TOP > コンテンツ一覧 >

新製品レビュー

18
新製品レビュー
公開日:2025/08/18

Samsung Galaxy Z Fold7超薄型の折りたたみスマホのカメラ機能を写真家が試す!

Photo & Text:鹿野貴司
カメラファン編集部から今回の依頼が来たときは驚いた。実は他のウェブ媒体ではスマホのレビューを結構やっているのだが、このカメラファンでスマホを扱うのはたぶん初めて。普段クラシックカメラやら中古カメラ市やらを紹介しているカメラファンが……これも時代の流れか。


紹介するのはサムスンのGalaxy Z Fold7(以下Fold7)。サムスン製スマホをレビューするのも僕自身また初めてで、ちょっと楽しみではある。
このZ Fold7、フォルダブル、つまり横方向の折りたたみ式だ。ところが貸与されたデモ機はふつうの薄いスマホ。




あれあれサムスン間違えてませんか?…と思ったが、よく見ると薄い筐体の真ん中に線が入っている。ちなみに反対側、つまりヒンジ側は「SAMSUNG」のロゴが。


恐る恐る両手で広げてみると、ちゃんとフォルダブルだった! 事前にサムスンから薄い薄いアピールはされていたのだが、畳んだ状態は僕の私物のiPhoneより薄いのだ。薄さというか厚さは8.9mm。ちなみに初代Z Foldは倍近い17.1mmだったそうだ。


畳んだときの片面に6.5インチのサブディスプレイがあり、私物のiPhone 13 Pro(6.1インチ)より広い。実際には閉じてサブディスプレイを使うのが主ということだが、広げると8インチのメインディスプレイが出現。8.3インチのiPad miniとほぼ同じだ。以前別メーカーのフォルダブルをレビューしたときは、使ううちに中央の折り目がくっきりと目立つようになった。もちろん耐久性は十分なのだろうが、全面で写真や動画を鑑賞するときはどうしても気になった。


しかしZ Fold7は2週間ほど使った限りではほとんど気にならない。メーカーによるとヒンジ部分を工夫し、クセが付きにくい構造になっているという。また左右分割とか、横向きでの上下分割ももちろん可能。ウェブページを参照しながらメールを書いたり、動画を見ながらチャットをするといったことができる。


そして今回カメラファンでZ Fold7を扱う理由は、ずばりカメラ機能が強化されたから。サムスンのスマホといえばハイエンドのSシリーズがあり、最新のGaraxy S25 Ultraに搭載されている広角(メイン)カメラは怒濤の2億画素を誇る。ちなみにセンサーサイズは1/1.57型だ。


これまでFoldを含むZシリーズのカメラは“折りたたむこと”が優先され、Sシリーズより控えめなスペックだったが(Z Fold6では広角カメラが5000万画素。それもすごいけれど)、Z Fold7ではS25 Ultraと同じ広角カメラを搭載。僕は最近スマホ関連の仕事がなかったため、カメラが一気に2億画素まで達していることを恥ずかしながら知らなかった。最近は中判ミラーレス機で1億画素が当たり前になりつつあるが、少し前は新車1台分くらいの値段で、今だって100万円くらいはする。レンズ固定式の富士フイルムGFX100RFでも70万円台だ。それがスマホで2億画素である。価格はSIMフリー・256GBで26万5750円(2025年8月時、サムスン公式サイト販売価格)とスマホとしては強気だが、ミラーレス機だったらフルサイズ機のエントリーモデルが買えるかどうかである。

ならばその2億画素の実力を見せてもらおうかというのが今回の趣旨だが、最初に種明かしをしてしまうと、2億画素で記録することもできるが、デフォルトはピクセルビニング(画素混合)をして1200万画素で記録する。隣り合う16画素を束ね、情報の質が高い1画素とするのだ。2億画素で記録すると画質が低下することがあります、的な警告も表示されるのだが、いろいろ試してみると、警告の理由もわかってきた。

まず2億画素、おそるべし解像力である。ピクセル等倍で確認してもなかなかの描写。最新のミラーレス機で撮影した写真に混ぜても、たぶんわからないだろう。ただしそれは中心部の話で、周辺部にいくとさすがに甘い。スマホの豆粒レンズではいくらなんでも限界があるのだろう。それを1200万画素時は画素補完で補っているようで、比較すると周辺部がだいぶシャープになった。

*写真は、長辺2500pixにリサイズしています。


1200万画素(画面表示では「12M」)

(中央部分を拡大)



5000万画素(画面表示では「50M」)

(中央部分を拡大)



2億画素(画面表示では「200M」)

(中央部分を拡大)

階調は思ったほど差がないが、雲の階調などをみると、やはり16倍の情報量を束ねている1200万のほうがリッチではある。2億画像の解像度は12240x16320ピクセル、容量は1枚で25〜50MBにもなる。ストレージは256GB・512GB・1TBと3種類あり、それなりに保存はできるものの、よほど特殊な意図がなければ1200万画素で十分かとも思う。A4なら余裕でプリントできるし、一般的にはスマホで撮った写真をそれ以上のサイズで出力することは少ない。ただし望遠カメラがあまり高画素・高画質ではないので、スポーツ観戦などでは2億画素で撮ってトリミングするのもいいかもしれない。


1200万画素

(中央部分を拡大)



2億画素

(中央部分を拡大)

こちらも同じ場所から1200万画素と2億画素で撮影。遠景部分を拡大すると1200万画素ではディテールこそ保っているものの、解像の限界がきて甘くなってしまう。対する2億画素はディテールが崩れて塗り絵のような部分はあるが、細部まで線をシャープに描写している。


