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スペシャルレビュー

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スペシャルレビュー
公開日:2018/06/18

オールドレンズでのポートレート撮影に役立つ FlashAir 上野由日路インタビュー

photo & Interview 大村祐里子


2018年5月に原宿で開催されたオールドレンズフェス。イベントの中でカメラマンの上野由日路氏は、オールドレンズを使ったポートレート撮影のワークショップを行い会場は、来場者で満席となった。
上野氏は、タレントやミュージシャンのポートレート撮影にオールドレンズを活用し独自の世界観を作り上げている。そんな彼が撮影の際に手放せないというWi-Fi通信機能を持つSDメモリカード「FlashAir」。その機能とポートレート撮影での活用法について訊いた。



カメラマン 上野由日路(うえの よしひろ)
広島県出身 1975年生まれ 六本木スタジオを経てフリーに。雑誌、コマーシャルでのポートレート撮影をメインに活動。オールドレンズ、とくにシネレンズの特徴を活かした独特の表現で作品制作を行なっている。著書「オールドレンズ×美少女」
 

<オールドレンズを使ったポートレート撮影について>



Photo:上野由日路 モデル:里々佳


Photo:上野由日路 モデル:彩夏子


Photo:上野由日路 モデル:彩夏子


――上野さんはオールドレンズを使ってタレントやミュージシャンのポートレートを撮影されていますが、その際に注意していることはありますか?

ピントですね。オールドレンズは、現行のレンズと比べてピントの合う範囲が非常にシビアです。だから、ピントが合っているか合っていないかは、常にプレビューで確認しながら撮影をすすめています。

カメラの背面液晶で拡大してピントを確認することには限界があります。できれば大きい画面にシェアして確認した方がいいですよね。僕は、FlashAirを使い、タブレットなどに写真を転送して確認するようにしています。



上野由日路氏が愛用するソニーα7と、装着されたオールドレンズPO3

上野氏がオールドレンズ撮影に使用するのはソニーα7初期型。α7シリーズは、すでに3世代目のα7IIIまで発売しているため古さは否めない。しかし、上野氏は最新機材を追い続けることに、こだわらないという。むしろ一つのカメラを使いこなすことで、無意識でもカメラを操作できるようになり、撮影に集中できるという。機材が変わると微妙に操作感が変わってしまい、それが煩わしさにつながってしまうことが理由だ。


――ポートレート撮影で、モデルさんとのコミュニケーションはどうやってとっているのですか?

撮影では「モデルさんが得意な表情や動きを活かしつつ、そこにカメラマンの作風を合わせる」という作業を重視しています。

例えば、イベントのワークショップに登場していただいた八木ナツホさんは「カッコいい」「アンニュイ」な表情づくりが上手なので、僕はそれに合わせたライティングや雰囲気作りを行いました。




お互いにどういうものが得意なのかはコミュニケーションをとりながら探っていくのですが、そのときに「写真のプレビュー」をコミュニケーションのひとつの手段として採用しています。リアルタイムでどのような写真が撮れたのか見ることができれば、モデルさんは写真で自身の得意なことをこちらに伝えることができますし、僕もまた得意なテイストを写真でモデルさんに伝えることができます。

キャリアが長いモデルさんはこちらの撮りたいものを瞬時に理解してくれますが、慣れない人はなかなかそうはいきません。そんな場合も写真のプレビューがあると、早い段階でお互いの理解が深まり、撮影が進めやすくなります。




――現行レンズとオールドレンズの撮影で、異なる点はありますか?

絵作りへの意識が変わりました。現行レンズを多く使っていた時代は、絵作りに関して、構図と雰囲気だけを重視する傾向にありました。

オールドレンズはレンズ自体に個性があるので、オールドレンズを使うようになってからはその個性をどうやったら出せるかな、とか、どんなものがこのレンズに合うのかな、とか、絵作りをより深く考えるようになりました。

あとは……。モデルさんにウケのいいオールドレンズがありまして(笑)背景がぐるぐるボケるレンズなんかがそうですね。あえて撮影の冒頭にそういったウケのいいレンズを使って、写真をプレビューして見てもらって、モデルさんの心を掴む、ということをしたりします。そうすると、そのあとの撮影がうまく進むんです。これはオールドレンズならではの撮影方法ですね。



オールドレンズフェス ワークショップで撮影された作品 モデル:八木ナツホ
上野由日路氏は、限られたスペースと機材でも、自らの世界観を作り出す

 

<FlashAirについて>




――FlashAirの便利な点について教えてください。

抜群の「使いやすさ」に魅了されて、使っています。
まずは、インストールがすごく楽なところです。スマートフォンやタブレットにアプリを落とすだけですぐに使えます。インターネットの設定が苦手な僕でも、何の問題もなく使えました。

次に、撮影に負担をかけずに、写真のプレビューができるところが便利です。FlashAirはカメラの挙動に影響しないので、プレビューのために撮影を止める必要がありません。

あとは、他のメーカーのカメラに変えても、設定を変更せずにそのまま使い続けられる点が便利です。僕、カメラの操作を覚えるのが得意ではないんです……。だから、カメラ側のルールに縛られずに使えるFlashAirはとてもありがたい存在です。より撮影だけに集中できるようになりました。


FlashAirアプリ
iOS用とAndroid用が用意されている

――FlashAirと、カメラ純正アプリとの違いはなんですか?

