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銀塩手帖

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銀塩手帖
フィルム、銀塩写真に関する情報を記録していきます。
公開日:2017/05/26

モノクロフィルム・レポート「BERGGER Pancro 400(ベルゲール パンクロ 400)」

photo & text 大村祐里子


高級バライタ印画紙を販売しているフランスの感材メーカー・BERGGER(ベルゲール)が、「Pancro 400」という新しいモノクロフィルムを発売しました。日本では、蔵CURAブランドのサンアイが、2017年4月から取り扱いを開始しています。

「Pancro」という名前は「パンクロマチック」に由来しています。パンクロマチックとは、可視光線に感光するモノクロフィルムを指します。

感度はISO400。増感・減感も可能。35mmフィルム(36枚撮り)が1,188 円 (税込)  。市販されているモノクロフィルムが1,000円前後であることを考えると、特に驚くような価格ではないといえます。モノクロ写真の渋さを彷彿とさせるような、えんじ色の落ち着いた雰囲気のパッケージが印象的です。

公式サイトによると、「Pancro 400」は、結晶粒の大きさが互いに異なる2つのパンクロ乳剤(臭化銀およびヨウ化銀)で構成されており、これにより、非常に広いラチチュードを持つフィルムに仕上がっているとのこと。

早速、愛機であるNikon New FM2に装填して撮影をしてみました。現像は、東京都大田区にある白黒写真現像所、アート・ラボにお願いしました。こちらの現像所では、Pancro 400の現像を受け付けています(※Pancro 400は、新しいフィルムのため、一部のラボやカメラ店では、現像を受け付けていないので、注文時にご確認ください)。仕上げはノーマルです。アート・ラボでは、何度もテストを重ねた結果得られた最適な方法でPancro 400を現像処理してくださいます。

現像済みネガを、フィルムスキャナー EPSON GT-X970でスキャンしたものを以下に掲載します。




以下、共通データ:Nikon NewFM2 + Ai Nikkor 28mm f/2.8S
浅いプールを泳ぐウミガメを上から撮影しました。波紋の美しさに惹かれてシャッターを切ったのですが、肝心の水面のディティールは非常に繊細に描写されていました。また、ウミガメもよく見ると黒つぶれしておらず、フィルムの階調の豊かさに驚きました。



海をバックに2匹の鳩を撮影しました。空や海のグレーのグラデーションが滑らかで気持ちが良いと思いました。








白い壁の前に咲く花を撮影しました。うしろの壁は白とびせず、きちんと質感が残っていました。



ツツジの花に寄って、最短撮影距離でシャッターを切りました。花びら、背景の玉ボケが柔らかく描写されていました。コントラストはあまり高くなく、どちらかというと「軟調」なフィルムだと感じましたが、それゆえ優しい雰囲気の一枚に仕上がりました。




群生する、ねこじゃらしのような草を撮影しました。グレーのグラデーションが滑らかに描写されるこのフィルムは、ねこじゃらしだけではなく、ワンちゃんやネコちゃんといった、フワフワとしたものの柔らかさを表現するのにぴったりなのではと思いました。







道端に落ちている割れた鏡を撮影しました。ややハードな被写体ですが、フィルムの軟調さにより、全体的におとなしい印象に仕上がりました。







強烈な日差しに照らされた沼の水面を撮影しました。カラーよりもモノクロの方が、その場に差し込む光を実感することができます。この1枚は、フィルムの階調の豊かさが、沼を照らす光を余すところなく描写しています。繊細なグレーのグラデーションが気持ち良いと感じました。



 

光や質感を大事にするフィルム


いろいろなシーンで撮影をしてみて、ハイライト部分とシャドウ部分の濃度の差が少ない「軟調」な印象のフィルムだなと思いました。ハイコントラストで「硬調」なフィルムに比べて描写のシャープさや抜けの良さといった点で劣りますが、軟調ゆえに、柔らかくて優しい、どこか古い絵を見ているような一枚に仕上がるなと感じました。

個人的には、T-MAX400やJCH StreetPan 400のようなハイコントラストでバッキバキに写るフィルムが好きなので、普段、このような軟調なフィルムを使うことはほとんどありません。しかし、それだからこそ、「Pancro 400」の絵画的で控えめな描写はとても新鮮でした。

被写体の些細な部分まですくい上げる「Pancro 400」を使って写真を撮ることで、光や質感を大事にするというモノクロの“初心”に立ち返れました。

立体感やインパクトを大切にする方には物足りないかもしれませんが、ひとつずつ、丁寧にモノクロの世界と向き合いたい方には、イチオシのフィルムです。

今回はスナップばかりですが、柔らかい描写力を生かしてポートレートにも十分使えるのではないかと思います。


【使用機材】
カメラ:Nikon NewFM2
レンズ:Ai Nikkor 28mm f/2.8S


メーカーサイト
CURA蔵(サンアイ)
http://www.cura-3i.com/
http://cura-3i.com/selection/film/bergger-pancro/
 著者プロフィール  
大村 祐里子(おおむら ゆりこ)

1983年東京都生まれ
ハーベストタイム所属。雑誌、書籍、アーティスト写真の撮影など、さまざまなジャンルで活動中。雑誌連載:『フォトテクニックデジタル』にて「身近なものの撮り方辞典」、『写ガール』にて「読書感想写真」、『デジタルカメラマガジン』にて「カメラおじさんを探して三千枚 」を連載中
http://shutter-girl.jp/
Twitter:@Holy_Garden
 
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