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カメラアーカイブ

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カメラアーカイブ
巷に溢れる新製品情報。そんな情報の波に埋もれてしまっている魅力的なカメラたちがある。メーカー開発者たちが、心血を注いで創りだした名機の魅力を蓄積していく。
公開日:2012/01/23

FUJIFILM GA645、GS645シリーズ

photo + text 中村文夫

ほぼ全てを自動化した画期的な中判カメラ

デジタルカメラで写真の楽しさに目覚め、次にフィルムカメラに手を伸ばすカメラファンが増えている。一般にフィルムカメラと聞くと、35ミリカメラを思い浮かべる人がほとんどだろう。だが私が今回紹介するのは中判カメラ。一般にブローニーフィルムと言われる120あるいは220フィルムを使うカメラだ。


35ミリフィルム(左)とブローニーフィルム(右)
ブローニーフィルムの正式名称は120。2倍のカットが撮れる220もあるが旧製品には非対応の機種がある。今回紹介するカメラはすべて使用可
 35ミリ判(下)と645判のポジフィルム
645判は画面が大きく、一目で絵柄の確認が可できる。

中判カメラの最大の特徴はフィルムサイズが大きいこと。645判から69判まで中判カメラのフィルムサイズはいろいろあるが、いちばん小さい645判でも画面サイズは41.5×57ミリ。35ミリ判(24×36ミリ)の約2.7倍の面積がある。デジタルカメラに例えると「大センサーサイズ+高画素数」ということ。緻密な描写力だけでなく豊かな階調表現が味わえる。さらに中判は絵柄の確認が容易。フィルムサイズが大きいので現像から上がったネガフィルムやポジフィルムを肉眼でチェックできるし、ポジフィルムの場合ライトボックスとルーペがあればフィルムそのものが鑑賞の対象になる。もちろん大きなサイズにプリントすれば、見る人を圧倒する迫力ある作品が完成する。
 「普段デジタル一眼レフは使っているけれど、フィルムカメラは未経験」というのユーザーが、思い切って中判カメラでフィルムデビューするのも賢い選択だ。

 中判カメラに、さまざまな画面サイズがあることは、すでに説明した通りだが、入門に最適なのは645判。セミ判とも呼ばれるサイズで120フィルムで15〜16枚の撮影ができ、フィルム代や現像代などのランニングコストも低く抑えられる。またカメラ本体がコンパクトなので携帯にも便利だ。
 一眼レフやレンジファインダー式など645判カメラにもさまざまなタイプがあるが、中判入門に最適なのがレンジファインダー機。なかでもAF&AE(*1)を搭載した機種なら、カメラの経験が浅くても大丈夫だ。
*1 AF=オートフォーカス、AE=自動露出

フジGA645プロフェッショナル

フジGA645プロフェッショナル
位相差検出式と赤外線式を組み合わせたハイブリッドAFを採用。最短撮影距離は0.7メートルで、870ステップでピントを制御。MFも可能だ。スイッチをオフにするとレンズがボディに引っ込む沈胴式鏡筒を採用している。画面外に撮影日時と撮影データが写し込める。兄弟機に45ミリ広角レンズを搭載したGA645プロフェッショナルもある。

 フジ GA645は、1995年に発売された世界初のオートフォーカス中判カメラ。オートフォーカスだけでなく、露出、フィルム送りなどすべての面で自動化を達成し、全自動コンパクトカメラのような感覚で撮影が楽しめる。また中判カメラに使うブローニーフィルムは、35ミリに比べ装填が面倒だが、赤外線センサーを使った独自の機構でオートローディングを実現。スプールに巻かれたフィルムをカメラにセットしたら、リーダーペーパー(フィルムの先端)を空スプールのスリットに通し、裏ぶたを閉めるだけで撮影準備が完了する。
 撮影モードは、プログラムAE(P)、絞り優先AE(Av)、マニュアル(M)の3種類。プログラムAEにセットすれば露出はすべてカメラ任せにできるほか、絞り優先AEやマニュアル露出を選べばクリエイティブな表現も思いのままだ。

 ガイドナンバー12(ISO100・m)のポップアップ式ストロボを内蔵  フィルム装填はオートローディング。裏ぶたの圧板をスライドさせ120/220を切り替える。

 撮影用レンズは固定式でスーパーEBCフジノン60ミリF4付きのGA645とスーパーEBCフジノン45ミリF5.6付きのGA645Wの2機種がある。60ミリ付きの画角は35ミリ判の37ミリに相当し、スナップや風景など、あらゆる被写体に対応する万能レンズだ。これに対し45ミリは28ミリに相当し、本格的な広角表現が可能。60ミリで飽き足らない上級者、あるいは広角レンズ好きの人は、こちらを選ぶと良いだろう。
 またGA645シリーズには、商品名の最後にiが付くマイナーチェンジ機がある。主な改良点は、フジフィルム独自の規格であるバーコードシステムに対応したこと。フジ製のフィルムを利用するとフィルムのISO感度が自動セットされる。このほかボディ前面にシャッターボタンを追加。このカメラは通常の構え方だと画面が縦位置になり、横位置で撮るときはカメラを縦に構えなければならない。つまり横位置撮影時の安定性を確保するためのシャッターというわけだ。


