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単焦点レンズで世界を変える!

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単焦点レンズで世界を変える!
公開日:2015/04/09

トキナー Reflex 300mm F6.3 MF MACRO

photo & text 赤城耕一

Panasonic GM + Tokina Reflex 300mm F6.3 MF MACRO

ポケットに入る超望遠で新たな世界の扉を開く


トキナーレフレックス300mmF6.3 MFマクロはマイクロフォーサーズマウントの反射望遠レンズである。35mm判換算で600mm相当の画角を得ることができる。反射望遠レンズの利点はシンプルな光学系で小型軽量化できること。本レンズも全長は66mm、重量は298グラム。手のひらに載る600mmレンズとして考えると、脅威ともいえる小型軽量さであり、コートのポケットにも入る。実際に手に取ってみるとびっくりするほど小さい。
最短撮影距離はなんと0.8mで、本レンズに「MACRO」と名付けられているのはこのためだ。金属鏡胴の質感は美しく、どのマイクロフォーサーズマウントのカメラにも似合う。一部例外はあるが、一般的なカメラ用の反射望遠レンズは絞り機構が省略されておりMFであることがふつうだ。機構的に難しいのであろうが、本レンズも名称にあるようにMFを採用している。同社のアナウンスでは、MFを採用した理由は、無限遠から最短撮影距離0.8mまでフォーカス角度が大きいこと、画角が4°8′と狭角であり、非常にシビアなピント合わせが要求されることによるものだろう。もちろん小型軽量の追求とコスト面も考慮されていることもこの理由であろう。MFであるためにフォーカスリングには距離指標が刻まれている。また、距離エンコーダーを搭載しているので、カメラ側とのインターフェースは万全。撮影データのExif情報もレンズのデータが反映されて記録される。

最初に本レンズを使用した時は戸惑った。私自身が超望遠を使い慣れていないこともあるのだが、とくに至近距離では被写体を画面内に収めることにも苦労するありさまである。あまりにも画角が狭いこと、フォーカスリングの回転角が大きいことがこの理由だが、しばらくして慣れてくるとその新鮮な視角に目を奪われる。しかも室内でも使うことができるのだ。最短撮影距離が0.8mなのだから当たり前だが、想像してみてほしい、600mmの超望遠レンズを室内で振り回しているさまを、それを本レンズでは簡単に実現してしまったのである。




メーカー
 Tokina
製品名
Reflex 300mm F6.3 MF MACRO
焦点距離
300mm(35mm判換算約600mm)
レンズ構成 3群7枚
最短撮影距離
0.8m
絞り羽枚数
--
フィルターサイズ
55mm
マウント
マイクロフォーサーズ
大きさ/重さ
φ66×66mm/298g
製造年
2012年〜
出会いの頻度
★★★★★
見せびらかし度
★★★★
ポケット収まり度
★★★★
ボケ度
★★★
キレ度
★★★


