スペシャルレビュー
公開日:2017/12/19
LENSBABY Velvet 56〜フルサイズ対応ソフトフォーカスレンズ〜
Photo & Text 大村祐里子
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キヤノン EOS 5D Mark IVに Velvet 56シルバーを装着。レンズの重さは 410g と比較的軽く、重量的にカメラとのバランスは良いです。黒いボディとシルバーのレンズという珍しい組み合わせが撮影者を新鮮な気持ちにさせてくれます。絞り開放時は少しピントの山が掴みづらかったです。ピント合わせには慣れが必要かもしれません。 |
マクロ撮影も可能なソフトフォーカスレンズ
「LENSBABY Velvet 56」は、ソフトフォーカス効果を味わえる35mmフルサイズのイメージサークルをカバーする交換レンズです。高次球面収差を出すことで、ソフトフォーカス効果を強調しています。マニュアルフォーカス専用のレンズで、焦点距離は56mm、開放F値はF1.6。レンズ構成は3群4枚。電子接点はありません。
ボディカラーはブラック(Velvet 56)とシルバー(Velvet 56 SE)の2色をラインナップ。対応マウントはニコンF用、キヤノンEF用、ソニーA用、ペンタックスK用、ソニーE用、富士フイルムX用、マイクロフォーサーズ用の7種類(※シルバーはニコンF用とキヤノンEF用のみ)。
レンズ中心部では芯のあるしっかりとした描写をしながら、周辺部に向かうにしたがって立体感のある柔らかなボケを楽しめます。そのボケ感は、デジタル処理やソフトフィルターを装着したときとは、また違った雰囲気です。LENSBABY Velvetシリーズは、この56mmの他に、Velvet85(焦点距離85mm F1.8)がラインナップされています。 |
鏡胴は金属製で、ひんやりとした触り心地です。クラシカルなデザインが印象的。ヘリコイドは、トルク感もありしっかりしています。フィルター径は62mm。レンズ外形寸法は72×85.25mm(最大径×全長)。 |
まずはクローズアップや、ペットを撮ってみた
まずは、その最大の特徴である「ソフトフォーカス効果」を試すために、身近なクリスマスツリーの飾りや犬を撮影してみました。Canon EOS 5D Mark IV + LENSBABY Velvet 56
F2.0 1/160 ISO800 WBマニュアル
絞りをF1.6からF2.8のあいだに設定して、クリスマスツリーの飾りを撮影してみました。優しくにじむハイライトと、ぐるぐると流れるような背景のボケが、まるで夢の中にいるかのような世界を作り出してくれました。こういったファンタジックなモチーフは、このレンズとの相性が良さそうです。Canon EOS 5D Mark IV + LENSBABY Velvet 56
F1.6 1/160 ISO800 WBマニュアル
Canon EOS 5D Mark IV + LENSBABY Velvet 56
F1.6 1/160 ISO200 WBマニュアル
クリスマスの飾りと同様に、絞りをF1.6からF2.8のあいだに設定して犬を撮影してみました。このレンズは絞りを開けると基本的に画面中央部付近にしかピントの芯が残りません。画面の真ん中に被写体が配置されているときは問題ないのですが、それ以外の部分に配置されている場合はぼやけてしまうので注意が必要です。また、周辺光量が落ちることも特徴的です。Canon EOS 5D Mark IV + LENSBABY Velvet 56
F2.0 1/160 ISO800 WBマニュアル
Canon EOS 5D Mark IV + LENSBABY Velvet 56
F1.6 1/80 ISO200 WBマニュアル
Canon EOS 5D Mark IV + LENSBABY Velvet 56
F2.8 1/8000 ISO200 WBマニュアル
このレンズは、最短撮影距離が13cm(レンズ先端より)と、マクロ撮影にも使える仕様となっています。ただ、球面収差を使ったソフトフォーカスレンズの特性上、マクロ撮影時のほうがよりソフトフォーカス効果が強まるという特徴があります。したがって、マクロ撮影時に絞りを開放にすると、何が写っているのかさっぱりとわからないほど、画面全体がぼんやりとします。この水滴もかなり近づいて撮ったのですが、絞りを開放にするとボケすぎて何が写っているのかわかりませんでした。そこで、F2.8まで絞り、芯をある程度残し、水滴の形が認識できるようにしました。
