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Cinemachic Eyes
公開日:2016/01/12

オールドレンズ×美少女 エピソード~山地まり×RANK TAYLOR HOBSON COOKE SPEEDPANCHRO 75mm F2

photo & text 上野由日路
SONY α7 +RANK TAYLOR HOBSON Cooke Speed Panchro 75mm F2   マニュアル F2 1/200秒 WB:マニュアル ISO640 RAW

レンズといえば日本製かドイツ製というイメージだが、このレンズの出身は英国だ。Made in Englandという表記はどこか目新しく思え、改めて身の回りにイギリス製品が少ないことに気づく。
テーラー・ホブソン クック・スピードパンクロはイギリスが世界に誇るシネレンズだ。その登場は1930年代までさかのぼる。トーキーと呼ばれる音声同調技術と同時に産声を上げたパンクロは、ハリウッドを中心とした映画界で様々な技術を実現する後押しをしてきた。トーキー、テクニカラー、カラーフィルム、ズーム、ワイドアングルと、クックレンズの派生型は映画の歴史そのものだ。その中で今回チョイスしたクック・スピードパンクロ75mmF2は「SER.II」と呼ばれるカラーフィルム対応モデルである。



RANK TAYLOR HOBSON Cooke Speed Panchro 75mm F2

スピードパンクロは大きく分けてノンコート/シングルコートのI型、カラーフィルムに対応したコーティングのII型。レトロフォーカスを採用して小型化された広角のIII型の3種類がある。SER.II型はカラーのハリウッド映画で最も活躍したレンズの一つといえる。
先日発売した拙著『オールドレンズ×美少女』に掲載した山地まりさんのポートレートは、このクック・スピードパンクロ75mmF2で、撮り下ろした。



SONY α7 + RANK TAYLOR HOBSON Cooke Speed Panchro 75mm F2   マニュアル F2 1/125秒 WB:マニュアル ISO1000 RAW


山地まりさんとの出会い


僕が初めて彼女に会ったのは2011年の暮れだった。知り合いのモデル事務所の社長にぜひ作品撮りをしてもらいたい女の子がいる、と連絡をもらった。通常新人の場合、まずは宣材(宣伝材料)撮りというプロフィール写真撮影をすることが一般的な流れだ。その後、事務所が営業をしてみて、見込みがある場合のみ、次のステップで「作品撮り」を行い、ポートフォリオを作るという流れになる。
しかし、事務所がはじめから作品撮りを手配することは非常に稀だった。新人のモデルやタレントは、知り合いのカメラマンなどにお願いして自力でポートフォリオを作るのが通例であるからだ。その突然の連絡に驚きつつ、すぐにスタジオを手配した。当日やってきたのがまだデビュー前の山地まりさんだった。

撮影に入って集中したときの彼女の目の強さが、非常に印象に残っている。すっと射抜かれるような視線は、こちらのことを見透かされているような気になってしまう。その強い目線の奥に、胸に秘めた何かがあるんだろうと思いながら撮影したことを憶えている。

モデルにとって、「写真写り」の良さが重要なポイントになることは当然だ。単純に綺麗に写る事はもちろんだが、写真に写ったときにその人特有の世界感が出るかどうかが、そのモデルの才能ということになると思う。
山地さんの場合、とても強い個性を感じた。彼女のなかにある芯の強さと、しなやかさ、柔らかさがコントラストとなって表れていた。
その後「週刊プレイボーイ」でデビューした彼女は一気にグラビア誌でブレークし、2013年にテレビドラマ「35歳の高校生」で女優デビューも果たした。その世界観と強いまなざしが人々の心をつかんだからであろう。



SONY α7 + RANK TAYLOR HOBSON Cooke Speed Panchro 75mm F2   マニュアル F2 1/200秒 WB:マニュアル ISO640 RAW

その後も、私は事あるごとに作品撮りをお願いしていたのだが、CAMERA fanの連載や私が運営しているウェブサイト「CINEMACHICS」の立ち上げの際にも協力してもらった。そんな縁があったので、僕の初めての著書にはぜひ参加してほしかったのだ。

山地さんの撮影にスピードパンクロの75mmF2を選んだ理由は、僕の持っているレンズの中でもっとも思い入れがあり、もっとも扱いがシビアなレンズだからだ。初対面のモデルと信頼関係を構築しつつこのレンズを使いこなすのは難しい。でも、今まで作品撮りを重ねてきた山地さんなら大丈夫という自信があった。それゆえのセレクトであった。

