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東京・新宿にオープン!「ヨドバシ フジサワ カメラミュージアム」見学レポート
Photo & Text by 鈴木誠
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ニュース&トピックス
公開日:2025/12/23
東京・新宿にオープン!「ヨドバシ フジサワ カメラミュージアム」見学レポート
Photo & Text by 鈴木誠
2025年10月25日、マニア注目の最新カメラスポット「ヨドバシ フジサワ カメラミュージアム」がオープンした。所在地は東京都新宿区新宿5-3-1。旧新宿厚生年金会館、現在のヨドバシホールディングス本社ビル内2階にある。最寄りは新宿三丁目駅か新宿御苑駅で、およそ徒歩7分の距離となる。
このミュージアムは、ヨドバシカメラ創業者の藤沢昭和氏(現会長)が半世紀をかけて収集したカメラを展示。ライカをはじめ、古今東西、大小様々なカメラが並ぶ。また、フェリーチェ・ベアトをはじめとした写真作品や写真集の数々も展示されている。入館料は一般(18歳以上)が3,000円、未成年が1,000円。
■圧倒的物量のライカが出迎える
受付前の大きなモノクロ写真は、ライカを考案したオスカー・バルナックが、ライカの試作機で初めて撮影したカット
とにかく圧巻なのはライカ関係だ。まずエスカレーターや受付前の壁面には、ライカ誕生の地であるドイツ・ウェッツラーの街並みの写真が多数飾られている。三角屋根の建物を写したモノクロ写真はライカファンには有名だ。他にもウェッツラー旧市街のランドマークである大聖堂や、その周辺の景色など、かなりのマニア度の高さで出迎えられる。
だが、ライカに詳しくない人でも安心してほしい。入場して最初のスペースには、1925年に登場した市販初号機「ライカI」から順を追って、各世代のライカが並んでいる。最初はレンズ固定式だったものが交換式になり、フランジバックが統一されて、連動距離計が内蔵され……といった具合だ。
入口付近のライカコーナー。スクリューマウントライカ(通称バルナックライカ)の進化を追体験できる
そして注目すべきは、ライカ誕生以前にライツが手がけたカメラや顕微鏡も展示されているということ。「Leitz Moment Camera」(1905年)は、エルネマンのプレートカメラをベースに、ライツのズマール120mm F4.5を組み込んだとみられる製品。当時のライツは、他社から購入したカメラに自社のレンズを組み付けて販売していたという。
ライカ以前のライツ製品もカバーしているところに、ただならぬ懐の深さがある
■いろんなライカI。ラクサスの純正改造も
2025年はライカ誕生100周年の記念すべき年。その初号機「ライカI」も、このミュージアムには複数台が展示されている。最も番号が若いのは134番だ。ライカIの量産1号機が126番だから、その貴重さがわかるだろう。
ライカI(No.134)
そして恐ろしいのは、なんとこの134番に続く135番も収蔵されていることだ。ミュージアムの見解としても、この135番のほうが当時のオリジナル状態に近いとのこと。巻き上げノブの薄さや「Leitz Anastigmat」というレンズ名、アクセサリーシューの形状に注目だ。
ライカI(No.135)
さらに、カタログに載るようなライカだけでは飽き足らないのが、真のマニア道。ライカには「純正改造」という文化があり、古いモデルに後年の新機能を追加する“建て増し”的なアップグレードが可能だった。そこに展示されていた1台が、ライカIラクサスの純正改造品だった。
ライカIラクサスの純正改造品
ライカIラクサスはライカIの豪華版として登場。ライカIがベースなので、レンズ固定式で単体距離計を組み合わせて使用するカメラだった。それが本機では、後年の仕様にならって連動距離計を内蔵し、スローシャッターダイヤルも備わっている。これは大変珍しいそうで、海外から訪れた“ラクサス研究家”がいたく感銘を受けていたそうだ。
こうしたワールドクラスのレアライカが何台も、平然と並んでいる空間。これがヨドバシ フジサワ カメラミュージアムだ。
ライカM2にモーターを組み合わせた報道向けモデル。「ブラックペイントモデルは6台しか作られておらず、幻の1台」との説明が記載されていた
収蔵されているライカM5の一部。展示の準備中にシリアルナンバーの“10連番”も発見されたとのこと
ライカM3の中でも極初期の個体。奥にもウルトラレアなライカが多数展示されている
■国内外のカメラも多数
もちろん、ライカ以外にも古今東西のカメラが並んでいる。来場者それぞれの思い出のカメラに再会できることだろう。
木製の大型カメラから最新のデジタルカメラまで、カメラの歴史を現物とともに体感できる空間だ
