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スペシャルレビュー

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スペシャルレビュー
公開日:2018/01/11

[特集]無性にポートレートが撮りたくなる!
キヤノン EF85mm F1.4L IS USM
撮り下ろしグラビア&インプレッション

Photo & Text 唐木貴央 Model 熊江琉唯
ポートレート撮影の王道レンズ キヤノンEF85mm F1.4L IS USMが満を持して発売になった。柔らかさとシャープさを両立した画質と、ボケ味のナチュラルな美しさ。AFスピード・AF精度を高め、手ブレ補正機構ISを内蔵した、この中望遠単焦点レンズは、ポートレート撮影にどう有効なのか? プロフォトグラファー唐木貴央が解説する。


モデル:熊江琉唯 ヘアメイク:杉村理恵子 スタイリスト:米丸友子
キヤノンEOS-1D X Mark II EF85mm F1.4L IS USM
f2.8 1/500秒 ISO320 撮影距離:約3.7m


 

キヤノン EF85mm F1.4L IS USM

焦点距離:85mm
APS-Cデジタル一眼レフ装着時の画角:
136mm相当(35mm判換算)
レンズ構成:10群14枚
撮影距離範囲:0.85m〜∞
最大撮影倍率:0.12倍
フィルター径:77mm
最大径×長さ:φ88.6×105.4mm
質量:約950g
手ブレ補正効果(CIPAガイドライン準拠):4.0段分(※焦点距離85mm時、EOS-1D X Mark II使用時)
メーカー希望小売価格:200,000円(税別)

 

素直で自然な常用レンズ
でもおとなしいだけじゃない!


キヤノンEOS-1D X Mark II EF85mm F1.4L IS USM
f1.4 1/500秒 ISO125 撮影距離:約1.0m

開放f1.4で最短撮影距離近く(この写真は約1.0m)となると、瞳にしっかりピントを合わせながら、口許はすでに柔らかくぼけている。ピント面からボケへのつながりはスムーズで実に自然。



キヤノンの85mmといえば、現行品の85mm F1.8 USMと85mm F1.2L II USMがあるが、前者は2002年の発売、後者は2006年の発売と、いずれも発売から10年以上経っている。今回発売になったEF85mm F1.4L IS USMが単純に、これらの中間に位置するレンズというわけではないのは明白だ(実際、実勢価格で見れば、F1.2とF1.4はかなり接近する)。最新の硝材、最新の光学設計、最新の光学技術を投入した“最新の85mmレンズ”なのだから。

とはいえ、はやりの「カリカリ画質」に向かわず、85mm F1.2L II USMの特徴である比較的柔らかい表現と、解像感と抜けのよさという相反する二つを絶妙にブレンドした点がポイントだ。

フルサイズでも隅々まで歪みなく、ポートレート撮影においては、例えばEF16-35mm F4L IS USMのようにダイナミックな画角で変化球として使用するレンズとは真逆の位置にあるレンズと言える。素直でナチュラルで瑞々しいポートレート撮影の常用レンズとして、ポートレート入門者でも使いこなすことができるだろう。

かといって、決しておとなしいだけのレンズではなく、被写体と距離がある場合や、逆光などのAFが迷いやすい条件下でもAF駆動の速さと精度の高さが的確にカバーしてくれるため、輪郭の溶けた柔らかいボケの前にすっきりとした被写体の肢体を浮かび上がらせてくれるし、ソフトフォーカスの中にもしっかりとディテールを描き切ったピント面を覗かせてくれる。

ナチュラルな画角で、ハッとさせられるような存在感や繊細さが垣間見られるのだから、シャッターを切った後、仕上がりを見るのが楽しみなレンズなのだ。



キヤノンEOS-1D X Mark II EF85mm F1.4L IS USM
f2.8 1/640秒 ISO320 撮影距離:約1.7m

大口径レンズだけに開放での点光源のボケ(玉ボケ)は画面周辺部でレモン型になるが、少し絞れば解消する。f2.8では髪の毛一本一本まで解像し、柔らかさの中にもシャープさと繊細さが際立つ。




キヤノンEOS-1D X Mark II EF85mm F1.4L IS USM
f1.4 1/1250秒 ISO125 撮影距離:約2.7m


EF85mm F1.4L IS USMは、余計な癖のない、クリアなレンズなので、素性のよいRAWデータを生成できるのが嬉しい。一方、ピント面からボケへ続くグラデーションのなだらかさは、レンズの抜けのよさと相まって、とろけるような肌あいを表現してくれる。とりわけ女性ポートレートに使いたくなるレンズだ。

 

画質インプレッション


キヤノンEOS-1D X Mark II EF85mm F1.4L IS USM
f1.4 1/2000秒 ISO200 撮影距離:約5.0m

絞り開放でモデルから約5.0m離れた場所から撮影。浅い被写界深度で、なんの変哲もない住宅地の路上が柔らかなボケとなり別世界に。AF精度も高く、人物をすっきりと浮かび上がらせている。

 

