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銀塩手帖

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銀塩手帖
フィルム、銀塩写真に関する情報を記録していきます。
公開日:2012/09/05

プロラボにオーダーする時に注意したいこと「プロラボ・ラボテイク」

CAMERA fan編集部


デジタル全盛の今、フィルムで写真を撮る人は、「なぜフィルムで撮るのか?」
「なぜデジタルではなくてフィルムなのか?」と、あえてフィルムで撮る「理由」を自問されることはないでしょうか?

私の場合は、フィルムで撮ること=フィルムらしい表現をしたい。フィルムでしかできない表現をしたい。という動機があります。そして、作品をアウトプットする(人に見せる)段階まで「フィルムらしい表現」を活かしたいと思うのです。

最終的なアウトプットの方法に「ゼラチンシルバープリント(銀塩プリント)」を選べば、それが一番フィルムらしい表現ができる「フィルム道」になるはずです。

しかし、自分の思い通りにプリントするためには、高い技術と経験が必要です。自ら暗室に入りプリントをするという方法もあります。それはとても楽しい作業ですが、失敗も多いし、何より設備の準備と技術の習得に時間がかかります。一方で、銀塩プリントを専門とするプロラボにお願いするという手もあります。

今回は、東京の恵比寿にあるプロラボ「ラボテイク」に伺って、アマチュアが「フィルム現像」や「プリント」をオーダーする時にどのようなことに気をつければ良いのか聞いてみました。



今回お話を伺ったのラボテイクのスタッフの(写真左から)山崎さん、金子さん、飯田さん。みなさん本当にフレンドリーで穏やかな人柄でした。その技術の高さから、広告写真のフォトグラファーや、著名な写真家から厚い信頼を集めているプロフェッショナル・プリンターです。

プロラボへのオーダーの仕方


CAMERA fan編集部:アマチュアにとっては、「プロラボ」というとなんとなく敷居が高い気がします。プロが利用するお店に行ってもいいのだろうか? 知識がなければオーダーもできないのではないか? ヘンテコな質問などして怒られてしまわないか? などと考えてしまいます。

金子:プロが利用する場所だからって臆せずに、気軽に来て、気軽に出してください。(笑)

CAMERA fan :あ、やっぱりそうですか。気軽でいいんですね(笑)
プロラボにフィルム現像やプリントを注文する時には、どんな風に注文すればよいのですか?

山崎:やはり自分のイメージを伝えることですね。「どんな作品に仕上げたいのか?」そういったお客様のイメージを、私たちプリンターに伝えていただければ、良い仕上がりになると思います。イメージを共有することが大切です。

CAMERA fan:なるほど。言葉で伝えればよいのですね。

金子:一番簡単なのは、「柔らかくしたい」または「硬くしたい」がわかりやすいです。そして、もっと具体的に「フレームの中でこの部分に一番目がいくように」というような説明があれば、理解できます。そのような表現が難しければ、どんな状況で撮影してきたのか。どんな思いでシャッターを切ったのか。ということをお伝え頂いてもいいです。

山崎:特定の写真家や、その作風に例えてもらってもいいですよ。例えば、「ハービー・山口さんのこの作品のような柔らかい表現で」とか「森山大道さんみたいな感じで」とか。最近「ハービーさんみたいに」という方は多いですね。

CAMERA fan:それはわかりやすいですね。真似したい気持ちもわかります。

飯田:もちろん「全てお任せします」でもいいんですけど、ぜんぶお任せで注文されてから、仕上がった写真をみて、「やっぱり違うな〜」と言われることもあります。多分、形になってみてやっと自分のイメージがわかったのでしょうけど、やっぱり事前に私たちにイメージを伝えて頂けるとうれしいです。




暗室で引伸機に向かう金子さん
印画紙を現像する。大きなバットが並ぶ。定着能力を安定させるため、定着は2浴定着を行っている。


モノクロプリントはフィーリング、自分にあったプリンターに出会ってほしい。


CAMERA fan:自分の表現したいイメージを伝えるのって、なんとも抽象的で難しいですね。カメラマンとプリンターの相性なんていうのもあるのでしょうか?

山崎:それはありますよ。特にモノクロプリントは、カラープリントと違って、明らかな指標がシステムとして確立していないんです。カラーの場合は、データを測って 色がどのくらい出ているか、コントラストがどれくらいで、っていうのがシステマチックなんです。それに比べて、モノクロは、とても主観が強いんです。だからプリンターや、ラボの考え方によって表現が全然変わってしまいます。ラボによって、仕上がりに幅があるんですよ。
そして、モノクロは、ものすごく人間の感性が入ります。それは、フィルム現像とプリントの両方について言えます。自分にあったプリンターに出会うのに、苦労するプロカメラマンは多いようです。とにかくフィーリングが合うかどうかが大事です。プリントは上手なんだけど、相性が合わない人という人もいると思います。

CAMERA fan:それは深い話ですね。なんだか、異性とお付き合いしているみたいです(笑)
僕の経験ですが、一度プロラボにフィルム現像を頼んだら、ガッチガチにコントラストが高く仕上がってしまって、それでそこには行かなくなりました。

金子:一度、注文して納得が行かなかった時に、それで諦めて他へいくのもありだと思いますが、何度かコミュニケーションを取っていくうちに、納得のいく作品が出来上がることもあります。

CAMERA fan:お話を聞いていると、どんどん技術的なことを教わりたくなってしまいますが、みなさんが、お客様にアドバイスをすることってありますか?