FlashAirは転送にあたってカメラ側の操作が不要なので(※カメラの電源が入っている必要はあります)、撮影を続けつつ写真を転送できます。

純正アプリだと、転送中にカメラ側の機能が制限されることもあります。転送中は撮影できない機種もあります……。撮影しながらサクサクプレビューできるFlashAirの存在はとてもありがたいです。

僕は「撮りたい!」と思ったときに撮れないのが最大のストレスです。でも、FlashAirの無線転送は撮影の邪魔をしないので、撮りたいときに撮りたいものを撮ることができます。よって、撮影が非常にストレスフリーになりました。




――FlashAirを使ったポートレート撮影のワークフローを教えてください。

僕はタブレットで写真のプレビューをしています。今は使っているのはiPad。

まずカメラの電源を入れて、タブレット側のWi-Fi設定で「FlashAir」に接続します。そして「FlashAir」アプリを立ち上げます。これで、タブレットで写真を見ることができるようになります。とても簡単ですね。

撮影中は、そのタブレットを随時モデルさんに見てもらいます。タブレットで写真を見ながら「ここをこうしたい」などと話し合います。アプリの設定で「自動更新」にしておけば、撮影した画像が次々と表示されます。まるでテザー撮影のような便利さがあるのです。僕は、勝手に疑似テザーって呼んでいます。
また、プレビュー時には、ピンチインして拡大しピントの合う範囲がシビアであるオールドレンズのピントチェックも行います。

 

【FlashAir スマートフォン&タブレットの設定】


STEP1


iPadの「設定」画面。Wi-Fiの接続先を「flashair_****」にする。パスワードは説明書に記載された初期設定の文字を入力する。

STEP2
アプリを立ち上げるとカメラに挿入されたFlashAir内に保存された画像が表示される

FlashAirアプリ サムネイル表示

右上のチェックボタンを押した後に複数画像を選択すれば、一度にまとめて画像を保存することもできる。


拡大表示

1つの写真をタップして拡大表示
アップル iPad Airの9.7インチで見ると、開放絞りで撮られた被写界深度の浅い画像も、バッチリピントを確認できる。カメラの背面モニターがいくら大きくなったとはいえ、その差は歴然。見やすいだけでなく、高解像度で表示される写真はとても美しい。モデルともコミュニケーションがふくらむ。

画面左下の矢印「共有」ボタンから、「保存」→端末に保存する、「共有」→SNSなどへ送信ができる。また「共有」で送信する前に、トリミングと回転の簡単な編集も可能。


オススメの設定

オススメの設定は、サムネイル画像を自動的に読み込む「自動更新」。アプリの「設定」から「アプリ設定」で変更可能。デフォルトではオフになっている(2018年6月現在)
この機能をオンにすることで、上野氏の言う疑似テザーが可能となる。



――FlashAirは一度に複数台の端末に写真を転送することができますが、モデルさんの端末に写真を転送することもありますか?

あります。モデルさんの反応がすぐわかるところが良いなと思っています。あとで「ダメ」と言われることがほとんどなくなり助かっています。



スマートフォン用アプリ(Android版)の画面
モデルの八木さんは、この撮影の後にアプリからお気に入りの写真を選んでダウンロードしていた。


撮影後にモデルさんへ写真を送ることを忘れちゃったりする人は、現場で転送してそのまま持ち帰ってもらえばいいので安心ですね。もちろんレタッチや補正などの加工しない「撮って出しのJPEG」を送るわけですから、撮影時にきちんと撮ることが大切です。

最近は、SNSで写真をすぐに共有したいモデルさんも多いですよね。FlashAirがあれば、ただちに写真を転送して共有できるのでとても喜ばれます。





――今後、FlashAirを使ってどのようなことをやってみたいですか?

今まで、写真は撮ってからみんなで観るまでに時間がかかる、というのが当たり前でした。
しかし、FlashAirがあれば撮ったものをその場で見せることができます。そのライブ感を生かすようなことをやってみたいです。

例えば、イベントで、2人のカメラマンが同じモデルさんを撮り、その写真をリアルタイムに表示したり、FlashAirがあれば何か面白いことができそうです。



――最後になりますが、最近、気に入っているオールドレンズがあれば教えてください。

キノプティックのアポクロマート75mm F2です。キノプティックはフランスの映画用レンズを作っている光学メーカーです。
ピントが合っているところは非常によく描写されるのですが、背景のボケが絵画のマチエールのようにザワザワしているんです。そういった、絵画みたいな写りになるところが気に入っています。 






<関連サイト>
FlashAir
http://www.toshiba-personalstorage.net/product/flashair/sduwa/index_j.htm

<取材協力>
東芝メモリ株式会社



 
 著者プロフィール  
大村 祐里子(おおむら ゆりこ)

1983年東京都生まれ
ハーベストタイム所属。雑誌、書籍、俳優、タレント、アーティスト写真の撮影など、さまざまなジャンルで活動中。雑誌連載:『フォトテクニックデジタル』にて「身近なものの撮り方辞典」を連載中。

ウェブサイト:http://omurayuriko.jp/
ブログ:http://shutter-girl.jp/
Twitter:@Holy_Garden