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ソニーα7 オールドレンズ・クロスレビュー

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ソニーα7 オールドレンズ・クロスレビュー
公開日:2014/01/09

ソニーα7R+LEICA SUMMILUX M35mm F1.4 ASPH / ELMAR M90mm F4.0

photo & text 大浦タケシ


オールドレンズを愛して止まないレンズグルメから熱い注目を浴びるソニー「α7R 」と「α7」。2回目となる今回はα7Rを紹介するとともに、ライカMマウントレンズ2本をレビューする。
 

α7Rか?α7か?


α7Rとα7の違いは大きく2つ。イメージセンサーと電子先幕シャッターの有無である。α7Rのイメージセンサーは有効3600万画素。有効2400万画素のα7でも十分すぎるほど高精細であるが、さらに輪をかけたものとなる。加えてローパスフィルターレスとするので、解像感の高さは圧倒的だ。その描写は高精度なレンズ検査機といっても差し支えないほど緻密なもので、交換レンズの描写特性を手に取るように見極めることができる。ただし、言い換えれば交換レンズの“粗(あら)”も一目瞭然というわけで、そのことを理解した上でオールドレンズでの撮影を楽しむ必要があるだろう。

さらに、すでにWebなどでは話題となっているが、テレセントリック性の劣る交換レンズ(多くの場合フランジバックの短い広角レンズ)を装着した場合、α7よりも画面周辺部にマゼンタ色の偽色が現れやすい。これは高画素であるためイメージセンサーのフォトレンズ開口部が小さくなってしまい、奥にある受光素子まで完全に光が届かないことが影響していると推測される。しかし、安心して欲しい。昨年暮れにカメラ内蔵用のアプリ「
PlayMemories Camera Apps」に「レンズ補正」が登場している。1,000円の有料アプリとなるが、交換レンズおよび絞り値ごとにプロファイルをつくることができ、この偽色の発生にも対応する。「レンズ補正」には、そのほか周辺光量、倍率色収差、歪曲収差の補正も可能としているので、α7ユーザーも含めオールドレンズファンはインストールして損のないアプリといえる。


電子先幕シャッターについては、α7Rでは省略されている。メカシャッターよりもシャッターのタイムラグは少ないものの、動いているものが歪んだり、オールドレンズを装着すると高速シャッターではムラが発生しやすく完璧な機能とはいい難いところもあるので、これはこれで割り切って考えてよいだろう。特に風景などの撮影では不足を感じることはないはずだ。それ以外の細かな違いとしては、シャッターボタン脇にあるC1ボタンで呼び出せる拡大表示の違いがある。α7では5.9倍と11.7倍であるのに対し、α7Rでは7.2倍と14.4倍と拡大率がアップ。より精密なピント合わせを可能としている。

 

α7Rでオールドレンズを使うメリット


ここからはα7R/α7にMマウントレンズを装着したときの話しに移そう。α7R/α7には、一眼レフ用交換レンズよりもはるかに短いフランジバックを持つMマウントレンズも装着が可能だ。ちなみにα7R /α7の採用するEマウントのフランジバックは18.0mm。ミラーボックスのないライカMマウントでさえ27.8mmなので、いかに短いものであるか分かるだろう。今回はメタボーンズ製のマウントアダプターを介し、「ズミルックス-M 35mmF1.4 ASPH.」と「エルマー9cmF4」を装着している。

実はレンジファインダー用の交換レンズをミラーレスで使うメリットは多い。その最たるものがフォーカスとアングルのふたつの精度だ。レンジファインダーでは、近接撮影になればなるほど、また焦点距離が長ければ長いほどフォーカスの精度もアングルの精度も低下していく。ピントをしっかり合わせたつもりでも微妙に外れてしまうことがあったり、思ったようなアングルで撮れてなかった経験を持つレンジファインダーのユーザーも少なくないことだろう。これはフォーカシングを距離計に依存しなければならず、撮影レンズとファインダーのビューレンズの位置が異なることが要因といえる。

撮影レンズを通った光をスルー画としてEVFや液晶モニターで直接見られるミラーレスではその心配はまったく不要だ。当然撮影レンズとファインダーのパララックス(視差)の発生もなく、アングルもスルー画で見たままの結果が得られる。前ボケを画面に入れたい場合でも、レンジファインダーのように試行錯誤する必要はまったくない。なお作例は、そのようなミラーレスならではのメリットを活かしたものを掲載している。いわゆる“引き”の写真がないのはそのためなので、ご承知おき願いたい。


 
 LEICA SUMMILUX M35mm F1.4 ASPH
 
  ズミルックス-M 35mmF1.4 ASPH.(バージョン2)を装着したα7R。コンパクトなMマウントレンズとは見た目のバランスもよい。


ズミルックス-M 35mmF1.4 ASPH.(バージョン2)は、クセ玉といわれた初代ズミルックス35mmF1.4の血統を引く交換レンズ。ただし、初代ズミルックスは開放では極端に柔らかい描写が特徴であるが、本レンズは非球面レンズを使った現代の交換レンズらしく開放からシャープだ。ゆえにフォーカスの精度がより要求されるわけだが、α7R /α7ではもちろんその心配は無用である。スルー画の拡大機能を使えば、撮影距離に関わらず正確なピント合わせが楽しめる。掲載した作例のなかには開放絞り、最短撮影距離、前ボケありというレンジファインダー機の場合では厳しい条件で撮影したものもあるが、α7R /α7では卒なく撮影が楽しめる。本レンズは比較的タマ数も多いので、中古でも見つけやすいことだろう。


