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新製品レビュー

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新製品レビュー
公開日:2018/03/01

ハッセルブラッドのVレンズを富士フイルムGFX 50Sで楽しむ

Photo & text 大浦タケシ

GFX 50Sにマウントアダプターを介してハッセルブラッドVシステムレンズ(CFE80mmF2.8)を装着した状態。フランジバックが長いことが分かる。

富士フイルムGFX 50Sが登場して約1年。国産唯一の中判ミラーレスデジタルカメラとして圧倒的な人気を誇る。そして、このところ散見されるのが、GFX 50Sに対応するマウントアダプターである。それは中判用の交換レンズに留まらず、35mm用の交換レンズに対応するものもあり、想像以上に多彩。マウントアダプターを使うことで、レンズの選択肢が増える。また、中古市場でレンズは多くあり、価格も比較的リーズナブルだ。
今回、宮本製作所が製造販売するRAYQUAL(レイクォール)ブランドのGFX 50S用のマウントアダプター(ハッセルブラッドVシステムレンズ対応)とハッセルブラッドCFE80mmF2.8の組み合わせをレビューする。




レンズ側から見たマウントアダプター。マウント部の研磨の状態がよく分かる。いかにも精度の高そうな仕上がりだ。レイクォールのマウントアダプターは全て日本製。


純国産を強くアピールしているように、レイクォールのマウントアダプターは全て日本にある自社工場で作られる。今回のGFX 50S用のマウントアダプターも例外ではなく、その証として工作精度は極めて高い。特にマウント部には研磨処理の手抜きや粗さ、歪みのようなものなど一切見当たらない。それはマウントアダプターをカメラに装着したときや、レンズをマウントアダプターに装着したときにハッキリと認識できる。装着のためにマウント同士を合わせ回転させると密着感がありながら驚くほどスムースに動く。その感触は官能的と言ってもよいほどだ。さらに装着後ガタツキも一切ない。つくりの粗いマウントアダプターの場合、回転させたとき極端に重かったり軽かったり、あるいは回転の重さにムラがあるものも少なくなく、装着後のガタツキが酷いものも存在する。レイクォールのマウントアダプターはそのようなマウントアダプターとは一線を画した次元の異なるものである。

マウントアダプターは内面反射が気になるものも多いが、それに関しても不足はない。鏡筒の内側は段差成型であるのは当然だが、このハッセルブラッドVシステムレンズ用の場合では、鏡筒中央部とカメラ側に遮光板(フレアカッター)を設置。特にカメラ側の遮光板は、カメラの電子接点を隠す役割も担っており、徹底したものとしている。実際、掲載した作例を見てもらえばわかるとおり、ヌケがよくコントラストの高い描写が得られている。



三脚座を備えているのもありがたく思える部分。ハッセルブラッドVシステムレンズはレンズシャッターを内蔵していることもあり大きく重いものが多い。カメラ側の三脚穴では三脚に装着したときバランスが悪く不安定になりやすい。Vシステムレンズのなかでも最も小さい部類に入るCFE80mmF2.8ですら三脚を使用したとき三脚座がマストに思える。この三脚座は固定式であるが、手持ち撮影でも邪魔になるようなことはほとんどない。なお、GFX 50S用のマウントアダプターに三脚座が備わっているのは、今回のハッセルブラッドVシステムレンズ対応のもののほか、ペンタックス645対応の2本としている。


三脚座は固定式。取り外すことはできない。重量のあるハッセルブラッドVシステムレンズでは三脚座はマストといえるだろう。


撮影に関しては、レンズに備わる手動絞りレバー(手動絞りボタン)を活用したい。開放でピントを合わせた後、手動絞りレバーで絞り込む。CFEレンズの場合、設定した絞り値に固定しておくことも可能だ。


ハッセルブラッドVシステムレンズを取り外すには、マウントアダプターのレンズ取り外しボタンを押して行う。


カメラ側の設定としては「操作ボタン・ダイヤル設定」メニューにある「レンズなしレリーズ」をONにしておくことも忘れないように。カメラの撮影モードは、通常の撮影であれば絞り優先AEで問題ないはずだ。ちなみに作例撮影で使用したCFE80mmF2.8をGFX 50Sに装着したときの画角は、フルサイズ判換算で約63mmに相当。焦点距離50mmの場合だと39.5mm相当、150mmだと118.5mm相当の画角となる。


