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東京ものがたり1970年代

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東京ものがたり1970年代
公開日:2019/06/27

多摩川 1969-1971・1974

photo & text 丹野清志


多摩川は、荒川、江戸川とともに東京を流れる3大河川の1つ。水源は山梨県甲州市の笠取山で、小河内ダムから青梅そして多摩丘陵と武蔵丘陵の間から大田区と川崎市川崎区の境を流れて東京湾へ注ぎます。全長138kmだそうです。
私の多摩川写真散歩は1968年ごろから始まります。当時多摩川まで電車ですぐのところのアパートに住んでいたこともあって、ちょくちょく出かけていたのです。


高度経済成長期の1960年代から1970年にかけて、全国各地で「公害」が大きな社会問題となりました。首都東京を流れる多摩川も、流域人口の増加による家庭排水と工場排水によって水質汚染が深刻化していて、新聞テレビでは魚が大量死したというニュースが続いていました。人の暮らしの環境に関心があった私は、川の汚染を探るというもう一つの多摩川通いを始めたのでした。

カメラで見る風景はがらりと変わっていき、家庭排水の洗剤の泡が溜まる堰堤風景や河川敷に捨てられたさまざまな廃棄物、水辺に重なる魚の死骸といったものばかりが目につくのでした。現在はアユ釣りも盛んに行われるようになり、流域はすっかりきれいになっていますが、70年前後の多摩川は「死の川」とまで呼ばれ都市公害の象徴みたいにされた川でもあったのです。

そんな中でも多摩川流域にはふつうの人々のふつうの暮らしがふつうにありました。休日となれば河川敷のゴルフ練習場に人が集まり、若い二人がボートに乗り、水辺では家族連れがボール遊びをしたり虫取りをしたりして遊んでいました。川漁師が投網で魚をとるシーンも撮りました。やがて私のフレームから「公害風景」が遠のいていき、ふつうの人のありふれた日常のシーンが戻っていたのでした。



水辺を歩くと、水ぎわに廃棄物が打ち寄せられていて、家庭排水の洗剤の泡が水面に広がり風に乗ってふわふわと飛散していたり、必ずといっていいほど魚が死んでいるのを見かけました。1970年『アサヒカメラ』誌に掲載した多摩川の写真のタイトルは「帰らざる河」でした。


川の写真散歩には、おだやかな光と風があればいい。自然の中で深呼吸して、心が洗われるような気分が写り込んでいればいい。



50年も前の写真を見ていて、ふっと“あのころ”の記憶が浮かぶ。河川敷に腰を下ろして、水面を走ってくる風の中にいる・・・。川は子どもたちの遊び場だった。70年前後は深刻な社会問題が噴出した激しい時代だったけど人々の暮らしはゆったりとしていたよなあ、としみじみ思う。








1974年8月31日からの台風16号の影響で多摩川が増水した様子をテレビで見て、9月1日、“野次馬カメラマン”は“現場”に向かいました。そこで、堤防が決壊して家が流されていくシーンを見ることになったのです。狛江市の民家19戸が流出しました。1977年放映の山田太一原作・脚本によるTBSテレビドラマ「岸辺のアルバム」のラストシーンはこの時の水害でした。
 

【使用カメラ】

アサヒ ペンタックスSP スーパータクマー24mm F3.5
ニコンF ニッコール28mmF3.5 ニッコール200mmF4
フィルム:トライX・ネオパンSSS




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丹野 清志(たんの・きよし)

1944年生まれ。東京写真短期大学卒。写真家。エッセイスト。1960年代より日本列島各地へ旅を続け、雑誌、単行本、写真集で発表している。写真展「死に絶える都市」「炭鉱(ヤマ)へのまなざし常磐炭鉱と美術」展参加「地方都市」「1963炭鉱住宅」「東京1969-1990」「1963年夏小野田炭鉱」「1983余目の四季」。

<主な写真集、著書>
「村の記憶」「ササニシキヤング」「カラシの木」「日本列島ひと紀行」(技術と人間)
「おれたちのカントリーライフ」(草風館)
「路地の向こうに」「1969-1993東京・日本」(ナツメ社)
「農村から」(創森社)
「日本列島写真旅」(ラトルズ)
「1963炭鉱住宅」「1978庄内平野」(グラフィカ)
「五感で味わう野菜」「伝統野菜で旬を食べる」(毎日新聞社)
「海風が良い野菜を育てる」(彩流社)
「海の記憶 70年代、日本の海」(緑風出版)
「リンゴを食べる教科書」(ナツメ社)など。

写真関係書
「シャッターチャンスはほろ酔い気分」「散歩写真入門」(ナツメ社)など多数。

著書(玄光社)
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