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ショップレポート

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ショップレポート
全国の中古カメラ店と店頭で出合った魅力的なカメラたちを紹介
公開日:2024/09/10

創業30周年のマップカメラを大解剖してみた【前編】

Text & Photo :鹿野貴司

東京・新宿に店舗を構え、さらに大規模なオンライン販売も展開するマップカメラが、今年8月に創業30周年を迎えた。1994年、パソコン販売大手・ソフマップを運営する株式会社マップグループがカメラ販売事業を開始。2005年、マップグループの創業者・鈴木慶氏によりシュッピン株式会社が設立され、カメラ販売部門を同社に営業譲渡。そのシュッピン株式会社は2012年に東証マザーズ、2015年には東証一部(再編後の現在は東証プライム)に上場している。そして、現在同社は、カメラ販売だけではなく、腕時計、筆記具、ロードバイクの販売も行っている。

かつての中古カメラ店といえば、とにかく敷居が高く、常連のおじいさんたちのサロンとなっているケースも珍しくなかった。そうしたお店の大半は今はもう無くなったが、時代が変わるように台頭したのがマップカメラだった。店内は明るく、店員さんの年齢層は若め。しかし商品知識はしっかりしており、接客も丁寧で、これまでの中古カメラ店のイメージを覆した。



西新宿の繁華街にそびえるMapCamera本館。


僕もマップカメラでさまざまな買い物をしているが、複数の同一機種を見比べたいとお願いしても快く対応してくれるし、ずばりどれがオススメですか?と聞くと、いつも明快な答えが返ってくる。もちろん安価な商品だからといって、邪険にされることなどない。

本記事では、マップカメラでの売れ筋のカメラを紹介しながら、常に顧客目線のサービスを投入する同社の魅力を探る。


*掲載商品の価格は2024年8月取材時のものです。
 

MapCamera本館 1階 Leica Boutique MapCamera Shinjuku


1階には「Leica Boutique(ライカブティック) MapCamera Shinjuku」が。ライカの新品を扱う。




カウンターのショーケースにはゾフォート2が。6万610円、僕でも唯一買えるライカだ。そういえばCAMERA fanでもレビューしましたね。
 


地下1階 ライカ/ハッセルブラッド/中判デジタル・フィルムカメラフロア




地下1階はライカ、ハッセルブラッドの新旧カメラをはじめ、富士フイルムのGFXシリーズ(中判デジタル)、ローライやペンタックスなどの中判フィルムカメラが揃う。



ライカQ2 ダニエル・クレイグxグレッグ・ウィリアムズ
153万8000円
007シリーズでおなじみ俳優ダニエル・クレイグ氏と、写真家グレッグ・ウィリアムズ氏とのコラボモデル。2021年に750台製造された限定モデルだ。

 

ライカQ2 レポーター
73万9800円
耐久性に優れたアラミド繊維を外装に使用。過酷な報道の現場を想定しているとのことだが、これで戦場に行ったらどんな名作が撮れるだろうか。

 

ライカM-Aチタニウム
528万円
露出計も省かれた完全機械式フィルムカメラのチタン仕様。限定250台。しかし今この原稿を書くまで、値段の0をひとつ見落としていた。同じくチタン仕上げのアポズミクロンが付いて52万8000円なわけがないですね。





奥にフィルムカメラのコーナーが。程度のいいローライフレックスが整然と並んでいた。
 

2階 ソニー / コンタックスフロア


2階はソニーをメインに、懐かしのコニカミノルタや、最近の動画機材などを扱う。




ショーケースの中はとにかくカメラカメラカメラ!。α7シリーズは買い取る台数も多ければ、売れる台数も多いという。


コンタックスのフィルムカメラも。程度の良さそうなT2が並んでいた。
 


3階 ニコン/富士フイルム/リコー/ペンタックス フロア


3階はニコン、富士フイルム、リコー、ペンタックス。


ニコンのショーケースより。右から時計回りに
Z f・Z40mmF2 Special Editionレンズキット(美品)
28万8000円
F2チタン(美品)+Aiニッコール50mmF1.4(並品)
23万9800円+4万6000円
ニューFアイレベル(良品)
7万9800円



富士フイルムのショーケースも密集度高め。


手前から時計回りに
X-T5(美品)+フジノンXF35mmF1.4 R(並品)
25万4000円+6万6800円
X-E4(美品)+フジノンXF18mmF2 R(良品)
19万2000円+5万1800円
X-Pro3 DRブラック(良品)
27万2000円
X-T4(良品)
19万7800円

 

中小の中古カメラ店では在庫の少ないペンタックスもしっかり玉数が揃っていた。左から
K-3 Mark III Monochrome Matte Black Edition(美品・付属品多め)
28万9800円
K-50ホワイト(良品)
3万2800円
K-30クリスタルブルー(並品)
2万7800円

 

