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カメラアーカイブ

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カメラアーカイブ
巷に溢れる新製品情報。そんな情報の波に埋もれてしまっている魅力的なカメラたちがある。メーカー開発者たちが、心血を注いで創りだした名機の魅力を蓄積していく。
公開日:2013/09/30

ニコン F3 シリーズ

photo & text 赤城耕一

報道カメラマンが選んだスーパーニコン

ニコン F3(1980年)



2000年に販売終了となるまで約20年もの間、現役でありつづけたニコン。それがF3である。昨今は朝ドラの影響もあってか1980年代が見直されているけど、まぎれもなくF3こそが80年代を代表する名機ということになろう。デザインはジウジアーロ。F2系カメラのように、メーターはボディ内に内蔵されたため、スマートになっているけど、真鍮に覆われた外装はかなり頑丈で、各部の作り込みもいい。とくにフィルム巻き上げ時のトルクの軽さには感動する。

登場時ははたしてプロが使うフラッグシップ機にAE搭載は必要なのかどうかという話もあったのだけど、カメラの発展はイコール自動化でもあるわけだから当然の仕様であろう。ニコンF2にもフォトミックS、SB、ASにサーボEEによる自動化が計られたくらいである。使う人が少ないにもかかわらず、こうしたアクセサリーを用意したことはちゃんと将来を見据えているんですよ、とニコン自身がアナウンスしているようにも感じるわけだ。

それよりもF3はバッテリーがないと動作をしないということのほうが問題だったと思う。ライバルのNew F-1は高速秒時にはメカニカルで動作するハイブリッド方式だったが、F3は緊急作動シャッターしか存在していない。

ま、このデジカメ時代ならバッテリーは必然だから、これからF3を入手して、何らかの写真作品を創ろうという意欲のある人には問題にならない話でもあろう。

内蔵のTTLメーターは非常に正確だが、中央部重点オンリーであるから、被写体の反射率や色には気を遣う必要はある。正確すぎる、測光域が比較的狭いことで、AE任せで撮影するのは少し不安であったし、プロは気まぐれに使用した程度だろう。マニュアル測光時には設定シャッター速度の脇に+(プラス)-(マイナス)が表示されるという味気のないもので±(プラスマイナス)が同時表示された時に適正露出であると表示される。

F3はF5の時代まで現役であったわけだが、私の感覚では、もしデジタルカメラが席巻する現在の状況のようにならなければ、まだ現役で発売されていたのではないかと思うくらいで、機能的にはシンプルでたいへん使いやすいカメラである。

F3はとくに報道関係の分野で多く活躍したが、それがプロによって堅牢性が認められたことの裏付けにもなった。ただ、シンクロスピードが遅かったこともあり、常時ストロボを使うような現場仕事では不利になるので、1/250秒の高速シンクロが可能なニコンNew FM2、FE2にお株を奪われた感もあるが、ここぞという時には絶対的に頼りになる相棒であった。いまだニコンにおいてメンテナンスを受け付けていることも評価対象である。(メーカーサポート期限:2016年7月まで)


シャッターボタン基部が電源スイッチ。
シャッターダイヤル基部がセルフタイマーレバー。赤点で動作する。自動復元ではない。
最高速1/2000秒。シンクロ速度は最高1/80秒。横走りのフォーカルプレーンシャッター搭載のカメラとしては高スペックで、シャッターも自社内での組み立てだった。

不変のFマウント。Aiニッコールを装着するのが基本だけど、1時の方向にあるAi連動ピンは跳ね上げ方式で、Ai化前の旧ニッコールレンズも装着できる。この場合は絞り込み測光となる。
初期のF3ではファインダーの腐食があるので商品購入時には注意。交換ファインダーは中古市場でも見つけることができる。


ニコン F3P 報道機関向けモデル(1983年)



一般的には存在していたことさえ公表されなかったのがこのF3Pである。Pはプロフェッショナルか、プレスの略であろうか。いわばタフネスに使用されることを前提に製造された特注品である。

通常のF3との違いは外観でみると、ファインダーはチタン外装、アタマには汎用規格のホットシューを増設、シャッターダイヤルのかさ上げ、セルフタイマーの省略、シャッターボタンのシーリング、フィルムカウンター窓を丸型にして、文字色を白にしたこと。ISO感度窓にカバーがつけられたこと、裏蓋開閉ロックレバーの省略など。ファインダースクリーンはマットのB型が標準仕様として採用されていた。

この程度の改造でさらにタフになったのかどうかはわからないけど、プロが使わないものは外してしまえとばかりシンプルに仕上げられているのは評価できる。ただ、シャッターボタンにシーリングされたことでレリーズ穴がなくなり、セルフタイマーもないのだから、ボディ単体で使用する場合は長秒時の撮影には困ることになる。この場合はモータードライブを装着して、リモートシャッターを使えということなのだろうか。
他にも、イルミネーターにスイッチを設けるなど、個別に特別改造を施されたF3は各種ある。



ホットシューは汎用規格だから各種スピードライトが装着できる。レンズ光軸上にあることも評価できる。ただし、FE2用などのスピードライトを装着してもTTL自動調光撮影はできない。左下の接点は専用ストロボを使用した時のチャージランプ点灯用である。
防滴用にカバーがつけられたISO感度表示窓。DX接点がないから感度は手動で合わせる必要がある。上部の専用シューにはF3専用スピードライトを装着するとTTL自動調光撮影が可能だが、プロはほとんど使用していないと思う。

