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新製品レビュー

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新製品レビュー
公開日:2021/03/26

ニコン Z 7II スペシャルレビュー(後編)Z 7IIの解像力と高感度特性を試す

宇佐見健


ニコンのフルサイズミラーレス一眼の新フラッグシップ機Z 7II。前編ではZ 7からの主な進化点の解説とZマウントレンズで撮影した作例を交えて使用感などをお伝えした。この後編では4575万画素の高画素センサーとNIKKOR Zレンズの高解像な描写力が活きるトリミングへの耐性や、新たに追加されたスローシャッター設定の撮影などについて使い勝手や可能性について紹介したい。 

ニコンZ 7IIは映像エンジンEXPEED6のデュアル搭載による連写性能の向上で動体シーンへの適応力強化も頼もしい。AFレスポンス、EVFの見え、小気味よく軽快な撮影フィーリングを実感すれば超望遠レンズで各種スポーツやアニマルライフや鉄道、航空機などを様々な被写体のアクティブなシーンを積極的に狙いたくなる。

ZシリーズカメラはマウントアダプターFTZの使用でニコン一眼レフ機用のNIKKOR FマウントAFレンズ群も使用は可能。既にFマウントの超望遠レンズや望遠ズームを所有しているのであれば資産を活かすという意味では良いけれど、小柄なニコン Z 7IIボディとの重量バランスやカメラから機能設定可能なコントロールリングやFnボタンによる操作性を考えるとやはりNIKKOR Zレンズが最適だ。 

現時点ではZマウントレンズで最も長い焦点距離はNIKKOR Z 70-200mmf/2.8 VR SにZ TELECONVERTER TC-2.0×装着時は焦点距離を2倍した140-400mm f/5.6ズームレンズとして使用できる。 

開放絞り値に変化はあるが最短撮影距離はそのまま変わらず、NIKKOR Z 70-200mmf/2.8 VR Sの優れた描写性能やAF精度とVR手振れ補正機能、高い防塵防滴仕様も有効である。 



NIKKOR Z 70-200mm f/2.8 VR S Z TC-2.0x F5.6 1/2500  ISO1250 +1.67EV WB:オート

大きく広げた翼で上昇気流に乗り、悠々と飛び回るトビ。海辺や河原で目にする機会も多いので、飛翔を撮影する練習相手にはちょうど良い。 

見上げて撮るパターンが多いため、逆光写真になりがちなので太陽の位置や陽の当たる角度に応じて露出調整が必要だ。しかし、不規則に飛ぶ様をファインダーで追従しながら露出調整するのはなかなか難しいので、レンズで追いまわすより光線条件の良いところに飛んでくるのを決め打ちするのが良いだろう。 
 


NIKKOR Z 70-200mm f/2.8 VR S Z TC-2.0x F5.6 1/2500  ISO1400 +1.0EV WB:オート

オートフォーカスはAF-Cで高速連写設定が基本だ。背景を青空に抜くような場面ではピントを後ろに持っていかれる心配が無いのでオートエリアAFの広い測距点被写体を捕捉すると良い。逆に山の樹々や空以外の要素にAFが食いついてしまうような場合にはワイドエリアAFなどに切り替え測距範囲を狭めて被写体を追う。ちなみにボディ前面のファンクションボタンFn1/Fn2ボタンのいずれかにAFエリア切り替えメニューの呼び出しを割り当てておくとEVFから目を離さず撮影姿勢のまま右手グリップを大きく握り直す必要もなく設定操作ができて便利だ。AFの作動はシャッターボタン半押し連動よりも背面のAF-ONボタンを利用するスタイル(親指AF)被写体をファインダーで捉える前段階でAFサーチに入りEVF像が大ボケしてチャンスを逃すリスクも低減してくれるので合わせて練習すると良い。



焦点距離が長いレンズほど動く被写体をしっかりとフレーミングしたまま追従して連続撮影するのは難しい。これは経験を積むしかないのだけれど、どれだけやっても失敗する時はあるし、そういう写真がけっこう良い瞬間だったりすることも多い。この写真もフレーミングが遅れて画面左が無駄に空いてしまった失敗写真だ。しかし光の当たり方が良く、羽根の模様やトビの顔もしっかり写しとめているのでカメラの画像編集機能のトリミングを利用して救済することにした。手順は以下の通り。 


再生画面に目的の画像を表示した状態で、カメラのメニューから「画像編集」の「トリミング」を選択。 





トリミングで切り出す部分の指定は電子ダイヤルやマルチセレクター、拡大ボタンなどで設定する。この画像の場合はもとは横位置だが2:3の縦位置写真として切り出すことにした。画面左上の「3672:5504」はトリミング後の画像のピクセルサイズを表示している。

