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Time Traveler in CUBA

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Time Traveler in CUBA
公開日:2015/10/20

Vol.1 〜Automóviles〜

photo & text HARUKI

Canon EOS 5Ds EF100-400mm f/4.5-5.6L IS II USM
F7.1 1/320 ISO100 -0.33EV

かつての繁栄の面影を感じられる20世紀初頭以前に建てられた歴史ある建築物が、21世紀の今でもたくさん残っているハバナの旧市街の街並み。その街を走る1940年代くらいから60年代はじめまでのアメリカ製のクルマたち、路地裏に流れる音楽、人懐っこい笑顔の人々、ノスタルジックなこの国の20世紀遺産の数々。10年ぶりに訪れたキューバは懐かしくも確実に変わりつつあったのでした。

ボクは30年位前から世界の様々な国々をまわりながら写真を撮るという旅をしてきたのですが、そのスタートからちょうど時を同じくして全世界の社会主義国家が崩壊や分裂しはじめた頃でした。そうなると余計に“社会主義的な痕跡”というようなモノを求めて旅をしたがるもので、それが人というものです、と武田鉄矢さんがいったとか云わないとか。そうして主にヨーロッパ諸国をいくつか巡りましたがずっと気になっていた国がひとつだけ別の場所にあったのです。南北アメリカ大陸の間、俗に中米なんて呼ばれたりもしています中間地帯のカリブ海にポカリと浮かぶ細長い島、そこはキューバという島国。

「キューバ」といえばボクが子供だった頃には「ソビエト」「東側」「南北ベトナム」「空爆」「ジョンソン」「ニクソン」「アメリカ」などど共に白黒画面のテレビニュースや新聞に度々登場してくるキナ臭いイメージのひとつとして仮面ライダー・スナックを食べながらアタマの中に浸透してきた国の名称でもあったのでした。


Canon EOS 5Ds R SIGMA 24-35mm F2 DG HSM
F5.6 1/1600 ISO400 -1EV


Canon EOS 5Ds EF100-400mm f/4.5-5.6L IS II USM
F8 1/1600 ISO400 -1EV


Canon EOS 5Ds EF24-70mm f/4L IS USM
F8 1/200 ISO800

2005年、初めてのキューバ

それから約20年が経ち、大人の階段をちょっとだけ昇った少年は東京でカメラマンとしていいかげんな生活をしていた。
そして2005年春、メキシコの熱海ともいえるビーチ・リゾート、カンクン経由でわずか三泊四日のキューバ・ツアーに出掛けてしまったのです。はじめて降り立ったハバナのホセ・マルティ国際空港の入国審査の列は機関銃を手にした軍隊の警備の中で3時間もかかったのでクタクタになってタクシーに乗り込み、灯りの少ない夜の町を車窓から眺めて不安な気持ちでホテルへ向かったのでした。

目覚めたらホテルの食堂のテレビでも街頭スピーカーからも大きな声を張り上げて演説するお爺さんがいたのでした。スペイン語なので内容はさっぱりワカランチ共和国なのですが、その御仁は子供の頃から何度も写真や映像をみてきたアノ人、フィデル・カストロ国家評議会議長、通称カストロ議長だったのです。1時間後、ボクの目には数百メートルの遙か向こう側に延々と演説を続けている“生カストロ議長さん”が小さく映っていたのでした。



Canon EOS 5Ds EF24-70mm f/4L IS USM
F8 1/640 ISO400


Canon EOS 5Ds EF100-400mm f/4.5-5.6L IS II USM
F7.1 1/4000 ISO800

2015年、再びのキューバ

あの日からちょうど10年後の今年に入ってすぐ“キューバとアメリカが国交回復に向けての交渉を急速に進めている”との真実味溢れるニュースが流れてきた。両国間の国交回復そのものは歴史的にもとても歓迎すべき素晴らしい事ではあるのだが、同時に長い間沈黙していた時間に終止符を打つことをも示唆しているので、ココは写真屋稼業の宿命として“こりゃ急がんとアカンばい”となったのでありました。春からずっと準備をしてきてスケジュール調整や、なんやかんやで再びのホセ・マルティ空港へ降りたのが、初訪から10年後の今年8月だったのでした。

天然陽気なジャパニーズ・フォトグラファーのボクがカメラをぶらさげてカリブ海に浮かぶ島国キューバへ10年ぶりに向かった8月初旬。別にケリー米国務長官と待ち合わせて彼の地で一緒にモヒートで乾杯をするためではない。ボク自身は変わりゆくキューバの現在の写真を撮るために、一方ケリーさんはアメリカとキューバの半世紀ぶりの急速な国交回復へ向けての大事な交渉のために来ており、それは奇しくも同日の入国でした。
おかげでボクは今回もまたホセ・マルティ国際空港のロビーで長い間足止めを喰らったわけなのです。それは10年前のように当方の入国審査に時間がかかったのでななくて、ケリーさんがワシントンから乗ってきたエアフォース・ワンが駐機場所に移動するまでに時間がかかっていたからでした・・・・



