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オールドレンズ・ライフ

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オールドレンズ・ライフ
公開日:2013/05/15

Switar 25mmF1.4 H16 RX / Cine Ektar II 25mmF1.9

photo & text 澤村 徹

Cine Lens Selection for Beginners

シネレンズの種類は膨大だ。その中から、個性的な描写を堪能でき、入手性がよく、なおかつリーズナブルな価格で購入できるものを選んでみた。シネレンズビギナーの最初の1本として、お薦めしたいレンズ群である。

収差が踊る高画質トイレンズ

Switar 25mmF1.4 H16 RX

周辺の強烈な流れ方は、このレンズならではの描写だ。スイターのRXタイプはミラーレス機だと過剰補正となり、発色にもパンチがある。
Olympus PEN E-P3 + Switar 25mmF1.4 H16 RX 絞り優先AE f2 1/1000秒 −0.7EV ISO200 AWB RAW

まず周辺部を見てほしい。塗り立ての油彩画をこすったかのように、像が四方へ流れている。しかし中央部に目を転じると、ハイコントラストで色ノリよく、しかも精緻な描き方だ。このギャップこそが本レンズのおもしろさだ。1枚の画にローファイとハイファイが同居し、さながら高画質トイレンズのような仕上がりである。なお、マイクロフォーサーズとの組み合わせでは、F5.6あたりでケラレが目立ってくる。

C Mount
Kern
Switar 25mmF1.4 H16 RX

中古価格:20,000〜45,000円

1956年、スイスのケルン社がボレックスH-16レフレックス向けに供給した標準レンズだ。このムービーカメラはレンズの後にプリズムがあり、光量の30%をファインダーに、70%をフィルムに送る仕様だった。対応レンズは分光を見越した補正が行われていたという。




エクターとは高性能の称号である

Cine Ektar II 25mmF1.9


25ミリのわりにイメージサークルが広く、周辺部まで葉一枚一枚が解像し、実にシャープな描き方だ。黄色かぶりがコダックらしさを感じさせる。
Olympus PEN E-P1 + Cine Ektar II 25mmF1.9 絞り優先AE f2.8 1/25秒 ISO200 AWB RAW

コダックのエクターは、高性能レンズに与えられるブランドネームだ。特定のレンズ構成を示すわけではなく、ハッセルブラッドのコマーシャルエクター、シグネット35のエクター44ミリなど、エクターの名を冠したものはシャープなレンズとして定評がある。このシネエクターII 25ミリF1.9もその称号に相応しく、シャープで色ノリのよい描写だ。やや黄色かぶりする傾向があり、人工色を撮ると手軽にキッチュなテイストを楽しめる。
本レンズはコダック独自のSマウントを採用しているが、純正S−C変換アダプターでCマウント化できる。購入時はS−C変換アダプター付きのレンズを狙うとよいだろう。



Kodak S Mount
Kodak
Cine Ektar II 25mmF1.9

中古価格:25,000〜35,000円

シリアルナンバーによると、1956年に製造された個体だ。エクターのシリアルは先頭の二桁がアルファベットになっていて、「CAMEROSITY」が「1234567890」に呼応している。25mmF1.4という種類もあるが、マイクロフォーサーズとの組み合わせではケラレが目立つ。

<プロフィール>


澤村 徹(さわむら てつ)
1968年生まれ。法政大学経済学部卒業。オールドレンズ撮影、デジカメドレスアップ、デジタル赤外線写真など、こだわり派向けのカメラホビーを得意とする。2008年より写真家活動を開始し、デジタル赤外線写真、オールドレンズ撮影にて作品を制作。近著は玄光社「アジアンMFレンズ・ベストセレクション」「オールドレンズを快適に使うためのマウントアダプター活用ガイド」、ホビージャパン「デジタル赤外線写真マスターブック」他多数。

 

<著書>


アジアンMFレンズ・ベストセレクション



オールドレンズを快適に使うためのマウントアダプター活用ガイド



ソニーα7 シリーズではじめるオールドレンズライフ