一般に超望遠レンズは、動物やスポーツ撮影において使用することが多いが、本レンズはMFであり、被写界深度が極端に浅いために動体の撮影はかなり困難をきわめる。鉄道などの撮影で使用する場合は置きピンなどのテクニックを使うなど工夫が必要があるだろう。したがって、その力を生かすのは風景、山岳撮影が主になるだろうか。もっとも最短撮影距離が短い利点を生かして、街の事象を新しい視角で切り取るなど、スナップ撮影で使用することも可能になる。もちろん小型軽量だから手持ちによる撮影もできる。オリンパスOM-Dシリーズなどではボディ内に強力な手ブレ補正機構が内蔵されているものを使用すれば、手ブレの不安からも解放されるためたいへん心強い。ただ、先にも述べたように、あまりにも狭角なので手持ちのままフレーミングを決めて、安定させて撮影するのはかなり難しい。手近にある木や壁、塀を応用して体を安定させるなどの工夫は必要だ。シビアな撮影には三脚を、機動力の必要な撮影には一脚を使用するなどして、カメラの動きを最小限に抑え、フレーミングを安定させて撮影するのがコツである。
描写特性は優秀だ。反射望遠レンズの特性上、色収差の影響がないということもあるが、線の厚みはあるものの、シャープな再現でコントラストも高い。ただ、遠距離にある被写体の場合は大気の状態など、描写は天候にも大きく左右される。自然風景など透明感が必要な場合は注意が必要だ。もっともこのレンズは小型軽量さを生かした機動力が大きな武器である。35mmフルサイズの巨大なレンズを持ち出したはいいが、三脚を取り付けに時間がかかり、セットができたと思った途端に光線状態が変わってしまうなどということもよくある。これまで諦めていたような撮影条件でも機動力を使い、どんどんシャッターを切ってゆくという撮影方法をとりたいものである。
本レンズを完全に使いこなすにはそれなりの技は必要だ。忍耐と努力というか、フォーカスの頂点を見極める技というか、かなりの集中力も必要になるが、ピーキングなどフォーカスを補助する機構を活用することも考えるべきだ。フォーカスを追い込んで、ここぞという頂点を判断したときにシャッターを押す快楽はこのレンズでしか味わえないものだ。
反射望遠レンズは光源ボケなどではドーナツのようなリングボケが発生することもよく知られているが、これを欠点とみるか表現として生かすかは撮影者次第になる。「ポケットに入る600mm」は従来では考えもつかなかった視角で撮影者を魅了してくれることだろう。



超望遠レンズは遠くのものを引き寄せる魅力もあるけれど被写体の魅力ある一部分を切り取るという感覚で使用した方が個人的には面白いと感じている。象の足をクローズアップ。
OLYMPUS E-M5MarkII + Reflex 300mm F6.3 MF MACRO f6.3 1/1600 ISO400 -0.7EV


動体撮影は厳しいけれど、エサを食べているサルは動きが小さいから撮影ができた。撮影距離は15mほどあったが、このくらいの大きさに捉えることが可能になる。
OLYMPUS E-M5MarkII + Reflex 300mm F6.3 MF MACRO f6.3 1/500 ISO400


このサルも日向ぼっこをしていたので動かず、こちらも落ち着いてピント合わせができた。合焦点の線は太い感じだが、コントラストの再現は優秀。顔のシワや毛並みなどの描写もいい。
OLYMPUS E-M5MarkII + Reflex 300mm F6.3 MF MACRO f6.3 1/640 ISO400


桜の花を至近距離で撮影。とはいえ撮影距離は2mくらいの距離である。被写界深度が浅く、わずかな風による花のゆらぎでもフォーカスが外れるのでフォーカシングは難しい。背景にリング状のボケは確認できるが、この条件では見苦しくはない。
OLYMPUS E-M5MarkII + Reflex 300mm F6.3 MF MACRO f6.3 1/1000 ISO400 +0.7EV


50mほどの距離をとって桜を撮影。超望遠特有の遠近感が圧縮されて不思議な効果が出た。超望遠は立体感が失われがちになることがあるが、これを避けるため、斜光になるアングルを選択した。
OLYMPUS E-M5MarkII + Reflex 300mm F6.3 MF MACRO f6.3 1/1000 ISO400 -0.7EV


【メーカーサイト】
Tokina Reflex 300mm F6.3 MF MACRO
http://www.tokina.co.jp/camera-lenses/telephoto-lenses/reflex-300mm-f63-mf-MACRO.html
 
赤城耕一
東京生まれ。出版社を経てフリー。エディトリアルやコマーシャルの撮影のかたわら、カメラ雑誌ではメカニズム記事や撮影ハウツー記事を執筆。戦前のライカから、最新のデジタルカメラまで節操なく使い続けている。

主な著書に「使うM型ライカ」(双葉社)「定番カメラの名品レンズ」(小学館)「ドイツカメラへの旅」(東京書籍)「銀塩カメラ辞典」(平凡社)

ブログ:赤城耕一写真日録
 
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