  撮影距離は最短の70cm、手前にキャンドルグラスを配置するなど、レンジファインダー機では思い通りのアングルが決めにくい撮影条件であるが、ミラーレスであるα7Rなら卒なくこなす。
α7R・ズミルックス-M 35mmF1.4 ASPH.・絞り優先AE(絞りf1.4)・WBオート・ISO3200・JPEG

  ライカMマウントレンズでも、正確にアングルを決めて撮影することが可能。被写体の位置、ボケの大きさなど確信を持ってシャッターを切ることができる。
α7R・ズミルックス-M 35mmF1.4 ASPH.・絞り優先AE(絞りf1.4)・WBオート・ISO100・JPEG

  α7Rなら、パララックスがまったくないため、被写体と背景の位置関係をリアルに把握することができる。ひいてはシャッターチャンスにも強いということだ。
α7R・ズミルックス-M 35mmF1.4 ASPH.・絞り優先AE(絞りf1.4)・WBオート・ISO100・JPEG

  露出の状況がリアルタイムにスルー画に反映されるため、露出の判断もミラーレスなら容易。もちろん被写界深度の状況やボケの大きさについても同様だ。
α7R・ズミルックス-M 35mmF1.4 ASPH.・絞り優先AE(絞りf8.0)・WBオート・ISO100・JPEG


 
 LEICA ELMAR M90mm F4.0
  沈胴タイプの鏡筒が特徴的な中望遠レンズ、エルマー9cmF4。クローム仕上げの鏡筒が美しい。製造から60年ほど経つものであるが、現代のレンズに負けずとも劣らない描写が得られる。

もう一方のエルマー 9cmF4は沈胴タイプで、ヘリコイドリングの凸凹の出っ張ったほうにローレット加工の施される前期タイプ。クローム仕上げの鏡筒が美しいオールドレンズで、α7R /α7のシェイプとよく似合う。焦点距離が長いだけにレンジファインダー機での使用ではフォーカス、アングルとも気を使うものであるが、α7R /α7ではその心配は無用。ミラーレスでこそこの交換レンズの真価が発揮されるといってよいほどだ。描写はピントの合った部分の解像感は良好で、ボケ味も濁りなどなく柔らかい。シングルコートなので逆光では厳しいことがあるものの、光の条件さえよければ現代の交換レンズと見劣りするようなことはないといえる。


  トルソーを撮影したつまらない写真なのだが、それよりもカメラ寄りにある雪の結晶をイメージした飾りに注目。レンジファインダー機と異なり思いどおりの位置に前ボケさせたい被写体を配置できる。
α7R・エルマー9cmF4・絞り優先AE(絞りf4.0)・WBオート・ISO100・JPEG

  これも上の作例と同じだ。焦点距離が長くなるほど、そして撮影距離が短くなるほどレンジファインダーではパララックスが大きくなっていくが、α7R/α7ではその心配は無用。
α7R・エルマー9cmF4・絞り優先AE(絞りf4.0)・WBオート・ISO100・JPEG

  複雑で連続するような模様の被写体もα7Rならピント合わせに戸惑うことがない。直接スルー画で精度の高いピント合わせが可能だ。
α7R・エルマー9cmF4・絞り優先AE(絞りf4.0)・WBオート・ISO100・JPEG

エルマー9cmF4の最短撮影距離、および絞り開放で撮影。フレーミング時に画面にバランスよく被写体を配置した。ピントはケトルの蓋に正確に合わせた。
α7R・エルマー9cmF4・絞り優先AE(絞りf4.0)・WBオート・ISO100・JPEG

オールドレンズ使用時の留意点

最後に沈胴タイプや後玉の突出した交換レンズなどをα7R /α7で使用する場合、留意が必要だ。いずれの場合もフランジバック内にその長さは収まるわけだからイメージセンサーを傷つけることはないと思いがちだが、その直前にあるシャッター幕とぶつかってしまう可能性があるのだ。超高速で動くシャッター幕がレンズ後端とぶつかったらどうなるか、想像しただけでも恐ろしい。そのような交換レンズをα7R /α7に装着する際は、扱いに十分注意してほしいと思う。
 著者プロフィール
  大浦タケシ(おおうら・たけし)

宮崎県都城市生まれ。日本大学芸術学部写真学科卒業。紆余曲折した後、フリーカメラマンとなり、カメラ誌、Webマガジン等でカメラおよび写真に関する記事を執筆する。中古カメラ店巡りは大切な日課となっており、”一期一会”と称して衝動買いした中古カメラは数知れず。この企画を機に、さらに拍車がかかる模様。2006年よりカメラグランプリ選考委員。