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新製品レビュー
公開日:2025/12/08

キヤノン EOS R6 Mark IIIとRF45mm F1.2 STM実機レビュー

Text & Photo : 鹿野貴司


去る11月6日、キヤノンからEOS R6 Mark IIIとRF45mm F1.2 STMが同時に発表された。その模様は当サイトでも 速報でお伝えした が、両方の実機をお借りすることができたので、印象などを深堀りしていこうと思う。※実売価格は各製品発売当初のキヤノンオンラインショップ販売価格を参照

個人的な話で恐縮だが、僕は10月にEOS R5 Mark IIを購入したばかり。直後に弟分のモデルチェンジが発表され、正直いわゆる“下剋上”が気になった。しかし結論から言えばEOSの“5”と“6”にはしっかりと役割分担があり、EOS R6 Mark IIが正常進化したという印象だ。もちろん新しさゆえEOS R6 Mark III(以下・本機)のほうが優位な部分もあるが、その機能が必要かどうかは個々人の話。基本性能は近いだけに迷うところかもしれない。

デザインはそのEOS R5 Mark IIのほか、EOS R1やEOS R3といった現行の上位機種に通じる、なだらかな曲線を特徴とするもの。その上位3機種が外装にマグネシウム合金を採用しているのに対し、本機はシャーシなど一部はマグネシウム合金だが、メインはポリカーボネート樹脂。かといって質感が低いということはなく、塗装は黒がより締まって精悍な印象を受ける。個人的にはグレーががったEOS R5 Mark IIよりこちらのほうが高級感があって好みだ。ちなみにサイズはEOS R5 Mark IIとほぼ変わらないが、重量は本機のほうが47g軽く、5.1mm薄いこともあって程よい軽快感がある。


「Canon」のロゴ周辺のエッジは、上位3機種よりシャープに仕上がっている。


操作系はきわめてオーソドックス。上位3機種は「MODE」ボタンと、それを囲むダイヤルによってモードを切り替えるのに対し、本機は直感的に操作できるモードダイヤルを搭載。僕自身は「MODE」ボタンによる操作にメリットを感じていないので、ワンアクションで操作できる本機のほうが好みだ。他のボタンやダイヤルも質感や感触は良好。上位機種のサブとして使っても不満はないと思う。


モードダイヤルは背を低く抑える一方、周囲にひし形のローレットを刻み、誤操作を防ぎつつ回しやすくなっている。


EOS R6 Mark IIとボタンやダイヤルの配置もほぼ一緒だが、全体的に凹凸を高めることで操作性を高めている。背面液晶は初代・前型に続きバリアングル式だ。


スペックをみていくと、約3250万画素フルサイズCMOSセンサーを搭載。ここが最新技術を盛り込んだ裏面照射積層CMOSセンサーを搭載するR5 Mark IIとの大きな違いだが、撮影した画像で目立った違いや不満を感じることはなかった。画素数もEOS R6の約2010万画素、そしてEOS R6 Mark II(以下・前型)の2420万画素から大幅にアップ。「なぜEOS RやEOS RPより画素数が少ないんだ…」というEOS R6シリーズユーザーの不満はひとまず解消されるだろう。

今回の実写では本来の性能を確かめるべく、レンズはRF45mm F1.2 STMだけでなく、私物のRF24-105mm F4 L IS USMも使用している。Lレンズで撮影した画像はやはり精細感やメリハリがあり、一眼レフ時代のEOS+EFレンズから薄皮が1枚も2枚もむけたように感じる。その要因にはもちろんレンズの性能向上もあるだろうが、それも含めてまだEFマウントのEOSを使っているユーザー(結構多いらしい)も本機に乗り換えるメリットは大きいはずだ。


キヤノンEOS R6 Mark III
RF24-105mm F4 L IS USM(35mmで撮影)
絞り優先オート(-2/3補正)
F8
1/160秒
ISO125


キヤノンEOS R6 Mark III
RF45mm F1.2 STM
絞り優先オート
F1.2
1/1000秒
ISO100


キヤノンEOS R6 Mark III
RF24-105mm F4 L IS USM(61mmで撮影)
絞り優先オート
F5.6
1/125秒
ISO125


高画素化の影響で唯一前型からスペックダウンしたのが常用ISO感度。上限がISO102400からISO64000とやや下がったが、そこまでの感度を使うのはかなり特殊な状況で、むしろ連写速度はメカシャッターと電子先幕で最高約12コマ/秒、電子シャッターで最高約40コマ/秒と据え置かれるなど、基本性能はアップしている。とりわけメリットが大きいのが連続撮影可能枚数。電子シャッター+高速連続撮影+でRAW約75枚から約150枚、JPEGで約190枚から約330枚と、大幅に増えている。他にも最大20枚、0.5秒までさかのぼって記録できる静止画プリ連続撮影や、上位機種で定評のあるAFの登録人物優先機能を新たに搭載するなど、キープコンセプトながら確実に前型からスペックアップしている。


カードスロットがダブルなのは前型までと同じだが、記録媒体がSDカード+SDカードから、CFexpress Type Bカード+SDカードに。CFexpress Type Bカードは価格がぐっとこなれてきたし、何より書き込みも読み込みも格段に速い。これは納得の変更だ。


