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中古カメラ 一期一会

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中古カメラ 一期一会
ショップのショーケースにならぶ中古カメラたち。中古カメラは1点モノで、同じ物は2つと無い。。。いまこの時を逃したら、目の前のカメラとは2度と出合えないかもしれない。写真家がショップを彷徨いながら出合った魅力的なカメラたちを紹介する。
公開日:2013/08/08

中古カメラを知るためのキーワード【コンディション編】

photo & text 大浦タケシ


中古カメラの商品のコンディション(程度・状態) を表す専門用語なるものがいくつか存在する。当CAMERA Fanの商品ページでもしばしば登場する。もともとは中古カメラの業者間で通じていた用語やカメラ店の値札などに書かれていたものが、専門用語として定着したようである。そのためだろうか、簡略化された言葉が多く、一見何のことか分かりにくいものも少なくない。もちろんそのような用語を知らなくても、中古カメラ店ではスタッフが懇切丁寧に教えてくれるが、知っていたほうがよりスムーズに商品の状態を理解でき、何より友人たちから“通”に思われるはずである。
 ここでは中古カメラのコンディションを表す代表的な用語をいくつかピックアップし、それぞれを解説していくことにしたい。




【アタリ/当り/小当り】
カメラのボディや交換レンズの鏡胴などに、本来はない凹みがあること。ほとんどの場合、ぶつけたり落としたりして何かに“当った”ことでできる。一眼レフの場合はペンタ部をはじめとするトップカバーに、交換レンズの場合は鏡胴先端などに「アタリ」が見受けられることがある。この場合、衝撃が加わったことで機能的に不具合が発生している可能性があるので、目視や動作確認のほか、カメラ店の販売員にも訊くようにしよう。


ペンタ部のエッジに凹みがある(エッジの両脇が白く光っている部分)。ペンタ部前面の下部にも凹んでいるところが。このような場合は動作確認してみて、異常がないか必ずチェックしよう。



交換レンズの鏡筒先端もアタリがあるものが多い。多くの場合、落としたことでできるが、フィルターがはめられれば問題となることは少ないだろう。ただし、レンズが偏芯していることもあるので、実写確認することが好ましい。


【バルサム切れ】
レンズ同士を貼り合わせている樹脂がくもったり、剥がれてしまう現象のこと。古くは“バルサム”といわれる天然樹脂を貼り合わせに用いていたため、「バルサム切れ」というようになった。比較的古いレンズで見受けられることが多いが、合成樹脂を使用するようになった現代のレンズでもしばしば発生する。バルサム切れは、重症となると写りにも大きく影響してしまう。修理はできないわけでもないが、手間がかかり費用も嵩むため、現実的でない場合が多い。「バル切れ」とか、単に「バルサム」という言い方もされる。

見事なバルサム切れの発生した引伸しレンズ。バルサム切れはこのような現れ方のほか、小さな点がいくつも発生することもある。



【液漏れ】
本来液漏れは、乾電池に過度の化学反応が起き、電解液が外に流れ出てしまうことをいう。この現象は、過放電、逆電流、長時間の通電のほか異種混用や新旧混用などで起きる。中古カメラの場合は、流れ出た電解液によってバッテリーボックス内の金属などが腐食していることを示す。長期間、電池を入れっぱなしで未使用だったカメラに発生することが多い。状態によっては問題ないこともあるが、腐食がすすんでいると通電しないばかりか、カメラ内部の機構に重大な影響を与えることも多い。カメラのほかモータードライブやストロボなどを購入する際は、必ずバッテリーボックスの状態もチェックするようにしよう。


液漏れで金属部分の腐食したバッテリーボックス。写真のものは比較的軽症だが、腐食によっては電流が通電しなくなったり、金属部分が溶けて無くなることも。



【カビ/カビあと/カビ痕】
交換レンズでやっかいなのがカビ。夏場は高温多湿となる日本では、保存場所によってはあっという間にレンズにカビが生えてしまう。付着初期のカビであれば多くの場合、清掃でキレイに取れるが、コーティングまで浸食するようなカビだと、その痕が残ってしまう場合がほとんどなので、やっかいだ。 「カビ」はその名のとおりカビが生えている交換レンズを示すことが多く、「カビあと」、「カビ痕」などは、清掃したがカビの浸食でその痕が残ってしまっていることを示す。ちなみにカビの生えた交換レンズは、他の交換レンズとなるべく隔離して保管したほうが安全だ。