開放は柔らかさとキレの絶妙なブレンド
1〜2段絞ると鮮鋭度がぐっと上がってくる

EF85mm F1.4L IS USMのキレのよさは開放値から。より細かく見ると、開放の絵は適度に柔らかさを含み、ボケとのつながりもなだらかなグラデーションでとても自然だ。同じ85mmの85mm F1.2L II USMがデジタル時代の隆盛となっている“カリカリの描写”と一線を画す“柔らかく、落ち着いた味”であるのに対し、このEF85mm F1.4L IS USMは、柔らかさと解像感をうまくブレンドしたイメージ。それが開放の写りに感じられる。

ただし、絞りを1段、2段と絞ると、その絵づくりの様相は変わってくる。ボケとのつながりのよさはそのままに、ピント面の鮮鋭度がぐっと上がってきて、まさに被写体が浮き立つような絵を見せてくれる。全体に濁りのない抜け感も気持ちよく、いい光で撮影したくなるレンズだ。女性ポートレートに向いているだけでなく、昨今はやりの柔らかくナチュラルなメンズポートレートにも活かせると思った。


 

機動性インプレッション


キヤノンEOS-1D X Mark II EF85mm F1.4L IS USM
f4 1/4000秒 ISO1600 撮影距離:約2.8m

上の写真は、逆光条件のもと、モデルが画面奥から手前に向かって走ってくる様子を、「AIサーボAF」で撮影。撮影距離は約3m弱。しっかりと瞳に合焦するAF精度は素晴らしいの一言。

 

大口径ながら手持ちで機動力に富むサイズ
最短撮影距離も短く前後に動いて撮りたい

今回、キヤノンEOS-1D X Mark IIとの組み合わせで撮影したが、大口径ながら取り回しもよい。やや重みを感じたが、ISユニットを積んでこのサイズ、重さであれば充分だろう。単焦点レンズでしかも中望遠なので、絵を作るなら脚で稼ぐ必要がある。だが、もちろん手持ちで充分動けるし、機動性は悪くない。撮影距離で言うと、フルショットなら撮影距離は3〜5mくらい、ウエストショットなら2m弱くらい、バストショットなら1mくらいというのが目安。最短撮影距離は85cmで、アップショットとなる。人物のパーツを狙うというのも、望遠レンズほどではないが可能。脚を使えば、様々な絵を撮ることができる。

撮影距離:約0.85m

 


撮影距離:約6.3m

 


撮影距離:約1.6m

 

 
 

AF性能&手ブレ補正機能インプレッション


撮影距離:約3.3m
キヤノンEOS-1D X Mark II EF85mm F1.4L IS USM
f1.4 1/320秒 ISO100 撮影距離:約3.3m

 

被写体との距離や逆光・暗所なども
AF性能の高さとIS内蔵で自由に安心して撮れる

今回の撮影では、6m以上引いた絵や、逆光状態でもAFで撮影したが、EOS-1D X Mark IIのAF性能とも相まって、AFのピントがズバズバ来た。EF85mm F1.4L IS USMの合焦スピードも速く、駆動系の性能の良さを実感させてくれる。ズームレンズと違って、動き回る撮影の中で、ストレスを感じさせない合焦精度というのは大きな美点だと思う。

ISは4段分の手ブレ補正効果。そもそも開放F1.4という明るいレンズだから暗所でもシャッタースピードが稼げるが、やはり中望遠だけに手ブレ補正機能が搭載されているのは安心だし、低照度の条件下でも、もう一歩突っ込んだ撮影にチャレンジできそうだ。




撮影距離:約4.8m
キヤノンEOS-1D X Mark II EF85mm F1.4L IS USM
f2.8 1/80秒 ISO100 撮影距離:約4.8m


画面右奥窓からの半逆光。画面の手前側に天窓があるがそちらはわずかな光量のため、輝度差の激しいシーンだ。ここではISO感度を100にしたため、シャッター速度はやや低速になったが、手ブレを気にせず撮影できた。明るい部分から影となる部分への、なだらかで柔らかいグラデーションの描き方が心地よい。

 

総合インプレッション

85mmと言えば往年の「ポートレートレンズ」。昨今は標準、広角の人気が高まっているが、やはり中望遠、なかでも85mmはナチュラルな描写ながら立体感も適度に表現できる扱いやすい焦点距離で、これ一本でも様々な写真を撮りきることができるレンズ。特にEF85mm F1.4L IS USMは、大口径単焦点レンズならではのごく浅い被写界深度と大きなボケで、繊細さととろけるような柔らかなボケが共存する、理想的なポートレートが手軽に撮れる。しかも、ファインダー像が明るいので、ピントや構図の確認もしやすい。その一方、大口径ながら機動性にも優れ、手持ち撮影ができて、手ブレの心配もないので、ポートレートを撮る人はぜひとも注目して欲しいレンズだと思う。

<プロフィール>

Photo & Text:唐木貴央 Takao Tounoki
兵庫県生まれ、東京育ち。日本写真芸術専門学校を経て、根本好伸氏に師事。2002年に独立、現在に至る。主に雑誌のグラビアで人物を中心に撮影。

Model:熊江琉唯 Rui Kumae
1995年4月17日、中国四川出身。9頭身のモデル・タレント。日本テレビ『PON! 』のレポーターとして活躍中。
 

<メーカー公式サイト>

キヤノン EF85mm F1.4L IS USM
http://cweb.canon.jp/ef/lineup/standard/ef85-f14l/index.html



*この記事は、フォトテクニックデジタル2018年1月号から転載しています。