一方でやや期待外れだったのがファインダーで、0.5型OLED・約369万ドットは前型と変わらず。EOS R5 Mark IIの約576万ドットが見やすく、これと同じだったらいいのに…と思ったのだが、実売価格が約15万円違う以上致し方ないところか。この約15万円という差をどう考えるかだが、比べるとたしかにEOS R5 Mark IIにはそれだけのアドバンテージがある。一方で大半のユーザーは本機でも十分満足できるはずで、差額の15万円分をレンズ購入に充てるほうが幸せになれるのではないだろうか。



キヤノンEOS R6 Mark III
RF45mm F1.2 STM
絞り優先オート
F1.6
1/8000秒
ISO100


キヤノンEOS R6 Mark III
RF45mm F1.2 STM
絞り優先オート
F1.2
1/1600秒
ISO100


キヤノンEOS R6 Mark III
RF24-105mm F4 L IS USM(28mmで撮影)
マニュアル露出
F22
1秒
ISO100


というわけでここからは15万円あれば2本買ってもお釣りがくるRF45mm F1.2 STMの話を。


発表会ではEOS R6 Mark IIIよりこちらが注目を集めていた印象だった。

光学設計にあたって参考にしたのは、2007年1月に発売されたEF50mm F1.2L USM。このレンズは僕も愛用していたが、柔らかいのに色はこってり濃厚な魅惑のレンズだった。それと同じレベルの解像力を持つというが、発売時の税別価格で比べるとEF50mm F1.2L USMの18万5000円に対し、RF45mm F1.2 STM(以下・本レンズ)は6万円となんと1/3以下。18年間の物価上昇や為替変動も加味すると、恐るべき価格設定である。


キヤノンEOS R6 Mark III
RF45mm F1.2 STM
絞り優先オート
F1.8(多重露光、アウトフォーカスはF1.2)
1/160秒
ISO500


キヤノンEOS R6 Mark III
RF45mm F1.2 STM
絞り優先オート(+2/3補正)
F1.2
1/125秒
ISO2000


キヤノンEOS R6 Mark III
RF45mm F1.2 STM
絞り優先オート
F1.2
1/125秒
ISO250


もちろん安いのには理由がある。レンズ構成こそそっくりなものの、EF50mm F1.2L USMはコストの高い大口径非球面レンズを用いたのに対し、本レンズはプラスチックモールド非球面レンズを採用。AFモーターもUSMからSTMになり、小型化とコストダウンに成功している。EF50mm F1.2L USMは590gで数字以上にずっしりとした感触があったが、本レンズは346gととにかく軽い。まあ昔の標準レンズはRF50mm F1.8 STMのように、これよりも小さくて軽いのが当たり前だったのだが。



またこれは賛否が分かれそうだが、焦点距離を50mmではなく45mmと、フルサイズセンサーの対角線長43mmに近づけた。RFマウントの50mmはキャラクターの異なる3本がすでに存在しており、それらとの棲み分けという点で当然ともいえる。ただボケをウリにする一方で望遠寄りではなく、広角寄りにシフトしたのは意外だった。ポートレートを撮る人はガッカリかもしれないが、45mmは肉眼と近い遠近感を持ち、常用レンズとして50mmよりオールマイティーに使えるはずだ。



キヤノンEOS R6 Mark III
RF45mm F1.2 STM
絞り優先オート(+2/3補正)
F1.2
1/4000秒
ISO100


キヤノンEOS R6 Mark III
RF45mm F1.2 STM
絞り優先オート
F4
1/500秒
ISO100


描写の個人的な印象は「2000年前後の大口径レンズ」。オールドレンズにありがちなフワフワやグルグルといった癖はなく、中心部は絞り開放でもシャープ。繊細というより線がやや太めで、ボケ味を重視したためか、わずかに球面収差が残る。また軸上色収差が強く、四隅もそこそこ甘め。点光源が写る状況では非点収差も目立つ。これらの収差を「写真らしい写真」の要素としてポジティブに生かすのが、このレンズのキモだと思う。ちなみに絞ると球面収差が消えてふつうにシャープな写りをする。

もうひとつ、描写をつかさどる要素が逆光。こちらもオールドレンズのように逆光=ハレーションということもなく、角度によっては盛大にゴーストやフレアが発生するが、少しレンズを振っただけで目立たなくなることも。まさに2000年前後の大口径レンズのようで、不自由でもあり、自由でもある。


キヤノンEOS R6 Mark III
RF45mm F1.2 STM
絞り優先オート(−2/3補正)
F1.2
1/250秒
ISO100


キヤノンEOS R6 Mark III
RF45mm F1.2 STM
絞り優先オート
F1.2
1/6400秒
ISO100


しかしEF50mm F1.2L USMは焦点移動(絞ることでピントがわずかに変動すること)があり、発売当時は否定的な人が多かった。それがこうして手頃な価格でリバイバル。発売直後から品薄状態が続いているのを見ると、率直におもしろいと思う一方、キヤノンって懐が深いというか、ユーザーの心を掴むのがうまいなぁ…と思う。次はカメラでもこんなおもしろい企画をぜひお願いしたい。
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鹿野貴司(しかの たかし)

1974年東京都生まれ。多摩美術大学映像コース卒業。さまざまな職業を経て、フリーの写真家に。広告や雑誌の撮影を手掛けるほか、ドキュメンタリー作品を制作している。写真集『日本一小さな町の写真館 山梨県早川町』(平凡社)ほか。著書「いい写真を撮る100の方法(玄光社)」

ウェブサイト:http://www.tokyo-03.jp/
Twitter:@ShikanoTakashi

<著書>

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