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ただいま往診中〜赤城写真機診療所〜

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ただいま往診中〜赤城写真機診療所〜
赤城写真機診療所の院長 赤城耕一が、カメラ病にかかった患者たちのために西へ東へ往診治療する。
公開日:2017/09/27

ミヤマ商会 新宿店でニコン D850を下取り交換(妄想)するの巻

photo & text 赤城耕一


「畳とカメラと女房は新しい方がいい」という話があります。あの、ここで、はっきり断っておきますが、私が言いだしたわけではありませんので念のため(汗)。

いきなりですが、カメラには「下取り交換」というシステムが昔からあります。

カメラファン読者のみなさんはよくご存知でしょうけど、一応説明しておくと、自分の持っている旧機種を買い取ってもらい、そのお金を元手として新しいカメラを入手しようというシステムだ。クルマなんかと同じですね。

こうすれば新品を購入する場合でも、フトコロがさほど痛まないで済むことになるし、使わなくなったカメラも再び活躍する機会が与えられるというわけである。

ま、なんにせよ、下取り交換は原則としてカメラの台数が増えないという理屈になるわけだから、うまくやれば、家人に新しいカメラを購入したことがバレずにすみますね。これは大きなメリットです。なーに、黒のパーマセルテープで数字のところを隠しておけば、ニコンD800EとD850の見分けなんか女房にゃわかりゃしません。ええ、大丈夫です。

で、この「下取り交換」はどこの中古カメラ店も量販店すらやっているんだけど、新品の品揃えを手厚くして行なっているお店ってそれほど多くないわけです。それに旧いカメラを正しく評価できる人ってそんなにいないと思うぞ。この正統派の下取り交換を創業時から強力に推進してきたカメラ店があるので、今回ご紹介しましょう。
 

新宿で半世紀以上、下取り交換を手厚くしてくれる「ミヤマ商会 新宿店」

ミヤマ商会なのである。戦後すぐに銀座にて開業、仕立屋さんからカメラ屋さんに転身、カメラ好きなら知らない人はいないだろう。カメラ雑誌の後半にある広告でもすでにおなじみですね。

手持ちのカメラと欲しいカメラの交換差額がバリッと公明正大にはっきり載っているものだから、カメラ好きはその値段をみた瞬間に、新しいカメラに買い換えるかどうか、めまいを起こし、アタマの中で妄想し、ハアハアしているわけです。さてと、私もどうすっかなあ、ニコンD850。

新宿店も開店してから53年という。半世紀以上だ、すげー老舗だぜ。場所はもう説明の必要はないだろうけど、新宿三丁目の交差点からすぐですね、はい。最近は副都心線とか開通しましたから、超有名になりました。

新宿通りと明治通りの交差点、伊勢丹の前とか、交番の前からドーンと「ミヤマ商会」の黄色い看板が見えちゃいます。看板の黄色いシンボルカラーはかつてのニコンのそれに合わせてあるような気がするのだが、はたしてそういう意味合いもあるらしいのですね。なんとわかりやすいのであろう。


ミヤマ商会 新宿店入口
お店の正面入り口から右を見るとニコンで埋め尽くされています。新品も中古もいけます。下取り交換の店ですから、両方強いわけです。

 

落ち着ける昭和な雰囲気とゆったりとした店内

この新宿店、すげー昭和な雰囲気が漂っているのがいい。店舗の入っているビルが完成した時にミヤマ商会も同時にテナントとして入ったということだから、ビルの年齢も半世紀越えである。高度成長期の時代の象徴である。レトロなビルだがメンテが行き届いているのであろう、現在もとても良い感じなのである。

お店はゆったりとしたスペースが取られていて、天井もそれなりに高く、好感が持てる。通路も広めで、仕事帰りに大きめのカメラバッグを下げていても危なげなく歩けるし、お客さん同士が余裕ですれ違うことができますね。これはいいですねえ。

入り口正面のウィンドウには、今をときめく新製品たちが鎮座し、右方向のウィンドウにはニコンデジタル一眼レフ中古品がぎっちりと並べられている。


ニコンコーナー
お宝なニコン専用のショーケースです。ニコンFからニコンD5とかまで同列です。デジタルとフィルムカメラに差別がありませんね。素晴らしい。




ぐるりとあるショーウィンドウには各メーカーごとに中古品を揃えているが、ニコンの場合は中古フィルム一眼レフカメラやMFニッコールにもかなーり強い印象だ。
 

まるでニコンミュージアム?

