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ショップレポート

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ショップレポート
全国の中古カメラ店と店頭で出合った魅力的なカメラたちを紹介
公開日:2024/09/10

創業30周年のマップカメラを大解剖してみた【後編】

Text & Photo :鹿野貴司


30周年を迎えた東京・新宿のマップカメラ。前回は新宿の店舗をレポートした(前編はこちら)。同社は業界でいち早くオンライン販売に取り組んだことでも有名だ。
マップカメラのオンライン販売は、実にシステマチック。サイトの構成が実によく練られており、商品の検索や閲覧がしやすいのはもちろん、下取りから購入までの取引もスムーズだ。僕も実店舗とオンラインの両方を長く利用している。

何よりマップカメラがユニークなのは、「ワンプライス買取」の仕組みだ。「動作に問題がなく使えるカメラ・レンズは、外観のコンディションに関わらず、買取価格は同一にする」というもの。外観不問だから査定額が安いということもなく、相場からみれば概ね高い水準だと思う。



もうひとつの特色がオンライン取引時、商品を購入時に、商品を受け取ってから売却する品物を送ればよい「先取交換」というサービス。旧モデルから新モデル、あるいは上位モデルへ買い替えるとき、先取交換であれば手元からカメラやレンズがなくなるという事態を防ぐことができる。売却する品物と購入した品物を直接比較することも可能だ。



しかしそんな親切というか太っ腹なビジネスは、いったいどのように生まれたのか? 前編にもご登場いただいたシュッピン株式会社営業本部Map Camera事業部のマーチャンダイジング部・川村洋太部長と、セールスEC営業部・山口大輔店長とに再びお話を伺った。



シュッピン株式会社 川村洋太部長(写真左)と、山口大輔店長(同右)

まず気になるワンプライス買取について。僕も夜な夜な検索することが多いのだが、価格は細かく変動している。マップカメラで購入した商品については、買取価格がアップするとメールでも知らせてもくれる。この買取金額は在庫や売れ行き、今後の需要予測をもとにAIが判断。査定にかかるコストを抑えることで、買取価格を全体的に押し上げる効果もあるという。



川村「カメラの買取といえば、細かな傷などをチェックされ、どんどん減額されていくのが当たり前でした。弊社のスタッフには、カメラが好きでその“がっかり”を経験した人間が多いので、それをお客様にはさせまいと考えています」
 


山口「ワンプライス買取は現在1万2000点以上を対象にしています。このシステムがあるからこそ、先取交換でも事前に取引額を確定でき、お客様に安心してご利用いただけるようになっています。プロの方などは、一時的でもそのカメラやレンズがないと困るケースがあります。そうなると店舗で売って買ってとなりますが、先取交換をご利用いただけば新宿までご足労いただく必要がありません。そういったニーズに応えるために始めましたが、結果的に買い替えで利用されるお客様が増え、中古在庫が潤沢に揃うようになりました」
 


川村「オンライン上でも店頭と同じレベルの買い物をお楽しみいただけるよう、商品の写真も2016年からは全商品30カットを掲載しています。さらに商品によっては動画も用意して、動作の部分をお伝えできればと思っています」 


商品ページには、30点の商品写真が掲載され、商品の状態を細かく確認できる。商品によっては動画も掲載されている。



「THE MAP TIMES」

マップカメラのサイトには、「THE MAP TIMES」や「Kasyapa」などの独自コンテンツもある。ブログ形式の「THE MAP TIMES」は1日1本以上、多い日は4〜5本を投稿。投稿者のおよそ9割は、店頭に立つスタッフだそうだ。業務として撮影や執筆に取り組んでいる。


「フォトレビューサイトKasyapa」

川村「店頭で商品の魅力を伝えられるのは、目の前にいらっしゃるお客様ひとりだけです。しかしオンラインであればひとつの投稿で何百人、何千人に伝えることができます。スタッフにはひとりひとりのお客様にご案内するつもりで作成してもらっています」



「Kasyapa」はさらに写真のクオリティーを上げ、カメラ・レンズの魅力を訴求している。撮影するスタッフは腕が認められた、いわば社内の選抜チーム。実際にはコンテンツ制作に専従する社員が大半だという。それぞれ得意分野があり、それに合わせて機材や記事の内容を割り振っている。



山口「現在はYouTubeにも力を入れています。実店舗から遠い首都圏以外では、写真が趣味でもマップカメラをご存知ないという方もいらっしゃいます。そんな方にも知っていただくためのツールと考えています。新製品の情報もいち早くお届けするよう心掛けています」


 
中古品の保証が充実している点も特色のひとつだ。初期不良による返品も2週間受け付けているが、さらに2万円以上の商品には1年間、2万円未満でも3か月間の保証をつけている。メーカーに部品の在庫がないなど、修理が難しいものは期間が短縮されるが、1〜2世代前のモデルであれば概ね対象になると思う。またオプションで「安心サービス」も用意している。

修理可能な商品すべてに保証を付けられるのは、買い取った品をすべて整備点検しているから。カメラ・レンズはメーカーごとに正規部品やノウハウを持つ修理業者があり、マップカメラではそれぞれの業者と提携している。

川村「オンライン販売を始めた頃は、万単位の商品をオンラインで買うことはまだ当たり前ではありませんでした。どうしたら店頭と同じように買っていただけるか。それを考えた結果、商品の写真数を増やし、保証はもちろん保険もつくりました。オンラインでも安心してご購入していただくことに日々注力してきたというのが、マップカメラの歴史だと思います」

シュッピン株式会社全体の会員数は現在およそ70万人。マップカメラのほか、腕時計のGMT/BRILLER、筆記具のKINGDOM NOTE、ロードバイクのCROWN GEARSとポイントは共通で、つまりカメラを下取りしてロードバイクを買ったり、腕時計を下取りしてカメラを買うこともできる。僕もときどきチェックしていたKINGDOM NOTEのサイトで、長らく探していたボールペンを発見。貯まっていたポイントで購入したことがある。
実店舗とオンラインの両輪を回しながら、スケールを拡大し続けるシュッピン株式会社・マップカメラの5年後、10年後、さらにその先が今回の取材でますます楽しみになってきた。と長い原稿を締めくくり、僕はマップカメラのサイトをまた覗くのであった。

前編はこちらから

取材協力:マップカメラ


MapCamera(マップカメラ)
〒160-0023 東京都新宿区西新宿1-12-5
TEL:0120-153-383
https://www.mapcamera.com/

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鹿野貴司(しかの たかし)

1974年東京都生まれ。多摩美術大学映像コース卒業。さまざまな職業を経て、フリーの写真家に。広告や雑誌の撮影を手掛けるほか、ドキュメンタリー作品を制作している。写真集『日本一小さな町の写真館 山梨県早川町』(平凡社)ほか。著書「いい写真を撮る100の方法(玄光社)」

ウェブサイト:http://www.tokyo-03.jp/
Twitter:@ShikanoTakashi

<著書>

いい写真を撮る100の方法