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単焦点レンズで世界を変える!

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単焦点レンズで世界を変える!
公開日:2015/04/06

「ズームレンズは捨てなさい!」まえがきより

photo & text 赤城耕一
「ズームレンズは捨てなさい!〜3万円単焦点レンズで世界を変える!」
発行にあたって…




ある時のこと。某カメラメーカーの人から相談を受けた。「単焦点レンズが売れない。どうしたらいいでしょう」と。
当然である。多くのレンズ交換式カメラの商品形成を見ると、「標準ズームレンズキット」、「ダブルズームレンズキット」など、カメラキットを当初購入すれば、超広角域から超望遠域までをカバー、森羅万象を対象とした撮影が可能になる。この時点ですでにシステムは完結しているのだ。単焦点レンズはダブルズームキットの焦点域のなかに含まれることが多いから単焦点レンズを購入するのはムダ。それでもメーカーは販売に期待を寄せ多種の交換レンズを用意する。レンズを交換することで世界を広げてほしいというのは建前で、本音はレンズは利益率が高いからたくさん売りたいのだ。

アナタは、財布の紐を握る家庭内大蔵大臣に、単焦点レンズが必要な理由を説得力ある言葉で述べることができますか?

「標準ズームレンズ」はいずれも高性能。メーカーの顔になるレンズだから廉価なものでも手抜きはない。ユーザーにとっても最初の一本のレンズになるし、メーカーの印象が定まる。ズームレンズより単焦点レンズのほうが性能が高いから買う意味があるという人もいるが、数値性能だけを見れば必ずしもそうともいえない。

キットズームが一般的になる前、カメラは単焦点標準レンズ一本と抱き合わせで購入するのが常識だった。標準レンズの開放F 値はF1.2-2、当時は誰もいわなかったが「大口径」なのだ。画角の変化は望めない反面、設定絞り値やアングルの工夫で望遠風、広角風に見せる。これが写真入門の第一歩だ。標準レンズをカラダで覚えた上で自分の好み、表現に見合う次の一本を考えたわけだ。ズームレンズしか知らないビギナーはF 値や焦点距離によって異なる被写界深度やパースペクティブの変化を体得できず永久にズームリングを回し続ける。

正直に告白すればこれは我々職業写真家にとってはありがたいのだ。ライバルがこの時点で淘汰されるからである。大口径レンズの個性ある描写、手慣れた好みの画角で視角を自分のものとすればビギナーにとってはマジックのように見える写真ができ上がる。高性能ズームの登場によって私たちの商売は延命されたのである。

大きな声ではいいたくないが、本書はズームに疑問を持った人、単焦点レンズに興味を持つ人、単焦点レンズで自分の視角をひとつに絞る覚悟が持てた人への回答だ。
本書には特殊で高価な単焦点レンズが登場するわけではない。むしろ平凡なものばかりだ。現行品を中心に製造が中止されたものまで範囲を広げ、新品、中古で3 万円以内の価格で購入できるものを取り上げた。「単焦点レンズを使えば世界を変えることができる」と妄想できるアナタのため、本書がその購入理由の一助となれば筆者としてはこれほど嬉しいことはない。

赤城耕一





このコーナーでは、玄光社MOOK「ズームレンズは捨てなさい!」に掲載したレンズと掲載作品をご紹介していきます。本誌に掲載できなかったアザーカットも掲載予定ですので、お楽しみに。
 
赤城耕一
東京生まれ。出版社を経てフリー。エディトリアルやコマーシャルの撮影のかたわら、カメラ雑誌ではメカニズム記事や撮影ハウツー記事を執筆。戦前のライカから、最新のデジタルカメラまで節操なく使い続けている。

主な著書に「使うM型ライカ」(双葉社)「定番カメラの名品レンズ」(小学館)「ドイツカメラへの旅」(東京書籍)「銀塩カメラ辞典」(平凡社)

ブログ:赤城耕一写真日録
 
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