赤城耕一の中古カメラ店パトロール
公開日:2020/07/02
新宿 北村写真機店 に行ってきた!
赤城耕一

中古カメラ、レンズの在庫数に圧倒されるヲレ。降り注ぐというか、押し潰されるというか。嬉しそうに見えるのは気のせいです。
かつて、新宿東口は量販店だけではなく、立地条件の良いところにいくつかの中古カメラ店があり、新宿に行った際、世界の平和を乱す危険なカメラが売られていないかボランティアでパトロールするのが楽しみ、じゃない任務だったのだが、いつしか中古カメラ店が次々と閉店してしまい、パトロールする必要がなくなってしまった。これではあまりにも平和な街になりすぎてしまい悲しみがこみ上げてきませんか?だいたいにしてカメラ店がないような平和な街になりすぎると、ワクワク感がなくなるよねえ。
量販店があるじゃないかと言われるかもしれないけど、違うんだよね。最近は家電量販店と言われるくらいだから、カメラ販売は付け足しみたいなもので、量販店にいって、「カメラ売り場」を探すのが面倒なくらいなんですわ。そこには新品カメラしかないしね、 新宿 北村写真機店 外観

(Photo by Satoshi Asakawa)
店舗のエントランスからしてカッケー。新宿にいきなり代官山が来たみたいな雰囲気。若者は好きですね。おじさんも好きです。
最初からとてもまわりくどい紹介になりましたが、今回のお題は、この7月3日に新宿東口、紀伊国屋書店のはす向かいくらいかなあ、この超絶な好立地条件の場所に開店するカメラ店「新宿 北村写真機店」のお話をしようと思います。ええ、量販店ではありません「カメラ店」に属します。
今回私はまったく予備知識なく開店前の見学に行ってきたわけです、本誌編集者に誘われじゃなくて取材を頼まれましてね。ええ、本当は行きたくなかったんですよ。カメラなんか嫌いだしさ。何となく危険な予感がしましたし。まだ開店準備で慌ただしい店舗を案内していただいて、さくっと歩いただけなんですが、この不安は見事に的中しましたわ。正直知らないほうが今後の人生は正しく生きていけそうな気がしました。
この「新宿 北村写真機店」とは全国に展開する「カメラのキタムラ」の旗艦店としての存在になりますが、店名がカタカナから漢字へ、ということで気合いがもう異なりますね。これまでのカメラのキタムラとは異なる雰囲気がありますが、これはカメラのキタムラのなんばCITY店とかカメラのキタムラ平塚店みたいな高級な雰囲気もあるんだけど規模と大きさがケタ違いにすごい。なんせ旗艦店ですからね、連合艦隊のトップです。
カメラ・写真店舗フロアは全6階に渡って展開されています。最近は足の弱い年寄りなんで、まずはエレベーターに乗って、上の階から拝見させていただくことにしました。 6F Vintage Salon(ヴィンテージ サロン)

ライカヴィンテージだけを集めています。博物館かよこれは、みたいな雰囲気あり。入場料はありません。価格は「ask」表示多く。まあ、私には目の保養です。

B館6Fはヴィンテージなライカを集めたサロンであります。エレベーター扉が開いた瞬間から私にとってはデンジャラスな空間でしたよこれは。入り口脇にはハービー・山口さんのすっばらしい作品と愛機のライカM6が飾られていたりするのですが、このあたりはアカデミックでいいわけ。M6はヴィンテージじゃないしね。

でもね、入り口に立った状態でヴィンテージライカがブワーッとこちらに突進してきて網膜にグサグサ突き刺さるわけですよ。しかも超絶高級感あふれるフロアの雰囲気に圧倒されますよ。品格が高いわけです。私も襟を正して商品を拝見することにしました。アロハシャツの襟でしたけど。

入り口右手の壁側ウインドウには、新品のライカと交換レンズが、左手壁際から奥のウィンドウから奥にかけスクリューマウントライカからM型ライカのヴィンテージ中古カメラ、レンズ群がディスプレイされ、フロアにある平たいウインドウにはさらに強力なレアなヴィンテージライカや珍品レンズが並べられており。

私は既視感を感じました。これはドイツはヴェッツラーにある、ライカ本社の入り口にあるライカの展示によく似ているわけ。壁際には「ライカツリー」があり、博物館級の試作ライカが展示してあるウィンドウがある姿。いやいや参りました。この展示の仕方は極めて計算され尽くしたものでありましょう。おい、もしかして北村写真機店のライバルはライカストア各店舗なのか、みたいな感じなわけです。
同じ階のA館にはイベントスペースがあり開店時からは蜷川実花さんの写真展が開催されることになります。落ち着いて作品を見ることでヒートアップしたアタマを落ち着かせることができるかもしれませんな。今後の作品や作者によっては逆効果になるかもしれんけど。セミナーなどもこのスペースを使うようです。
私は貧しいのでひたすら鑑賞だけです。ウィンドウも美しすぎて、指紋とか脂はつけられませんぜ。

ライカMPエルメスエディションですね。ええ、エルメスから資本入った時の記念モデルです。これ、所有している写真家に教えてあげようかなあ。心豊かになる価格がつけられそうです。
5F 買取・修理サービスフロア

