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銀塩手帖

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銀塩手帖
フィルム、銀塩写真に関する情報を記録していきます。
公開日:2015/05/01

ゼラチンシルバーセッション 2015 写真家 広川泰士インタビュー

CAMERA fan編集部


東京・六本木のアクシスギャラリーにて、34人の写真家によるフィルム作品の写真展「Gelatin Silver Session 2015 (ゼラチンシルバーセッション 2015) Save The Film」が開催されている。(会期:4月25日(土)〜5月9日(土) )



ゼラチンシルバーセッションは、2006年に写真家の広川泰士氏、瀧本幹也氏、平間至氏、藤井保氏の4名が、「フィルム文化の素晴らしさを伝えるため」にスタートしたプロジェクト。今回は8回目の企画展となる。

今回は、34名の写真家が二人一組となって、それぞれが設定したテーマで撮りおろした作品を展示している。また、アメリカよりマイケル・ケンナ氏を招き特別展示、さらに第2回「GSSフォトアワード」では広くフィルム作品を公募した。

会場に展示された作品は、どれもフィルムならではの圧倒的に美しい印画紙のプリント。コマーシャルの世界で活躍する写真家や、作品制作を中心に活動する作家など、第一線で活躍するメンバーが勢揃いしているのもたいへん興味深い。



百々俊二 × 広川泰士「天地」


藤井保 × 渡邉博史「平和憲法第9条」



市橋織江 × 瀧本幹也「gradation」


平間至 × 森本美絵「LOVE×LOVE」



特別ゲスト展示:マイケル・ケンナ


フィルム作品の美しさ、印画紙による表現の素晴らしさを、もっと多くの人に知ってほしい、そしてフィルムを残していきたい。


ゼラチンシルバーセッションの活動について、企画者である広川泰士氏にお話を伺った。


編集部:2006年の活動開始から8回目の開催ですが、現在の活動とフィルム制作の状況について教えて下さい。

広川「フィルム作品の美しさ、印画紙による表現の素晴らしさを、もっと多くの人に知ってほしい、そしてフィルムを残していきたい、という想いからはじめた企画ですが、スタートした2006年と今ではフィルムを取り巻く環境が、ずいぶんと変わってきました。僕らが想像していた以上にデジタル化が加速しましたね。
フィルムの消費量がさらに減り、フィルムメーカーはラインナップを絞ったため、写真家が選べるフィルムがさらに限られています。
現像やプリントのサービスを行うラボもずいぶん閉鎖されています。このような状況はあまり良いとは言えませんね。
9年間続けてきたこの企画が、この状況にどれだけブレーキをかけることができているかはわかりません。でも、ただ手をこまねいて見ているだけではダメだから、活動をつづけているんです」


広川さんにとってフィルムの魅力とは何ですか?

「最終的に印画紙で表現したときの素晴らしさはもちろんですが、やはりフィルムカメラで撮ることは、撮影に対する姿勢自体がデジタルのそれとは異なると思うんです。
撮影には、想像力と技術が必要で、さらに撮る前に準備が必要。デジタルはシャッターを押した後にやる処理が多いけど、フィルムは違います。シャッターを押す前にやることが多い。これは緊張感でもあります。

そして、やはりモノとして残る安心感です。印画紙にプリントして残す。フィルムにナンバリングして残す。これは私がずっとやってきたことです。デジタルは永遠に残せるという感覚があるけど、データのフォーマットは変わっていくし、記録メディアも変わります。そう考えるとデータもいつかは使えなくなるかもしれませんね。ずっと変換し続けるということをやればいいんですけどね。それもたいへん。あとは、デジタルカメラは電気がないと何もできない(笑)その昔、機械式カメラは、戦場でも電池がなくても動いたでしょう。
でも、デジタルを否定するつもりはないんです。仕事ではデジタルを使うことも多々あります。それでも時間的、予算的に余裕があるときはできるだけフィルムで撮ろうと思っています。クライアントから、バイテン(8×10)で撮って欲しいと言われることもあります。」



今回の展示は入場料300円となっていますが、無料にはしなかったのはなぜですか?

