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ただいま往診中〜赤城写真機診療所〜

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ただいま往診中〜赤城写真機診療所〜
赤城写真機診療所の院長 赤城耕一が、カメラ病にかかった患者たちのために西へ東へ往診治療する。
公開日:2017/12/11

松坂屋カメラ〜カメラ欲しいよ病・専門病院〜の巻

photo & text 赤城耕一

ドクター赤城が若かりし頃〜駆け出しのカメラマン時代

松坂屋カメラといえば、私と同年代の「カメラ欲しいよ病」の罹患者では知らぬ人はいないだろうなという超有名病院、じゃなかったカメラ店ですね。

このお店を語るためには勝手ながら最初に私事の話をさせてください。四半世紀も前のこと、友人の写真家と共同で港区の高輪に事務所と暗室を作りました。その当時はまだデジタル時代は迎えてはいなかったけれど、暗室を作るなど無駄であると周りから思われていたし、このために無理して購入したライツの引き伸ばし機フォコマートIIcなどは2400Wの大型ストロボよりも高価で、周りの同業者からは正気の沙汰ではないとまでいわれましたよー。

ま、その当時は若かったので元が取れるかどうかなんて関係ないというまだ気力充実だったわけ。

事務所設立の当時は地下鉄南北線もまだ開通しておらず、都心の高級一等地なのになんだかアクセスが悪いところだなと思っていたのだけど、誰が言ったか知らないけれど、カメラマンの事務所は港区になければならないなどと訳のわからないことを言われていたような時代だったので、多少の不便は我慢したわけです。

ま、とにかく暗室仕事がしたい一心でしたから、私は仕事場のある地域や場所で見栄を張るとかそういうことは一切無頓着だったので、場所はどうでもいいんだけど。それでも事務所に行く道すがらの唯一の楽しみは、明治学院大学、あのヘンなデザインの建物の高輪消防署の近くに当時あった松坂屋カメラが近くになったことだったなあと。

最寄駅は泉岳寺か、高輪台か。気まぐれに五反田から歩いたか。とにかくよく通ったもので、あの松坂屋カメラへのウォーキングが健康の元だったのかもしれない。うまくいけば体重も軽くなり健康になるかもしれないけど、財布も軽くなったりしますな。

松坂屋カメラさんは先々代の創業者が質屋さんで、副業から中古カメラ事業が立ち上がったという経緯があるそうです。創業は80年。一般的な小売りの他、同業者向けの卸のような役割を担っていたこともあり、他の店には見られない独自の廉価な値付けが人気でしたねえ。


1980年代の松坂屋カメラのテレビCMより

私が通い始めた頃はまだ古いビルで、店内は好天でもなんとなく薄暗く、昭和の中古カメラ店という雰囲気が色濃い感じがして怪しい感じがしました。若輩者には敷居が少々高かったような気もするけど。たしか現金払い専門だったような記憶があるわけ。

当時は私も二十歳台の中ごろくらいだったのかな。松坂屋カメラのカメラ雑誌の広告もユニークで、円グラフみたいなところに商品と価格が載っていて、カメラ雑誌を回しながら目的のブツを探したことも懐かしい。

のちに建物は建て替えが行われ、国産カメラの松坂屋とライカなどの舶来物中心の高輪マックカメラに分かれたが、マックカメラは専門性が強く、個性のある店であったなあ。店員さんのひとりに、この世にこんなにカメラに詳しい人が存在するのかと、まるで学校みたいなところでした。

しかし、近くに松坂屋カメラさんがなかったら、もう少し私も真面目に仕事をして、ちゃんとした写真家になれたかもしれません。ここにこうしたカメラ駄文を書くようなことはなかったかもしれないのだけど。ま、もう手遅れなんで、自らがお医者さんをやってますけどね。


で、ものすごく前置きが長くなりましたが、現在の松坂屋カメラさんに話題を移すことにします。


 

品川のカメラメーカーギャラリーの先にある現店舗

松坂屋カメラの場所は高輪から2002年に移り、品川駅からダラダラ歩いたら10分はかかりそうな場所にあります。そこそこに遠いぜ。キヤノンギャラリーSとかニコンミュージアムをさらに通り越したあたり、何の変哲もないフツーの雑居ビルの4Fにあります。ビルの下には看板がないのでわかりづらくしているわけですが、これはわざと見つからないようにしておいてカメラ患者の皆さんに楽しんでもらおうという意図的なものかもしれません。

