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カメラアーカイブ

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カメラアーカイブ
巷に溢れる新製品情報。そんな情報の波に埋もれてしまっている魅力的なカメラたちがある。メーカー開発者たちが、心血を注いで創りだした名機の魅力を蓄積していく。
公開日:2012/10/31

ローライフレックス/ローライコード 第1回

photo & text中村文夫
(機材協力:アカサカカメラ千曲商会
左からローライフレックス2.8F、ローライフレックス2.8GX、ローライコードV型

ローライフレックスは1928年にドイツのフランケ&ハイデッケ社が発売した二眼レフの元祖と言える製品である。原型は同社が1925年に発売したステレオカメラのローライドスコープ。立体写真を撮るため2つあった撮影用レンズを一つに減らし、通常のカメラに設計しなおしたものがローライフレックスだ。反射式のレフレックスファインダーとロールフィルムを使うたことから、この名が付いた。
 

ローライフレックスの最大の特徴


ローライフレックスの最大の特徴は、撮影用レンズの上にファインダー用レンズが乗った独特のスタイルと言えるだろう。ファインダー用レンズと撮影用レンズが離れているので、近距離ではパララックスが生じるが、一眼レフのように露光時のブラックアウトがないばかりかミラーショックも皆無。

さらにフォーカシングスクリーンを上から直接覗くウェストレベル式ファインダーを採用しているので、たとえばポートレート撮影時などではカメラマンが下を向いた姿勢になり、モデルに緊張感を与えずに済む。ただし視野は左右逆像。動きの速い被写体の撮影は不得意だ。

このほか6×6判という正方形画面も大きな魅力。そもそも縦撮影が苦手というウェストレベルファインダーの欠点をカバーするために採用されたフォーマットで、上下あるいは左右をカットして長方形の印画紙にプリントすることが前提だが、後に正方形画面を生かした撮り方が主流となり、現在では「ましかく写真」が撮れるカメラとして評価が高まっている。

 

初代より変わっていないスタイル


ローライフレックスは、現在でも製造が続けられているが、基本スタイルは初代のローライフレックスから何ら変わっていない。そういう意味ではライカと双璧を成す名機と言えるだろう。またローライフレックスには、なぜか型番の表記がなく、さらに同じ機種でもレンズの違いによるバリエーションが存在するなど、新旧製品の見分けが付きにくいことでも有名だ。そこで今回はローライフレックスの歴史を要約して説明するとともに、代表的な機種を第二次世界大戦以降に登場した製品を中心に紹介することにしたい。

初代ローライフレックス(ローライフレックスオリジナル)のフィルムサイズは、現在と同じ6×6センチだが6枚撮りの117フィルムを使用していた。フィルム送りはボディ底部窓に現れる数字を見ながら1コマずつ巻き上げる「赤窓式」。撮影用レンズはドイツを代表する光学メーカー、カール・ツアイス社製テッサー75ミリF3.8あるいはF4.5で、ファインダー用ビューレンズにはハイドスマート75ミリF3.1を採用。ビューレンズが撮影用レンズより明るいのは、ファインダー像を明るくするとともに、より正確なピント合わせができるよう被写界深度を浅くするためだ。

1932年、120フィルムが使えるローライフレックス・スタンダードが登場する。このカメラのフィルム送りは、最初の一枚目を赤窓に表示させれば後のコマは自動的に定位置に止まる半自動式。クランク式巻き上げやスポーツファインダーを内蔵したピントフードなど、現在のローライフレックスの基本形が、このモデルで確立した。
そして1937年、フィルム装填を完全自動化したローライフレックス・オートマットが登場する。
ローライフレックスオートマットIII型
1937年発売のローライフレックス・オートマットの流れを汲む名機。このカメラから上下のレンズにバヨネットが付き、現代のスタイルが完成した。
ムター
レンズ交換ができないローライフレックスのために用意されたコンバージョンレンズ。焦点距離を1.5倍にする望遠用と0.7倍にする広角用の2種類がある。
ローライフレックス4×4(右)
1930年に登場した127フィルムを使用する4×4センチ判の小型二眼レフ。写真のカメラは、戦後型で、フィルム装填はオートマット。アメリカではベビーローライと呼ばれている。左のカメラはローライコードVb型。並べてみるとベビーローライの小ささがよく分かる。

ローライコードはローライフレックスの普及版として1933年に誕生した。ローライフレックスとの大きな違いは撮影用レンズで、ローライフレックス・オリジナルが高級タイプのレンズを採用していたのに対しローライコードは普及タイプのトリオター75ミリF4.5。名前の示す通りレンズ設計はトリプレット(3枚玉)の簡単な構成だ。フィルム送りはローライフレックス・スタンダードと同じセミオートマット式で、巻き上げはノブ式だった。