実際に使用してみて、ソフトフォーカス効果は絞りごとにかなり異なると感じました。絞り開放時にソフトフォーカス効果は最大となり、絞りF2.8くらいまでは柔らかな描写が得られます。しかし、F4あたりから急にシャープさが増し、絞れば絞るほど鋭い描写へと変わっていきます。 二面性を持つミラクルレンズ〜絞りによる表現の変化〜
Canon EOS 5D Mark IV + LENSBABY Velvet 56
F2.0 1/8000 ISO200 WBマニュアル
同じ雪道を、異なるF値で撮影してみました。1枚目はF2.0です。中央部から周辺に向かってソフトにボケています。2枚目はF5.6です。急にソフトフォーカス感が失われ、シャープで現実感のある写りに変化しました。その劇的な変化ぶりは、本当に同じレンズなのかと、目を疑うレベルです。Canon EOS 5D Mark IV + LENSBABY Velvet 56
F5.6 1/3200 ISO200 WBマニュアル
LENSBABY Velvet 56について
「LENSBABY Velvet 56」を使ううち、だんだんレンズの特性がわかってきました。ソフトフォーカスレンズは目の前のものをすべてファンタジックでドリーミーな雰囲気に変えてくれて、使っていてとても楽しいのですが、逆を返すと「こう撮りたい!」という意思を持って使わないと、レンズに同じような絵を撮らされてしまうな、と感じました。
わたしはこのレンズを使うなら、動物や花などにマクロで近づくよりも、遠くの景色を撮影したい、と思いました。景色全体が適度ににじみ、まるで誰かの記憶のなかを歩いているかのような絵は、このレンズでしか表現できないと感じたからです。
そこで、北海道の雪景色を撮影してみました。中央部付近にピントの芯が残り、周辺部が柔らかくボケるので、私には、遠景を撮った場合画面中央部に向かって風が流れていくよう見えました。雪国の冷たい風、しんしんと降る雪……そういった「空気感」のようなものを表現できたのではないかと思います。 <LENSBABY Velvet 56 ギャラリー>
Canon EOS 5D Mark IV + LENSBABY Velvet 56
F2.0 1/8000 ISO100 WBマニュアル
Canon EOS 5D Mark IV + LENSBABY Velvet 56
F2.0 1/1600 ISO1600 WBマニュアル
Canon EOS 5D Mark IV + LENSBABY Velvet 56
F2.8 1/160 ISO400 WBマニュアル
Canon EOS 5D Mark IV + LENSBABY Velvet 56
F2.0 1/1000 ISO200 WBマニュアル
Canon EOS 5D Mark IV + LENSBABY Velvet 56
F2.0 1/2000 ISO200 WBマニュアル
Canon EOS 5D Mark IV + LENSBABY Velvet 56
F2.0 1/8000 ISO200 WBマニュアル
Canon EOS 5D Mark IV + LENSBABY Velvet 56
F2.0 1/2000 ISO200 WBマニュアル
Canon EOS 5D Mark IV + LENSBABY Velvet 56
F2.0 1/8000 ISO200 WBマニュアル
まとめ
以上のように、「LENSBABY Velvet 56」はソフトフォーカス効果を強調したレンズで、描写に関してはかなり個性的で、作品制作に活かせる面白いレンズです。絞り開放〜F2.8くらいまでは、目の前の風景を一瞬でファンタジックでドリーミーな雰囲気に仕上げてくれます。一方、F4以上に絞ると、突然シャープな絵に変わります。基本的には、絞り開放〜F2.8で使用し、ソフトフォーカス効果を楽しむのがオススメです。
引いてよし、寄ってよしのレンズですが、ピントの芯が画面中央部に残り、周辺部に向かってボケていく独特の描写をするので、その描写に合った被写体を選ぶことが大切です。
今回、Velvet 56で遠景を撮影してみて、また自分の世界が広がりました。今後また「LENSBABY Velvet 56」で撮ってみたい、と思う被写体が現れたら、このレンズを持ち出そうと思います。<メーカーサイト>
ケンコー・トキナー
LENSBABY Velvet 56
http://www.kenko-tokina.co.jp/imaging/eq/camera-lens/lensbaby/lineup/4961607860045.html
LENSBABY Velvet 85
http://www.kenko-tokina.co.jp/imaging/eq/camera-lens/lensbaby/lineup/4961607471524.html