TOP > コンテンツ一覧 >

SHUTTER GIRL WORLD

22
SHUTTER GIRL WORLD
シャッターガールこと大村祐里子が、光と闇を描いていきます。
公開日:2015/01/06

セルフポートレート〜ワタシのオモテの顔・ウラの顔〜

photo & text 大村 祐里子

Rolleiflex 2.8C Xenotar+rolleinar 2 (F2.8、1/8、ISO400、KodakポートラNC 400)

「この写真に人間が入ったらどうなるのかな」


写真を始めて間もない頃、ふとそんなことを思いました。

カメラを買ったばかりの私は、身の回りのモノや風景だけを撮影していて、人間を撮ったことがありませんでした。そして、当時は、モデルさんはおろか、カメラ友達もほとんどおらず、被写体になってくださるような方は周りに一切いませんでした。

となると、必然的に、写真に写ってくれるのは「自分」ということになります。

そこで、私は「この写真に人間が入ったらどうなるのかな?」という自らの疑問に答えるため、写真の中に自分を入れてみる、という作業を開始したのです。



Rolleiflex 2.8C Xenotar (F4.0、1/30、ISO400、KodakポートラNC 400)

最初は、カメラを持ったままの自分がなんとなくそこにいる、といった写真を撮っていました。そうか、こんな感じになるのか、と思いました。これで、「この写真に人間が入ったらどうなるのかな?」という疑問は、解決されました。

しかし、撮り続けるうちに、新たな気持ちが芽生えてきました。自分を撮る作業は誰にも迷惑がかかりません。無茶もできます。ということで、「やりたいことをやってみる、実験的な場にしよう」という思いが強くなってきました。

「光がきれい!」と感じた場所で、カメラを地面に置いてセルフタイマーを使い写真に写ってみたり、曇ったガラスの隙間から顔を出してみたり、お風呂のお湯の中で、足の指だけを出した状態で長時間露光をしてみたりと、今考えてみると大変アホらしいことばかりなのですが、私は「やってみたい」と思ったことをどんどんどんどん、やり続けたのです。




ROLLEICORD IV Xenar 75mm F3.5(F8.0、1/30、ISO400、KodakポートラNC 400)

すると今度は、そのときの自分の気持ちを、写真を見てくださる方に伝えるにはどうしたらいいのかなと、「表現方法」について考えるようになりました。たとえば、さみしい気持ちを伝えるには、モノクロが良いのか、ハイコントラストが良いのか、ポラロイドを使った方が良いのか、光の当て方はどのようにしたら良いのか……。

ワタシのオモテの顔・ウラの顔

そんなことを繰り返し、己の内面について深く掘り下げる機会が増えてくると、実は、私の写真の生涯のテーマは「2面性」だということに気が付きました。
自分のオモテの顔・ウラの顔が写真の中に同居しているような一枚が撮れたときが、最高に気持ち良かったのです。「ああ、大村祐里子の写真のテーマはこれだったのだな」と思いました。そして、2012年に「2」というタイトルのセルフポートレート写真集を制作しました。

いまは、幸せなことに、被写体になってくださる方がたくさんいるのでセルフポートレートを撮ることはほとんどなくなりました。ですが、現在の私のベースとなっている“チャレンジ精神”や、“表現手法”、“写真のテーマ”のほとんどは「自分を撮る」という作業の中で確立したように思います。

そういえば……

自分でも驚いたのですが、数日前に、なんとなく「また自分を撮ってみようかな」と思ったのです。もしかしたら、初心を思い出せ、という何らかの合図なのかもしれません。



ROLLEICORD IV Xenar 75mm F3.5(F3.5、1/15、ISO400、KodakポートラVC 400)



Rolleiflex 2.8C Xenotar+rolleinar 2 (F2.8、1/8、ISO400、KodakポートラNC 400)



Rolleiflex 2.8F Xenotar (F5.6、1/15、ISO800、Kodakポートラ800)



Rolleiflex 2.8C Xenotar (F4.0、1/8、ISO3200、ILFORD DELTA 3200)


MAMIYA C330 SEKOR 105mm(F4.0、バルブ(2分)、ISO100、Kodak Ektar100)



Zenza Bronica S2 Black+ Nikkor 75mm F2.8(F2.8、1/8、ISO3200、ILFORD DELTA 3200)



Zenza Bronica S2 Black+ Nikkor 75mm F2.8(F4.0、1/8、ISO800、Kodakポートラ800)





MAMIYA C330 SEKOR 105mm(F4.0、1/15、ISO3200、ILFORD DELTA 3200)
 著者プロフィール  
大村 祐里子(おおむら ゆりこ)

1983年東京都生まれ
ハーベストタイム所属。雑誌、書籍、俳優、タレント、アーティスト写真の撮影など、さまざまなジャンルで活動中。
著書「フィルムカメラ・スタートブック」、「身近なものの撮り方辞典100

ウェブサイト:http://omurayuriko.jp/
ブログ:http://shutter-girl.jp/
Instagram:@yurichayuricha
 
 

大村祐里子・著書


身近なものの撮り方辞典100


フィルムカメラ・スタートブック