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カメラアーカイブ

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カメラアーカイブ
巷に溢れる新製品情報。そんな情報の波に埋もれてしまっている魅力的なカメラたちがある。メーカー開発者たちが、心血を注いで創りだした名機の魅力を蓄積していく。
公開日:2012/03/22

ペンタックス MX

photo & text 中村文夫
ペンタックス MX
発売当時の販売価格:ボディのみ 51,000円(ブラック)48,000円(クローム)
SMCペンタックスM40ミリF2.8 17,000円
この当時、ブラックボディには高い値段が設定されていた。ボディに付いているのは元祖パンケーキレンズ。標準レンズより焦点距離が短いことから、当時は準標準レンズと呼ばれていた。手前に写っているのは昨年タカラトミーアーツが発売したミニチュアマスコット(通称ガチャポン)。


この春にペンタックスが発売したミラーレス機のKー01は、一眼レフと共通のKマウントを採用したことで話題になっている。そもそも『Kマウント』とは75年にペンタックスが35ミリ一眼レフに採用したバヨネット式マウントのことだ。

現在のペンタックス製デジタル一眼レフが採用しているマウントの正式名称は『KAF2マウント』。オリジナルの『Kマウント』に電子的インターフェースを加えたもので、マウント自体の形状は40年近く変わっていない。したがって75年当時に作られた旧いレンズも最新のデジタル一眼カメラに使用可能。AF/AE機能に制約はあるが、マウント名にKを含むすべてのレンズは、それぞれ高い互換性を持つ。
そこで今回は、デジタルカメラにもレンズが使えるという意味で、76年に登場したペンタックスMXを紹介することにしよう。

数ある製品の中で、MXを選んだのは、様々な意味で、非常にペンタックスらしいカメラだからだ。MXの最大の特徴はコンパクトさ。ペンタックスの35ミリ一眼レフは、第一号機のアサヒフレックスの時代から小型軽量を売り物にしてきたが、この特徴が頂点に達したのがMXだ。さらにMXのシャッターは機械制御式横走り布幕フォーカルプレーン。この型式のシャッターはM型ライカをはじめ多くのカメラに採用された、いわばフォーカルプレーンシャッターのスタンダードで、シンプルな設計ながら高い精度と耐久性を備えている。おまけにメンテナンス性にも優れ、きちんと手入れさえすれば、長期間に渡って使用可能。交換用部品の払底とともに使えなくなってしまうことが多い最近の電子制御式カメラとは別次元の製品なのだ。

 
KXのレンズマウントはバヨネット式のKマウント。Kマウントには、さまざまな種類があるが、基本的に絞りリングを備えたすべてのレンズが使用できる。
 
MXの上面。巻き上げレバー、シャッターダイヤル、巻き戻しクランクなど、必要最小限の操作部しか備えていない。 裏ぶたを開いた状態。シャッターは、ゴム引き布幕製の横走り。完全機械式制御なので電池がなくなってもシャッターが切れる。巻き上げスプールは細いプラスチック製の棒がスダレ状に並んだ独自のマジックニードル式。どの隙間にリーダー部を差し込んでも、確実にフィルムが巻き取られる。

MXの露出はマニュアルのみ。AE(自動露出)は搭載していないが、中央重点平均測光式のTTL露出計を内蔵しているので、簡単な操作で正確な露出が得られる。ファインダー視野外右側に5個のLEDを縦一列に並べたシンプルな表示方式ながら、約1/2Ev刻みの読み取りが可能。微妙な露出調節も思いのままだ。F値とシャッタースピードもファインダー内に表示。ファインダーから目を離さず撮影に集中できる。
 
ファインダー視野率は95%、倍率は0.95倍と高スペック。ペンタプリズムに銀コートを採用し、非常にクリアな像が得られる。視野上部にレンズの絞りリングを光学的に読み取る絞り表示窓。右側にシャッタースピード表示がある。 ファインダー内の露出表示
中央の緑LED点灯で適正露出、その上下の黄LEDのいずれかが点灯したら約1/2Evのオーバーまたはアンダー、外側の赤LEDの点灯で1Ev以上のオーバーまたはアンダーを示す。
シャッターボタン半押しでオンになる。

フィルム巻き上げは、レバーによる手動式。小刻み巻き上げができるので、レバーを一気に巻き上げるのではなく、少し巻き上げてレバーを戻し、また少し巻き上げて……という通好みの操作もできる。モータードライブやワインダーも取り付け可能だが、やはり小振りなボディを最大限に生かすには、手動巻き上げで使うのがお勧めだ。