どのコーナーも展示台数が整理されており、“ありったけのカメラを並べている”という印象をまったく受けないところにも、余裕というか美学を感じる。いま展示フロアに並んでいるカメラ以外に、あとどれだけの収蔵品が控えているのか想像もつかない。
キヤノンが1961年に発売したレンジファインダーカメラ、キヤノン7。“ドリームレンズ”と呼ばれた50mm F0.95のレンズもズラリ
ミノックスは筆者も好きなカメラだが、これをはじめとする超小型カメラについては特に展示コーナーから熱量が感じられた。担当者に聞いたところ、藤沢会長は小型カメラが相当お好きだというから読みが当たった。
ラトビア発祥、ドイツで発展したミノックス。貴重な初代リガ・ミノックスや、ブラック、ゴールドモデルも
こうして展示から伝わる温度感も、いわゆるカメラの博物館とは異なるヨドバシ フジサワ カメラミュージアムの個性であり、展示品を介して会長と対話するような楽しみがあると思う。
“豆カメラ”と呼ばれる日本の超小型カメラたち。反対側に並ぶゴールデンステキーは、全て未開封品だったという
■ヨドバシカメラの真髄に触れる
注目したのは、ヨドバシカメラの歴史とカメラの歴史を並列に展示したコーナーだ。
ヨドバシカメラと国産カメラの歴史を辿ることができる
このコーナーを眺めながら、自分の思い出と照らし合わせて懐かしむ来場者は多いという。そうそう、今でも「♪まあるい緑の山手線」でお馴染みのヨドバシカメラのTVCMソング。これは他でもない藤沢会長が作詞を手がけている。
歴史は続き、最新カメラとして飾られていたのはOM SYSTEM OM-3と富士フイルムX-HF1(X half)だった
展示のレイアウトにも会長自らの“ヨドバシカメラ流”が息づく。見学していて気付くのは、このミュージアムが一般的な美術館や博物館とは異なり、順路が設定されていないこと。これも、来場者が好きなところから自由に見てもらおうという考えで、店舗の売り場作りから通じるノウハウだという。
また、展示カメラに添えられているキャプション(説明板)にもこだわりを発見した。設置されている高さごとに、説明板の角度が変えられているのだ。来場者が見下ろす高さにあれば上向きに、目線に近ければ正面に近い角度に起こされている。見学時にぜひチェックしてみてほしい。
■写真作品と写真集、カメラ関連本も
フェリーチェ・ベアトの作品が並ぶベアトギャラリー
カメラの物量に圧倒された先に待つのは“写真”だった。フェリーチェ・ベアトの作品、日下部金兵衛が撮影・着色した写真、微粒子現像技術などでライカを広めたパウル・ヴォルフなど、写真史的に重要な人々についても学べる。
日下部金兵衛の写真集より
初期ライカの伝道師と呼ばれるパウル・ヴォルフの本
カメラ関連本や写真集のコーナー
■今後の展開も楽しみなミュージアム
今回の取材は、ちょうど開館から1か月というタイミングで実施した。まだまだこのミュージアムの存在を知らなかったり、現地を訪れるタイミングがないというカメラファンも多いことだろう。そんな方々に、第一報としてわずかながら雰囲気が伝われば幸いだ。
大都会・新宿に、こんな大空間があるのかと驚く広さ。奥に見えるのは……
アポロ15号がテーマの空間。中にはたった1台だけカメラが展示されている
ちなみに筆者は開館初日にもプライベートで訪れたが、ライカコーナーだけで1時間、ミュージアム全体では2時間半の時間が溶けるように過ぎていった。空腹で我に返らなければ閉館まで居座ってしまったかもしれない。
同じフロアにはストアも併設。各社カメラや関連製品、オリジナルグッズを販売している
ミュージアムの担当者いわく「まだまだ展示できていないカメラが多数ある」とのこと。今後はテーマごとの特集展示など、何度も訪れても楽しいミュージアムになるよう計画中だという。いま、この記事を見て体温の上昇を感じているカメラ好きであれば、筆者と同じく3,000円の入場料も十分にモトが取れるはずだ。
・ヨドバシ フジサワ カメラミュージアム
営業時間:10:00〜18:00 ※最終入館17:00 ショップ営業時間 10:00〜18:00
入場料:一般(18歳〜)3,000円 / 未成年(18歳未満)1,000円 / 幼児・乳児(未就学)無料 ※すべて税込
URL:
https://www.yodobashi.com/museum/
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鈴木 誠(すずき・まこと)
ライター。カメラ専門ニュースサイトの編集記者として14年勤務し独立。会社員時代より老舗カメラ雑誌やライフスタイル誌に寄稿。現在は楽器やオーディオ&ビジュアルの専門誌にも関わる。趣味はドラム/ギターの演奏とドライブ。日本カメラ財団「日本の歴史的カメラ」審査委員。YouTubeチャンネル「鈴木誠のカメラ自由研究」
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