ちなみに同じビルに入居している歯医者さんの看板がビルの入り口前にありますから、これを目印にするのがいいかもしれません。カメラを買うついでに虫歯の治療とか、歯石を落とすのも一興かもしれません。歯が痛いとカメラを愛でたり、撮影するどころじゃなくなりますぜ。



で、ビルの4Fのエレベーターのドアが開くともうそれだけで「おっ!」という声が出たりします。だってエレベーターホールには怪しげなアクセサリー関係が山盛りでハコに収まっていたりするんですぜ。なんというかカメラ欲しいよ病の罹患者だけが共通して感じることのできるパラダイスな空気感を感じるわけです、まぢで。

訪問した時は、カゴの中に暗室で使うセーフライトボックスがあったり、かなり大型のアルミのトランクがあったり。いずれもそのへんの居酒屋さんの本日の日替わりランチくらいの値札が貼られていて、もう速攻で買おうかと思ったくらいなわけです。この取材の後に仕事があるからさすがにヤメたけど。今度クルマで行って、片っ端から積んできたいような衝動に駆られておるところです。



最近はアルミトランクにカメラを入れて、除湿剤を入れてカメラを収納したりしています。防湿庫がなんかキライになったわけ。だって人から見られたら、カメラヲタクみたいに誤解されちゃうじゃん。



松坂屋カメラ 店内の様子



店内は程よい広さで、うまい具合に壁に沿ってショーケースが並べられていて、メーカーごとにカメラ、レンズたちが並んでいます。お客様は一般の方と業者の方もいらっしゃるようで、レイアウトも華美に走らずシンプルでいいなと。それほど雑多な感じはなくて、カメラ関連のアクセサリーとかストラップとか用品はショーケース下の箱に収められていたり。だから目的に応じて必要なものはスパッと目につく感じですね。これは私に経験からすれば良いカメラ屋さんに共通した飾り付けですね。行けば何かしらのブツと遭遇してしまうという危険な感じしません?つまり手ぶらでは帰れないわけ。


取扱説明書
取説は10円。実用価値と資料的な価値もありますね。往時のカメラ周辺の純正アクサセリーの正しいネーミングがわかったり。



ニコンの棚
品物がよく動いている感じが伝わってきますな。フツーの中古カメラ店とは違いますねえ。

 

最新機種とお買い得品が並ぶ店内

奥の棚には、特にお買い得品とかジャンク品もあるようだけど、実用には十分なカメラたちが置かれています。その左手には金融新品とおぼしき少し古めのものから最新機種のデジタルカメラが並んでいます。まあ、感覚的には、うまく遭遇した時には間違いなくお買い得じゃね、という価格の品物が溢れていますね。これはかなりいいです。宝物探し感もあるし。交通事故のような危険性も伴うわけだけど。

でも「カメラはもう何が欲しいのかわからない」という達人級の領域に到達してしまうと「何かがあるはず」と妄想だけで永遠とショーケースを見て回る羽目に陥りますから、それなりに時間を要する覚悟は必要だろうなあ。



ニコン Df
欲しいぞニコンDf。元箱付きのデジタルカメラは奥にどうぞ。未使用品とか、金融新品とかもあり。



キヤノン EOS650
EOS初号機、EOS650は300〜500円なり。EOSデジタルよりスッキリしてて、今みても良い感じなんだよね。



現状品のフィルムAF/MF一眼レフたち
電池なくても動作するフルメカニカルモデルもたくさんあるので、値段以上の価値があると思いますね。



オリンパス スピードライトT20を発見してしまったドクター赤城



「これは珍品だ!」とキヤノン New FD200mm F1.8Lを見つけて、買う気満々で内部のホコリをチェックするドクター赤城
 

目的もなくふらっと来店する人が一番危険

あ、駅から適度な距離を歩いてきたし、せっかくここまで来たのだからそんなに欲しくないカメラも買ってしまえという声が頭に響いたりすると、かなり危険ですね。思い当たりのある人は当診療所へお越しください。

ちなみにこちらでの支払いは基本的には現金払いが基本ですね。目的のブツを見つけて持ち合わせがない時は近くにATMやコンビニがなくて不便なので、デビルじゃなかったデビットカードが使えますぜ。銀行預金がたんまりある人は片っ端から欲しいものを買っても安心です。ハイ。

 

松坂屋カメラ 武藤社長

ここからはお店の人にお話を聞いてみましょうか。



───「うちは古物の業者さんから仕入れることが多く、儲けというよりもできるだけリーズナブルに流通させようとしています」(松坂屋カメラ 武藤社長)