MXが登場した70年台半ばから〜80前半は一眼レフの黄金時代。今ではほどんど耳にしないが「システムカメラ」という言葉が幅を利かせていて、アクセサリーの充実度がカメラのステイタスを示す指標になっていた。

MX専用アクセサリーの中で特筆すべきはフォーカシングスクリーンだ。MXは自分でスクリーンの交換が可能で、標準仕様のスプリットマイクロマットのほか前面マットや格子線入りなど、全部で8種類のスクリーンを用意。今となっては入手困難だが、MXユーザーなら、ぜひ揃えたいアクセサリーの一つと言えるだろう。
また接写リングやファインダー接眼部に取り付けるレフコンバーターやなど、この当時からある一部のアクセサリーは、現行のデジタル一眼レフにも使用できるため、現在でも販売が続けられている。

 
交換用フォーカシングスクリーン。専用ピンセットとスクリーンが黒いケースに入って売られていた。交換時、慣れないとスクリーンにキズを付けることがあるので注意が必要。グレーのケースに入ったLX用スクリーンとサイズが同じなので共用できるが、透過率の違いのため、正確な露出を得るにはISOダイヤルで補正しなければならない。 MXの時代からあるレフコンバーターや接写リングは、今も現行品で販売されている。

Kマウントが登場する以前、ペンタックスの一眼レフは、ねじ込み式のM42マウントを採用していた。現在でもペンタックスは、これらM42マウントレンズをKマウントボディに取り付けるアダプターを販売中で、このアダプターを用意すれば、旧いレンズもMXに使用できる。ただし自動絞りは連動しないので、レンズ側にあるA/M切り替えレバーで絞りの開閉を行う必要がある。またこのとき測光は絞り込み測光になる。
 
マウントアダプターK(5,000円で発売中)を組み合わせると、ネジ込み式のタクマーレンズが使用できる。

マウント名にKを含むバヨネット式マウントの交換レンズは、それぞれ高い互換性を備えていることはすでに説明した通りだが、デジタル一眼レフ専用のDAレンズはイメージサークルが小さく、絞りリングが省略されているのでMXには使用不可。MX用にレンズを揃えるなら、MF、AFを問わず、レンズ側に絞りリングを備えたレンズを選べばOKだ。また645、67レンズ用アダプターを用意すれば、中判カメラ用レンズも使用できる。
 
ペンタックスは中判カメラ用レンズを取り付けるアダプターも用意している。
写真は645レンズ用アダプターK(52,500円)*1 を用いて645用レンズを装着した状態。このほか67用レンズを取り付ける67レンズ用アダプターK(50,400円)*1もある。
*1:メーカー希望小売価格
メーカーサイトは
こちら

いずれにしてもペンタックスKマウントレンズには40年近い歴史があるので、中古品が豊富に出回っている。さらにM42マウントのタクマーレンズも視野に入れれば、その数は膨大で,一部の稀少品を除けば値段も手頃。フィルムでクラシックレンズの写りを楽しむにはMXは最高のパートナーになるだろう。
 
右上:アサヒペンタックスSP(64年発売)
左上:アサヒペンタックスKM(75年発売)
下:アサヒペンタックスMX(76年発売)

SPは、世界で初めてTTL露出計を採用した35ミリ一眼レフ。測光は絞り込み式でマウントはねじ込み式のM42マウント。
KMはSPの後継機であるSPFのマウントをKマウントに変更して発売された初代のKマウントカメラ。
他の2台とMXのボディーサイズを比べると、とてもコンパクトだ。
Kマウントレンズの中で最もMXに似合うのがMレンズと呼ばれるSMCペンタックスMレンズシリーズ。ボディに合わせてレンズのコンパクト化が図られているので、交換レンズとボディが小さなカメラバッグに収まってしまう。写真に写っているのは、M100ミリF2.8(左上)、M20ミリF4(手前)、M40ミリF2.8(ボディに装着)。まさに「世界最小最軽量級のスナップセット」だ。
リコーの一眼レフはKマウントを採用していたので、リコー製レンズも装着可能。ある意味で、これも純正の組み合わせだ。
ペンタックス MXを探してみよう。

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中村 文夫(なかむら ふみお)

1959年生まれ。学習院大学法学部卒業。カメラメーカー勤務を経て1996年にフォトグラファーとして独立。カメラ専門誌のハウツーやメカニズム記事の執筆を中心に、写真教室など、幅広い分野で活躍中。クラシックカメラに関する造詣も深く、所有するカメラは300台を超える。日本カメラ博物館、日本の歴史的カメラ審査委員。
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