フジGA645Ziプロフェッショナル

フジ GA645Ziプロフェッショナル
スーパーEBCフジノンズーム55〜90ミリF4.5〜6.9を搭載。ボディはチタン製でブラックボディもある。

 GA645Ziは、GA645の発展型という位置付けだ。このカメラは35ミリ判に換算すると34〜56ミリに相当する55〜90ミリのズームレンズを搭載。名前はズームだが、実はステップズームで、55、65、75、90ミリの4段階に焦点距離が切り替わる方式だ。なお高画質を維持するためズーム比が低く抑えられていて画角は思ったほど変化しない。いわばフレーミングの微調整ができるレンズといったスタンスで接すると良いだろう。

 
 GA645Ziの裏面
右手親指の掛かる位置にズームレバーがある。撮影情報はファインダー内に表示されるほか、背面のLCDでも確認できる。ファインダーは視度補正機構を装備。
 ガイドナンバー12(ISO100・m)のポップアップ式ストロボを内蔵。プログラムAE時は低輝度自動発光も選べる。

GA645Zi フィルムの入れ方


フジカ GS645プロフェッショナル


フジカ GS645プロフェッショナル
レンズはEBCフジノンS75ミリF3.4。今回紹介する中で唯一、標準レンズを搭載したカメラ。初期モデルは蛇腹に穴が明きやすく、現在中古市場で売られている製品は、対策品に交換済みのものがほとんど。買うときは、この点を確認したい。このモデルのブランド名はフジカ。後のモデルにてフジとなる。

 GS645シリーズは、1983年に登場したMF機。GA645のルーツとも言えるカメラで、レンズの焦点距離が違う3機種がある。最初に登場したのが、75ミリFレンズ付きのGS645で、往年のスプリングカメラを彷彿させる蛇腹を採用。使わないときはコンパクトに収納できる。レンズはEBCフジノンS75ミリF3.5で、焦点距離は35ミリ判の45ミリに相当。二重像合致式の距離計を内蔵した本格派だ。なお最初に紹介したGA645は便宜上レンジファインダー機の仲間として扱ったが、正確にはビューファインダー(透しファインダー)式AF機。このGS645が本当のレンジファインダー機だ。


レンズを収納した状態。フィルムを巻き上げ、ヘリコイドを無限遠にセットしないと蓋が閉まらないので注意が必要。  

 GA645が高度なハイテク技術を結集した電子カメラであるの対し。GS645は機械式の完全マニュアル機。シャッターはコパル製の機械制御式レンズシャッターで、ファインダーにLED表示式の露出計を内蔵。フィルム巻き上げも手動式だ。電池を使うのは露出計だけなので、万が一電池がダウンしても撮影が可能。外観がプラスチック製なのでヤワな印象を受けるが、実は過酷な条件にも耐える堅牢なカメラなのだ。さらにGA645に比べ、ボディがコンパクト。そのため山岳写真カメラマンに愛用者が多かった。

フジカGS645Wプロフェッショナル フジGS645Sプロフェッショナル

フジカ GS645Wプロフェッショナル
レンズはEBCフジノンW45ミリF5.6。ピントは目測式だ。
フジ GS645Sプロフェッショナル
レンズはEBCフジノンW60ミリF4。このカメラから、ブランド名がフジカからフジに変更された。レンズ回りのガードが質実剛健な雰囲気を醸し出している。
 ボディサイドに横位置撮影用の三脚穴を装備。

 GS645Wは、45ミリレンズを搭載した広角専用機だ。画角は35ミリ判の28ミリに相当。被写界深度が深いことからピント合わせは目測式で、鏡筒も固定式で折り畳みできない。その他の基本的な仕様はGS645と共通だ。
 GS645Sは60ミリレンズを搭載した汎用性の高さが特徴。ちょうどGS645とGS645Wの中間の焦点距離で、画角は35ミリ判の37ミリに相当し、レンジファインダー式距離計を搭載している。折り畳みできないが金属製フレームが鏡筒をガード。ハードな使用にも十分耐える。

 今回、紹介したカメラは、すべて製造中止だ。だが中古市場には商品が豊富に出回っており、店頭で出会える確立はかなり高い。また最近中判カメラは、手に入れやすい価格まで価格が下がっており、GA645、GS645シリーズとも、かなりお買い得だ。
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 GF670
 
 
 GF670W

 富士フイルムは、フィルムカメラの開発を続けている貴重なメーカーだ。現在でもGF670GF670Wという中判カメラを発売中だ。写真を見れば分かる通り、GA645、GS645のDNAを受け継いだ中判レンジファインダー機で、ピント合わせは二重像合致式距離計によるMF。シャッターは電子式で、絞り優先AEが可能。フィルムサイズが大きいばかりか、6×6/6×7判の2種類のフォーマットが選択可能。予算が許せばこちらという選択もある。
富士フイルム公式サイト 中判カメララインナップ

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中村 文夫(なかむら ふみお)

1959年生まれ。学習院大学法学部卒業。カメラメーカー勤務を経て1996年にフォトグラファーとして独立。カメラ専門誌のハウツーやメカニズム記事の執筆を中心に、写真教室など、幅広い分野で活躍中。クラシックカメラに関する造詣も深く、所有するカメラは300台を超える。日本カメラ博物館、日本の歴史的カメラ審査委員。
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