GR III兄弟はあいにく受注停止中。


4階 キヤノン、OMシステム(オリンパス)、パナソニック、シグマ


4階はキヤノン、OMシステム(オリンパス)、パナソニック、シグマのフロア。
 

EOS R6がズラリ。R6 MarkIIの登場で買取が増え、一方でそれを求める来客が多いそうだ。価格は20万円前半から後半までさまざま。


パナソニックはもちろんフルサイズとマイクロフォーサーズ、2系統を揃えるが、中古在庫はオンライン限定が多い模様。というわけで写真は新品コーナー。


こちらはOMシステムの新品コーナー。やはり中古はオンラインのほうが動きが活発なようです。


5階のカメラ買取・下取センター。明るく広々としており、安心して愛機を旅に送ることができる。
 


持ち込まれた買取品は、スタッフがその場で手際よく検品。1万2000点近いワンプライス対象商品であれば、正常に動作すれば外観を問わず一律の査定額となる。


マップカメラのサービスとそれらを生み出す運営方針などを、シュッピン株式会社営業本部Map Camera事業部のマーチャンダイジング部・川村洋太部長と、セールスEC営業部・山口大輔店長に伺った。
 

シュッピン株式会社 川村洋太部長(写真左)と、山口大輔店長(同右)



川村「一環して取り組んできたのは、入りにくいという中古カメラ店のイメージを一新することでした。弊社も2000年代の店内は、雑多な印象だったと思いますが、百貨店などを参考に、白を基調にして明るい雰囲気にしていきました。見た目の印象で多少敷居が高くなるのは覚悟しましたが、中古のカメラ・レンズは安いものでも2〜3万円はします。店舗にもっと高級感があってもよいのではないかと」


MapCamera本館 地下1階



山口「店舗に立つスタッフも若返りを図ってきました。採用するスタッフ全員が、初めから写真やカメラの知識があるわけではありません。しかし当店は現行機種だけでなく中古も揃っていますので、スタッフは触って学べるのが強みです。メーカーごとにフロアを分けていますが、それぞれにそのメーカーに詳しいスタッフを配置しています。もっとも弊社のお客様にはすでに説明を必要としない方、モノをじっくり見たいという方も多いと思います。そこでスタッフからはご挨拶以外にお声掛けすることは極力控えています。」

山口さんに売れ筋のカメラを伺うと、ソニーのα7 III、キヤノンのEOS R5、ニコンのZ 6・Z 6II、富士フイルムのX-T4・X-T3といった機種が挙がった。ずばり人気機種の1〜2代前のモデルだ。ミラーレスが取引の中心ではあるが、一眼レフも根強いファンがおり、最近はキヤノンのEOS 5D Mark IVが売れているという。僕はこれをマップカメラで下取りして、別のデジカメを購入した人間だが、「売らなければよかったかな」と思うこともあり、今風にいえばわかりみが深い。

ちなみに新品の売れ筋を聞くと、ソニーのα7シリーズ全般、富士フイルムのX-T5やX-T50、ニコンのZ8やZf、キヤノンのR6 MarkIIとのことだった。また実物をチェックする必要がない新品は、やはりオンライン販売の比重が中古品よりも高いそうだ。
(*売れ筋商品は2024年8月取材時のものです)


オンライン販売の比率を高めているマップカメラだが、実店舗を持つことは顧客との接点を高めることや人材育成という側面もあるようだ。客の側からみても、ズームレンズであればリングの感触に個体差があったり、直に触って確かめたいこともある。
遠方に住んでいる僕の友人も、下取りは自宅から発送してポイント化。新品ならオンラインで購入することもあるが、出張時に実店舗を訪れ、中古品を吟味するという。地方にもマップカメラの支店を…という声も寄せられそうだが、その点はどうなのだろうか。



川村「弊社は中古カメラという一点モノを、オンラインと実店舗で同じようにお買い求めいただける環境を整えてきました。それは新宿にすべての在庫が集まっているから可能な面もあり、まだまだ発展させることができると思います。ですので、新規出店よりもオンラインに注力するというのが基本的スタンスですが、実店舗が信頼性につながっているのも事実です。海外からのお客様や高額商品をお求めになる方のニーズもあるので、新宿のお店を閉めるということは考えておりません。その点はご安心ください」

実際のところ、店舗に並べられる在庫数には限りがある。同一機種の在庫が潤沢なものや、実店舗での動きが少ないものは、オンラインのみで購入できる「ネット限定」商品も多い。後編ではユーザーにとって便利な様々なサービスを提供する、マップカメラのオンライン販売の裏側を再び両氏に伺う。

後編はこちらから



取材協力:マップカメラ


MapCamera(マップカメラ)
〒160-0023 東京都新宿区西新宿1-12-5
TEL:0120-153-383
https://www.mapcamera.com/

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鹿野貴司(しかの たかし)

1974年東京都生まれ。多摩美術大学映像コース卒業。さまざまな職業を経て、フリーの写真家に。広告や雑誌の撮影を手掛けるほか、ドキュメンタリー作品を制作している。写真集『日本一小さな町の写真館 山梨県早川町』(平凡社)ほか。著書「いい写真を撮る100の方法(玄光社)」

ウェブサイト:http://www.tokyo-03.jp/
Twitter:@ShikanoTakashi

<著書>

いい写真を撮る100の方法