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カメラアーカイブ

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カメラアーカイブ
巷に溢れる新製品情報。そんな情報の波に埋もれてしまっている魅力的なカメラたちがある。メーカー開発者たちが、心血を注いで創りだした名機の魅力を蓄積していく。
公開日:2019/07/20

ライカR5 + SUMMICRON-R 50mm F2/SUMMICRON-R 35mm F2

photo & text 大村祐里子



ライカのRシリーズは、ライカの一眼レフカメラのシリーズを指します。ライカというとレンジファインダーのMシリーズが有名ですが、実は一眼レフも作っています。

1950年代後半、性能のよい日本製一眼レフがライカの重要な市場であったアメリカでシェアを伸ばし、ライカの基盤を侵食しはじめました。そこで、ライカも一眼レフの開発をすべきとの声を受け、ライツ社は1965年に「ライカフレックス」という一眼レフの第1号機を発表しました。その後も「ライカフレックスSL」「ライカフレックスSL2」を発表。1971年には日本のミノルタ社と技術提携を結び、さらに開発を続けました。次に発表された「R3」は、ミノルタの一眼レフであるミノルタXEをベースにシステムを一新し、当シリーズの初のAE機になりました。「R3」以後、「R4」「R5」のように、「reflex」(レフ)の頭文字である「R」が冠されるようになり、ライカRシリーズは2009年発表の「R9」まで続きました。

 

私とライカRシリーズ

10年くらい前、知人のカメラマンが「R4」を使用しているのを見てカメラの佇まいがかっこいいと思い、同じものを購入しました。それがわたしのR道の始まりでした。いつかライカが欲しいと思っていたのですが、ピント合わせがしづらいという理由でレンジファインダー機が苦手だと感じていた自分にとっては、一眼レフであるR4は使いやすく理想的なライカでした。

そのときカメラについていたレンズが「SUMMICRON-R 50mm F2」でした。しばらくしてから、同じズミクロンである「SUMMICRON-R 35mm F2」を入手しました。その2本を使ううちに、だんだんカメラよりもズミクロンRの描写に惹かれるようになりました。最近では、このレンズで撮影したいがためにライカRシリーズのボディを使っています。

ライカRシリーズは、基本的に電子式シャッターを採用しています(※注1)。電池がなくなったり、壊れたりするとシャッターが押せなくなります。修理費は高額となるので、直すよりは新しいものを買ったほうがお安く済みます。わたしも、過去に何台も天に召されているのですが、それでもRのレンズを使いたいがために、Rシリーズのボディを購入し続けています。現在手元にあるのは、R4、R5、R7です。


※注1:「ライカフレックス」から「ライカフレックスSL2」までと、「R6」「R6.2」は機械式シャッターを採用しています。



ここでは、ブラックとクロームの2台を所有しているR5をご紹介させていただきます。

Rシリーズのスタイルは1980年に発表されたR4で確立されたといえます。以降、R7までは大幅なフルモデルチェンジはありません。1987年に発表されたR5は、R4の機能を一部改良したものです。




R5はR4のデザインを受け継いでいます。高級感のある質感と丸みのあるボディからは、どこか女性的な印象を受けます。私はこのデザインが大変好みです。



カメラ上部にはダイヤル類がまとまっています。視認性・操作性ともに優れているので、初心者でも直感的に使えます。

R5は、R4と同じく、絞り優先方式も、シャッター速度優先方式も使えるので、マニュアル撮影に自信のない方でも安心です。

R4との違いとしては、R4の最高シャッター速度が1/1000秒だったのに対し、R5は1/2000秒に拡張されています。個体によっては、ときどき最高速度が出ていないことがあるので購入の際は注意しましょう。

シャッターボタンを押したときの感覚は独特で、一瞬のタイムラグのあと「カション」と柔らかい音がしてマイルドな振動が手に伝わります。最初の頃は壊れているのかと驚きましたがこれが標準です。切れ味の鋭さはまるでありませんが、このシャッターボタンの感触こそが「ライカRの使用感」ではないかと思っています。

ファインダーは大変明るく見やすく、ピントの山がとてもわかりやすいのでピント合わせは容易です。




背面にはフィルム確認窓がついており、フィルムが入っているかどうかを確認できて便利です。




R5では、R4にはなかった視度補正機構が追加されました。視度の調整は、ファインダー接眼部左上にある小さなギザギザのダイヤルで行います。

電池はSR44が2個必要です。SR44はどこでも売っているので、万が一なくなってもすぐに手に入れることができ、安心です。ただ、電池の持ちはわりと良いように思います。よく使っても数ヶ月は持ちます。そこまで頻繁に変えなくても大丈夫です。

 

ミラーボックス内の経年変化に注意!




