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新製品レビュー

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新製品レビュー
公開日:2021/02/10

ニコン Z 7II スペシャルレビュー

photo & text 宇佐見健
大口径、ショートフランジバックのニコンZ マウントシステムを採用したニコンミラーレス一眼Z シリーズ。その登場から約2年が経ち、初代フラッグシップ機でもあるZ 7と兄弟機Z 6の第二世代が共に発売された。ニコンZ シリーズの頂点に立つ新フラッグシップZ 7IIの進化点と実力を探る。 



2世代目の外観からは大きな変化を感じとることはほとんどないだろう。わかりやすい部分で言えば、Nikonロゴのあるオデコ部分の僅かな形状と前面右下にあるエンブレムが「Z7II」に変更されていることくらいだ。 

地味めなマイナーチェンジの印象ではあるが、目に見えない部分ではZ 7に寄せられたユーザーからの要望にもしっかり応え、基本性能や使い勝手を大きく向上させている。まず、一番大きな変更点はデジタルカメラの画像処理の高速化を司る映像エンジンEXPEED6を1基追加してデュアル搭載に。これにより裏面照射型フルサイズ4,575万画素撮像素子での連写をZ 7の最高9コマから10コマ秒に引き上げ、連続撮影枚数については圧縮RAW記録で同19枚から7IIでは77枚へと約4倍に増加させた。本来、連写は兄弟機Z 6IIの得意分野だが、高画素機Z 7IIでも静的な被写体に限らず様々な被写体やシーンでのシャッターチャンス適応力を高めている。 

AFは493点のフォーカスポイントが画面約90パーセントを網羅する基本性能は継承しつつも、「瞳AF」「顔検出AF」はワイドエリアAFにも対応。検出対象となる被写体が多くても的確に目的の被写体を捉えることを可能にした。さらに低輝度性能も改善し-4EVまで高精度なAF測距(静止画撮影時)を行える「ローライトAF」機能も備わった。夜間や極端に乏しい定常光下でのAF測距性能を高め、マニュアル露出時に最長900秒の長秒露光設定が可能になった。 




EVFは約369万ドットの0.5型Quad-VGA OLEDで仕様上はZ 7と同じだが、ニコン独自の光学系で収差の少ないクリアな視界で連続撮影時の視認性も向上している。一方、背面の3.2型TFT液晶はチルト時にアイセンサー自動オフ機能を追加。これはダイヤルやボタンなど各種操作時に手や指などの動きにセンサーが反応して、意図せず表示がEVFに切り替わってしまう煩わしさを解消してくれる。またモードや設定状態を示す各種アイコンや露出などの撮影情報を一時的に非表示にして、画面を部分的に隠されることなく隅々まで確認できるようライブビュー情報表示の消灯機能が追加された。 



グリップ回りの各種ボタンやダイヤル、スイッチなどの操作系もZ 7を基本的に踏襲しており、既存のZ 7ユーザーが機種変更や2機種同時に運用する場合でも操作に違和感はないだろう。カメラをグリップしたまま中指や薬指で押せる二つのファンクションボタンも従来通り。このボタンにはEVFを覗いた眼を離さず撮影姿勢をキープしたままで割り当てた任意の機能発動やを設定オンオフなどを行いたい場合に非常に都合が良い。個人的には割り当て可能な機能には制限がなく自由に選択できるのが望ましく思う。 



Z 7IIではCFexpress/XQDカード、SDカードのダブルスロットが搭載されボディの厚みが増した分がそのままグリップ部の奥行きにプラスされた形だ。具体的には僅か2ミリの差であるが、これが結果的には従来よりもしっかりと握り心地をもたらしているようだ。


 

Z マウントレンズ 実写レビュー

NIKKOR Z 50mm f/1.2 S



Z ユーザー待望のf1.2大口径の単焦点標準レンズはパッと見、望遠レンズかと思うような太く長い鏡筒にレンズがギュッと詰まった重厚なつくり。単体でも重量1キロを超えるので他の定番ズームレンズ達と携行するのはそれなりの体力と覚悟が必要だが、逆に素早く高精度なAF駆動、機能割り当てが可能なL-Fnボタンやコントロールリングのおかげで操作性は軽快だ。EDレンズ2枚、非球面レンズ3枚を含む15群17枚の贅沢な光学構成にナノクリスタルコートおよびアルネオコートを施したレンズと大口径f1.2開放から得られるピント面のシャープな描写と自然で滑らかに溶けていくような大きく美しいボケ味はレンズの重さなど忘れさせてくれるはずだ。「このレンズが使えるからZ を選ぶ」という理由が成立する。 


