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ショップレポート

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ショップレポート
全国の中古カメラ店と店頭で出合った魅力的なカメラたちを紹介
公開日:2025/02/03

近江寫眞機店 〜東京・笹塚でフィルムカメラ入門の頼れるお店に出会った〜

Photo & Text:鈴木誠
最近のカメラ界隈では、「写真を始める」ではなく「カメラを始める」という言い回しに注目する人が増えています。スマートフォンの普及により“カメラ”が写真の必需品でなくなったことに対するフクザツな思いが胸に去来します。

しかし、それは同時にカメラが必需品を超えた豊かな存在となり、必需品でないからこそ手にしたい、楽しみたい!という気持ちが芽生えていることを意味します。新たなカメラ・写真仲間の誕生を喜びましょう。

今回訪れた近江寫眞機店も、そんな「カメラや写真を楽しみたい!」と考える人々にとって、実にウェルカムでハートウォーミングな雰囲気が漂うお店でした。


■銀塩モノクロにハマった写真部時代。実用派の品揃え

この近江寫眞機店が東京・笹塚にオープンしたのは2022年4月。“近江”は滋賀出身の曾祖父にちなんだ名前だと、代表取締役の吉田英哲さんは話します。


近江寫眞機店 代表取締役の吉田英哲さん

店舗は昔ながらの建物をリノベしており、白基調に鮮やかなブルーの外観が目印です。個人のカメラ店というと初見ではハードルが高く感じることもありますが、その気持ちを知っているからこそのオープンでウェルカムな姿勢が、この明るい店舗デザインに表現されています。


明るい内装に誘われます。


入口の目の前に展開する、おすすめコーナー。オリンパスPENを中心としたハーフサイズカメラが並びます。


ちょっとしたスペースにも様々なアイテムが並び、目を楽しませてくれます。

代表の吉田さんがカメラに目覚めたのは、大学時代に所属した写真部。ようやく写真部でもデジタルカメラを使うことが“解禁”されたというタイミングだったそうで、まだまだ主流はフィルムカメラ。そのため自然とフィルムカメラに親しみ、フィルムの手現像や写真プリントの手焼きを行ってきた経験から、今でも銀塩モノクロの奥深さが好きとのこと。化学反応で生まれる乳白に「フィルムならでは」の魅力を感じていると語ってくれました。

そのため近江寫眞機店はフィルムカメラをメインに扱い、中古カメラの品揃えも「これから始める人に使ってもらいたいカメラ」がコンセプト。その言葉通り、実用的なカメラが揃っていました。


フィルムの一眼レフカメラやコンパクトカメラ、交換レンズが並びます。“オールドコンデジ”の人気ぶりも実感しているそうです。


カメラケースやクリーナーなどアクセサリー類も用意。「すぐ撮りに行けるように」との考えで、一通りのアイテムが揃います。


となると欠かせないのはフィルム。QRコードを読むと作例写真が表示され、どんな写りのフィルムなのかをチェックできます。さすが、イマドキのカメラ好きの気持ちをご存じです。


コダックのUltraMax 400やGold 200が人気で、外国人観光客には富士フイルムのフィルムが好まれるそうです。

来店する年齢層は20〜30代を中心に、70代後半まで幅広いとのこと。多くはお店の近くに住んでいる方々だそうで、昔ながらの写真屋さんのように地域に根ざした存在なのだなと感じます。「仲間がフィルムカメラを使っているから」という理由で訪れる若い人や、“渋谷の端っこ”という立地からファッション感度の高い人達も多く訪れるそうです。

最近のお客さんの動向を聞きました。フィルムカメラの人気は根強いそうで、ニコンやペンタックスの一眼レフが注目されつつも、オリンパスOM-1がその小ささで人気だったり、“オールドコンデジ”の中ではキヤノンのIXYシリーズを指名買いする人が多いそうです。AFコンパクトカメラはプレゼント需要もあるのだとか。


35mm一眼レフの中でも小型軽量なオリンパスOMシリーズ。特にOM-1が人気とのこと。


カウンターのガラスケース内には、ライカをはじめとする舶来系のカメラも。ライカのMマウントレンズは人気が高く、すぐに売れてしまうそうです。


実は、お店の裏手にジャンクヤードもあります。研究目的のマニアな方はこちらもどうぞ。

そして展示品の中から、いくつかのカメラをピックアップしました。在庫や価格については取材当日の情報ですのでご了承ください。


明るい店内、黒塗りのニコンがひときわ存在感を放っていました。F2にアイレベルファインダーは珍しいなと思っていたところ、プロが使っていた品だとか。操作部近辺のペイントが剥げて地色が出ている貫禄がたまりません。ちょうどモータードライブ付きのF3Pも目に入ったので、家族写真に加わっていただきました。