こうした輝度差がある場面は1200万画素で撮影するのがよい。広角カメラと望遠カメラには光学式手ブレ補正も搭載。広角カメラでシャッター速度は1/2秒という条件だが、手持ちでシャープに撮影できた。


なお超広角カメラは1200万画素、光学3倍ズームを備えた望遠カメラは1000万画素と、こちらはGaraxy S25 Ultra(超広角カメラ・光学5倍ズームの望遠カメラともに5000万画素)と同じとはいかず、ゆえに超望遠域の画質はいまひとつ。といっても最新のハイエンドスマホとしては、という話で、ふつうに使うのなら何ら不満はない。またインカメラはメイン・サブどちらのディスプレイにも搭載されており、それぞれ1000万画素だ。


超広角カメラ、焦点距離は12mm相当


広角(メイン)カメラ、焦点距離は23mm相当


広角カメラの2倍ズーム。焦点距離は46mm相当


望遠カメラ、焦点距離は69mm相当


デジタルズーム10倍、焦点距離は230mm相当。ディテールはやや崩れているが、被写体によっては目立たないかもしれない


デジタルズーム30倍…で撮影したはずなのだが、Exifで焦点距離をみると460mm相当。すなわち20倍だった。

絵作りはAndroid機としては輪郭強調やHDRが穏やか。もっとも階調補正が目立ってしまうケースもあった。メーカーのサイトには「160を超えるAI画像処理技術を備えたProVisual Engineを搭載」とあるが、もうちょっと自然に階調を補正できるのではないかと思う。見方によっては写真らしい写真ともいえるのだが。


たとえばこの写真、人物の周辺の空も薄く、覆い焼きをしているように見える。もちろんPhotoshopで加工したわけではなく撮って出しだ。


超広角カメラで撮影。描写はいいのだが、高架の間から見える空のHDR処理が気になる。オフにできると思うのだが、すると階調の差が激しすぎるのかな…(試せず)。

もうひとつAndroid機のカメラの特徴が、ポートレートモードの自由度の高さ。iPhoneのポートレートモードは被写体から離れる必要があり、たとえば料理を撮ることは難しい。しかしAndroid機はマクロ域でも撮影可能だ。


Garaxyシリーズは料理がおいしそうに撮れるというネットの評価を見たこともあるが、たしかにこの描写力はなかなかのものだ。


こちらもポートレートモード。ピントの合った部分とボケる部分の差がやや激しい気もするが、前ボケと後ボケの作り方はなかなか巧みだと思う。






不要な被写体を消す機能ももちろん搭載されており、能力を知りたくてあえて複雑な写真で試してみた。ポートレートモードで撮影しており、水しぶきが重なり合うという、手作業でのレタッチは到底難しいカットだが、結果はご覧の通り。なかなか優秀ではないだろうか。


また専用アプリ「Expert RAW」をダウンロードすると、シャッター速度やISO感度、ホワイトバランスなどを調整できるほか、DNG形式のRAWデータを記録してくれる。といっても2億画素のまま記録はできず、5000万画素か1200万画素になる。スマホ用のLightroomアプリで現像でき、有料ではあるがGoogle経由で登録すると、Adobeのプランからの割引もある。もちろんWindows・MacでLighroomに課金しているユーザーなら、同じアカウントで使用可能。Googleドライブなどを経由してデータを移せば、Windows・MacのLighroomでも現像できる。




撮って出し


RAW現像

LightroomアプリでRAW現像をやってみたが、操作性や手間を考えると撮って出しでいいんじゃないかな……というのが本音。撮って出しの絵づくりがなかなか優秀で、あえてRAW現像する必要性を感じないのだ。ただし被写体や場面によっては、レタッチでさらに追い込むことができる。

本来Z Fold7で写真を撮るのなら、閉じたままサブディスプレイでよいのだが、今回はあえて特徴を体感すべく、ほぼ開いて撮影した。フィルム時代の大判ビューカメラを思い出したりもしたが、老眼が進んだ身には大画面が実にありがたい。ただ二つ折りでも薄いのだから、開くとさらに薄い板になる。画面を触るとあらぬ機能が立ち上がったりするので、両手で縁を挟むようにして持つことになる。両手が空いているときは楽しいのだが、まあ折りたたんで撮影するのが正確なのかなと感じた。


焦点距離46mm相当の2倍で撮影。標準レンズ=50mmという人間には、これくらいの画角がちょうどいい。階調の表現もなかなかだ。

カメラ機能についていえば、2億画素の必要性はともかく、スマホのカメラとしては十分満足がいく性能だと思う。超広角カメラや望遠カメラがより高性能なGaraxy S25 Ultraのほうが価格は安いので、カメラだけを考えるならそちらがお買い得。ただ動画や電子書籍をよく閲覧するとか、あるいはカメラも置いて撮ることが多いのであれば、Z Fold7が有力な選択肢になるだろう。先に紹介した「Expert RAW」には天体撮影の機能もあり、三脚なしで星空をきれいに撮ることもできる。直販によるSIMフリーのほか、au・NTTドコモ・ソフトバンクの3キャリアに対応しているので、スマホの買い替えを検討中の方はぜひ店頭で手に取ってみてほしい。

 
鹿野貴司(しかの たかし)

1974年東京都生まれ。多摩美術大学映像コース卒業。さまざまな職業を経て、フリーの写真家に。広告や雑誌の撮影を手掛けるほか、ドキュメンタリー作品を制作している。写真集『日本一小さな町の写真館 山梨県早川町』(平凡社)ほか。著書「いい写真を撮る100の方法(玄光社)」

ウェブサイト:http://www.tokyo-03.jp/
Twitter:@ShikanoTakashi

<著書>

いい写真を撮る100の方法