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銀塩手帖

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銀塩手帖
フィルム、銀塩写真に関する情報を記録していきます。
公開日:2017/07/19

日本カメラ博物館 特別展「あなたのカメラができるまで」

photo & text 中村文夫


7月11日に日本カメラ博物館でスタートした「あなたのカメラができるまで」は、ふだん我々が当たり前のように使用しているカメラが、どのように誕生し、製造されているかを紹介する特別展だ。
展示には日本を代表するカメラメーカー10社が協力。カメラの企画段階のデザインスケッチやモックアップ(原寸模型)をはじめカットモデルや試作品など、一般の目に触れる機会の少ない貴重な資料を見ることができる。なお今回の特別展は、夏休みの子供向けに企画されたものだが、大人でも十分楽しめる内容だ。
また7月21日から8月末までの間、都内のフォトギャラリーを回ってスタンプを集めるとカメラ博物館オリジナルグッズがもらえるスタンプラリーを実施。このほか、小中学生向けのワークショップなどが開催される。
日頃、肩身の狭い思いをしているカメラ好きのお父さんにとって、子供を味方に付ける絶好のチャンスと言えるだろう。


展示は各メーカーが、ひとつのショーケースを受け持ち、内容を自由に決めるスタイル。メーカーによってアピールポイントが異なり、それぞれのメーカー色が現れている点も見どころだ。


ペンシリーズのデザイン検討サンプル(オリンパス)
カメラデザインの決定に当たり、さまざまな形状のボディーや部品を制作。これらを組み合わせて実際に手にしたときの感触を確かめ最終案を決定する。



X-T2グラファイトシルバーバージョンの
上カバー製造工程を説明する展示(フジフイルム)

外装の仕上げだけで、6工程もの手間が掛かっている。



ツァイス・イコンのモックアップとデザインスケッチ(コシナ)
レンジファインダー機のような趣味性の高いカメラの場合、巻き上げレバーのデザインの微妙な違いなどが、カメラ全体のイメージに大きな影響を与えてしまう。



国際宇宙ステーション(ISS)に搭載されたノクトン10.5ミリF0.95(コシナ)
短い焦点距離と明るいF値を持つことから流星観測用カメラに採用された。
本来はマイクロフォーサーズ用だが、カメラの仕様に合わせマウントを変更。
特殊フィルター取り付け用枠が追加されている。



ペンタックスKPの光造形モックアップ(リコー)
モックアップとは原寸模型のこと。このモックアップは紫外線で硬化する特殊樹脂製で、カメラの操作性を検討するために利用された。



ニコンD5のモックアップ(ニコン)
3Dプリンターによって製作されたモックアップ。カメラの形や全体のバランスのほか、細かい部分の扱いやすさなどを検討するために利用された。



EF400ミリF4レンズを装着したEOS-1Dのカットモデル(キヤノン)
CP+などの展示会で製品の精密さなどをアピールするために製作された。



シグマdpクワトロシリーズに搭載されたレンズの分解モデル(シグマ)
最新のレンズには、金属パーツのほかエンジニアプラスチック製の部品が多用されている。



レンズの製造工程を説明する展示(タムロン)
研削やプレス加工で製造された碁石のような素材が、粗ずり、精研削、研磨、コーティング、芯出(芯取)という工程を経てレンズになる。



蛍石の説明(キヤノン
蛍石(ほたるいし)は高級レンズに使われる素材のひとつ。左の原石を砕き、溶かして不純物を除去。再結晶させた中央の塊をカットし研磨してレンズに仕上げる



シリコンウェーハ(ソニー)
直径30センチのシリコンウェーハ。これをカットして35ミリフルサイズ撮像素子用を作る。



マルチフォーマット試作機(リコー)
135フィルムを使い24×33.5ミリ、24×41ミリ、24×72ミリの画面サイズが撮影できる。1990年頃に試作された。



マキネッテ67(プラウベル)
日本のドイが発売したプラウベルマキナ67の試作機。レンズはプラウベルマキナと同じニッコールだが、ポップアップ式ファインダーや電子シャッター採用など、実際の製品と異なる点も多い。1976年のフォトキナで展示された。



ハーフサイズカメラのオリンパスペンやマイクロ一眼レフのOMシリーズの生みの親である米谷美久さんが製作したクレイモデルと製作に使用した工具。


タッチ&トライコーナー
特別展会場内には、カメラの操作を体験できるコーナーが設置されている。

 

<展示内容>

日本カメラ博物館 特別展「あなたのカメラができるまで」

現在発売されているデジタルカメラをはじめとする製品のデザインスケッチ、デザインモック、カメラやレンズの製造過程の資料、完成した製品など、各種資料。
常設展として世界最初の市販カメラ「ジルー・ダゲレオタイプカメラ」、「日本の歴史的カメラ」約300点、「ライカコーナー」、「カメラのおもちゃコーナー」、「カメラ体験コーナー」、「分解パネルコーナー」などを展示。


開催期間:2017年7月11日(火)〜10月15日(日)
開館時間:10:00〜17:00
休館日:毎週月曜日(月曜日が祝日の場合は翌日の火曜日)
入館料:一般 300円、中学生以下 無料、団体割引(10名以上)一般 200円


開館場所:日本カメラ博物館
102-0082 東京都千代田区一番町25番地 JCII 一番町ビル(地下1階)
(03)3263-7110
アクセス:東京メトロ 半蔵門線半蔵門駅徒歩1分 有楽町線麹町駅徒歩8分
http://www.jcii-cameramuseum.jp/map/map.html


展示協力:オリンパス株式会社、キヤノン株式会社、株式会社コシナ、シグマ株式会社、ソニー株式会社、 株式会社タムロン、株式会社ニコン、パナソニック株式会社、富士フイルム株式会社、株式会社リコー(50音順)
 

<イベント情報>

親子向けのワークショップを開催
http://www.jcii-cameramuseum.jp/academy/workshop/index.html

 

<関連サイト>

日本カメラ博物館 特別展「あなたのカメラができるまで」
http://www.jcii-cameramuseum.jp/museum/special-exhibition/20170711.html


日本カメラ博物館
http://www.jcii-cameramuseum.jp/

 



中村 文夫(なかむら ふみお)

1959年生まれ。学習院大学法学部卒業。カメラメーカー勤務を経て1996年にフォトグラファーとして独立。カメラ専門誌のハウツーやメカニズム記事の執筆を中心に、写真教室など、幅広い分野で活躍中。クラシックカメラに関する造詣も深く、所有するカメラは300台を超える。日本カメラ博物館、日本の歴史的カメラ審査委員。
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