Canon EOS 5Ds EF70-300mm f/4-5.6L IS USM
F8 1/4000 ISO400 -0.67EV


Canon EOS 5Ds EF100-400mm f/4.5-5.6L IS II USM
F8 1/100 ISO400


Canon EOS 5Ds EF100-400mm f/4.5-5.6L IS II USM
F8 1/320 ISO400

・・・おっといけない。今回は「Automobile」特集だったので話しをクルマに戻さなきゃあ。第二次世界大戦前後の1940年代、あるいはもっと前の1930年代あたり製造からキューバ革命によって国交が断絶される1960年代頭くらいまでの間に主にアメリカなどから輸入され現地の人たちや裕福なアメリカ人たちが乗り回していたクルマたちが、半世紀をとっくに過ぎた今でも数多く残っていて何度も何度も修理を繰り返し、部品を交換しながらも人々の足として愛され現役で乗り続けられています。しかもそのうちの程度の良い何割かのクルマにいたっては当時の世の中では存在しえなかったはずのアルミホイールとメタリカルなピカピカな塗装を身に纏って、まるで新車のように鮮やかに生まれ変わって観光客相手のタクシーとして利用されているものもあるじゃないですか。

半世紀以上も前の1940〜50年代、アメリカという国が最も豊かだったモータリゼーション啓蒙時代の富と地位の象徴の証しでもあったクルマたち。今こうして長い時を経て人間で云えば、おじいさんやおばあさんのようなご長寿でクラシックカー等と呼ばれるくらいに古くなったクルマたちが、やはり同じくキューバが繁栄を迎えていた一世紀以上も前に建てられたビルディング群が建ち並ぶ歴史的な街並みを駆け抜けていく勇姿を見ながらいつしか自分がタイムトラベラーとなってノスタルジーに包まれた旧き善き時代の過去の世界を旅をしている気分になっていたのでした。
ココに発表した写真はいわゆる乗用車がメインだけど、トラックやバス、オートバイ、軍用車などもなかなか興味深く中には戦後すぐに製造されたと思われる我がNIPPONの日野自動車のトラックなんかもありました。こうして毎日撮影しているうちにカー・マニアの気持ちが少しだけわかってきたような気がしたのでR〜。



Canon EOS 5Ds EF16-35mm f/4L IS USM
F8 1/800 ISO400 -0.33EV


Canon EOS 5Ds EF70-300mm f/4-5.6L IS USM
F8 1/125 ISO400


Canon EOS 5Ds R EF70-300mm f/4-5.6L IS USM
F8 1/500 ISO400


Canon EOS 5Ds R  EF16-35mm f/4L IS USM
F4 1/60 ISO1600


Canon EOS 5Ds R  EF16-35mm f/4L IS USM
F4 1/50 ISO1600


ベルエアー、チャンピオン、ラーク、ホーク、ビュイック、ユート、スチュードベイカー、パッカード、カイザー・フレーザー、と聞いても何のことやらサッパリチンプンカンプン。キャデラックやフォード、シボレー、クライスラーの名前くらいは知っているが、クルマそのものにまったく興味がなく、ましてやアメ車など知識もないボクだったのですが、これら数々のアメリカのクルマや昔のシトロエン、オペル、メルセデス、BMW、ルノーや旧東欧製のクルマなども時折見かけるキューバという国はクルマ好きの人たちにとっては南海の楽園なんだと今ではすっかりコモエスタのでした☆

<写真展情報>

2015年10月から12月にかけてHARUKI氏による2本の写真展が開催されます。

HARUKI exhibition of Photographs -memories-「遠い記憶。」


【開催日程】
キヤノンギャラリー銀座
東京都中央区銀座3-9-7
2015年10月22日(木)〜10月28日(水)
10時30分〜18時30分(写真展最終日 15時まで)
(休館日:日・祝日)

キヤノンギャラリー仙台
宮城県仙台市青葉区一番町1-9-1 仙台トラストタワー15階
2015年11月12日(木)〜11月24日(火)
10時〜18時(休館日:土・日・祝日)

キヤノンギャラリー梅田
大阪府大阪市北区梅田3-3-10 梅田ダイビル地下1階
2015年12月17日(木)〜12月25日(金)
10時〜18時(写真展最終日 15時まで)(休館日:日・祝日)

キヤノンギャラリー福岡
福岡県福岡市博多区綱場町4-1 福岡RDビル1階
2015年1月14日(木)〜1月26日(火)
10時〜18時(休館日:土・日・祝日)

ウェブサイトキヤノンギャラリー
http://cweb.canon.jp/gallery/archive/haruki-tooikioku/index.html


【ギャラリートーク開催】
日時:2015年10月24日(土)17:00〜18:00
ゲスト:石田立雄(元CAPA編集長・編集者)×坂本直樹(月刊カメラマン編集長)×伏見行介(写真家)
入場料:無料

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HARUKI Photographs exhibition
「Automóvils Americanos - Cuba Cuba Cuba -」


【開催日程】
ブライト・フォト・サロン
東京都中央区湊1−8−11 ライジングビル4F
2015年10月30日(金)〜11月12日(木)
10時-20時(土日祝は18:00まで)

ウェブサイト:ブライト・フォト・サロン
http://www.jcop.jp/wp/gallery/

HARUKI
1959年広島市生まれ。1982年九州産業大学芸術学部写真学科卒業。1983年上京しスタジオを経て以後フリーランスてポートレートを中心に活動開始。1987年35回朝日広告賞・グループ入選及び表現技術賞受賞。1990年パルコ「期待される写真家展3」に選出。個展に「普通の人びと」、
「TokyoGirls♀彼女たちの居場所。」他多数。プリント作品はニューヨーク近代美術館、神戸ファッション美術館に収蔵。2014年初の写真集『TheHumanPortraits〜普通の人びと1987-2007より〜』アメリカ橋ギャラリーより刊行。
Twitter:
https://twitter.com/harukixxxphoto
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