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ショップレポート

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ショップレポート
全国の中古カメラ店と店頭で出合った魅力的なカメラたちを紹介
公開日:2025/08/22

創業1938年歴史を刻む店、フジヤカメラ店の魅力をレポート

Text & Photo 鹿野貴司
今は中古カメラ・レンズを探し求めるのもネットで簡単な時代だが、フィルムカメラの時代は当然ながら専門店に赴くしかなかった。全国各地にさまざまな中古カメラ店が存在したが、とりわけ首都圏の人になじみが深いのはフジヤカメラ店ではないだろうか。中古だけでなく新品も取り揃え、手持ちの機種から新機種に買い替えるときなどは僕も随分お世話になった。地方から友人が上京すると案内を頼まれることも多く、カメラ好きには「中野」は特別な響きがあるのではないかと思う。



その歴史は古く、1938年に「大月太陽堂」として開業。戦後間もない1946年に現在の法人名である「株式会社フジヤカメラ店」となった。さらに同社の歴史をみると、僕の生まれた1974年に早くも電話による通信販売を開始とある。2006年にはネット通販も開始しているが、今も実店舗の売上がネット通販の倍はあるという。中古カメラを買う醍醐味といえば、やはりショーケースで現物を眺め、そして手にとって確かめるところにある。広いフロアと豊富な在庫を有するフジヤカメラ本店は、その点でまさに選ぶ楽しみを味わえる店舗だと思う。なおその本店は何度かの移転を経て、現在の場所に落ち着いたのは1997年のこと。カメラ・レンズを販売しているのはその本店のみだが、後ほど紹介する通り、動画館・用品館・ジャンク館がすぐそばにある。



本店1階の様子。メーカー別にショーケースが設けられており、その中に新品と中古が同居。そのため価格を比較しやすいのも特徴だ。

また新品・中古を問わず、11,000円以上の商品を下取りと同時に購入する場合は、買取金額10%アップに、もう5%アップ。その場で何も購入しない場合には、買取金額の10%アップと1カ月有効の買取金額の5%分のクーポンをお渡ししている。また特定の機種を購入する際には下取査定額を20%アップといったキャンペーンもその時々で行っている。

これはあくまで僕個人の経験や感想だが、フジヤカメラ本店は買取や下取の額が高い反面、コンディションの査定がやや厳しい。そのぶん販売されている中古品もランク付けが厳しく、同じ商品ランクや価格帯でも他店よりコンディションが良好なのだ。ゆえに下取で思わぬ指摘を受けて涙したこともあるが、それ以上に中古で満足のいく買い物をしたことが多かった。そんな話を今回取材に応対してくださった小川健介店長にお話ししたら苦笑いをされていた。

というわけで店内を巡りながら、気になるカメラ・レンズをピックアップしてみた。

*掲載商品は取材時の在庫と販売価格です


[キヤノン]
1階に足を踏み入れると、右手に続くのがキヤノンのショーケース。新品と中古、RFマウントとEFマウントがそれぞれ整然と並んでいる。


中古店といえば旧モデルがよく動くイメージだが、最近は新品の品薄や高値も影響しているのか、現行機種もよく売れるという。レンズはお買い得な“撒き餌”をチョイスしてみた。
キヤノンEOS R5 Mark II
517,000円
RF50mmF1.8 STM
20,900円


反対の左側はソニーのコーナー。ずらりと並んだ初代α9が10万円台後半、初代α1が40万円台で、仕事で使うならこのあたりを買うのもアリだな、と思った。


オリンパス/OMシステムのコーナーも在庫豊富。後継機が期待されたまま終売してしまったPEN-Fは、中古相場も高値のまま。それだけ人気ということか。
PEN-F
149,600円
M.ZUIKO DIGITAL ED12mmF2.0 シルバー
35,200円


もうここ数年、国内では新品の品薄が続く富士フイルム。中古のXマウント機は在庫も潤沢で、ゆえに価格もこなれている。円安の影響か海外からの旅行者の購入も多いという。
左/X-T5 ブラック
213,400円
右/X-E3 シルバー
102,300円


現行のX100VIは在庫も1台だけだったが(ちなみに240,350円)、ひとつ前のX100Vはピカピカの新品同様から、20万円を切ったお買い得品までさまざま。
X100V シルバー
215,050円


1階の取材を終え、次は2階へ…と思ったのだが。2階への階段を登るには、一旦外へ出る必要がある。外に出ると目の前は真新しい別館。というわけで中古カメラ巡りは一旦休憩で、そちらを訪ねてみることにした。
フジヤカメラ店は1986年、ビデオ・映像部門の子会社「フジヤエービック」を設立。中野ブロードウェイに店舗を構えていた。それが合併し、2020年に別館の「動画館」となった。ちなみに中野ブロードウェイの店舗にはオーディオ部門が残り、現在も新品・中古のオーディオ機器を取り揃えている。興味はある方はそちらもぜひ。


本店の向かいにある別館。1階が動画館、2階が用品館になっている。


動画館はカメラから用品まで、あらゆるアイテムが揃う。YouTubeやV-Logを始めたばかりの人からフリーランスのプロまで客層も幅広い。最近はベテランのスタッフでもカバーしきれない情報や商品知識が多く、一線で活躍するプロをパートタイムで雇用しているという。


用品館は文字通り、三脚やライティング関係などのアイテムが揃う。


細かな用品は新品だが、三脚・雲台は中古がずらり。写りに直接影響するものではないので、精度や操作部さえしっかりしていれば中古は大いにアリだと思う。実をいうと僕が使っている三脚・雲台も、ここで購入したものが多い。


多くの登山家に愛されたカメラザックのラムダ。惜しまれつつ2023年に閉業したが、そのロゴを久々に発見! 