おー、だから掘り出し物が多いのか。お客さんはご自由にどうぞごらんくださいというスタイルで店員さんも特に干渉することはない。店内のディスプレイも気取ったものにしないのはお客さんが入りやすくするためなのだろうなあと推測。ちなみに武藤さんは私とタメな年代です。

───「当社もカメラファンなど、ネット通販による販売が劇的に増えました。お店に来られるお客様の多くはネットで見て実際に品物を確認される方というのも多いですね」

なるほど。最近は若い人を中心にフィルムカメラ人気が再び再燃しているところもあるけれど、フィルムカメラの品揃えも多い松坂屋さんはどうなんだろう。

───「一部のプロのお客様、地方にある写真館で、まだフィルムを使うお客様がいらっしゃるのです。そうしたお客様の機材調達も行うことがあります」

すでにほとんど製造されていない中判カメラ関連の需要があるようだ。おおっと頼もしいぜ松坂屋カメラ。


(株)松坂屋カメラ 代表取締役の武藤真人 氏
松坂屋カメラにアルバイトで入ったこの道のたたき上げ。いや達人ですね。普段はお店のバックヤードでお仕事されております。

 

ドクター赤城が処方する”カメラ病”に効く処方箋


コムラー 28mm F3.5
価格:3,800円。M42マウントなのがシビレますね。マウントアダプターで使うのも良いけど、ペンタックスSVのブラックあたりに装着して森山大道さんを気取るという手もあるな。



暗室時計
価格:500円。個人的に暗室時計ゲットね。フィルムの現像時間のカウントはiPhoneの現像用アプリのタイマーを使ったりするんだけど、アナログの時計もまたよしですよねえ。




ニコン F5(アクションファインダー付き)+ニッコール Ai-s 24mm F2.8
価格:ボディ44,000円、レンズ10,000円これね、結構珍品です。アクションファインダーのみ、ほとんど売れずに困ったという話をMr.ニコンの後藤哲郎さんに聞きました。ファインダーから目を離しても全視野を見ることができます。欲しいぞ。



ローライフレックスT
価格:48,000円。うちには外装のヤレたグレーモデルがあるんだけど、ブラックもかなりいいぜ。搭載されたテッサー 75mm F3.5はすげーよく写るんだけど、みんなローライフレックス3.5Fのクセノタールとかプラナーばかり褒めるよね。



キヤノン New FD200mm F1.8L
価格:258,000円。ものすごい久しぶりに見ました。珍品です。素晴らしい程度です。EFレンズに同スペックのレンズがあり、それをFDにも転用したという都市伝説がありますね。



オリンパス スピードライトT20
個人的に購入。ガイドナンバー20の可愛いヤツですが、ACアダプターがあるとは知らず。両方で500円。オリンパスOM-2Nに装着して、TTL調光したけど、問題なく使えました。

 

ドクター赤城耕一の往診結果

それにしても、ニコンミュージアムの展示を観て、もう一台ニコンFが欲しくなり、ミュージアムの先に松坂屋カメラさんがあるわけだから、品川に行くということは、自分でかけた罠に自らが落ちてくゆく感じもしなくはないけれどね。

では、品川に行く場合は十分に気をつけてください。みなさんのご無事をお祈りいたします。 おしまい。
 

<ショップ情報>

松坂屋カメラ
住所:〒140-0001 東京都品川区北品川1-14-1 クルーズ八ツ山4F
電話:03-3458-7401
営業時間:平日10:00〜19:00 祭日10:00〜18:00
定休日:日曜
ショップサイト:http://www.matsuzakayacamera.com

CAMERA fanで松坂屋カメラの商品を検索する:
http://camerafan.jp/matsuzaka/itemlist.php


☆記事に掲載している商品情報は、取材時のものです。商品の在庫の有無と価格は、お店にお問い合せください。
 
☆緊急告知:赤城写真機診療所の続編「赤城写真機診療所 MarkII」は、2018年6月29日に発売予定です。
 
赤城耕一
東京生まれ。出版社を経てフリー。エディトリアルやコマーシャルの撮影のかたわら、カメラ雑誌ではメカニズム記事や撮影ハウツー記事を執筆。戦前のライカから、最新のデジタルカメラまで節操なく使い続けている。

主な著書に「使うM型ライカ」(双葉社)「定番カメラの名品レンズ」(小学館)「ドイツカメラへの旅」(東京書籍)「銀塩カメラ辞典」(平凡社)

ブログ:赤城耕一写真日録
 
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