前面からみるとシャッターダイヤルのかさ上げ、セルフタイマーレバーがないことがわかる。手袋をしていてもダイヤルを回しやすくした配慮だろうか。

カウンター窓は◯型に変更。数字も白になったのは暗い場所でもカウンター数字を見やすくするためである。


ニコン F3P+モータードライブMD-4



MD-4はF3専用のモータードライブ。電源は単三8本かニッカド電池をする。一体型デザインなので、たいへん扱いやすい。背面はやや傾斜しており、カメラを構えた時に顔にボディが当たらないような配慮なのだろうか。フィルム巻き戻しももちろん自動化されている。
この写真ではコマ変速機も装着している(モータードライブ下部)が、これはF3AF使用時にAFの動作に整合させるために作られたアクセサリーである。




ニコンF3 フィルムの装填方法



ニコンF3 モータードライブMD-4の装填方法


ニコンF3 モータードライブMD-4装着時のフィルムの装填方法


ニコン F3T ブラックボディ(1984年)



F3Tは外装をチタンとしたもの。仕様そのものはF3HPと変わらないが外観ではフィルムカウンターの数字は白になっている。内部でもシールドされた部分があるといわれているが確認していない。ブラックボディは最後までラインアップされていたようだ。



ニコンF3T フィルムカウンター



ニコン F3T シルバーボディ(1982年)



F3Tシルバーはシャンパンカラーが美しいが、1988年6月に販売終了になっている。キズがつきやすく汚くみえるからだろうか、理由はわからないがけっこう今では印象的なカメラにみえる。



禁断のAF化 ニコンF3AF(1983年)



F3が登場した時、ファインダーを外した内部に新しい電気接点があることがわかり、このことでけっこうな騒ぎとなった。発売時には接点に対応しているファインダーがなかったからだ。これはF3AFの専用ファインダーDX-1をノーマルのF3に装着した時に使用するフォーカスエイド用の電子接点であった。

F3AFは初のニコン一眼レフのAF化を達成しているが、高価だったこと、AFの実用性がいまひとつだったこともあり、途中でラインアップから消えている。いわば試作機がそのまま世の中に出てきてしまったようなものである。構造上ファインダースクリーンはファインダー側にあり、ファインダー視野率も少し低い。なおこのDX-1はF3Pには装着できない。

専用のF3AF用AFニッコール80ミリF2.8SとAFニッコール200ミリF3.5Sの性能も抜群。なぜかカニの鋏まで装着されており、F2フォトミックなどに使用してもTTL開放測光の使用が可能だった。またこの2本のレンズはF-501とF4に装着しても完全なAF動作を可能としている。とにかくカネをかけた感があり写りも完璧。面白いのはこのF3AFはレンズ内モーターを採用していたこと。後のニコンが基本としていたボディ内モーターによるAF駆動とは異にしている。



F3専用アクセサリー


ガンカプラー AS-7
TTLガンカプラー AS-17

ガンカプラーは汎用のストロボを装着するアクセサリーだ。ただしF3のAS-4の場合は巻き戻しクランク上に装着するため、クランクの回転がみえず不評
だった。そこでAS-7ではボディ前に位置を変えて、シンクロターミナルのネジを利用して固定し、ここに汎用のストロボを装着できるようにしている。また
外周のリング部分にはF3専用のストロボも装着できる。この場合はTTL自動調光が可能だ。
AS-17は、SB-28などのニコンスピードライト
をF3でTTL自動調光させることができるガンカプラー。F3専用のスピードライトが先に製造中止となったため開発されたようだ。面白いのはわずかな範囲
だが、ストロボの光量調整が可能なこと。台座の部分は回転可能である。


Limitedモデルについて
先に一般には存在すら公にならなかったと書いたF3Pだが、1994年に同種モデルがF3 Limitedとして限定数が一般発売される。F3Pとの違いは“Limited”の刻印があることのみ。プロストラップに似たデザインの専用ストラップを同梱して発売された。
F3Pの存在を知ったアマチュアから要望があったのかどうか、あるいはF3Pの在庫やパーツが多くあったために、在庫整理をしたのかどうかはわからない。
前例として報道用に供給されたF2チタンが“Titan”名が刻印されて一般にも発売されたことがある。中古市場ではLimitedのほうが程度の良いものが多く、また数が少ないために高価で取引されているようだ。


ニコンF3H(ハイスピード)について(1996年)
さらにF3には、報道機関向けに開発されたF3Hが存在する。秒間13コマの高速連写を可能にしたモデル。メーカーサイトでは開発背景などが詳しく紹介されている。

メーカーサイトNikon|知られざるニコンの歴史|ニコン F3H(ハイスピード)
http://www.nikon.co.jp/channel/recollections/25/index.htm  


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赤城耕一
東京生まれ。出版社を経てフリー。エディトリアルやコマーシャルの撮影のかたわら、カメラ雑誌ではメカニズム記事や撮影ハウツー記事を執筆。戦前のライカから、最新のデジタルカメラまで節操なく使い続けている。

主な著書に「使うM型ライカ」(双葉社)「定番カメラの名品レンズ」(小学館)「ドイツカメラへの旅」(東京書籍)「銀塩カメラ辞典」(平凡社)

ブログ:赤城耕一写真日録
 
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