カメラ、レンズ買取の相談カウンター。公明正大にきっちり査定していただける雰囲気あり。お互いウィンウィンで行こうという。
続いて、5Fに降りてみると、B館には驚きのスペースがとられたカメラ買取と修理サービスフロアが。お客さんは仕切りのあるブースにて買取相談を行ったり、修理相談ができます。すごいのは自分の持ち込んだカメラの査定や修理調整状況がガラス越しに見学できること。これは驚きですねえ。自分のカメラがどのように扱われているのか。同店がカメラ買取に相当な力を入れていることがわかります。この5FのA館のフロアには証明写真コーナーがあります。
修理スペースや買取の査定スペースはガラス張り。どういう作業をされているのか一目瞭然。これって、スタッフが緊張するよね。
4F USEDカメラ販売フロア

中古カメラのウィンドウがもうかっこいいわけですよ。裏の空調のダクトとかも見せちゃってさ。目に優しい光です。
そして、お待たせしました。4FはA館、B館全フロアが中古カメラ販売フロアです、いや品位の高い新宿 北村写真機店的に申しますと「USEDカメラ販売」であります。ちなみに中古カメラ、レンズの在庫は5,000台以上!あるそうです。
ひたすら呆然。ただ、欠点としては、店に入る前に自分が何を欲しかったのか忘れること(笑)。
基本的には、ウィンドウにはメーカー別に商品が並べられています。ノーマルのライカなんかもここにあります。とにかく6Fのヴィンテージライカが目に突き刺さる感覚ならば、こちらのフロアは天井からカメラが降り注いでくる雰囲気です。ヘルメットをかぶって、ほふく前進とかしないと危険かもしれません。最新のデジタルカメラから、レトロなフィルムカメラまでがこの状態で在庫されています。想像つきますか?商品は全国のカメラのキタムラから買い取られたものが主らしいですが、正直めまいがします。
ライカM3。選びきれないよね、これ。試しにシャッター音とか巻き上げ感触とか確かめていたら、時間かかるな。

富士フイルムのナチュラクラシカとかクラッセとか、最近高いよね。でもこんなに在庫あるんですよ。

ソニーα7系も、どどどどどみたいにあるわけ。私なら店員さんに「一番イキのいいやつ頂戴」っていうかなあ。
それにしてもこれは商品選択に迷います。はっきり言って。だってね、たとえばソニーα7R IIIあたりを見ようと思うじゃないですか、そうするとウィンドウでの見た目だけでもフツーに20台以上バーンとかあるわけですよ。もうギッチリあるわけ。決断力がある人ならいいですが、見比べていたら、いつまで経っても決まりませんわ。
また、すごいのはクラシックレンズがお好きなお客さんに向けたマウントアダプターコーナーも充実していること。試写可能なソニーα系カメラも用意してあり、お試し撮りもできちゃうという充実度。
試写カメラについているズミルックス50mmF1.4。なんかスクリューマウントっぽい(わかるやつだけにわかればいい)んだよね。困るなーこういうことされると。
中古って、世の中に一点しかないじゃないですか、私なら店員さんに決めてもらますです、マジで。たぶん、ここで買い物をするときはそんなことになりそうな。だから、「なんとなくカメラが欲しい」なんていう軽い気持ちで店に行くと、閉店時間に追い出されるまで外に出ることができません。ああ、でもね、このお店は大丈夫なんですよ、ここにはフォトライフをサポートするコンシェルジェがいるので、自分が必要とするものは何かを相談することができます。
3F BOOKラウンジ&プリント
で、すっかり身も心も疲れたのですが、よろよろしながら3Fに降りてみました。ここのA館には書籍の販売コーナーがあります。写真関係書籍と写真集の充実ぶりには目を見張ります。玄光社の本もたくさんあります。拙著「赤城写真機診療所 MarkII」も在庫しておりますので、ぜひここでお買い求めをお願いします。

そして、プリントコーナもあります。デジタルカメラのみならずスマホデータからのプリントもできます。最大でA3までの大きさに対応できるそうです。同店オリジナルのフォトブックなんかも作れます。フィルム現像も当日仕上げで行えるので、フィルムカメラ試し撮りもオーライですな。これは素晴らしい。B館にはスターバックスコーヒーがあるので、カメラを見すぎて沸騰した頭をアイスコーヒーで冷やしたり、写真集とか見た方がいいんじゃないかなあ。みんな冷静になろうぜ!
3F BOOKラウンジ&PRINTフロアでは、フィルム現像とプリントを受け付ける。また、写真関連の雑誌や書籍も販売。併設するスターバックス・コーヒーで飲み物を購入して飲食することが可能。
2F 新品カメラ販売
ああ、これでやっと帰れるのか、めでたしめでたしとか思って、2Fに降りてみたわけですが、ここには最後の危険な罠が待ち受けていました。ここのA館には「新品カメラ」が販売されているわけなんです。
スペース的にはさほど広くない。しかーしですね、各メーカーごとに分けられた美しい白い基調のウィンドウの中に整然並べられた製品展示が、もうおまえさ、メーカーのショールームやるのかよっていうカッコよさなわけです。いや、メーカーのショールームのディスプレイよりも凄いのではというブランドもありますぜ。品揃えや在庫も豊富で、量販店のカメラ売り場にも負けていないようです。私はここで降参しました。もうヤメてください、お願いします。もうカメラでお腹いっぱいです。はい、私が悪うござんした。 1F フォトライフ雑貨フロア
ボロボロになって1FのA館に降りてきました。ここにはカメラ店らしくない新宿の巨大なジオラマがっ!スゲー。これ自由に写真撮れまずよ。
1Fにある新宿のスゲーでかい1/1000サイズのジオラマ模型。あー、こういうのがあるのを最初から知ってたら、シフトレンズで逆アオリかましてやったのに。