黄色の枠がトリミング指定範囲。指定がすんだらOKを押して保存する。オリジナル画像とは別のファイル名のJPG画像としてメモリーカードに記録される。 



カメラ内トリミング後の写真

*クリックすると別ウィンドウで開きます。

オリジナル画像の半分を切り捨てた形だが、ニコン Z 7IIの4575万画素はこのトリミング後でも2000万画素オーバーをキープできる余裕がある。画像を拡大すると羽根のディテールや太陽が瞳にキャッチライトとして入っている様子もしっかり確認できる。これはニコン Z 7IIが高画素というだけでなく、テレコンバーターを装着してもNIKKOR Z 70-200mmf/2.8 VR Sが優れた描写性能を発揮している証拠でもある。


X2.0倍のテレコンバータ利用の400mmでも超望遠レンズの焦点距離としてはまだ少しもの足りないが、事後のトリミングではなく撮影時に構図をしっかり決めたいということであれば、撮像範囲をDX(5408×3600pixel  APS-C)に切り替えることで焦点距離はさらに×1.5倍され撮影時に210-600mmズーム相当の焦点距離として被写体を捉えることができる。トリミングを悪いことのように言う人もいるが、高画素機の利点として撮影時のクロップも撮影後のトリミングも臨機応変に活用すべきと思う。

 

シャッタースピード 480秒(8分間)と900秒(15分間)
長時間露光での撮影にチャレンジ

ニコン Z 7IIではメニューに「Mモード時のシャッター速度の延長」が追加され、この機能をオンにするとマニュアル露出モード時のスローシャッターが最長で900秒まで設定可能になった。これは主に赤道儀を使い、星や星雲などの追尾させながら撮影する本格的な天体撮影分野では歓迎される機能。超高感度特性の良い現代のデジカメでは夜景撮影等にここまでのスローシャッターは必要ないので機能搭載を魅力に感じる人は限定的だろう。 
また、星の日周運動を撮影するにしても、インターバル撮影で大量に撮影した画像を比較明合成して1枚の画像に作り上げるほうが今は一般的である。
それでもせっかく新規に搭載された機能なので、天体撮影用の特殊な装置などは使わずカメラと三脚だけでどのような撮影ができるのかを試してみた。


シャッタースピードの延長をオンに設定すると長秒シャッターが可能になる

撮影したのは日没後のいわゆるマジックアワーがほぼ終わる時間帯の海辺の風景。水平線と空の境目がかろうじて判る程度に暗くなってからの撮影開始である。 



撮影場所は遊歩道沿いの一部広くなったスペース。街路灯は無く、陽が落ちたあとはどんどん暗くなっていくだけ。目前の波打ち際や島を照らす明かりはほぼ正中の上弦の月(半月)のみという条件。

構図とピントは日没前に予め合わせておき、MFに切り替えさらに不用意にズレることのないようピントリングをテープで固定した。尚、長秒時ノイズ低減機能はオフ設定で撮影している。 


レタッチ前、撮って出しの写真

NIKKOR Z 14-24mm f/2.8 S F8.0 480  ISO64  WB:オート

肉眼では夕陽のオレンジ色はほとんど見えないほど薄く消えかけていたが、スローシャッタ―で撮影すると思いのほか濃く再現されていてまだ光が残っている状態だということがわかる。そして空の色は高い位置から水平線近くの低い位置まで自然なグラデーションで描写できている。

波打ち際や島を照らすのは弱い月光のみため、遠景の明るさ基準の露出バランスになった場合は逆光状態と同様で、島は露出不足のためシルエットになる。仮に島の様子をもう少し明るく写すとすれば、更に遅いシャッター速度で長時間露光にする必要があるが、その場合は画面奥の水平線のあたりは露出オーバーとなって白トビを起こすことが想像できる。それこそハーフNDや水平線部分だけに適用するよう帯状にND効果を持たせた角形フィルターが出番の撮影というわけだ。 

レタッチ後の写真

NIKKOR Z 14-24mm f/2.8 S F8.0 480  ISO64  WB:オート

しかし、今回は撮影時の露出調整やフィルターワークではなく、画像のRAW現像で調整を試みた。

調整内容はさほど難しいものではなく、島と手前の波打ち際の様子が少し見える程度に明るさの調整とシャドウ部を持ち上げ、既に十分に明るい水平線部分や空が明るくなり過ぎてトーンを失わないようにハイライトを抑えた。そして少し派手目に色調になるように全体の彩度を上げる調整を行っている。
長時間露光により波がブレて海面が雲海のようになった表面に夕陽の色がのり、印象的な夕景の再現を試みた。HDR画像とはまた少し趣の異なる調子の画像に仕上がったと思う。 


