正 ISO400 評価測光 WB:オート
 
広角レンズの特徴を活かしたデフォルメ感は「非日常」ではあるが、ダイナミックさや臨場感を生み出す。ポートレートの変化球として取り入れたい。
 
キヤノンEOS 5D Mark IV + EF16-35mm F2.8L III USM
焦点距離:35mm 絞り優先AE(f5.6 1/320秒)
+0.33EV 補正 ISO400
評価測光 WB:オート
 
最短撮影距離28cmというのは、実際に撮ってみると相当短い。モデルには「圧」がかかるかもしれないが(笑)、この親密感は捨てがたい。
 

3つの領域を備えたEF16-35mm F2.8L III USMはポートレートの多様性を実感できるレンズ


そもそも私は、ポートレートを撮る時によく使う焦点距離が35mm〜50mmなので、35mmという焦点距離には全く違和感がない。ただ、従来は50mmとの比較で35mmにとても広角なイメージを持っていたが、EF16-35mm F2.8L III USMでイメージが一変した。

抜けがよく、本当にクリアに写るレンズ。むしろ、見えすぎるくらい(笑)。真面目に作られたとても素性の良いレンズだということを実感した。絞り開放から高い解像感でクセのない素直な描写。ズーム全域で周辺部まで申し分のない画質。また、今回はEOS 5D Mark IV に装着して撮影しているが、AF駆動も素早く、しかもとても静か。Mark IVとのバランスもよく、重さは感じない。

画質や性能に信頼感が持てれば、あとはぶん回して撮影に集中すればいい。
最広角の16mmで人物を撮る場合、やはり顔が変形しては元も子もないから、モデルの顔をファインダーで覗きながら絵づくりを考える。画面周辺の脚長効果だけでなく、よい意味でのデフォルメ感に富んだ絵を撮ることができるのは面白い。ダイナミックな絵になったり、ビジュアルショックにつながる。もちろん、人間にかかわらず、周辺に何を置くかでも臨場感が加わってきたりする。これを使いこなせば、ポートレートの腕は確実に上がる。

この16mm側で撮っていると、35mm側がまるで標準レンズのように思えてくる。これが「広角」の感覚が一変した理由。しかも、中間の24mm、28mmはスナップ感を出したい時によく使う領域。つまり、標準感覚で使える35mmに、スナップポートレートの24〜28mm、それにあえてデフォルメを利用する“飛び道具”としての16mmと、3つの領域を併せ持ったレンズと言える。ポートレートでの汎用性はとても高い。

 
キヤノンEOS 5D Mark IV + EF16-35mm F2.8L III USM
焦点距離:16mm 絞り優先AE(f5 1/2000秒)
ISO400 スポット測光 WB:オート
 
昼でも高度の低い春の太陽。フレアやゴーストの発生はよく抑えられており、光の向きを気にせず撮影できた。
 

焦点距離による画角の比較




焦点距離 16mm


焦点距離 24mm


焦点距離 28mm


焦点距離 35mm

 
 

Lレンズならではの高い描写性能に加え絞り開放F1.4の明るさで様々なシーンに使える広角「ポートレートレンズ」EF35mm F1.4L II USM

キヤノン EF35mm F1.4L II USM
価格:28万5,000円(ケース・フード付/税別)
独自のBRレンズを採用し、大口径レンズながら軸上色収差を大幅に低減。また、研削非球面レンズなど2枚の非球面レンズやUDレンズにより、諸収差も良好に補正し、こちらも画面中心から周辺部まで高画質を実現。特殊コーティング「SWC」により、フレア&ゴーストの発生も抑制した、開放F 値1.4の明るい広角単焦点レンズ。
主な仕様:●画角(水平/垂直/対角線):54°/38°/63° ●レンズ構成:11群14枚 ●絞り羽根枚数:9枚(円形絞り)●最小絞り:22●最短撮影距離:0.28m ●最大撮影倍率:0.21倍 ●フィルター径:72mm ●最大径×長さ:φ80.4mm×105.5mm ●質量:約760g
 
キヤノンEOS 5D Mark IV + EF35mm F1.4L II USM
絞り優先AE(f2.8 1/2000秒)+1.33EV 補正 ISO400
スポット測光 WB:オート
 