店舗前の路地を中野サンモール商店街へ行くと、左側にジャンク館がある。Google Mapで調べたら本店からの距離は「43m」とのこと。一時期は中野ブロードウェイで営業していたが、現在はカメラ本店近くに移転している。


取材時はたまたま静かだったが、普段はフジヤカメラでもっとも人口密度の高い売り場がここだという。かくいう僕も以前は遊びで使うレンズのフィルターとか、2個目の充電器とか、細々としたものをよく探していた。


カメラ関係の雑誌・書籍もこちらで販売。「立ち読み大歓迎」とのこと。


再び本店へ。名物の“大階段”を登って2階へ向かう。


こちらが2階。なお隣には「喫茶室ルノアール」があり、カメラやレンズを買った人が箱を開封する姿もちらほら。かつては窓から向かいにあった「ジャンク館」の入荷状況をチェック。目当ての品物が入ってきたと同時に店へ急ぐ常連客もいたとか。


2階で広いスペースを展開しているのはニコン。僕が高校生や大学生の頃は、ここに並ぶF3の群れに圧倒されたものだ。


デジタル一眼レフもよく売れるというが、最近はZマウントのミラーレスも好調だ。
ニコンZ f
215,600円


ペンタックスも根強い人気が。ちょっと懐かしい機種から現行機種まで、多彩なラインナップが揃う。


というわけで新旧を代表して、尖ったこの2機種をチョイス。
左/ペンタックスK-01 ホワイト&ブラック
30,800円
右/ペンタックスK-3 Mark III Monochrome Matte Black Edition
235,400円


以前は2階の奥に少しだけ置いていたライカが、ショーケース一面を占めるように。


M型からカメラ、レンズをそれぞれ2つほど。
左/ライカM11ブラックペイント・915,200円
アポズミクロンM 50mmF2 ASPH. 6bit・757,350円
右/ライカM10-P シルバークローム・795,850円
ズミクロンM 35mmF2(8枚玉)・579,700円


Mマウントレンズも新旧の純正品はもちろん、ほとんどが10万円以下というコシナ・フォクトレンダーも充実している。


レンズフードなど、ライカ純正の付属品も揃えている。新品では驚く値段だったりするので、中古で見つかればありがたい。


レンジファインダーのM型デジタルもよく売れるそうだが、そこから「ミラーレスでもライカの色を」とSLシリーズにいく人や、逆に「レンズは交換しないから」とシンプルなQシリーズにいく人も多いとか。こちらはSLシリーズの在庫たち。


編集長が「安くなった! 欲しい!」と言っていたサファリカラーのSL2-S。相当欲しそうだったけど、買われたのでしょうか?
ライカSL2-S Reporter
613,250円
ズミクロンSL f2/50mm ASPH.
215,600円


デジタルのアイテム数が多すぎてやや影が薄くなっているが、フィルムカメラも国産メーカー製はそれぞれのショーケースに、さらにハッセルブラッドやローライフレックスなども常時揃えている。
左/ローライフレックス2.8F
右/ローライフレックス3.5F



2Fには、フィルムもカラー・モノクロ、ポジフィルム・ネガフィルムと各種取り揃えている。


というわけで予定の倍の時間がかかった巡回取材。小川店長によると、メーカー別の売れ行きではキヤノンとニコンが新品・中古ともにツートップ。3番手で追いかけるのが富士フイルムとのこと。また最近はライカと、本文では紹介できなかったがシグマに勢いがあるそうだ。シグマはレンズが好調だったが、あわせてカメラ(fp・fp L)も2年前の1.5倍で推移しているという。

コロナ禍が明けてから店舗の売り上げは右肩上がりだそうだが、「地方で中古カメラ店さんが減っているせいかもしれません」と小川店長。遠方に住むお客さんはもちろんネットを利用する場合もあるが、仕事や観光で上京した際に立ち寄るケースも多いようだ。また冒頭で触れた電話通販も依然としてニーズがあり、今もスタッフが同じアイテムをいくつも並べ、電話口で個々の状態を伝える光景がみられる。いささかアナログな気もするが、それは厚い信頼があるからこそ。マニアックな店舗が揃う中野で、歴史を刻み続けるフジヤカメラ本店の今後が楽しみだ。


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鹿野貴司(しかの たかし)

1974年東京都生まれ。多摩美術大学映像コース卒業。さまざまな職業を経て、フリーの写真家に。広告や雑誌の撮影を手掛けるほか、ドキュメンタリー作品を制作している。写真集『日本一小さな町の写真館 山梨県早川町』(平凡社)ほか。著書「いい写真を撮る100の方法(玄光社)」

ウェブサイト:http://www.tokyo-03.jp/
Twitter:@ShikanoTakashi

<著書>

いい写真を撮る100の方法