ニコンファンの人はマジでミヤマ商会には一度は行ったほうがいいですぜ。非売品だけど、超珍品のニコンFのハイスピードモータードライブカメラを拝むこともできます。これはすごいよね。モータードライブの本体はないのかなー。


ニコン F ハイスピードモータードライブ(非売品)
商品じゃないけど、ニコンFのハイスピードモータードライブカメラが展示されているわけ。ったく「ニコンミュージアム」かよ、って感じですね。目の保養にいかがですか?



「なんでこんな博物館級のブツがおいてあるんだ、IMAI collectionにも無いぜ!」と興奮状態になるドクター赤城




キヤノンコーナー
キヤノンの新品と中古もあります。量的にはニコンに押されてますが(笑)ま、キヤノンがないとニコンの良さもわからないし、逆もまたしかりでありますね。やはりニコンを知るにはキヤノンも使ってみる必要があります。

 

ニコンのサービスステーションのような品揃え

あと、すごいのはですね、ニコンF3用のアイピースまで新品在庫しているのである。しかも専用のショーウィンドウに陳列してあるのだ。これら、実は現行品なんだけど、ニコンのサービスステーションみたいな品揃えなわけです。ちなみにこのアイピースはニコンFにもF2にも使えます。マニアックな品揃えというよりも、こういうところがニコンユーザーのココロを掴んで離さないわけね。

───「中古カメラのアイピースとか欠損しているもの多くないですか?だから用意しました」
(ミヤマ商会 森田社長)


そうそう、そうなんだよねー。こういうつまらないものでも欠損しているとカッコ悪いからさあ、アイピースが欠損していたらできれば買ったその場でつけたいよね。値段の問題じゃありませんね。

それにさ、近くの量販店で「ニコンF3のアイピースください」とか訊きたくないじゃん。そこで店員さんに「は?なんすか、それは?」みたいな顔されて聞き返されると暴れたくなりませんか?ならないか。


アイピースコーナー
ニコンF3やらF5のとか、F100のとかアイピースをちゃんと在庫しています。新品です。ニコンFM3A用のスクリーンもあったり。ちなみにこのスクリーンはニコンNew FM2にも使えるんだぜ。

 

ミヤマ商会 森田社長

ところで森田社長はえらいイケメンである。おおよそ、中古カメラ店には似合わない(失礼!)風貌だ。かなりのカッコ良さである。以前は広告代理店にお勤めで、映画関連のPRを担当されていたそうである。アスリートで、キックボクシングも特技という。素晴らしすぎる。

私の場合は逆にデブのカメヲタの不良顧客ですからね、辛いです。でもね、ミヤマ商会さんとは、なんだかんだで40年近いおつきあいがあるので、この入口の黄色い看板を見るだけで、今もピクピクと反応してしまい、仕事で新宿三丁目に仕事で行ったとしても店の前を素通りすることなんかできやしません。


(株)ミヤマ商会 代表取締役 森田和明氏(53)
この笑顔で迎えてくれますから、老若男女、日本人も外国人もカメラの買い物相談にのってもらいたくなります。で、お店を出るときには、なぜか「Nikon ミヤマ商会」と書いた重い紙袋を持っています。で、伊勢丹の前まで歩いたところで、我に返り、晴れた秋空を見上げることになります。

 

ニコン以外にもお宝が詰まっている

先ほどニコンに強いと書いたけど、記事後半の商品紹介にあるように、けっこうマニアックなカメラを見つけ出せたりすることがありますから、気を許すことはできません。ニコンユーザーに限らず通う価値はあります。気をつけて見てみましょうね。意外とお宝が埋もれてるんじゃないのかなあ。

ほら、ぎっちりとカメラが詰まっている店だと、こちらも見落とさないように念入りに見ることもあるけど、ミヤマ商会さんみたいに整然と美しくカメラが陳列されているのを見ると、意外に珍品の見落としがあるわけ。刷り上がった本の中にデカいタイトル文字の誤字脱字をゲラで見つけられないあの感じですな。(あ”ー。思い出すとめまいがする)



二眼レフコーナー
古めの二眼レフもあったり。目立たないところにあるので通り過ぎそうになるけど、こういうところに目配せをしないと真のカメラファンとは言えないわけね。

