新刊情報
公開日:2017/03/17
メイキング・オブ・赤城写真機診療所
CAMERA fan編集部
発売以来、全国のカメラ病の患者様に好評となっている、赤城耕一さんの新刊「赤城写真機診療所」。この本がどのようにして作られたかを時系列で振り返りつつ、エピソードをご紹介します。 【編集日記】2015年秋 赤城耕一 企画を持ち込む
赤城耕一さんから玄光社・CAMERA fan編集部に企画の持ち込みがありました。
「今までの教科書やハウツー本に載っているような、形式ばったルールに囚われないで、もっと自由に、楽しく、肩の力を抜いて、カメラと写真を楽しもう。そんなことを”語るように”伝えたい。」(赤城)
このときに編集部は、赤城さんに「この本で一番言いたいことは何でしょうか?」と、著書の「柱」になるものを質問しところ、赤城さんは明確に回答されました。それを聞いて私は、これは絶対に1冊の本にしたい。と思いました。でも、それが何だったのかは、本を読まれた方だけがわかると思いますので、ここでは伏せておきます。
会社に企画書を通す〜編集スタッフ集結
メインの編集は、フォーセルの笠井里香さんにお願いしました。「中古カメラはこう買いなさい!」「ズームレンズは捨てなさい!」でもご一緒したカメラ雑誌編集歴20年のベテラン編集者です。スタッフが集まり、第一回目の編集会議を開きました。その後、会社に企画書を通した時につけた仮の書名は以下のとおり。
「”世界一役に立たない”赤城流・カメラと写真がわかるQ&A100(仮)」
副題の”世界一役に立たない”は、「世界でいちばん不親切な寫眞入門書」に代わって、表紙カバーのコピーにになりました。
しかし、「カメラと写真がわかるQ&A100」は、いたってふつうのタイトルでした。編集会議で「他の教則本とは違った雰囲気の本を作ろう」という方向が決まります。
そこで思いついたのが、Dr.赤城。赤城さんを医師に見立てるアイディアでした。
編集チワワ・イトウが、スタッフ全員とイメージを共有するために作った赤城耕一さんのアイコラ。「雑コラ」とも言われている。このイメージが、本誌目次ページにつながっている。
このアイディアが生まれた理由は、赤城さんが暗室講座のワークショップで白衣をきている姿が医師に見えたこと。日々、SNSでフォロワーやワークショップの参加者の方々から、さまざまな質問を受けては、回答している姿が、教師か医師に見えたことの2つが理由でした。
「赤城さんを医師にしてしまおう。そして、限りなく胡散臭く、ヤブ医者っぽく!」(編集部)
「オレのイメージは、ブラックジャックっぽい感じがいいんだよなあ」(赤城)
結局、赤城さんの希望はまったく実現しませんでした。
ここからこの企画は、急激にコミカルな方向に突進していきます。
タイトルは、「赤城写真機診療所」に決定。
「病院」でも「ホスピタル」でもなく「診療所」としたのは、昭和感と親しみを出すためです。アオリ文として副題に「そんなカメラは捨てなさい」をこそっと入れました。
編集の進行自体は、ここからほぼ半年間、寝かすことになります。この間、編集部は、赤城さんにぶつける質問を300問考えていました。会社で企画が通り、発売日はCP+に合わせて2017年2月に決まりました。質問数は、ページ数を考えて200問に絞りました。
2016年秋 そろそろ全員が焦りだす、ゆり茶=大村祐里子登場
いよいよ進行に火がついてきました。まだ本文の原稿、写真、もろもろ揃わず、いや台割すらできていません。ほぼだいたい本の進行は、後ろの方に固まってきます。つまり夏休みの宿題と同じです。これではいけません。しかし、なぜかそうなってしまうのです。
決まったことは、
・著者である赤城さん自身に誌面に医師役で登場してもらうこと
・撮影はCAMERA fanでも記事を書いている大村祐里子さんにお願いすること
だけが決まりました。
大村祐里子さんから、「リアルな病院スタジオで撮りたい」という要望を採用。そして、編集部は、大村祐里子さんがデジタルカメラマガジンで連載中の「カメラおじさん」のイラストに注目。カメラ病にかかってしまった患者さんたちが、診療所を訪れて、医師に質問するという設定に決まり。これで役者は揃いました。
大村祐里子さんによるカメラおじさんとDr.赤城のイラスト
大村さんが編集スタッフにイメージを伝えるために描いてくれたラフスケッチですが、すでに完成度が高かったため、このまま誌面で採用されることに。このとき描かれた赤城さんの中央のイラストは、カバーにも採用されています。左のイラストは未掲載。
通称「おじさんイラスト」と編集部が読んでいたカメラおじさんたち。とても愛らしく、デフォルメされていながらもリアリティーがある。子供のときには漫画家になりたかったという大村さんの多才さには感服します。
2016年12月末 病院スタジオでのロケ
大村祐里子さんは、イラストレーターから本業のカメラマンに変わって、病院スタジオにて、赤城さんのポートレートを撮影。大村さんの撮影は、とても速い。モデルの赤城さんと軽やかに会話を弾ませて、次々にシーンをこなしていく。赤城さんは被写体としてもコミカルで素晴らしい。表情とポーズを次々と変えていく姿は役者顔負け。スタッフ全員が終始笑いっぱなしの現場だった。
本誌で使われなかったアザーカット 撮影:大村祐里子
|
虚構の世界観をつくるには小道具が重要です。Dr.赤城が診察時に頭に装着するアイテム「フラッシュガンLED改」は、編集部が製作。ニコンFなどの時代のストロボはこれだった。本体を分解し、バルブ部分にLEDライトを仕込み、スイッチを設置し、点灯できるようにした。 |
|
背面の22.5Vの電池ケースをバラして、単4電池ケースを装着した |
2017年 年末〜正月
ここまで書いて、赤城さんが何もしてないように見えますが、実はずっと質問に対しての回答を書き続けてきました。つまり本文の執筆です、それは膨大な文字数になります。正月休みも返上で200問の問いに答え、メーカー別の論文という名の批評を書き、質問に合う写真を掘り起こし、足りない分は、新規で撮影してもらいました。
編集スタッフは、赤城さんから原稿が届く度に、笑いがとまらなかったり、激しく同意したりしました。とにかく文章が面白かったのです。この本をはやく全国のカメラ好き、写真好きのひとたちに届けたいと思いました。
2017年2月 ひたすら編集〜デザイン入れ〜校正の日々
CAMERA fanの本は、一関麻衣子さんという一人のデザイナーによってデザイン、レイアウトされています。とても素晴らしい装丁。硬すぎず、ゆるすぎず、機能的で美しく、遊び心がある。カバーのみならず、カバーを取った後に見える表紙、そして本文の手帳風の飾りなども楽しいでしょう。
1月末に印刷会社に入稿、色校が出稿、そして2月1週目に校了。編集部とデザイナーは、この期間の記憶がございません。怒涛の日々でした。
ついに発売
CP+中古カメラフェア トークショーの様子
2月17日電子版 先行発売
2月20日紙版 発売
2月26日CP+中古カメラフェアの会場にて新刊発売記念トークショー開催