NIKKOR Z 50mm f/1.2 S F1.2 1/4000  ISO100 -0.33EV 50mm WB:オート
50mm1.2S一本だけで撮り歩いても確かに重いが、EVF像の清々しさで被写体に集中できるので撮影中は重さなど不思議と気にならない。 


NIKKOR Z 50mm f/1.2 S  F2.8 1/50  ISO6400 +2EV 50mm WB:オート
背景は窓から外光が差し込み逆光状態の階段だが、猫を僅かに照らすのは天井ダウンライトという実際は薄暗い撮影環境。プラスの露出補正だけ。 


NIKKOR Z 50mm f/1.2 S F1.8 1/5000 ISO100 50mm WB:オート
トラックの少しゆがんだ荷台が赤い夕陽を一筋の線にして反射させていた。50mmf1.2レンズを通してみるとドラマチックな光景に。 

 

NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S



同じ24-70mm焦点距離で絞り開放F値が少し暗いZ 24-70mmf/4Sやリーズナブルな価格帯のZ 24-50mmf4-6.3や超広角から望遠域までカバーする高倍率ズームも発売され、常用レンズの選択肢が広がっているのは嬉しいが、やはり4,575万画素センサーの高画質に相応しいのは全域でF2.8通しのこのズーム。絞り開放でも画面中心から周辺に至るまで高い解像力を実現し、単焦点レンズにも引けを取らない優れた描写性能。Z マウントの光学設計の自由度高さとショートフランジバックの利点を存分に活かしたZ マウント標準ズームの最高峰。 


NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S F2.8 1/1600  ISO64 -0.33EV 70mm WB:オート
極めてコントラスト高く細かな部分までち密に再現できるのは解像力優秀なズームレンズの力とZ7IIの高画素センサ―の賜物。このコンビを使わないのは勿体ない。 


NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S F7.1 1/640  ISO100 -1EV 24mm WB:オート
強い太陽光を受けた海面のハイライト、石畳みのグラデーション、強く濃く落ちながらも僅かにディテールを残す柱と影。まさにそこに存在する繊細な光全てを余すことなく再現するだけでなく、その手応えをしっかりと撮影時にEVFで得られることがものすごくエキサイティング。 

 

NIKKOR Z 14-24mm f/2.8 S



風景はもとより星景やオーロラ撮影などでも求められるより広い画角とズーム全域で絞り開放F2.8通しを実現している。ワイドズームといえば16-35ミリがお約束だったが、Z マウントレンズではワイド端をさらに広げテレ端を24ミリとすることで24-70mmとの組み合わせでも焦点距離の被りがなくなった。通常のバヨネットフードHB96のほかに112ミリ径ねじ山を有するバヨネットフードHB97を同梱しており、撮影目的に応じて付け替えることで、レンズ前に各種フィルター装着が可能。さらにレンズ後部にもシートフィルターホルダーを有しており複数種類を併用する多彩なフィルターワークにも対応できるのがありがたい。 






NIKKOR Z 14-24mm f/2.8 S F4.5 0.5 ISO10000 -0.67EV 14mm WB:マニュアル
竹灯籠に照らされた小路と真っすぐに伸びた竹林越しに見える微かに明るさを残した空を手持ち撮影で写し込む。低速シャッター手持ち撮影でも5軸5段のカメラ内手振れ補正機構が実に心強く難なく撮影できた。 



NIKKOR Z 70-200mm f/2.8 VR S



望遠域70ミリから200ミリまでf2.8固定で瞬時にズーミングできる機動力の高さで撮影ジャンルを問わず望遠ズームとしては定番の一本。非球面レンズや蛍石などを用いた贅沢な光学構成に加え、最新のコーティング技術により逆光にも強くズーム全域で高解像・高コントラストで抜けの良い描写を実現。レンズシフト方式の手ブレ補正機構VRを搭載しZ 7IIとの組み合わせでは約5.5段分の強力な手振れ補正効果を得られる点もポイントが高い。望遠レンズなので遠景に長けた印象が強いが70mm時で0.5メートル、200mm時で約1メートルの近接撮影が可能。クローズアップで得られる画もドキッとするほどシャープで頼もしい描写をする。 


NIKKOR Z 70-200mm f/2.8 VR S F2.8 1/8000 ISO64 200mm WB:オート
強く光る海面でシルエットになった親子。シャドウ部は完ぺきに潰れたかと思ったが、お父さんの表情や子供の乗るキックスケーターの塗装色も読み取れる一方でハイライト部は細い髪の1本いっぽんも再現できている。 


NIKKOR Z 70-200mm f/2.8 VR S F2.8 1/200  ISO100 +0.67EV 195mm WB:オート
カメラを地面に置いて背面液晶でのライブビュー撮影。Z 7IIからは動物瞳AFもワイドエリアAFで使えるようになりこんな超ローポジションでもサクサクとピントを合わせて撮影できてしまう。 
 

