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カメラアーカイブ

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カメラアーカイブ
巷に溢れる新製品情報。そんな情報の波に埋もれてしまっている魅力的なカメラたちがある。メーカー開発者たちが、心血を注いで創りだした名機の魅力を蓄積していく。
公開日:2017/11/29

ニコン New FM2 初心者におすすめのフィルムカメラ

Photo & Text & Movie 大村祐里子


1977年5月に発売された機械式35ミリフィルム一眼レフカメラのニコン「FM」は、1982年3月に「FM2」へ、そして1984年3月に「New FM2」へと進化しました。今回ご紹介するニコン New FM2は、2001年にFM3Aが発売されるまでの15年間製造され続けた超ロングセラー機です。

ニコンFMから始まるこの「FMシリーズ」はコンパクト・ニコンとも呼ばれたように、当時のプロ仕様機「ニコンF2」に対して、ニッコールレンズを使いやすい一眼レフのボディに装着したいという願いを持つ写真愛好家向けに開発された、ハイグレードな中級機といえます。

 

初心者におすすめのフィルム一眼レフカメラ

New FM2は、ピントも露出も撮影者の意思で操作する完全マニュアル機です。露出計以外には電池を使用しません。最高速シャッタースピードは1/4000秒、ストロボ同調速度も1/250秒と、現在のデジカメにも遜色ないスペックです。電池がなくても動作する機械式シャッターが採用されている上、丈夫で使いやすいため、写真の訓練にも最適なカメラです。ゆえにNew FM2は、写真学校の新入生によく「1台目のカメラ」として選ばれています。

わたしはクラシックカメラ店で働いていたときに、35ミリフィルム一眼レフが欲しくなり、店長に何を買ったらよいのか相談してみました。そのときオススメされたのがNew FM2でした。



ニコン New FM2 + Ai Nikkor 28mm f/2.8S
F4 1/500 portra400
鮮やかに色づいた秋の池の水面を撮影しました。鯉がちょうど良いところに泳いできたので急いでシャッターを切りました。New FM2はボディが小ぶりで持ちやすく機動性が高いので、こういったシャッターチャンスを逃しません。
 

写真の表現が広がるカメラ

それまで写ルンですやコンパクトカメラしか使ったことがなかった自分ですが、New FM2を手に入れてからは「写真表現の楽しさ」を知ることができました。全自動のカメラは構図以外のことを何も考えなくて良いので気軽に使えるのですが「ここにピントを合わせたい」「もうちょっと明るくしたい」「もうちょっと背景をボカしたい」などと一歩先を目指そうとすると、力不足なところがあります。このNew FM2は完全マニュアル機なので、ピントやシャッタースピードや絞りをすべて自分で操作できます。慣れるのに少しだけ時間がかかるかもしれませんが、一度ピントや露出決定について覚えてしまえば、写真表現の幅がグンと広がり、その後どんなカメラを使っても、写真をより深く楽しめるようになります。

仕事でデジカメを使うようになってからも、迷うことなくイメージ通りの写真が撮れるのは、写真を始めた頃にNew FM2を使っていたおかげだと思っています。



レンズの絞りと、ボディ上部のシャッタースピードダイヤルを操作して露出を決定します。そして、シャッターレリーズボタンを押して撮影をします。FM2とNew FM2の大きな違いは、ストロボ同調速度です。ニコンFM2は1/200秒ですが、New FM2は1/250秒です。シャッタースピードダイヤルの赤字で確認できます。



裏蓋を開けてフィルムを装填します。むき出しになったシャッター幕には触らないようにしましょう。フィルムを装填したら撮影中は、裏蓋は開かないこと。フィルムが感光してしまい写真が台無しになってしまいます。フィルム初心者にありがちな失敗です。撮影終了後、フィルムを完全に巻き上げた後に、再度、裏蓋を開けてフィルムを取り出します。



シャッターを切った後は、巻き上げレバーを右へ巻き上げてチャージします。ボディ内でフィルムが送られ、次のカットが撮影できます。



ボディ正面向かって左側(1)がセルフタイマーレバー、右側(2)がプレビューレバーです。撮影時にプレビューレバーをボディ側に押し込むと、ファインダー内で被写界深度を確認することができます。少し暗くなりますが、設定した値まで絞り込まれた状態で「ピントの合う範囲」を見ることができるので、写真の仕上がりをイメージしやすくなります。