山崎:アマチュアの方から質問を受けることはよくありますよ。こういう表現をするためには、どのような撮影方法をとったら良いか?とか。

金子:目指す方向にいくのに、ネガが硬くて焼きにくかったので、次から撮影時に減感されたらどうですか?とか、アドバイスすることはあります。

CAMERA fan:それはカメラマンにとってもありがたいですね。

山崎:私たちががんばれば、お客様が求める表現にどうにか持っていくことはできます。でも、プリンターが楽に作業できるほうが、最終的には仕上がりは良くなっていきます。そのためのアドバイスはさせて頂いています。プリンターとやり取りで、撮影のスタイルを変えていくプロカメラマンもいます。こういう状況ではどうしたら良いか?って相談しながら、自分のスタイルを確立していく人もいます。出会った頃と、何年か経った後で、撮影のスタイルが違う人もいるんです。そういう人は、表現を探っていっているようです。

CAMERA fan:それはすごいですね。カメラマンを育てているみたいです。

山崎:でも、基本的に私たちは裏方に徹して、お客様の表現を優先しています。

地方のアマチュアから注文が多いメールオーダー


CAMERA fan:来店できない人は、郵送で注文できる「メールオーダー」がありますね。

金子:はい。その場合は、見本となるプリントをつけて頂いたり、文字で希望を書いて頂きます。

CAMERA fan:見本は、インクジェットでのプリントでもいいのですか?

山崎:インクジェットと銀塩プリントは基本的に違うものなので、それと全く同じ表現にはできません。それでも参考にはなりますので、何も添付されていないよりもつけて頂いたほうが助かります。言葉でも見本でもいいので、「イメージを伝える」というのが重要ですね。

CAMERA fan:ラボテイクのみなさんは、リピーターになっている常連さんの「表現の好み」というのは、覚えていらっしゃるのですか?

金子:それはありますね。何度もやり取りしているとわかってきますから。
こちらがわかってくると、お客様も注文時に「いつもの感じで」ってお任せしてくれます。

CAMERA fan:なんだかちょっと床屋みたいですね(笑)

飯田:何度か通って頂いて、お話をして、イメージを共有できれば、お客様のイメージする作品を仕上げることができると思います。

CAMERA fan:今日は貴重なお話をありがとうございました。



 
メールオーダー注文書の記入例。
注文書は、ラボテイクウェブサイトからPDFファイルをダウンロードできる。

ラボテイク設備


引き伸ばし機は、モノクロ3台とカラー2台。メインの広い暗室にはモノクロ引き伸ばし機とバットが並ぶ。完全暗室となる2つの小部屋には、カラー引き伸ばし機がある。



ILFORD MULTIGRADE500H(右)とFUJI SD690N

カラー暗室。カラー引き伸ばし機
LUCKY ENLARGER 450M-C
手前にあるのはカラープロセッサー。


モノクロ引き伸ばし機
DURST LABORATOR 1200
DURST LABORATOR 184。「8×10」のネガサイズまで対応。この巨大な機体とプリンターの技術が、写真家のイメージを形にしていく。



LABORATOR 184 のコンデンサーレンズの重量は、なんと20kgもある。既に製造中止となっているためパーツ一つ一つが貴重品だ。
DURST LABORATOR 184 を操作する山崎さん


プロフェッショナルラボ「ラボテイク」


1993年に株式会社テイクのプロフェッショナル・モノクロラボ事業部として渋谷にオープン。その後、2009年に現在の恵比寿に移転してきた。
デジタル全盛の今だが、フィルムの表現にこだわる雑誌編集部やファッションフォトグラファー、そして全国のアマチュアカメラマンからの注文が集まっている。
サー
ビスは、モノクロフィルムの現像とプリント、そしてカラープリントを行なっている。カラーフィルムの現像は外部委託となる。プリントサイズは、大キャビネ
から大全紙まで。8×10までのフィルム現像とプリントができるのも特徴。詳しいサービス内容と料金はラボテイクのウェブサイトをご参照ください。
ラボテイク 
住所:〒150-0013
東京都渋谷区恵比寿3-15-3 ベルコリーヌ1F
Tel: 03-5422-9831
Fax:03-5422-9832
営業時間:
平日 9:30〜18:30
第1・3土曜日 10:00〜17:00
(13:00〜14:30はお昼休憩のため不在)
http://www.labtake.jp/

近辺情報・一口メモ

JR恵比寿駅からラボテイクに行く途中には、恵比寿ガーデンプレイスと、東京都写真美術館があるので、来店の際にはぜひ立ち寄りたい。
ラボテイクの近くで見つけたおしゃれなカフェ。
Rue Favart(リュ・ファヴァー)
ラボテイクでオーダーしたあとに、ちょっと一服したい。

住所:    〒150-0013
東京都渋谷区恵比寿3-28-12
TEL:    03-5421-0688

http://www.ruefavart.com/

<カメラファンがオススメする書籍>


「個性あふれる"私らしい"写真を撮る方法」野寺治孝・著


IDEA of Photography 撮影アイデアの極意」南雲暁彦・著

これからフィルムカメラをはじめたい人のためのガイドブック


フィルムカメラ・スタートブック」大村祐里子・著
 
玄光社MOOK
「赤城写真機診療所 MarkII」
〜高速連写はやめなさい〜

著者 赤城耕一
価格:1,900円+税
電子書籍版:1800円+税

<紙版>
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ヨドバシカメラ.com
紀伊國屋書店

<電子版>
Amazon Kindleストアほか
 
 
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