NIKKOR Z 70-200mm f/2.8 VR S + Z TELECONVERTER TC-2.0x


NIKKOR Z 70-200mm f/2.8 VR S Z TC-2.0x F5.6 1/1000  ISO180 +0.33EV 400mm WB:マニュアル
画像処理エンジンが2基になり、調子に乗ってシャッターボタンを押し続けることがなければ連写の書き込みで待たされることもない。10コマ連写中のEVFのキレも良く動体への適応性も向上している。 


NIKKOR Z 70-200mm f/2.8 VR S Z TC-2.0x F5.6 1/1000 ISO100 +0.33EV 400mm WB:マニュアル
TELECONVERTER TC-2.0xを装着すると140-400mmS/5.6として使用可能。Zマウント超望遠レンズのラインナップはまだ貧弱なだけにテレコンは頼もしいアクセサリーだ。解像感のロスも最小限で「テレコン=画質低下」の固定観念は捨てても良いと思えるほど。 


NIKKOR Z 70-200mm f/2.8 VR S Z TC-2.0x F14 1/100秒 ISO100 310mm WB:オート
もう少し太陽の高い位置から段階的に撮影したが色の滲みコントラストの低下も最小限で関心させられた。画面左の漁船が太陽に絡むことを期待して望遠端400mmで待ち構えるも、手前で停止してしまったので急遽画角を広げて構図とピントを修正して撮影。AFが迷うこともなく太陽がダルマになった瞬間をとらえることができた。 
 

<ニコン Z 7IIの評価>


冒頭でも触れたように第一印象は地味なマイナ―チェンジのZ 7II。しかし実際に撮影に出て使ってみると、ニコンのフルサイズミラーレス旗艦機としての完成度を増す着実な進化が感じ取れた。これはカメラボディの機能強化だけでなく優秀なZ レンズが増えたことも要因として大きいだろう。Z 50mmf/1.2などはEVF像を見るだけで、ここ数年感じていた視力低下が回復したのかと錯覚するほどテンションが上がる。良く見えるEVFと描写力の優れたレンズはアウトフォーカス状態から合焦する一瞬の間も楽しいと思えてしまう。また、強逆光や激しい明暗差が混在する露出判断が難しい光線状態などでも状況が把握しやすく迷わずに済むのもありがたい。元から露出精度は良いニコンのカメラだが、今まで以上に1コマ1コマ撮影しながら手応えが得られているので無駄打ちが減り撮影画像を現場で再生確認するにしても短時間でテンポよく次の撮影に移行できる。こうしたことも含めて機動力の高さをあらためて実感できるのだと思う。ただ、不満が無いわけではない。システムとして早急な拡充を望みたいのは、やはり超望遠域レンズの薄すぎるラインナップ。マウントアダプターFTZ を使用すれば豊富なFレンズ群の90種類以上のレンズが使えるのはわかるが、Z マウントの光学設計でキレキレの描写力を見せつけて欲しい。 

使い勝手の部分ではようやくダブルカードスロットが搭載され、再びSDカードが使用できるようになった。大量の撮影には事後にPCへ転送することを考えれば、より高速なCFexpress/XQDカードを使う方が有利なことは当然だが、初期型でのSD切り捨ては少々思い切りが過ぎたと言える。またユーザー独自のカスタマイズなどカメラの設定内容を保存しておくのにもSDカードが使えると都合が良い。昔使っていたが今は出番のない小容量カードなど設定バックアップの専用にしておけば初期化してしまうこともないはずだ。 

これも地味な機能の追加だが、今回の進化ではマニュアル露出時の長秒露光設定が可能になった。Z 7では最長30秒で、それ以上の露光はバルブかタイムモードで撮影することが可能だが、Z 7IIでは最長900秒(15分)まで設定できる。分単位でシャッターを開けて撮影するのは主にポータブル赤道儀と望遠レンズを使用するような天体撮影が主な用途と思われる。星景撮影はトライしてみたい人は多いと思うが、そこまでの装備を用いての撮影は知識も必要でなかなかハードルも高い。 

それでもせっかく搭載された機能なので風景撮影や夜景撮影などで利用して何か今までと少しでも違う表現ができたら面白いと思う。実験してみる価値を感じたので、それは次回のレポートでお届けしたい。  



後編へつづく
 
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【著者プロフィール】  
宇佐見 健(Ken Usami)

1966年東京生まれ。日本大学芸術学部写真学科を卒業後、専門誌、広告代理店を経てフリー。カメラ雑誌では新製品レビューやハウツーなど各種特集ページの執筆も担当。カメラグランプリ選考委員。
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