マウントアダプターを使用するにあたってのカメラ側の設定としては、「操作ボタン・ダイヤル設定」メニューにある「レンズなしレリーズ」をONにする。


レイクォールブランドのGFX50S用マウントアダプターは、今回のハッセルブラッドVシステムレンズ用のほか、ペンタックス645レンズ用、キヤノンFDレンズ用、ニコンFレンズ用(Gタイプ除く)、オリンパスOMレンズ用、ライカRレンズ用、コンタックス/ヤシカマウントレンズ用、ペンタックスKレンズ用(DAタイプ除く)が現在リリースされている。35mm用のレンズの場合周辺光量が厳しいことも多いかと思うが、イメージサークルギリギリまで楽しんでみると面白そうだ。何よりつくりのよいマウントアダプター故、所有する喜びも大きいはずだ。
 

【作例】


FUJIFILM GFX 50S + Hasselblad Planar CFE80mmF2.8T*
f5.6 1/280 ISO100

フィルムシミュレーションは「プロビア」。ハッセルのカメラにフィルムのプロビアを装填して写したら、このような絵が撮れるのだろうか。



FUJIFILM GFX 50S + Hasselblad Planar CFE80mmF2.8T*
f4.0 1/60 ISO125 -3.3

「アクロス」にYeフィルターをシミュレートしている。往年のフィルムを仕上がり設定のひとつとしているのもフィルムメーカーのカメラらしいところ。



FUJIFILM GFX 50S + Hasselblad Planar CFE80mmF2.8T*
f2.8 1/60 ISO160 -3.3

CFE80mmF2.8の絞り羽根は5枚。そのため絞り開放以外での点光源のボケは、五角形となってしまう。美しく思うか思わないかはあなた次第。



FUJIFILM GFX 50S + Hasselblad Planar CFE80mmF2.8T*
f8 1/850 ISO100 +3.3

GFX 50Sのセンサーは44×33mmであるため、フォーマットが6cm×6cmのハッセルブラッドVシリーズカメラで使ったときにくらべ画角は狭くなる。80mmの場合、(焦点距離が)ちょっと長めの標準レンズといったところ。



FUJIFILM GFX 50S + Hasselblad Planar CFE80mmF2.8T*
f5.6 1/3500 ISO100 -0.67

フレアの発生しやすい条件での撮影だが、ツァイス独自のT*コーティングに加え、アダプター内部で巧みに内面反射を抑えているためすっきりとヌケのよい描写だ。



FUJIFILM GFX 50S + Hasselblad Planar CFE80mmF2.8T*
f4 1/500 ISO100

質感の高い描写はツァイスレンズならでは。フィルムシミュレーションは「アクロス」を選択している。



FUJIFILM GFX 50S + Hasselblad Planar CFE80mmF2.8T*
f4 1/480 ISO100 +0.33

パッと見を重視し彩度とコントラストの高い「ベルビア」にフィルムシミュレーションを設定。ツァイスレンズとのマッチングもよく、美しい画が得られた。



FUJIFILM GFX 50S + Hasselblad Planar CFE80mmF2.8T*
f4 1/1500 ISO100 -0.33

画角は標準レンズよりもちょっと狭いぐらいだが、実焦点距離は80mmとなるので、ちょっと絞っても思いの外ボケる。ピントは、ネコに合わせている。



FUJIFILM GFX 50S + Hasselblad Planar CFE80mmF2.8T*
f2.8 1/800 ISO100

記憶だと絞りは開放のF2.8。解像感やコントラストは開放絞りであることを考えると上々だが、ボケ味はややうるさく感じられる。



FUJIFILM GFX 50S + Hasselblad Planar CFE80mmF2.8T*
f2.8 1/60 ISO125

今回の撮影のほとんどはEVFを使っているが、画面表示は記録する全体の画像と、選択した部分の拡大画像を一度に表示する「2画面」にした。マニュアルフォーカスによるピント合わせでは使い勝手がよい。


<関連サイト>
富士フイルム GFXシステム
http://fujifilm.jp/personal/digitalcamera/gfx/

RAYQUAL
http://www.rayqual.com/

FUJI GFX 50S 用マウントアダプター
http://www.rayqual.com/GFX.html


 
 著者プロフィール
  大浦タケシ(おおうら・たけし)

宮崎県都城市生まれ。日本大学芸術学部写真学科卒業。紆余曲折した後、フリーカメラマンとなり、カメラ誌、Webマガジン等でカメラおよび写真に関する記事を執筆する。中古カメラ店巡りは大切な日課となっており、”一期一会”と称して衝動買いした中古カメラは数知れず。この企画を機に、さらに拍車がかかる模様。2006年よりカメラグランプリ選考委員。
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