左:ニコン F ブラック アイレベル(B:並品)  44,000円
中:ニコン F3P+MD-4(A:美品)  110,000円
右:ニコン F2 ブラック アイレベル(B:並品)  44,000円




さまざまなマウントのカメラが並ぶので、最初の1本にオススメなものや、人気のあるレンズをピックアップしてもらいました。おすすめしたいレンズほどすぐに売れてしまうようで、興味がある人はマメにチェックしましょう。

キヤノンのマニュアルフォーカスレンズ、FD28mm F2 S.S.C.はFDレンズの中でもピンポイントで人気が高まっている1本。約50年前のレンズですが、フローティング機構の採用など意欲的な製品だったことが伺えます。手前の2本はライカスクリューマウント用。開放F値が抑えめな小型レンズで軽快にスナップするのもレンジファインダーカメラの“粋”なのです。

上左:ペンタックス smc PENTAX-A MACRO 50mm F2.8(B・並品)  17,600円
上中:キヤノン FD28mm F2 S.S.C.(M:整備点検済)  165,000円
上右:オリンパス AUTO-MACRO 50mm F2(AB:良品)  48,400円
下左:ライカ Summaron 3.5cm F3.5(M:整備点検済)  110,000円
下右:シュタインハイル・ミュンヘン Orthostigmat VL 35/4.5 US-Zone(M:整備点検済)  99,000円




“高級コンパクトカメラ”と呼ばれる、モノとしての存在感にこだわったスタイリッシュなフィルムカメラが1990年代には多く登場しました。その中で本機はいくぶん手に入れやすい価格帯といえるモデル。元箱も付属しておりタイムカプセル気分を味わえそうです。今となっては珍しく、しかし明らかに“あの時代”を象徴するスタイリングに尊さを感じますね。カッコいいコンパクトカメラはAPSフィルム使用機だったりすることも多いですが、こちらは35mmフィルム使用機なのでフィルムの調達にも苦労しません。

富士フイルム TIARA II 28mm F3.5(AB:良品)  55,000円



吉田さんの思い入れで選んでもらった1台は、レンズ部とモニター部の角度を変えられる“スイバル”と呼ばれる機構が特徴のデジタルカメラCOOLPIX 950。デジカメ黎明期の1999年に登場したモデルで、最近の常識が通用しない独特なボタン操作系に時の流れを感じます。とはいえ記録メディアはCF、使用電池も単3形なので、今でもそこまで使用上の苦労は少なそうです。流行りのオールドコンデジでも硬派にキメたい方はぜひ。

ニコン COOLPIX 950(B:並品)  9,900円


■優しい先輩みたいなカメラ店

フィルムの現像やプリントについては、近くの専門業者と提携。データ化も含めた一連のサービスを案内できるそうです。フィルム現像は、増感/減感現像、クロスプロセス現像の依頼にも応えられるとのこと。個性的なカメラやフィルムを使いたい場合には、こうしてカメラリテラシーの高いお店が窓口になってくれるとスムーズですね。
機材のメンテナンスについても、外観清掃やモルトプレーンの張り替えといった軽作業であればその場で対応可能とのこと。
また、カメラのレンタルサービスも実施しています。1泊2日で1,100円〜という価格設定で、特に中判カメラが人気。カメラボディだけ、交換レンズだけのレンタル品もあるので、Webサイトも併せてチェックしてみてください。

ぐるっと見渡せるほどのコンパクトな店内に、カメラと写真の楽しみがギュッと詰まった近江寫眞機店。カメラライフの1日目から全力サポートしてくれる、優しい先輩みたいなお店でした。

<ショップ情報>
近江寫眞機店
〒1510073 東京都渋谷区笹塚3-37-2
TEL:03-5843-5202
営業時間    11:00〜19:00
定休日    月曜日
最寄り駅:京王線 笹塚駅
ショップサイト:https://oumishashinki.com


鈴木 誠(すずき・まこと)
ライター。カメラ専門ニュースサイトの編集記者として14年勤務し独立。会社員時代より老舗カメラ雑誌やライフスタイル誌に寄稿。現在は楽器やオーディオ&ビジュアルの専門誌にも関わる。趣味はドラム/ギターの演奏とドライブ。日本カメラ財団「日本の歴史的カメラ」審査委員。YouTubeチャンネル「鈴木誠のカメラ自由研究」
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