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最新デジタルカメラで使いたいオールドレンズたち

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最新デジタルカメラで使いたいオールドレンズたち
公開日:2018/03/15

第2回 密かに人気のパンクロコピーに浸る FUJIFILM X-E3

text & photo 澤村徹

FUJIFILM X-E3にPO3-3M 50mmF2を装着。APS-C機と35mmフィルム用シネレンズの組み合わせは、ほぼレンズ本来の画角で撮影できる。

Taylor-HobsonのSpeed Panchroというオールドレンズをご存知だろうか。35mmフィルム用シネレンズで、ハリウッドで大活躍したレンズだ。すぐれたシャープネスと階調性を備え、言うなれば、プロ御用達の名シネレンズである。アリフレックススタンダードマウントのものが有名で、入手性もよい。ただし、1本20〜30万円程度と現在でも非常に高価なシネレンズだ。

Speed Panchroはシネレンズファンなら一度は使ってみたいレンズだが、高価ゆえに手を出しづらい。しかし、諦めるのは早計だ。実はパンクロコピーという選択肢がある。それがPO3-3M 50mmF2だ。マニアの間でPO3と呼ばれるこのレンズは、ロシア製の35mmフィルム用シネレンズである。Speed Panchroに似たレンズ構成を採用しており、安価な割りに高描写と人気のシネレンズだ。マウント改造済みのものが多く、ここで取り上げる個体もライカLマウントに改造済みだった。価格はオークションサイトなら改造済みの状態で2万円前後。カメラショップでも4〜5万円ぐらいで購入できる。



インダスターの鏡胴にPO3を組み込み、ライカLマウント化している。マウントアダプター経由でX-E3に装着した。

前述の通り、PO3-3M 50mmF2は35mmフィルム用シネレンズだ。ムービーの35mmフィルム1コマはAPS-Cイメージセンサーとほぼ同サイズ。そこでAPS-Cミラーレスの富士フイルムX-E3にPO3-3M 50mmF2を装着し、撮影してみた。互いにフォーマットが一致するため、隅々まで緻密に解像し、さすがはパンクロコピーと納得の高描写だ。開放の切れ味や階調性もすぐれ、コストパフォーマンスの良さが光る。反面、逆光条件ではフレアやゴーストが発生しやすく、このあたりはロシアンクオリティーといったところか。

PO3-3M 50mmF2にはもうひとつ楽しみ方がある。それはフルサイズ機との組み合わせだ。このレンズは35mmフィルム用シネレンズの割りにイメージサークルが広く、α7シリーズに付けてもケラレが少ない。中心部の堅実な写り、周辺部のゆるい写り、両者のギャップがおもしろい。手頃な価格で幅広く楽しめるシネレンズだ。



FUJIFILM X-E3 + PO3-3M 50mmF2
絞り優先AE F4 1/4000秒 ISO200 AWB RAW
木立の中央にピントを合わせる。細かい枝まで緻密に描き、周辺部も流れることなく解像している。


FUJIFILM X-E3 + PO3-3M 50mmF2
絞り優先AE F2 1/1800秒 ISO200 AWB RAW
開放で蛇口からあふれる水にピントを合わせた。合焦した部分だけがシャープに切り取られ、立体的な表現だ。


FUJIFILM X-E3 + PO3-3M 50mmF2
絞り優先AE F2 1/1600秒 ISO200 AWB RAW
合焦ポイントは右下の椿だ。周辺部分でもしっかりと解像する。フレアが出やすいので、逆光条件は要注意だ。


FUJIFILM X-E3 + PO3-3M 50mmF2
絞り優先AE F5.6 1/320秒 -0.67EV ISO200 AWB RAW
F5.6まで絞る。シャープな描写は無論、明瞭なコントラストがこのレンズの良さを物語る。


SONY α7II + PO3-3M 50mmF2
絞り優先AE F2 1/1000秒 ISO100 AWB RAW
フルサイズ機だと四隅はかすかにケラレる。中心部は緻密だが、周辺はゆるい。ローファイとハイファイが同居する様がおもしろい。



 

<プロフィール>


澤村 徹(さわむら てつ)
1968年生まれ。法政大学経済学部卒業。オールドレンズ撮影、デジカメドレスアップ、デジタル赤外線写真など、こだわり派向けのカメラホビーを得意とする。2008年より写真家活動を開始し、デジタル赤外線写真、オールドレンズ撮影にて作品を制作。近著は玄光社「アジアンMFレンズ・ベストセレクション」「オールドレンズを快適に使うためのマウントアダプター活用ガイド」、ホビージャパン「デジタル赤外線写真マスターブック」他多数。

 

<著書>


アジアンMFレンズ・ベストセレクション



オールドレンズを快適に使うためのマウントアダプター活用ガイド



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