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単焦点レンズで世界を変える!

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単焦点レンズで世界を変える!
公開日:2015/09/29

タムロン SP35ミリ F1.8 Di VC USD

photo & text 赤城 耕一


タムロンから突然単焦点交換レンズ2本が登場した。これまでは高倍率ズームと90mmマクロという印象が強いタムロンの交換レンズだが、このところ進んでいるコシナ/ツァイスや、シグマの単焦点レンズのラインアップの拡充に影響を受けた面もあるのかもしれない。また最近ではカメラメーカーの純正単焦点レンズも高性能を追求しており注目を集めている。今回はSPシリーズの刷新という大きな意味も込められているという。マウントはニコンFマウントとキヤノンEFマウント用の2種。フルサイズのイメージサークルをカバーする35ミリF1.8と45ミリF1.8という手堅い焦点距離と明るさのレンズで派手な印象はないが、同スペックのレンズでは最高性能を目指している。


TAMRONのロゴはすべて大文字に変更。マウント基部部分にあるゴールドのリングがデザイン的によいが、カメラに装着すると目立たなくなるという奥ゆかしさがある。


VC(手ブレ補正)スイッチとAM/MF切り替えスイッチ。iPhoneのスイッチに形が似ているけど、これもこだわりのデザインである。

ズームレンズに不可能な写真表現を

単焦点レンズの存在意義とはなんだろう。まず大口径であること。標準ズームは、大口径でも開放F値は現時点ではF2.8どまり。F1.8なら1段以上明るい。デジタルカメラではISO感度設定は自由自在だから、大口径レンズ使用の必然はないと思われがちだ。しかし、いまの時代は低照度下での撮影用というより、開放時での浅い被写界深度を応用し、ズームとは異なる個性ある写真制作を可能とするために用意されていると考えていいだろう。もちろん性能面での安心感も大きい。



至近距離で絞り開放の難条件。写真的にみればボケた部分が多くなるので2段ほど絞り込んだほうがよさそうだが、あえて開放で挑んだ。合焦点はきわめてシャープ。ボケ味は広角特有の感じもあるけどクセはない。
Canon EOS 5D MarkIII + TAMRON SP35mm F1.8 Di VC USD
F1.8 1/6400 ISO100

最近ではカメラの高画素化が進んだことで従来のレンズではポテンシャルを最大限に発揮するには限界があり、あらたに超高性能の単焦点レンズを出すことでタムロンの高い光学設計技術を世間に強く知らしめる効果もあると思う。
注目されるのは、いずれもVC(手ブレ補正)を内蔵していることだ。鏡胴は金属製、デザインもフォーカスリングを幅広くとり、MF時の操作性も良好。
マウント基部には梨地のゴールドのリングを設けた。このリングの微妙なカーブが美しく、高級感の演出に一役かっているが、カメラに装着すると目だなくなるデザイン的なこだわりがまた面白い。写りとは関係ないところにコストがかけられていることもモノとしての高級レンズの証であるといえる。



これも至近距離で撮影。ガラス越しの撮影だが、コントラスト高く、メリハリのある描写。被写界深度が浅いためガラスの写り込みの風景が大きくボケて、雰囲気のある描写になった。ズームレンズでは望めない描写だ。
Canon EOS 5D MarkIII + TAMRON SP35mm F1.8 Di VC USD
F1.8 1/200 ISO200

TAMRON SP35mm F1.8 Di VC USD

今回は、私の大好きな画角になるSP35ミリ F1.8 Di VC USDを取り上げる。レンズ構成は9群10枚。USD(超音波駆動モーター)VC内蔵。GM(ガラスモールド非球面レンズ)、LD(Low Dispersion:異常低分散)、XLD(eXtra Low Dispersion)を配する。コーティングはタムロン独自のeBANDコーティングと防汚コートが施され、簡易防滴構造も採用。最短撮影距離は0.2メートルと非常に短い。一般的にはレンズは無限遠において最高性能を発揮するように設計されているが、本レンズにはフローティング機能が採用され、至近距離での性能低下がないことが強くアナウンスされている。


MFに設定して、無限遠よりやや至近位置に設定して絞り込み、パンフォーカス表現を狙ってみた。歪曲のクセもなく自然な雰囲気になる。画面の均質な画質も魅力だ。
Canon EOS 5D MarkIII + TAMRON SP35mm F1.8 Di VC USD
F11 1/800 ISO400 -0.33EV

実写した印象では、ヌケがよくコントラストが優秀なレンズだと感じた。合焦点は繊細な線の描写で、絞りによる性能変化も感じない。歪曲収差補正も良好。非球面レンズ搭載だが、ボケのクセもない。カメラメーカーの純正レンズと異なり、カメラ内での収差補正は行われないのに、まったく不満のない描写である。手ブレ補正とフローティングを内蔵したために、やや太めの鏡胴となり重量はキヤノン用が480グラム(ニコン用は450グラム)と、軽量ではないがバランスは良好だった。



高性能のレンズだが、大口径レンズは使用カメラとの相性によっては位相差AFのわずかな誤測距によるフォーカスのずれが生じることがある。ここぞというときジャストのピントを目指すため、ボディ側でのフォーカスの微調整をチェックしたり、ライブビュー時のコントラストAFを利用するなど臨機応変に考えるべきだ。
またAPS-Cのセンサー搭載モデルでは画角的に標準レンズになるのもいい。ここではEOS M3にアダプターでも使用してみたが、ややデザイン的にはアンバランスだけど動作に不満はなく相性もよかった。今後続いて登場するであろうタムロン新SP
シリーズの展開に期待したい。



APS-Cのデジタルカメラでは、標準相当画角になるので、この近辺の画角が好きな人にはおすすめ。(ニコン用 35mm換算約52.5mm/キヤノン用 35mm換算約56mm)
すっきりと透明感のある描写だが、細かなところまでよく解像していて気持ちがいい。
Canon EOS M3 + TAMRON SP35mm F1.8 Di VC USD
F8 1/200 ISO200


階調の豊富さ、明暗の自然さがよく表現されるレンズだと思う。こまかいディテールまでがよく再現されているため、リアリティのある写真になっている。優秀なレンズである。
Canon EOS M3 + TAMRON SP35mm F1.8 Di VC USD
F6.3 1/320 ISO200 -1EV



<メーカーサイト>
タムロン 新SPシリーズ
https://www.tamron.co.jp/lineup/f012_f013/#/

TAMRON SP35mm F1.8 Di VC USD
https://www.tamron.co.jp/lineup/f012_f013/#/35mm-F18

TAMRON SP45mm F1.8 Di VC USD
https://www.tamron.co.jp/lineup/f012_f013/#/45mm-F18
 
赤城耕一
東京生まれ。出版社を経てフリー。エディトリアルやコマーシャルの撮影のかたわら、カメラ雑誌ではメカニズム記事や撮影ハウツー記事を執筆。戦前のライカから、最新のデジタルカメラまで節操なく使い続けている。

主な著書に「使うM型ライカ」(双葉社)「定番カメラの名品レンズ」(小学館)「ドイツカメラへの旅」(東京書籍)「銀塩カメラ辞典」(平凡社)

ブログ:赤城耕一写真日録
 
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