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ソニーα7 オールドレンズ・クロスレビュー

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ソニーα7 オールドレンズ・クロスレビュー
公開日:2013/11/27

ソニーα7+Nikon NIKKOR-P AUTO 10.5cm F2.5 & LEICA SUMMICRON R 50mm F2

text & photo 大浦タケシ


オールドレンズの性能をフルに引き出せるか?!

筆者はフルサイズフォーマットに特別なこだわりや、偏った愛着のようなものは持ち合わせていない。普段使いのカメラも、多くの場合APS-C機もしくはマイクロフォーサーズ機である。しかし、ソニー「α7/α7R」の登場には、心躍らずにはいられなかった。これで所有するオールドレンズの性能をフルに引き出すことが可能になると思ったからだ。

筆者が購入したのは、2400万画素のα7。しかもボディのみである。有効3600万画素ローパスフィルターレスのα7Rにしなかったのも、純正レンズを購入しなかったのも”懐”の都合が大きい。だから“しなかった”のではなく“できなかった”といってよい。さらにもうひとつの理由は、いずれ純正のFEレンズを揃えたときのことを考えてのこと。α7はコントラスト方式のAFに位相差方式のAFを組み合わせたファストハイブリッドAFの採用に加え、シャッターのタイムラグの少ない電子先幕シャッターとしており、速写性に長けているからだ。これらのことについては、今回のレビューの本題から逸れてしまうためこれ以上触れないが、11月15日の発売開始日にα7はまさに体ひとつで我が家に嫁いできたのである。

カメラの初期設定もかねて、早速α7でオールドレンズを快適に使うための設定を行なったわけであるが、 日付以外、特別な設定が必要ないことには些か拍子抜けしてしまった。シャッターボタン横にあるC1(カスタム1)ボタンには、ライブビュー画像の拡大(5.9倍と11.7倍)を行うフォーカスセット機能がすでに割り当てられているし、純正レンズを装着しなくてもシャッターがいつでも切れる設定となっている。残された作業といえばバッテリーの充電だけ。買ったら特別な設定を行わなくても即オールドレンズでの撮影が楽しめるわけだが、そのようなユーザーも大切するソニーの懐の深さを感じさせる部分といえるだろう。


オールドレンズ使用時の操作性

α7+オールドレンズの撮影は、想像以上に快適だ。内蔵するEVFは高解像度・高コントラストであるため画像拡大時のMFでのピント合わせが容易。いわゆるピントの山が掴みやすく、しかも被写界深度の状況を把握しやすい。ピーキング機能を活用すれば、より素早いフォーカシングも可能で、その感度を3段階から選べるのも具合がよい。さらに拡大した画像は前ダイヤルと後ダイヤルで、直感的かつ速やかに移動させることができるのも便利だ(この操作は十字キーでも可能)。ホールドしやすいグリップや右手親指で操作しやすい位置に置かれた露出補正用のメカニカルダイヤルなども含め、オールドレンズ愛好家にとって不足のない操作性といってよいだろう。

オールドレンズをα7で楽しむにあたり筆者が唯一気がかりだったのが、電子先幕シャッターである。他の一部のカメラでは、電子先幕シャッター設定時に非純正レンズを使用すると、なぜか画面がケラることがあったからだ。しかしながら、α7では杞憂。試しに電子先幕シャッターをデフォルトのONの状態にして撮影を行ってみたが、画像のケラれの発生などなく問題はなかった。前述したように電子先幕シャッターは速写性に長けているので、積極的に活用しない手はないだろう。



【オールドレンズ実写】

 ライカ・ズミクロンR 50mmF2(Type1)

ライカ ズミクロン R 50mm F2(Type1)
いわゆる先細タイプといわれる初期型のズミクロン。古いながらも最新のレンズに迫る描写特性が魅力のレンズである。筆者の所有するRレンズは全てニコンFマウントに改造していたが、今回のα7の購入を機にRマウントに戻している。