 

カウンターにお客様用の椅子を用意してじっくり相談

お店の裏手中央にはカウンターが半円を描く形で置かれ、お客様用の椅子も用意されています。お店全体の比率からしても、けっこうなスペースが取られていますぜこれ。ミヤマ商会新宿店の最大の特徴とは、このカウンターの存在と言っても過言ではないのではないかと思いました。

ここでお客様は座って、ゆっくりと店員さんに治療...じゃなかった買い物相談に乗ってもらえるわけである。これは量販店のカメラ売り場ではありえない光景だろう。ついつい居心地が良いので長居をしてしまうお客様も多いだろうなあ。先日撮った写真を見せにくるお客さんとかも多いという。良い関係ですね。お客さんとお店の店員さんの距離が近い。これもまた昭和な感じだよね。

そういえばとくに名を秘すけど、私自身も昭和を代表する大写真家がお座りになっていたのを数度目撃したことがある。恐れ多くて声なんかかけられませんでした。ちなみに場所柄、カメラ好きの噺家さんとか作家さんの常連も多いとのことである。最近は外国人のお客さんがたくさんいることがあって驚きますけど、ミヤマ商会の名前は世界のカメラ好きに轟いてるということなのだろうな。うん。
 

売りつけるのではなく相談に乗るという感覚

とても良いのは店員さんがカメラを売りつけるという感覚を微塵も感じさせないところだ。

お客様と向かい合い、膝を突き合わせ、特許の技術でとことん、とことんとことん逃がしません。ソフラン。じゃなかった、とことん相談に乗るという感覚がいいのである。

───「カメラを手放すべきか悩んでいるお客様に、手放すのを思いとどまるように説得したことがあります」(ミヤマ商会 森田社長)

うーむ。まぢかよ。エライぜ。すごい姿勢だぜ。もともとカメラというものは高額商品だし、とくにフィルムカメラ時代は耐久消費財という感覚が強く、ライカなんか一生モノだったから、量販店でのカメラの販売方法って、いくら価格が安くても、70年代の前半くらいまではかなり珍しいというか異端だったんですぜ。

私も経験あるけど、カメラを購入する儀式として、まずメーカーのサービスセンターに行って、狙いを定めた実機を死ぬほど触りまくり、カタログを穴のあくほど眺めた後に持ち帰り、爪に火をともすようにして必死で貯めた資金と下取りをお願いするカメラを握りしめて、意を決してカメラ店に出かけるという姿が普通だったのだ。

最後に店員さんに買い物相談と称して、背中を押してもらうのである。これが儀式めいていて重要なのである。(本当は狙っている機種はあるし、買うことを決めているんだけど)

もちろん中古品を狙って買う場合も、カウンターで動作感触とかもゆったりとした気持ちで試せるし、使い方がわからない場合は、ここで落ち着いて店員さんに教えてもらえるから冷静な買い物もできちゃう。間違いが起こりにくいわけですな。


ミヤマ商会 新宿店 販売カウンター
カメラファン編集担当のチワワくんが何か相談しています。仕事用のカメラを売り飛ばして何か買うつもりでしょうか。このカウンターの広さこそ、ミヤマ商会新宿店の大きな特徴ですね。懇切丁寧、納得ゆくまで、下取り交換の相談に乗っていただけるわけです。

 

古き良き時代のカメラ店

ミヤマ商会は古き良き時代のカメラ商いの方法を現代も継承しているのである。これがすごいのですよ。

店員の皆さんはおじさんばかりですけれど、みんなすごく優しいから安心して相談してみてください。若い女子は特にヒイキにしてもらえるかもしれません(個人の想像です)


フィルム販売コーナー
もう中古カメラ屋さんにフィルムが売っているだけで、店員さんとハグしたくなる。しないけど。でも買ったカメラにすぐにフィルムを装填したいあなたのために。これはお客さんの心理がわかっているぜ。

 

ドクター赤城が処方する”カメラ病”に効く処方箋


ニコン F100
F100:22,000円 + AF Nikkor 35mm F2D:33,000円
ニコンF100って「F5ジュニア」ってニックネームだったんですぜ。ところが中古だと、F5との価格差が大きくはないしね。でも取り回しがいいカメラでこいつはお買い得ですぜ。もう一台買うかなあ。いらんな。