レタッチ前、撮って出しの写真

NIKKOR Z 14-24mm f/2.8 S F5.6 900  ISO100  WB:オート

1枚目の撮影結果で思いのほか水平線部分が明るく写ることが分かったので、撮影終了後10分ほど間隔をおき、肉眼では水平線の境目はもちろん自分の足元や手元も見えづらい暗さになってから2枚目を撮影した。こちらは頭上の月明りに対する露出値で撮影ができるので1枚目の写真にくらべて手前の波打ち際や島のディテールも写すことができている。また星の日周運動も露光時間が伸びたぶんだけ長い線で写り判りやすい。水平線の明るい筋は露光中に船舶が通過した際の光跡が写ったものだ。

この画像もRAW現像で編集を行ったのが次の画像。ただし、明るさに関しての調整は僅かで、マジックアワーに近い青い空になるようにホワイトバランスの色温度および彩度を調整した程度である。

どちらの写真も僅かな光を長時間露光でゆっくりとセンサーに当てて捉えたわけだが、ノイズが少なく静寂な夜の雰囲気に写せているのではないだろうか。空に夕陽の色が残る明るさで比較的低い位置にも星の光跡が写せるのはこの撮影方法とニコン Z 7IIの高画素センサーの描写力のお陰だろう。まだ試行錯誤する余地はあるが、この薄明終了の時間帯に敢えてフィルターを使わず、カメラと三脚だけで分単位のスローシャッター撮影は簡単に撮り直しのできないスリルもあり面白味を感じた。 

レタッチ後の写真

NIKKOR Z 14-24mm f/2.8 S F5.6 900  ISO100  WB:オート


最後は工場夜景を一方は低感度のスローシャッターで撮影し、もう一方は拡張域の超高感度設定で撮影したもの。どちらが良いかという比較ではなく、どちらもニコン Z 7IIのポテンシャルの高さを十分に知ることができる画像としてお見せしたい。

シャッタースピード 1/8秒での撮影

NIKKOR Z 70-200mm f/2.8 VR S F14 60  ISO100  WB:マニュアル

シャッタースピード 60秒での撮影

NIKKOR Z 70-200mm f/2.8 VR S F16 1/8  -0.33EV WB:マニュアル

低感度での撮影結果は当然のことながら緻密な描写で構造物の細かい分部まで鮮明に描写できているのと、特にシャドウ部の階調もしっかりと再現できている。一方、超高感度での撮影結果を見ると特に暗部にはそれなりの高感度ノイズ発生しているのが目につくが、部分拡大すると駐車場のフェンスの金網のような細い線も解像できていることに少々驚かされる。
拡張域では彩度が低下して退色した写真のような描写になるカメラも多いが、それをほとんど感じさせない点も優秀といえるだろう。もちろん大きなプリントなどには適さないが、例えばwebページなどPCモニター上小さなサイズであれば十分使用に耐える画質と評価できると感じた。 


 

まとめ

前編でも述べたが、センサーそのものやAF制御にわかりすい派手な変更や機能追加が少ないため地味なモデルチェンジに見えてしまうニコン Z 7II。しかし実際に使用してみるとその画質の良さがじわじわと伝わってくる。これはもちろん描写力の高いZマウントS-Lineレンズも欠かせないことだが、見えの良いEVFで撮影しながらしっかりと手応えを得られることが使っていて楽しい。そして帰宅後にパソコンで画像展開すると感じていた手応えが本物であることを実感するとともに想像以上に被写体のディテールを捉えていることに新たな驚きがある。

今回紹介した低速シャッターによる海辺の写真は極めて短い時間帯にだけ撮影できるシーン。ライブビューでは通常の撮影のように仕上がりをシミュレーションできないし、数分間の撮影中にも空は刻々と表情を変えていく。全く同条件での撮り直しが出来ないという点では難しさもあるが、それだけに撮影直後の画像確認は少しワクワクもする。もちろんバルブやタイマー機能でも長秒露光は可能だが、三脚にカメラを載せるだけのセットアップで撮影に取り掛かれるのも便利に思う。 

前編の記事はこちら

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【著者プロフィール】  
宇佐見 健(Ken Usami)

1966年東京生まれ。日本大学芸術学部写真学科を卒業後、専門誌、広告代理店を経てフリー。カメラ雑誌では新製品レビューやハウツーなど各種特集ページの執筆も担当。カメラグランプリ選考委員。
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