 
ローライコード
ローライフレックスの普及機として1933年に誕生。製造コストを下げるため構成枚数の少ないトリオターレンズが採用されている。
ローライコードV型
ピント合わせ用ノブが向かって左側にあるタイプの最終型で、シャッターにライトバリュー指標が付いた。レンズはシュナイダー製クセナー75ミリF3.5
ローライコードVb
ローライコードの最終モデル。この機種からピント合わせ用ノブがボディの向 かって右側に移動。高級機のローライフレックスと同じレイアウトになった。


1945年ドイツは第二次世界大戦に敗北したが、フランケ&ハイデッケ社はいち早くローライフレックス・オートマットの製造を再開。外貨を稼ぐことでドイツ復興に大きく貢献する。戦後初の新製品は1949年に発売されたローライフレックス2.8A。撮影用レンズにテッサー80ミリF2.8を採用したローライ初の大口径レンズ付きモデルだ。同年にはローライフレックス・オートマットにストロボ用Xシンクロ接点を追加したオートマット3.5も登場。このカメラには、東西に分かれたカール・ツアイス社の両方からレンズが納入されたほか、増える需要に応えるため新たにシュナイダー社にもレンズが発注された。
 

ローライフレックス3.5F誕生

 
ローライフレックス2.8C
最初にF2.8の大口径レンズを採用したのは、1949年発売のローライフレックス2.8Aで、テッサー80ミリF2.8付きだった。2.8Bでレンズをビオメターに変更。2.8Cからカール・ツァイス製プラナー80ミリF2.8あるいはシュナイダー製クセノター80ミリF2.8が採用された
 

1958年になると現在でも根強い人気を誇るローライフレックス3.5Fが登場する。レンズはカール・ツアイス製プラナー75ミリF3.5、あるいはシュナイダー製クセノター75ミリF3.5付き。

そして1960年には、カール・ツァイス製プラナー80ミリF2.8またはシュナイダー製クセノター80ミリF2.8レンズを装着したローライフレックス2.8Fが登場し、ローライフレックスは黄金期を迎えることになる。

 
ローライフレックス3.5F
2.8Fのレンズをカール・ツァイス製プラナー75ミリF3.5あるいはシュナイダー製クセノター75ミリF3.5に変更したモデル。2.8Fとともに人気が高い。
ローライフレックス2.8F
真の意味でローライフレックスの最終型と言えるモデル。F型以降に登場したGXなどもローライフレックスを名乗っているが、フィルム装填をセミオートマットに変更するなどメカの簡略化が行われている。レンズはカール・ツァイス製プラナー80ミリF2.8あるいはシュナイダー製クセノター80ミリF2.8付き
 
 
テレ・ローライフレックス
ローライフレックス2.8Eのレンズをカール・ツァイス製ゾナー135ミリF4に変えて1959年に登場した望遠専用機。画角は35ミリ判の80ミリクラスに相当し、主にポートレート撮影に利用された。
ワイド・アングル・ローライフレックス
テレローライ発売の2年後にカール・ツァイス製ディスタゴン55ミリF4を装着して発売された広角専用機。
 

35ミリカメラ時代の到来、二眼レフカメラの衰退

1960年を過ぎると世界のカメラ市場の中心は35ミリカメラに移行。時代に取り残されたフランケ&ハイデッケ社は、1965年に倒産してしまう。

1987年に登場したローライフレックス2.8GXは経営を引き継いだローライ・フォトテクニック社の製品だ。その後、経営母体が何回か変わり、現在はローライ・フォトテクニック社の元幹部が設立したDHW社がローライ製品を扱い中。日本では
駒村商会が輸入販売を行っている。
 

そして、現代に引き継がれるデザインと機能

現行商品のローライフレックス2.8FXは、GX2.8の外装をクラシカルなデザインに変更したもので、50ミリレンズが付いた広角専用機のローライフレックス4.0FW、135ミリレンズが付いた望遠専用機のローライフレックス4.0FTも販売中だ。
 
ローライフレックス2.8GX
ローライは1981年に二眼レフの製造を一旦中止するが1987年に製造を再開。そのときのモデルが2.8GXだ。フィルム装填はセミオートマット式で、メカ的にはローライコードとローライフレックスの折衷型。ビューファインダー内にTTL露出計を内蔵し、ストロボもTTLオートに対応している。現行商品の2.8FXはデザインが違うだけで基本スペックは変わらない。

※同じ機種でもさまざまなバージョンや限定モデルが存在するが本稿では省いてある。


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中村 文夫(なかむら ふみお)

1959年生まれ。学習院大学法学部卒業。カメラメーカー勤務を経て1996年にフォトグラファーとして独立。カメラ専門誌のハウツーやメカニズム記事の執筆を中心に、写真教室など、幅広い分野で活躍中。クラシックカメラに関する造詣も深く、所有するカメラは300台を超える。日本カメラ博物館、日本の歴史的カメラ審査委員。
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