中古品を購入する際、もっとも注意しなければならないのは、ミラーボックス壁面のパルパス(反射防止材)が剥がれていないかどうか確認することです。多くの個体は、そこまで綺麗ではありません。現に、わたしの個体もブラックのほうは微妙なところです。パルパスは最悪、剥がれ落ちたものがシャッター幕や、フィルムに付着してしまうことがあります。できるだけ綺麗なものを選びましょう。



 

至高の写りをするライカRレンズ


ライカR用のレンズは、レンジファインダーであるM用のようにファインダーの制約がないため、バラエティーに富んだレンズが製造されています。

ライカR用のレンズを購入する際は、「レンズカム」がどのタイプかをきちんと確認する必要があります。カムとは、絞りの情報をボディに伝える「爪」のことを指します。具体的には、カムの数により「1カム」「2カム」「3カム」「Rカム」「ROM付きカム」と分類されます。詳しいことは割愛しますが、汎用性のある3カムレンズであれば、ライカフレックスからR9まですべてのモデルで絞り値をボディに伝えることができます。

SUMMICRON-R 50mm F2



「ズミクロン」の名前は、ライツ社のレンズで、明るさがF2のものに付けられています。

ライカR用の標準レンズとして長く採用されてきたのが、SUMMICRON-R 50mm F2です。ボディの移り変わりに伴い、当レンズも何度かモデルチェンジを行っています。具体的にはタイプ1、タイプ2、タイプ3があります。こちらでご紹介しているのはタイプ2(3カム)です。R5以外の機種にも装着できます。

このレンズで撮った絵は、コントラストが高く、色乗りも良いのが特徴です。描写を音で表現するなら「こってり」です。どんなシーンでも、濃厚な一枚に仕上げてくれるのでとても気に入っています。しかし、繊細な表現が不得意なわけではありません。絞ったときの細やかな描写もまた魅力のひとつです。このレンズで撮影したいがためにRシリーズを使っていると言っても過言ではありません。




コントラストの高い描写がこのレンズの最大の魅力だと思います。どのようなシーンでも被写体の存在感を引き立ててくれます。



波紋もキレッキレに写せるので気持ちが良いです。






F8以上絞ったときの鋭利な描写がとても好きです。空間を埋め尽くす草花を隅々まで写し撮れているように思います。


最短撮影距離は50cmとあまり寄れないように思えますが、花もこのくらいまで大きく写せます。色ノリの良さもこのレンズの特徴だと思います。鮮やかなものをどんどん撮りたくなります。

 

SUMMICRON-R 35mm F2



同じくズミクロンの35mmです。ライカフレックスSL用から始まり、第1バージョンと第2バージョンがあります。こちらでご紹介しているのは第2バージョン(3カム)です。

描写の特性は50mmと非常に似ていますが、35mmという視野に近い画角は50mmよりもさらに汎用性が高いように感じます。最近はこのレンズ一本だけでスナップに出かけることも多いです。




小雨がぱらつく中、F16まで絞ってあじさいの花を撮影してみました。重たさすら感じる濃い描写が、その場のどんよりした空気感をきっちり写し撮ってくれたように思います。


ヌケの良い描写が魅力なので、澄んだ青空との相性は抜群です。



最短撮影距離は30cm です。50mmよりもさらに一歩近づける感覚です。貝殻のような小さなものにもここまで寄れるので、寄れないストレスは感じません。



モノの質感を表現するのが得意なレンズだと思います。煙の立体感、鉄錆びたパイプの硬さ……現場で感じたものが、写真から見てとれます。


 

ライカR5、SUMMICRON-R 50mm F2/35mm F2 レビューまとめ

わたしはカメラが好きですが、同じシリーズのカメラを何台も何台も買い続けているのは、ライカRシリーズだけです。好きなレンズがどのボディでも使えるというのが一番ですが、Rシリーズ(特にR4〜R7)のデザインが自分好みというのも大きな理由の一つです。見つけるたびにいいなと思って買ってしまいます。あの丸みがあるフォルムが、たまらなくかわいいのですよ……。

そんなわけで、ライカRシリーズは、実用的な意味で満足のいく描写・使用感を提供してくれる一方で、コレクター的な意味での欲を満たしてくれるものでもあります。実用性とコレクター性の両面から心を掴まれてしまっているので、わたしはライカRシリーズをやめられないのだろうな、と自己分析しています。

ライカはMシリーズばかりに脚光が当たりがちですが、Rシリーズだってよくできていると思います。ボディだけならそこまで高くないですし、もっとみんなで使いましょうよ。


協力:日本カメラ博物館
 
 著者プロフィール  
大村 祐里子(おおむら ゆりこ)

1983年東京都生まれ
ハーベストタイム所属。雑誌、書籍、俳優、タレント、アーティスト写真の撮影など、さまざまなジャンルで活動中。雑誌連載:『フォトテクニックデジタル』にて「身近なものの撮り方辞典」を連載中。

ウェブサイト:http://omurayuriko.jp/
ブログ:http://shutter-girl.jp/
Twitter:@Holy_Garden
 
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