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私の眼、ワタシの視角〜写真家が選ぶ焦点距離別・単焦点レンズ〜

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私の眼、ワタシの視角〜写真家が選ぶ焦点距離別・単焦点レンズ〜
写真家が自らの”眼”として選ぶ焦点距離と、その単焦点レンズを語る
公開日:2016/05/26

45mm Love!!

photo & text 大浦タケシ


マイ・フェイバリット 45mm!

焦点距離45mmの交換レンズといえば、焦点距離50mmとの画角の違いを強く感じることは難しく、焦点距離35mmほどのワイド感も当然ない。それゆえ些か中途半端に感じられる焦点距離といってよいだろう。しかしながら筆者の経験から言えば、交換レンズはこれ1本と思って使い込むとなかなか頃合いのよい渋〜い焦点距離のように思える。現に出先など何かのついでにちょっと撮影を楽しみたいときにはこの焦点距離を持つ単焦点レンズを持ち出すことが多く、筆者のフェイバリットとなっている。

45mmパンケーキレンズの魅力

ところで焦点距離45mmの交換レンズというと3群4枚のテッサータイプのパンケーキレンズであることが多い。所有する5本の45mmのうち「Ai NIKKOR45mmF2.8P」、「GN Auto NIKKOR 45mmF2.8」、「XR RIKENON 45mmF2.8」の3本も同タイプのレンズとなっている(ヤシコンマウントのテッサーを所有していないのはご愛嬌)。
これらのメリットはというと、いうまでもなく軽量コンパクトであることだろう。ただでさえ、かさ張ることが多く重い一眼レフだが、パンケーキタイプであれば交換レンズを装着していることを忘れさせてくれる。見た目にもスマートだ。開放値がF2.8と単焦点レンズとしては些か暗いという欠点はあるが、感度が自在に変えられるデジタル一眼での使用がメインなのでさほど気にしたことはない。加えてテッサータイプの交換レンズは、一般に固い描写と評されるが、この3本についてもヌケが極めてよくコントラストの高い描写で気に入っている。

ちなみに残る2本の45mmはというと、同じパンケーキタイプでも5群6枚の変形ダブルガウスタイプとするミノルタ「MD ROKKOR-X 45mmF2(輸出仕様)」と、最新のタムロン「SP45mmF/1.8 Di VC USD(Model F013)」。ミノルタ MD ROKKOR は今回あらためてじっくりと撮影を試みたが、開放からエッジの効いた描写に驚かされる。最新のデジタルに最適化された交換レンズに迫るもので、今後ちょっとヘビロテで使っていきたいと考えている。
タムロン SP45mmについては今回の45mm交換レンズのなかでも別格で、解像感と描写の素晴らしさは群を抜いている。その分、焦点距離45mmの交換レンズとして格段に大きく重いものの、ポートレート、スナップ、風景とオールマイティに活躍してくれており出番の多いレンズとなっている。


ニコン・GN Auto NIKKOR 45mmF2.8(発売年:1969年)


「NipponKogaku」銘が入り、9枚絞りの初期タイプのGNニッコール。カム式のフォーカスリングはフニャフニャな感じがする上に、通常のFマウントニッコール
とは回転方向が反対であるため、少々扱いづらい。先般、やっと純正フードを手に入れることができて大満足。



ニコン・Ai NIKKOR 45mmF2.8P(発売年:2001年)


「FM3A」とともに発売された比較的新しい時代のパンケーキ・ニッコール。CPUを内蔵しており、最新のデジタル一眼レフでもマルチパターン測光による露出計の動作が可能となっている。現在所有する45mmレンズのうち最も出番の多いレンズ。


ミノルタ・MD ROKKOR-X 45mmF2 輸出仕様(発売年:1978年)


他の焦点距離45mmパンケーキレンズよりは若干厚みがあるものの、開放値は1段明るいF2。製造初年は1978年。ロッコール銘の消えたニューMDシリーズでは製造されなかった。今回の実写で改めてその描写のよさを実感した45mmである。


リコー・XR RIKENON 45mmF2.8(発売年:1993年)


チープなつくりのKマウントの45mm。1990年代前半に発売されたもので、同時期には同じパンケーキレンズの「XR RIKENON 28mmF3.5 ASPHERIC」も発売している。ペンタックスのフルサイズ機「K-1」を購入したら、このレンズを常用したいと密かに目論むが、果たして実現するか??