オリンパス PEN W
PEN W:48,000円
これは珍品です。ブラックボディしかありません。フルメカニカル(機械式)です。しかも安いですね。森山大道さんがニューヨークで使ったことでも有名ですね。レンズに少しバルキレ(バルサム切れ)があるということですが、切れていた方がダイドーに迫れる写真を撮ることができます(嘘)




コニカ オートレックスP
AUTOREX P + HEXANON 52mm F1.8セット:40,000円
コニカ オートレックスPです。知ってます?このカメラは撮影途中で、35ミリフルサイズとハーフサイズの切り替えが可能。上部レバーを切り替えるとアパーチャー左右から扉が出現しハーフサイズになる。フィルム巻き上げ量もカウンターもちゃんと連動。フルメカニカルカメラな日本人の知恵カメラですね。ただしシロウトが手を出してはいけません。「P」はプロフェッショナルの意味だし。




ミノルタ SR-1
SR-1 + Wロッコール 35mm F4セット:21,000円
ミノルタ SR-1ブラックがこの値段。私的には低価格記録かと。本気で使うには手を入れる必要はありそうだが、元値がこれなら思いっきりレストアしてやるという手もあるのではないかと。すげー欲しい。




ニコン Nikkor-D 40mm F4(ブロニカ用)
Nikkor-D 40mm F4:55,000円
ゼンザブロニカ用のニッコールD 40mmF4。これね、悪いけど、ハッセルのツァイス ディスタゴンT* C40mmF4よりよく写りますね。周辺とかまですげーいいわけ。中判カメラでも広角好きのアナタに。




ニコン Df
Df:165,000円 + AF-S Nikkor 50mm F1.4G:43,000円
大きい声では言えないけどさ、ニコンDfって、その次が出てくるのかどうかは現時点では不透明ですからね。新品も中古も買うのは今のうちなんじゃねえかな。で、ないと後で後悔するようになりそうな。(個人の感想です)


 

ドクター赤城耕一の往診結果

ところで今回の往診の目的は、店に異変がないかをパトロールすることである。

あーそういやー思い出したぜ。10年ほど前だったかなー。このミヤマ商会新宿店でAiニッコール80-200mmF2.8S(現役時代は驚異の大口径ズームだったわけ。知らない人はググってね)をハケーンしたことがあり、これはタイヘンだ。世界の平和を乱す危険物として、自腹を切っていち早く確保、隔離処置したことがあリます。が、自力ではなかなかうまくいかないようでありますね。

そういえばミヤマ商会の銀座店はこの2017年9月20日をもって惜しまれつつ店を閉じました。これからはこの新宿店が銀座店のパワーを統合し、フラッグシップ店として、より強力な布陣を敷き、みなさんの病気を癒すじゃなかった、カメラライフを充実させてくれることでしょう。期待できます。個人的にもこれからもお世話になりますのでよろしくお願いします。

あーそれにしてもニコンD850どうすっかなー。
おしまい。



ニコンD750を下取りしてもらい、D850を入手する図です。購入価格を抑えることができますから、お客さんは喜びを抑えられず自然にこういう表情になります。親切に相談に乗ってもらえます。あー欲しいぜD850!(注:記事のためのシュミレーションですので事実と異なります)
 

<ショップ情報>

ミヤマ商会 新宿店
住所:〒160-0022 東京都新宿区新宿3-32-8
電話:03-3356-1841
営業時間:10:30〜19:30/日・祝 〜19:00)
ショップサイト:http://www.miyama-shokai.co.jp

CAMERA fanでミヤマ商会の商品を検索する:
http://camerafan.jp/miyama/itemlist.php


☆記事に掲載している商品情報は、取材時のものです。商品の在庫の有無と価格は、お店にお問い合せください。
 
赤城耕一
東京生まれ。出版社を経てフリー。エディトリアルやコマーシャルの撮影のかたわら、カメラ雑誌ではメカニズム記事や撮影ハウツー記事を執筆。戦前のライカから、最新のデジタルカメラまで節操なく使い続けている。

主な著書に「使うM型ライカ」(双葉社)「定番カメラの名品レンズ」(小学館)「ドイツカメラへの旅」(東京書籍)「銀塩カメラ辞典」(平凡社)

ブログ:赤城耕一写真日録
 
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