「この企画は、賛同する写真家がみんなボランティアで参加しています。でも、やはりイベントには費用がかかります。今回もマイケル・ケンナ氏をアメリカから招待したり、けっこうかかります。イベントを継続するための最低限の予算なんです。その代わり学生は無料にしています。」


活動は写真展だけですか?

「写真展以外にも、年に数回は暗室のワークショップを行なっています。高校生向けのワークショップでは、フィルムカメラもフィルムもはじめて触る子どもがほとんどなんです。彼らにとって写真とは、ボタンを押せば映るカンタンなものですが、フィルムカメラは違います。すべて自分で操作しなければ映らない機械は、彼らにとってとても新鮮に映るようです。暗室作業も楽しんでもらっています。」



今後の活動について教えて下さい

もっと広く、多くの人にフィルム表現の素晴らしさ、美しさを伝えるために、これからも様々な楽しい企画を立案していこうと思っています。



【Gelatin Silver Session 2015 開催概要】


会期:4月25日(土)〜5月9日(土)11時〜19時 会期中無休 
※5月5日は、トークイベントのため、16時で終了。
 最終日は18時までの入場となる。

入場料:300円(学生無料)

会場:アクシスギャラリー(東京都港区六本木5-17-1)
 http://www.axisinc.co.jp
TEL:03-5575-8655(会期中)

主催:ゼラチンシルバーセッション実行委員会
http://gss-film.com/

【出展者と作品名】
石塚元太良 × 水越武「雪、氷」
市橋織江 × 瀧本幹也「gradation」
井津由美子 × 辻佐織「原風景」
薄井一議 × 勝倉崚太「写真 過ぎ行くものへの記録装置」
Bruce Osborn × 蓮井幹生「Seagenic & Forestgenic」
小林紀晴 × 村越としや「見知らぬ故郷」
小林伸一郎 × 中道淳「311 変わっていくこと、変わらずにいること」
嶋田篤人 × 三好耕三「BOSO」
鋤田正義 × 宮原夢画「ごっこ」
瀬尾浩司 × 泊昭雄「きえるモノと、きえないモノ」
百々新 × 広川智基「忘れたくないこと。」
百々俊二 × 広川泰士「天地」
中野正貴 × 本城直季「お台場」
中藤毅彦 × ハービー・山口「FLIP IT OVER」
西野壮平 × 若木信吾「On Sunday」
平間至 × 森本美絵「LOVE×LOVE」
藤井保 × 渡邉博史「平和憲法第9条」


【会期中のイベント】
<マイケル・ケンナ氏によるトークイベント&写真集の販売>
5月5日(火・祝)17:00から会場にてトークイベントを行います。
販売する写真集:「France」「A Twenty Year Retrospective」「Huangshan」
入場料300円+トークイベント500円:合計800円
※16:00に一旦会場をクローズする。16:30から開場し、受付を開始。
※当日の入場券をお持ちの方は500円。
※当日13:00から整理券を配布。
※会場内でご購入された写真集に限り、トークイベント終了後、サイン会を行う。

<Photo_bar>
ドリンク片手に写真家とのコミュニケーションを楽しむバーがオープンする。
展示時間終了後の19時からスタートする。
5月3日(日・祝):平間至、広川泰士、広川智基、本城直季、その他
5月7日(木):小林伸一郎、広川泰士、姫野希美(赤々舎)、その他
時間:19:00〜22:00
ソフトドリンクもあり。

【公式サイト】
ゼラチンシルバーセッション 2015  Save The Film
http://gss-film.com/exhibition/2015


<カメラファンがオススメする書籍>


フィルムカメラ・ライフ 2024−2025

 
IDEA of Photography 撮影アイデアの極意」南雲暁彦・著


「個性あふれる"私らしい"写真を撮る方法」野寺治孝・著

これからフィルムカメラをはじめたい人のためのガイドブック

フィルムカメラ・スタートブック」大村祐里子・著
 
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