ソニーα7+ライカ ズミクロン R 50mm F2(Type1)
翌日、日本を去るKarynaと隅田川沿いをゆっくりと散歩した。彼女は現在21歳。14歳のときに世界的に有名なモデルクラブに入り来日。それ以来公私にわたり写真を撮らせてもらっている。ふと見せる寂しげな表情のKarynaに、そっとα7を向けた。
α7・ズミクロンR 50mmF2・絞り優先AE(絞りf2.8)・WBオート・ISO100・RAW(Image Date ConverterでJPEGに生成)




ニコン・ニッコール-P オート10.5cmF2.5

ニコン ニッコール P AUTO 10.5cm F2.5
焦点距離がcm(センチ)表示のオールドニッコールは、筆者の大切なコレクションのひとつ。写真の10.5cmのほかに数本を所有している。シングルコートのレンズながら、ヌケがよいのも特徴で、結果デジタルの特性にも合っているようだ。


ソニーα7+ニコン NIKKOR P AUTO 10.5cm F2.5
2013年は東京と香港を拠点にモデルの仕事をしてきた静香。彼女は口にはしないが、香港では苦労もあったようだ。しかし、会うといつも陽気で元気、こちらが勇気づけられる。そんな彼女の素敵な横顔をオールドニッコールで写真に収めた。
α7・ニッコール-P オート10.5cmF2.5・絞り優先AE(絞りf4)・WBオート・ISO100・RAW(Image Date ConverterでJPEGに生成)
 
今回作例撮影で使用したオールドレンズは、ライカ・ズミクロンR 50mmF2とニッコール-P オート10.5cmF2.5。マウントアダプターはどちらもMetabornes製。

ズミクロンRは同レンズシリーズらしい渋い色調。作例では白人女性を撮影しているが、肌の色によく合っているように思える。シャープネスも高く、最新のレンズに迫る描写特性だ。ニッコール-P 10.5cmは50年以上も前のレンズ。シングルコートながら半逆光の撮影でもよく頑張っており、クリアでヌケのよい描写が得られる。ピントの合った部分のシャープネスは高く、ズミクロンRに負けず劣らずといったところだ。

いずれにしても本来の画角で撮影が楽しめるのは何よりうれしい。APS-C機やマイクロフォーサーズ機を使った撮影だと消化不良というか、釈然としないものをこれまで感じていただけに、何か胸に閊えたものが取れたように思えるほどである。

なお、α7の特徴としてJPEGとRAWとでは、絵づくりが若干異なる。JPEGはパッと見を優先したやや派手目な絵づくりで、RAWはやや落ち着いた印象となる(Image Date Converterで手を加えずに現像した場合)。今回掲載した作例はRAWで撮影し、ほぼ無調整でJPEGに生成している。JPEGの絵づくりが好みに合わなければ、このようにRAWで撮影し自分好みの仕上がりを模索するとよいだろう。


α7が手もとにきて2週間近く経つが、オールドレンズで撮ることをこれまで以上に楽しく感じている。それはやはりフルサイズセンサーであることが最大の理由で、何度も述べているようにレンズの性能が掛け値なしにフルに引き出せるからである。さらに視認性のよいEVFや、使いやすいインターフェースの搭載なども撮影を楽しくさせる要因のひとつにもなっている。今回はライカRレンズとオールドニッコールで撮影を行ったが、筆者の防湿庫にはキヤノンFD、ミノルタMDロッコール、Tマウントのミラーレンズなどが多数眠る。個人的には仕事で使うカメラではないので、無理して買ったところがあるが、これらのレンズたちが再び活躍できることを考えると、そう高くはない買い物だと思っている。



モデル:Karyna
モデル:池田静香

【関連サイト】
ソニー α7製品ページ
http://www.sony.jp/ichigan/products/ILCE-7/

マウントアダプター協力:
デジタルホビー(Metabones)
http://digitalhobby.biz/
 著者プロフィール
  大浦タケシ(おおうら・たけし)

宮崎県都城市生まれ。日本大学芸術学部写真学科卒業。紆余曲折した後、フリーカメラマンとなり、カメラ誌、Webマガジン等でカメラおよび写真に関する記事を執筆する。中古カメラ店巡りは大切な日課となっており、”一期一会”と称して衝動買いした中古カメラは数知れず。この企画を機に、さらに拍車がかかる模様。2006年よりカメラグランプリ選考委員。