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ニュース&トピックス
公開日:2015/05/25

高精細フィルムスキャナー Hasselblad Flextight アガイ商事・レンタルルームサービス

photo & text 大浦タケシ


フィルムをスキャンした画像を見て、その精度や画質に不満を感じたことはないだろうか。筆者もフラッドベッドタイプのフィルムスキャナーを使い、これまで幾度となくフィルムをデジタルデータにしてきたが、総じてフィルムの平面性に乏しく、さらに階調再現性も不足しているように思えてならなかった。しかし、ハッセルブラッドがリリースするフィルムスキャナー・Flextight(フレックスタイト)を知ってからというもの、フィルムのスキャンに関してはこのスキャナーに絶大な信頼を寄せている。特に先に上げた平面性と階調再現性に関しては他のスキャナーを大きく凌駕し、フィルムで撮り続けるモチベーションを上げてくれる。

ただし、このフィルムスキャナーの欠点は非常に高価なことだろう。Flextight X5で約268万円、下位モデルのFlextight X1でも約170万円。その価格はちょっとした国産車が楽に買えてしまうほどで、カメラ関連の周辺機器としては、アマチュアには手の届かないものと言わざるを得ない。さらにこのフィルムスキャナーを備えるラボも少ない。ちなみに、筆者は古くから付き合いのある友人がFlextightを所有しており、いつも無理言って借りているが、それはある意味恵まれたほうといえる。

今回ご紹介するのは、スタジオ用の大型ストロボ・ブロンカラーを扱うアガイ商事のレンタルルームだ。最新のFlextight X5を備え、プロからアマチュアまで、スキャンデータの画質にこだわるフィルムユーザーの間で人気を博しているという。





池袋にあるアガイ商事ショールームの一角にそのレンタルルームはある。一坪ほどのスペースだが、ハッセルブラッドFlextight X5のほかアップルのMac mini、27インチのカラーマネージメントモニター・EIZO ColorEdge CG276を備える。さらにA3ノビ顔料プリンター・エプソンPX-5Vも設置されており、スキャンのみならず、プリント出力まで可能としている。(プリントは別途料金)

フラッドベッドタイプのスキャナーしか知らない者にとって、Flextightは特異な形に写るはずだ。上に伸びた縦長のスタイルは、他のどのフィルムスキャナーとも異なる。これにはいくつか理由があって、まず画像読み込み用のCCDをスキャナー内の上部に備えるため。また、スキャン時には正面下部の“テーブル”に置いたフィルムホルダーを、本体内部にあるローラーが巻き取り上方向に送り出すが、そのスペースを確保するためである。
「実は、このローラーの部分がFlextightの要といってよく、フィルムをローラーに密着させることでスキャン時の平面性を保つことができる。 すでにお気づきの読者もいるかとは思うが、印刷製版用のドラムスキャナーと同じ原理だ。なお、構造的にCCDセンサーとフィルム原稿の間にレンズがあり、それによってズームやピントを光学的に調整しているので、画像サイズを大きくしても破綻が出ないことも特徴だ。

スキャン可能なフィルムフォーマットはFlextight X5の場合、35mm判から4×5判まで。解像度は35mm判の場合8000dpiで、16bitTIFFでの記録が可能である。スキャン画像をパソコンに取り込むには、専用のドライバーソフトFlexColorを使用する。

Flextightは超高性能なフィルムスキャナーであるが、その操作手順は難しくない。専用ホルダーにスキャンしたいフィルムを装填したら、本体下部のテーブルにセットする。ホルダーはテーブルのレールにしっかりぴったりとはめ込むが、それによりスキャニング後の位置合わせや角度調整が不要となり、作業効率が向上する優れものだ。


Flextightの操作手順














FlexColorの操作メニュー


ドライバーソフトFlexColorの画面。出力サイズや出力モードの設定のほか、トーンカーブ・コントラスト、シャープネス、色補正などの調整が可能。

フィルムホルダーがセットし終わったら、ドライバーソフト・FlexColorを起動。まずはプレビューで読み込む。ここでは出力サイズや出力モードの設定のほか、トーンカーブ・コントラスト、シャープネス、色補正など調整も可能としている。また一部のカラーネガフィルム用にプロファイルも用意されている。調整が終わったらいよいよ本スキャンを開始するが、ここまでの一連の作業はフラッドベッドタイプのスキャナーの操作とほとんど変わらない。スキャンにかかる時間は、解像度にもよるが6×6判サイズで1分ほどである。

 スキャンするフィルムに合わせてプロファイルを選択する。カラーネガフィルムの場合、プロファイルが用意されている。





レンタルルームに設置されるFlextight X5の読み込みが可能なフィルムサイズは35mm判から4×5インチまで。反射原稿であればA4サイズまで可能だ。



出力モードは8ビットと16ビットから選択可能。データは大きくなってしまうが、階調再現性の秀でた16ビットTIFFでの保存をおすすめする。


なお、Flextightの操作に関しては、希望すれば同社のスタッフがレクチャーしてくれるので心配する必要はない。またレンタルルームには、手袋、ブロア、エアダスターなどが用意されているが、使い慣れた自分のものを持ち込んでもよい。さらにスキャンした画像データを持ち帰るためにUSBメモリーかポータブルハードディスクは必ず持っていくようにしたい。


Flextightでスキャンしデジタル化した写真

*掲載画像は、著者がFlextightにてスキャニングし16bitTIFFで保存。Photoshopで調整し、JPEGに変換してウェブ用にリサイズしている。サムネイルをクリックすると長辺1200pixの画像が表示されます。掲載画像は、Flextightでスキャンしたネイティブ画像ではありません。また、画像の品質を証明するものではありません。