ただ心配事がないわけではなかった。山地さんとはこれまで何度も撮影したことがあるゆえに、過去の作品と似たような写真にならないように気をつけた。外での撮影の場合は不確定要素を入れることで写真が似ることを回避できる。たとえば風に髪がなびいたり、逆光でハレーションが起きたり、夕焼けなどでドラマチックなシチュエーションが演出できれば、まったく新しい写真が撮れる。しかし今回は室内での撮影で、さらに曇天だった。ロケハン時は綺麗な斜光が入っていて「いける」と思ったのだが、曇天となるとそうはいかない。当てにしていたハレーションによるフレアが使えない。そうなると直球による勝負をせざるを得なかった。



SONY α7 + RANK TAYLOR HOBSON Cooke Speed Panchro 75mm F2   マニュアル F2 1/200秒 WB:マニュアル ISO640 RAW

当日は山地さんに必要最低限のイメージを伝え、手探りで撮影をスタートした。撮影を進めていきつつ彼女から自然に良い表情が出てくるのを待った。僕はふだんハレーションやゴーストなどの変化球に頼っているせいで直球勝負となると少し心許なかった。少しゆっくりな立ち上がりだったが、徐々にペースがつかめてくる。

今回は山地さんの表情のインパクトや、表現の幅が勝負になる。ポーズやシチュエーションを替えながらイメージに近づくのを待つ。僕が欲しいのはナチュラルな表情。彼女が普通に人としゃべっているときに垣間見せるような表情を狙った。次第にイメージに近づき、ある瞬間パチッとイメージにハマる瞬間が来た。



SONY α7 +RANK TAYLOR HOBSON  Cooke Speed Panchro 75mm F2   マニュアル F2 1/200秒 WB:マニュアル ISO640 RAW


SONY α7 +RANK TAYLOR HOBSON Cooke Speed Panchro 75mm F2   マニュアル F2 1/200秒 WB:マニュアル ISO640 RAW


SONY α7 +RANK TAYLOR HOBSON Cooke Speed Panchro 75mm F2   マニュアル F2 1/200秒 WB:マニュアル ISO800 RAW

彼女とチューニングを合わせる

ラジオのチューニングをあわせていって不意にノイズが音声に変わるときの感覚に似ている。そこからは一気に撮影を進める。その感覚が消えてしまわないうちに撮影を終わらせなけばならない。ページ数を成立させるためのカット数とバリエーションをアタマにイメージしながら、畳み掛けるように撮る。


SONY α7 +RANK TAYLOR HOBSON Cooke Speed Panchro 75mm F2   マニュアル F2 1/200秒 WB:マニュアル ISO800 RAW


SONY α7 +RANK TAYLOR HOBSON Cooke Speed Panchro 75mm F2   マニュアル F2 1/200秒 WB:マニュアル ISO640 RAW

終盤には、わざと髪型を崩しながら撮影する。偶然出来る髪形が表情をより引き立てるからだ。そうして撮影は無事終了した。

山地さんと出会ってからもう4年が経った。その間に様々な現場で成長したんだなぁと思わずにはいられなかった。はっきり言って彼女に頼りっきりの撮影であった。



<山地まり(やまち まり)プロフィール>

1994年6月25日生まれ
2012年に素人女子高生として『週刊プレイボーイ』でグラビアデビューし現在
数多くのバラエティに出演中。2月末に公開予定の『血まみれスケバンチェーンソー』で映画デビューし本格的に女優としても始動。

○出演映画『血まみれスケバンチェーンソー』(VAP)が2016年2月末、『エミアビのはじまりとはじまり』(ビターズ・エンド)と、『SCOOP!』(東宝)が2016年秋公開予定。ファーストDVD&Blu-ray『Beach Angels 山地まりin 西表島』(VAP)が2016年1月20日(水)に発売予定。発売記念イベントが1月31日(日)に東京・秋葉原ソフマップにて開催予定。2016年4月20日発売DVD&Blu-ray『ドライブサーガ 仮面ライダーチェイサー』に出演(東映 )。そのほか最新情報は、公式Twitterをチェック!

<山地まり公式SNS>
Twitter【@yamachimari】   https://twitter.com/yamachimari
Facebook  https://www.facebook.com/yamachimari

<プロフィール>


上野由日路(うえの よしひろ)
山口県出身 1976年生まれ。六本木スタジオを経て独立。オールドレンズポートレートカメラマンとしてレンズごとのテイストを生かした表現を得意とする。オールドレンズの魅力を発信するためにワークショップ『オールドレンズ写真学校』やイベント『オールドレンズフェス』を主宰している。主な著書に『オールドレンズ銘玉セレクション』(玄光社)、『オールドレンズ×美少女』(玄光社)、『オールドレンズで撮るポートレート写真の本』(ホビージャパン)がある。

シネレンズ+美少女 CINEMA LENS+CHICS
http://raylow331.wix.com/cinemachics

上野由日路
http://raylow331.wix.com/raylowworks#

 

<著書>


オールドレンズ銘玉セレクション