キヤノンEOS 5D Mark IV + EF35mm F1.4L II USM
絞り優先AE(f1.4 1/800秒)ISO100
スポット測光 WB:オート
 
背景の余韻を残しつつぼかすため絞り開放で撮影。F1.4で近づけば、正面に近い斜め振りで撮っても、奥の目はやわらかくぼけるほど深度が浅い。
 

空間を感じさせつつ背景をぼかし、しかも寄れるこのレンズで「立体的で生き生きしたポートレート」を

開放絞りF1.4の明るい単焦点レンズ、それがEF35mm F1.4L II USM。前述した通り、私は普段の撮影でも35mm単焦点レンズを使っているが、これ一本で撮りきったという経験はない。しかし、不思議なもので、50mmを使わず35mmだけで撮影しているとほとんど標準レンズの感覚で使っていることに気づく。

もちろん、人物を大きく入れ込んだら、それなりに歪みに注意を払う必要はあるが、それほど気にならないというのが実感。一方、最短撮影距離はEF16-35mm F2.8L III USMと同じ28cm。絞りを開けてモデルに寄って撮ると、背景も入ってきて、しかも広角レンズにしては大きくぼける。大口径、絞り開放F1.4の賜物だろう。空間を感じさせつつ、ぼかし、しかも寄れるというのは、当然ながら中望遠や望遠では味わえない絵だ。平面的なポートレートとは違う、別のポートレートを感じることができるはずだ。

だから、このEF35mm F1.4L II USMはポートレートに向いている。どこまで行っても、ポートレートは被写体と撮影者と背景の3つの関係を撮影するもの。背景の情報がなければ、ただの“モデル撮影”になってしまう。それだけではつまらない。

また、寄って撮れるということは、被写体に自分を意識させながら、様々な表情を撮ろうとすることで、これは望遠ズームで盗み撮りするより、相当な技術を必要とする。腕を上げるためにも、足を使って寄れる35mmを使いこなすことをお薦めする。


 
キヤノンEOS 5D Mark IV + EF35mm F1.4L II USM
絞り優先AE(f2.8 1/80秒) +0.33EV 補正 ISO1000
スポット測光 WB:オート
 
レンズフードに手を触れてもらって撮影。35mmでもかなりのデフォルメ感が出る。奥行きや場の雰囲気もよく入るので、考えて撮る習慣がつく。
 
キヤノン EOS 5D Mark IV + EF35mm F1.4L II USM
絞り優先AE(f4.5 1/2500秒)
+0.67EV 補正 ISO100
スポット測光 WB:オート
 
キヤノン EOS 5D Mark IV + EF35mm F1.4L II USM
絞り優先AE(f1.4 1/2500秒)
+0.33EV 補正 ISO100
スポット測光 WB:オート
 
キヤノン EOS 5D Mark IV + EF35mm F1.4L II USM
絞り優先AE(f4 1/640秒)
+0.67EV 補正 ISO100
スポット測光 WB:オート
 
キヤノン EOS 5D Mark IV + EF35mm F1.4L II USM
絞り優先AE(f4.5 1/640秒)
+0.33EV 補正 ISO100
スポット測光 WB:オート

このEF35mm F1.4L II USMも、EF16-35mm F2.8L III USM同様、高画質で高い解像感。ピント面はシャープでびしっと合う。また、画質を左右する要因の一つとしてフレア&ゴースト対策が挙げられるが、実際、このレンズは本当に逆光に強い。今回は、無理やりフレアを出そうと頑張ってみたが(笑)、よほどのことがない限り出ない。春や秋の屋外ポートレートでは、広角レンズの画面には太陽が入り込みやすくなるが、ほとんど気にせず逆光で撮れるのは助かった。しかも、人物の肌は潰れず、隅々まできれいに写る。撮影後に、RAW現像やレタッチで自分なりの個性を出すにしても、ベースになる素材として非常に心強い。

model_泉谷帆香 hair & make_大橋茉冬 styling_米丸友子

【メーカーサイト】
キヤノン
EF16-35mm F2.8L III USM
http://cweb.canon.jp/ef/info/ef16-35-iii/index.html

EF35mm F1.4L II USM
http://cweb.canon.jp/ef/info/ef35/index.html

 
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