レンズマウントは、伝統のニコンFマウントです。Fマウントのレンズは、これまでに大量に生産されているので、レンズの選択肢の幅が非常に広がります。注:ただしデジタル時代の「Gタイプ」レンズは絞りが電子制御のため使用できません。



AI Nikkor 50mm f/1.4S
ニコン New FM2で使用できるマニュアルフォーカスレンズです。上部のピントを合わせるフォーカスリングと、下部の絞り設定リングを手動で設定します。レンズの絞り設定リングには「カニの爪」と呼ばれる連動爪が設けられていますが、これはニコマートなどのより古い機種で使用する時に機能します。New FM2では、このカニの爪は使用しません。装着するだけで絞り設定リングがボディと連動します。

 

ファインダー内 露出の表示

カメラに電池を入れた状態で、巻き上げレバーを引き出すとスタンバイとなります。シャッターレリーズボタンを半押しすると内蔵露出計の電源がONになりファインダー内の右側にLEDが赤く点灯します。「◯」が表示されていれば適正露出、「+」はオーバー、「-」はアンダーです。適正露出にしたい場合は、絞りリングやシャッタースピードダイヤルを操作して調節しましょう。


「◯」が表示されれば適正露出。



「+」が表示されれば、露出オーバー(明るく写る)。



「-」が表示されれば、露出アンダー(暗く写る)。

 

ニコン New FM2 フィルムの入れ方

動画撮影・編集:大村祐里子
 

ニコン New FM2 フィルムの取り出し方

動画撮影・編集:大村祐里子



 

Nikon New FM2 ギャラリー



ニコン New FM2 + Ai Nikkor 28mm f/2.8S
F5.6 1/250 Kodak Ektar 100
海で自撮りをしました。New FM2はセルフタイマーがついているので、こういった撮影も楽にできます。露出はややオーバーに設定しました。



ニコン New FM2 + Ai Nikkor 28mm f/2.8S
F16 1/125 ILFORD DELTA 3200 PROFESSIONAL
遠くに見える富士山を撮影。あえてISO感度3200のフィルムを使い粒子の荒い写真に仕上げました。遠方までクッキリ写したかったので、F16まで絞り込みました。



ニコン New FM2 + Ai Nikkor 28mm f/2.8S
F4 1/4 Kodak PORTRA 800
暗室にて、プリントをしている様子を撮影しました(これも自撮り)。New FM2は三脚に固定しています。



ニコン New FM2 + Ai Nikkor 28mm f/2.8S
F2.8 1/30 Kodak PORTRA 800
「豚に真珠」をイメージして撮影したものです。私のお気に入りレンズは、Ai Nikkor 28mm f/2.8Sです。自分の視野に近い画角で、かつ最短撮影距離の20cmまで寄れてとても便利です。



ニコン New FM2 + Ai Nikkor 28mm f/2.8S
F4 1/250 BERGGER Pancro 400
木とその影を撮影したものです。最近発売されたモノクロフィルム「BERGGER Pancro 400」を使用しています。色々なフィルムを使い、さまざまな表現を楽しみたいと思えるのもNew FM2の魅力です。
 

<主な仕様>

ニコン New FM2 
(発売:1984年3月/生産終了済み)
●カメラ形式:マニュアルフォーカス 35ミリフィルム一眼レフカメラ
●レンズマウント:ニコンFマウント
●使用フィルム:35ミリフィルム
●シャッター制御:機械式
●シャッター速度:1〜1/4000秒、B、Xシンクロ=1/250秒
● 露出制御:マニュアル
●測光方式:中央部重点測光
● 電池:SR44×2個、LR44×2個、CR1/3×1個
● サイズ/重量:W142.5×H90×D90mm、540g
 


協力:日本カメラ博物館
http://www.jcii-cameramuseum.jp/


機材協力:サイトウカメラ
http://www.saito-camera.com/



 
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 著者プロフィール  
大村 祐里子(おおむら ゆりこ)

1983年東京都生まれ
ハーベストタイム所属。雑誌、書籍、俳優、タレント、アーティスト写真の撮影など、さまざまなジャンルで活動中。
著書「フィルムカメラ・スタートブック」、「身近なものの撮り方辞典100

ウェブサイト:http://omurayuriko.jp/
ブログ:http://shutter-girl.jp/
Instagram:@yurichayuricha
 
 

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