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SHUTTER GIRL WORLD

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SHUTTER GIRL WORLD
シャッターガールこと大村祐里子が、光と闇を描いていきます。
公開日:2018/08/06

驚くほどよく写るコンパクトフィルムカメラで作品制作〜YASHICA ELECTRO 35 MC(ヤシカ エレクトロ 35 MC)〜

photo & text 大村祐里子

YASHICA ELECTRO 35 MC Kodak PORTRA 400(共通データ)F16 シャッタースピード自動

近頃、全自動で撮れるオートフォーカスのコンパクトフィルムカメラが高値で売られているのをよく目にします。CONTAX T2など、10年前では考えられないような値段がついています。たしかに、それらの中には写りの良いものがたくさんあります。しかし、安価な機械式フィルムカメラの中にも、驚くほどよく写るものがあるのです。今回はそんなカメラのお話をしたいと思います。
 

YASHICA ELECTRO 35 MC(ヤシカ エレクトロ 35 MC)



去年、安価な機械式フィルムカメラが欲しくなり、カメラショップでショーケースを眺めていたときのこと。ふと、目にとまったカメラがありました。名前は「YASHICA ELECTRO 35 MC」。気になった理由は、デザインがレトロで可愛かったから、と、ポケットに入る大きさだったから、の2点です。

どんなカメラなのかお店の人に聞いてみると、ハーフサイズ判のようにコンパクトだけれども、なんと35mm判。Cds式の自動露出を採用していて、絞りだけ自分で決めて、シャッタースピードはカメラ任せというスタイル。

わたしは人一倍「思い通りの絵を撮りたい」という気持ちが強い人間なので、いままでマニュアル操作のできるカメラばかりを使ってきました。かれこれ8年くらいそうしてきたのですが、このとき、なぜか素直に「カメラ任せで撮ってみるのも良いな」と思える自分がいました。カメラ選びに関しては「直感に従う」ことにしているので、わたしは、数分後、綺麗に梱包されたYASHICA ELECTRO 35 MCを手にお店を出ていました。

カラーネガを装填し、早速、次の日からカメラをポケットに入れて持ち歩くことにしました。

撮りたいものに出会ったら、絞りを決めて、目測で被写体までの距離を計算して、シャッターを押します。自動露出といっても、絞りの設定と目測でのピント合わせを行うので、完全オートのカメラに比べると「自分でカメラを操作して、シャッターを切っている」手応えがあります。

持ち歩くようになって、YASHICA ELECTRO 35 MCは、カメラというより、スマホやお財布のような、日常にすっと馴染む存在だなと思いました。ゆえに、散歩中や、ロケ先でのふとした瞬間など、いままで作品撮りの際に意識が向かなかった「隙間」の時間に無性にポケットから出したくなりました。

現像から上がってきた1本目のネガを見て、まさに「隙間」の時間がそこに描かれていることに驚きました。カメラが変わると、その個性に合わせて、自分の視点も変わるのだなと思いました。

そして、写りも想像以上であることを知りました。正直、コンパクトカメラということで侮っていたのですが……雲や枝など細かいところもきちんと描写されていて、色乗りも良く、一目で「ああ、いいな」と感じるレベルの絵がそこにありました。勝手に「日常用のカメラ」と位置付けていましたが、それだけでとどめておくのが勿体無いくらいの写りでした。

わたしはすっかりこのカメラを気に入ってしまい、一時期、肌身離さず持ち歩いていました。使うたびに写真を撮る楽しみを思い出させてくれるYASHICA ELECTRO 35 MC。フィルムカメラをこれから始めようと思っている方にもぜひ使っていただきたいです。


 

【YASHICA ELECTRO 35 MC ギャラリー】


F5.6 Kodak PORTRA 400

ロケ先であるグアムで、自分の足元を。普段だったらこういうものは撮らないのですが……。このとき、自分の足元だけがひたすら変わっていく「GROUND」というテーマの作品を作ったらどうだろう、と思いついたのですが、実現には至っていません。カメラが変わると視点も思考も変わるものですね。



F4 Kodak PORTRA 400

被写体までの距離を考えず、ただ「いいな」と思ったフレーミングでシャッターを切りました。開放にして寄っても、最短撮影距離は90cmですし、大口径のレンズに比べて手前も奥も全然ボケませんが、このカメラはボケ以外の写真の愉しみをたくさん教えてくれます。



F5.6 Kodak PORTRA 400

草むらの中に、神経質そうな猫がいたので近寄って撮りました。最短撮影距離の90cmまで寄りました。90cmというのはわりと離れているので、動物も逃げなくて良いなと思いました。近寄りすぎると警戒されて、すぐに逃げられちゃうので……。



F2.8 Kodak PORTRA 400

抜けの良い青空を背景に咲く赤いバラが目に留まったので、上を見上げながら撮影しました。慣れてしまえば、目測でのピント合わせも問題ありません。開放付近では画面の四隅で光量落ちが確認できますが、これも味です。雰囲気が出て逆に良いのではないでしょうか。



F11 Kodak PORTRA 400

日が傾いてきた時間帯に、逆光状態で街角を撮影しました。強い逆光にもかかわらずきちんと描写されていて驚きです。



F8 Kodak PORTRA 400

モノレールが走ってきたのでとっさにカメラを出してシャッターを切りました。撮りたい!と思ったときに簡単に撮れるカメラはシャッターチャンスを逃しませんね。

 

<YASHICA ELECTRO 35 MC 使い方>

まずはカメラの底面部の蓋を開けて、電池「4SR44」を1本入れます。現行品の電池を使えるのが嬉しいポイントです。




35mmフィルムを装填し、カメラ側で、装填したフィルムの感度を設定します。



ISO400のフィルムを入れたのならば、レンズ部分のダイヤルで「ASA」を「400」にします。これで準備はOK。


<撮影の手順 〜ピントは自分の目で距離を予想する目測式〜>


撮影の具体的な手順ですが、絞りを決めて、目測で被写体までの距離を計算して、シャッターを押します。初心者が戸惑うのは目測で被写体までの距離を捉えるところだと思いますが、慣れない方は以下の方法でトレーニングすることをオススメします。

わたしは、むかしトイカメラで遊んでいたときに、目測でも被写体までの距離を正確に測れるようにと、メジャーを持ち歩いて、撮影のたびに被写体までの距離を測っていました。当時は「何をやっているのだろう」と思っていましたが、YASHICA ELECTRO 35 MCを手にして、あのときの経験があったからこそ、いまでも目測で被写体までの距離が正確にわかるのだと再認識しました。この方法でしばらく練習すれば、目測式のカメラも問題なく使えるようになります。

撮影とは直接の関係のないことですが、このカメラの欠点として、フィルター枠が弱いので、ぶつけたりするとすぐに歪んだり傷ついたりします。わたしの持っている個体も、購入時、すでにフィルター枠がギザギザに傷ついていました(その分、お安くなっていたのですが!)。気になる方は、レンズ保護フィルターをつけましょう。

 

 

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 著者プロフィール  
大村 祐里子(おおむら ゆりこ)

1983年東京都生まれ
ハーベストタイム所属。雑誌、書籍、俳優、タレント、アーティスト写真の撮影など、さまざまなジャンルで活動中。雑誌連載:『フォトテクニックデジタル』にて「身近なものの撮り方辞典」を連載中。

ウェブサイト:http://omurayuriko.jp/
ブログ:http://shutter-girl.jp/
Twitter:@Holy_Garden