タムロン・SP 35mm F/1.8 Di VC USD(Model F013)(発売年:2015年)


タムロンが満を持して発売したレンズであるだけに優れた描写特性を誇る45mm F1.8大口径レンズ 。特に圧倒的な解像力と、それと相反するような柔らかく素直なボケ味がたいへん気に入っている。45mmという焦点距離を知るうえでもオススメしたいレンズである。


<実写レビュー>


ニコン・GN Auto NIKKOR 45mmF2.8


ニコンDf・絞り優先AE(絞りF2.8)・WBオート・ISO100・JPEG


ニコンDf・絞り優先AE(絞りF2.8)・WBオート・ISO100・JPEG

掲載した作例はいずれも開放F2.8。わずかにフレアが発生しており、解像感も緩め。ポートレートでは積極的にこの描写を活用してみるのもありだ。ボケはやや暴れ気味。周辺減光も強めだが、レンズの製造された時代を考えると許容できるものである。なお、1段絞ると解像感、周辺減光は大きく改善され、フレアの発生も解消される。



ニコン・Ai NIKKOR 45mmF2.8P


ニコンDf・絞り優先AE(絞りF2.8)・WBオート・ISO100・JPEG


ニコンDf・絞り優先AE(絞りF2.8)・WBオート・ISO100・JPEG

こちらも同じく絞りは開放F2.8でのものだが、GN Auto NIKKOR 45mmF2.8にくらべるとずっと現代的な描写。合焦部分のキレはよく、コントラストも高い。ボケ味もナチュラルな印象だ。周辺減光はあるものの、気になるような強さではない。製造年が比較的新しいこともあって、デジタルの特性にも合っているように思える。


ミノルタ・MD ROKKOR-X 45mmF2(輸出仕様)


ソニーα7・絞り優先AE(絞りF2)・WBオート・ISO100・JPEG


ソニーα7・絞り優先AE(絞りF2.8)・WBオート・ISO100・JPEG

絞り開放F2のカットはわずかに線の太さはあるもののエッジのキレはよい。色のにじみなども見当たらない。ボケはわずかに暴れ気味だ。1段絞った描写は最新のデジタル対応レンズと見間違えるほど圧倒的な解像感を誇る。ボケ味もナチュラルで嫌みなところが無い。消滅してしまったカメラメーカーだが、改めてそのスゴさを実感するものである。



タムロン・SP45mmF/1.8 Di VC USD(Model F013)


ニコンDf・絞り優先AE(絞りF1.8)・WBオート・ISO100・JPEG


ニコンDf・絞り優先AE(絞りF2.8)・WBオート・ISO100・JPEG

比較作例の絞り値は開放F1.8。ピントの合った部分のエッジは際立ち、フレアの発生は皆無。ボケ味も極めて柔らかく、自然な感じだ。縦位置の作例は逆光での撮影のものだが、被写体のコントラストは低下することがなく、シャープネスのキレも良好。コーティング技術のすすんだ最新のレンズらしいところである。クラスとしては高価な部類に入るが、入門用としても適している。


【まとめ】
一般的にはワイド感の得られやすい35mmや明るい開放値のラインナップが豊富な50mmに目は向きがちで、45mmはキワモノ扱いされることが少なくない。筆者もこのことに関しては認めざるを得ないところであるが、天の邪鬼な性格ゆえに今後も深く愛し続けていきたい焦点距離だと思っている。


モデル:亜羽音
ブログ:http://ahaneco.blog112.fc2.com
Twitter:https://twitter.com/ahanechan


 著者プロフィール
  大浦タケシ(おおうら・たけし)

宮崎県都城市生まれ。日本大学芸術学部写真学科卒業。紆余曲折した後、フリーカメラマンとなり、カメラ誌、Webマガジン等でカメラおよび写真に関する記事を執筆する。中古カメラ店巡りは大切な日課となっており、”一期一会”と称して衝動買いした中古カメラは数知れず。この企画を機に、さらに拍車がかかる模様。2006年よりカメラグランプリ選考委員。