ハイライトからシャドーまで見事に再現する。色調も高彩度・高コントラストである原版(ポジフィルム)に忠実だ。
ハッセルブラッド503CW・CFiディスタゴン50mmF4・フジクロームfortia



10代の頃の未熟な技術で撮影・現像した4×5インチのモノクロネガフィルムもFlextightなら美しく甦る。さらに現像時に付いてしまったキズなども忠実に再現する。なお、掲載した画像はPhotoShopにて調整を行っている
ウイスタ4×5・フジノンW150mmF5.6・ネオパンSS



暖色系の発色が気に入り、2000年半ばまで長く愛用していたカラーネガフィルム、コニカ(ミノルタ)160PS。FlextightのドライバーソフトFlexColorには、このネガフィルムのプロファイルが搭載されている。
ハッセルブラッド503CW・CFEプラナー80mmF2.8・コニカミノルタ160PS


フィルムで撮影してもスキャンしてデジタルデータにすると格段に楽しむ機会が増す。アガイ商事のレンタルルームはそのようなとき心強い見方といってよい。
ライカR6・スーパーアンギュロン R21mmF4・フジクロームProvia



1985年頃のお台場。当時は建物らしい建物というと船の科学館ぐらいしかなく、広大な空き地が広がっていたと記憶する。モデルはミュージシャンを長年撮り続けている写真家・今元秀明氏。そんな思い出もFlextightならリアルに再現する。
キヤノンNewF-1・FD200mmF2.8・コダックEktachrome100PLUS



こちらも10代の頃に4×5判カメラで撮影した1カット。原版は現像時の撹拌の失敗で画面周辺部が明るくなり過ぎているのだが、掲載した画像はデジタルデータにした後、PhotoShopで画面周辺部を焼き込んでいる、
ウイスタ4×5・フジノンW105mmF5.6・ネオパンSS

これまでフラッドベッドタイプのフィルムスキャナーしか使ったことのないデジタルユーザーならFlextightでスキャンした画像にきっと驚くことだろう。フィルムの粒子まで再現する緻密で繊細な描写、そして豊かな階調再現性は圧倒的であるからだ。もちろん平面性もすばらしく、直線の被写体でも歪みなど見受けられない。さらにレタッチ耐性も良好で、スキャンした画像データをあれこれいじりたいユーザーの期待にも、しっかり応えてくれることだろう。
レンタルルームの営業日は、平日と第1、第3土曜。利用時間は9時から18時まで。通常営業時間の利用料金は1時間3,000円(税別)からで最短2時間より借りることができる。事前予約制。
上記、営業日以外は休日となるが、休日と営業時間外にどうしても利用したい場合は、応相談とのことで、料金も異なる。このような対応が可能なのことも、さすが普段からプロフェッショナルに対応しているアガイ商事だ。
利用料について詳しくは、アガイ商事のウェブサイトを参照のこと。


アガイ商事・ショールーム/スタジオ



レンタルルームのあるショールームには、ブロンカラーのストロボをはじめFLMの三脚や雲台、動画撮影用の照明機材など多数展示されている。自由に触ることができるので、スキャン作業に飽きたら、それらの使い勝手を知るのも悪くない。また、機材はその場で購入することも可能である。



さらにショールームの地下はレンタルスタジオになっている。広さは約90平方メートル(撮影スペースは7m×7m)。こちらも1時間3,000円(税別/平日9:00〜20:00の場合/ストロボ代は別途)で借りられる。メイクブースなども完備しているので、ポートレート撮影などでは重宝すること請け合いだ。

撮影したフィルムをデジタルデータ化したい者にとって、Flextightは魅力的過ぎるフィルムスキャナーである。しかしながら、その価格ゆえにこれまで手が届きにくいものであったが、アガイ商事のレンタルルームならばわずかな出費で存分に利用できる。これからもフィルムで撮影を楽しみたい人や、これまで撮りためたフィルム作品をデジタル化したい人は、ぜひ憶えておくべきサービスといえる。






<アガイ商事・レンタルルーム>
住所:〒171-0014 東京都豊島区池袋2-23-16アガイビル
営業日:平日、第1、第3土曜
休日:日曜、第2、第4土曜
利用料金:1時間3,000円(税別)から
最短2時間よりレンタル可、事前予約制
利用時間:9:00〜18:00

<予約・問い合わせ窓口>
TEL:03-5954-7577
フリーダイヤル:0120-862-886
Eメール:
info@agai-jp.com

ウェブサイト
http://www.agai-jp.com/

レンタルルーム
http://www.hassel-bron.com/hasselblad-rental/%E3%83%8F%E3%83%83%E3%82%BB%E3%83%AB%E3%83%96%E3%83%A9%E3%83%83%E3%83%89%EF%BC%9A%E3%83%AC%E3%83%B3%E3%82%BF%E3%83%AB%E3%83%AB%E3%83%BC%E3%83%A0.html


 著者プロフィール
  大浦タケシ(おおうら・たけし)

宮崎県都城市生まれ。日本大学芸術学部写真学科卒業。紆余曲折した後、フリーカメラマンとなり、カメラ誌、Webマガジン等でカメラおよび写真に関する記事を執筆する。中古カメラ店巡りは大切な日課となっており、”一期一会”と称して衝動買いした中古カメラは数知れず。この企画を機に、さらに拍車がかかる模様。2006年よりカメラグランプリ選考委員。
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