ちょっと分かりづらいが、黒い点のようなものがカビ。そこから触毛のようなものが広がり、レンズを侵す。中古の交換レンズを購入の際はよく確認しよう。



【コバ落ち/コバはげ】
レンズの端面(切り口)をコバといい、通常その部分は墨や黒い光学用塗料などが塗られ、鏡筒に組み込まれる。しかし、何らかの要因で墨が劣化し、円周状に白い輪っかや白いブツブツが現れることを「コバ落ち」あるいは「コバはげ」などという。コバ落ちは見た目にあまりいいものではないし、中古のレンズ市場では欠点として扱われる。しかし、筆者の経験値からいえば描写に大きく影響することは少ないように思える。そのためコバ落ちしている中古の交換レンズを安く手に入れるのもアリといえるだろう。


見事にコバ落ちしている交換レンズ。広角レンズの場合、正面から見てコバ落ちしていることがすぐに分かるが、標準レンズや望遠レンズは鏡筒の奥をのぞくようにして見ると分かりやすい。



【クモリ】
一般にレンズが透明クリアでなく、曇っている状態のことをいう。極薄いクモリなら描写にさほど影響しないが、多くの場合、解像感やコントラストの低下などを招く。清掃しても取れないことがほとんどで、最終手段としては専門業者に依頼して、くもっているレンズを交換するか、研磨を行うしかない。どうしても欲しい交換レンズにクモリがある場合、可能ならば店頭で実写確認させてもらうとよいだろう。


クモリは写真のような場合のほか、うっすらとレンズ全体に発生したり、レンズ周辺部に発生するなど様々。古い交換レンズの場合、研磨で対応するしかないが、費用がそれなりに嵩むことを覚悟したい。


【モルト】
ミラーボックス内や裏蓋を開けたときの上下の溝などに貼られている黒いスポンジのような素材をモルトプレーンと言い、遮光や緩衝材の役割をする。「モルト」とは、それを略した言葉。「モルト劣化」「モルト不良」などと記載されていることがある。一般にモルトプレーンは、経年劣化(加水分解)により溶けやすいが、カメラのモルトもそのように劣化し、やがて機能しなくなる。裏蓋部分のモルトプレーンの交換は、初心者でも比較的簡単に行えるので、カメラ店でモルトプレーン単体を購入して自力でトライしてみてはどうだろうか。




 モルトプレーンが貼られている場所としては、裏蓋を開けたときの上下の溝やミラーボックス内など。ペンタプリズムとトップカバーの隙間に貼られていることもあるが、このモルトプレーンが劣化するとペンタプリズムを腐食させてしまうこともある。



【スレ】
擦れたような浅い傷をいう。塗装が剥がれていることを指す場合もあり。写りに影響することが無い場合がほとんどである。真鍮製のカメラの場合、特にブラックボディはエッジにスレがあると金色の地金が現れ貫禄あるものとなる。一般に「スレ」の多いものは無いものにくらべ安くなるので、あえてスレのあるカメラを狙うのも悪くはないだろう。プラスティックボディのカメラの場合、長年の使用で本来とは異なるテカテカとした光沢感になることがあるが、それを「テカリ」ということも憶えておこう。テカリによって「貫禄」が出てこないのはプラスティックボディカメラの悲しい本質か。


スレでエッジの塗装がはげ、真鍮の地金が現れている。同じスレでも、このようなものであればむしろ貫禄があってよい。
 著者プロフィール
  大浦タケシ(おおうら・たけし)

宮崎県都城市生まれ。日本大学芸術学部写真学科卒業。紆余曲折した後、フリーカメラマンとなり、カメラ誌、Webマガジン等でカメラおよび写真に関する記事を執筆する。中古カメラ店巡りは大切な日課となっており、”一期一会”と称して衝動買いした中古カメラは数知れず。この企画を機に、さらに拍車がかかる模様。2006年よりカメラグランプリ選考委員。
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