新宿御苑方向からみたジオラマですが、精巧ですね。

あとは若者が好きそうなフォトライフ関連雑貨用品が。自由が丘のカメラ店とかにありそうなかわいいアクセサリーとか、トイカメラ的なデジカメとか。もちろん若者ではなくて、ジジイも購入できるそうです。B1 Apple製品修理
そして、B1フロアは、Appleの修理サービスもあって、おおこれは。うちのボロいiPhoneとか今度持ち込んでやろうかと。 〜新宿 北村写真機店はスゴかった!〜
こうして駆け足で正式開店直前の「新宿 北村写真機店」を見てきたわけですが、「カメラが売れない」とか騒ぐ前に、メーカーの方々も他のカメラ販売店の人も現代の写真ライフスタイルはどのようなものかをあらためて見直した方がいいのではと思ったわけです。私は安堵しました。つまり、スマホの普及でカメラが必要なくなった世の中といわれても、じつは本格派のベテラン写真愛好家から、写真好きな若者の数は減りはしないし、むしろ写真を撮る人は増える一方で、少しでも写真に興味のある人なら、次のステップとして必ず「カメラは欲しくなる」わけです。
少し偉そうに言えば私は入り口(インプットするカメラ)を売るなら出口(アウトプットするプリント)が必要で、なおかつそこから発展して展示や、ZINEのようなお手軽な写真集を作ることでも、写真の楽しみをひとりでも多くの人に知ってもらいたいと考えているわけですわ。カメラメーカーもカメラを売るだけではなくて、ギャラリーや写真教室で一生懸命やって、写真ライフのサポートをしているけれど、販売側でこれほど大規模にカメラをライフスタイルのひとつとして取り入れた店舗はないんじゃないですかねえ。
最後に繰り返すけど、「カメラのキタムラ」ではなく、「新宿 北村写真機店」という店名がすべてを表しています。この店は「カメラ・写真のワンダーランド」を目指しているわけですわ。日本のみならず、全世界の写真・カメラ人類はいちど訪問してみることをおすすめします。
新宿 北村写真機店で見つけた逸品・赤城耕一セレクション

ノーマルのライカM6ですね。しかもライツ時代の刻印ありの初期型。パンダじゃないシルバークロームね。これにコシナ・ツァイスのビオゴンT*35mmF2ZMつけてと。がんばるとイケる価格。

ライカM4-2ゴールド。不人気のM4-2ですがゴールドモデルあったんでした。これも最近見ないですね。実際に使う人はいないからだろうけどね。普通のM4-2よりもよく写ることは知られていないな。

シリアル640万台のニコンFね。残念ながら布幕ではないけど、往時の雰囲気が漂うわけです。もうニコンFなら何台でも欲しいのですけどね。

たぶん15年ぶりにみた、ローライフレックス2.8Fプラチナ。銘板の一部が取れていて、価格もお安め。すごい欲しい!HFTコーティングされたプラナー80mmF2.8の凄さは意外と知られていない。

たぶん、ズイコー5cm F1.5。ライカスクリューマウント。これは初見ですね。というかズイコーにこんなものあったのですか?試作レンズが何らかの形で外に出てきたのかしら。

ソニーα7Rね。程度良好。ソニーは新型機でても旧モデルがなかなかディスコンにならないから、メンテも安心だし、精神的にもよろしい。長く使えますよね。

ニコンZ50。本題とは関係ないけど、ニコンはZやるなら最初はこれ出しとけよと強く思ったモデルね。もう中古あります。これもかなり欲しい。在庫数台あったし。どうするかなあ。
新宿 北村写真機店
住所:〒160-0022 東京都新宿区新宿3丁目26-14
営業時間:10:00〜22:00(カフェは、8:00〜23:00)
休日:年末年始
https://kitamuracamera.jp/
*2020年7月3日オープン  | 赤城耕一 東京生まれ。出版社を経てフリー。エディトリアルやコマーシャルの撮影のかたわら、カメラ雑誌ではメカニズム記事や撮影ハウツー記事を執筆。戦前のライカから、最新のデジタルカメラまで節操なく使い続けている。 主な著書に「使うM型ライカ」(双葉社)「定番カメラの名品レンズ」(小学館)「ドイツカメラへの旅」(東京書籍)「銀塩カメラ辞典」(平凡社) ブログ:赤城耕一写真日録 |