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イベントレポート

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イベントレポート
公開日:2025/11/25

きらめきのアート空間をライカで写す贅沢な時間|LEICA with PICTURERIUMレポート

Photo & Text 奥山貴嗣



アートアクアリウム美術館 GINZAを貸し切り、写真家・南雲暁彦氏による「LEICA with PICTURE-RIUM」が開催された。
ライカカメラジャパンの協力のもと、希望者にはLEICAカメラとレンズを貸出。複雑な光・色・動き・反射が混ざり合う“唯一無二の撮影空間”で、参加者30名がLEICAとともに本格的な撮影体験に挑んだ。
本記事では、会場の様子、参加者のリアルな声、そして南雲氏・主催者・LEICAスタッフそれぞれのコメントを通じて、イベントの魅力と学びをレポートする。

【イベント概要】

イベント名:LEICA with PICTURE-RIUM
開催日:2025年11月14日(金)・15日(土)
会場:アートアクアリウム美術館 GINZA
主催:株式会社Amuseum Parks
解説・撮影:TOPPAN株式会社 南雲暁彦
協力:ライカカメラジャパン株式会社





閉館後、貸し切りの会場で撮影開始

銀座三越新館に常設されるアートアクアリウム美術館 GINZAは、水槽・光・音・香りを組み合わせて金魚をアートとして鑑賞する没入型の美術館だ。
春夏秋冬で展示テーマが入れ替わり、季節ごとに空間演出が刷新される点も特徴。70種を超える金魚と光が織りなす幻想的な空間は、撮影者にとっても“季節を写せる”ユニークな舞台になっている。



撮影に先立ち、南雲暁彦氏が全体に向けてレクチャーを行った。氏はアートアクアリウム美術館 GINZAについて「色・光・動き・反射が重なる特殊な環境で、学びが多く撮影し甲斐のある場所」と説明し、水槽配置や照明の方向、金魚の動きの読み方など、シャッターを切るタイミングの考え方を具体的に示した。






レクチャーのあと、参加者は展示エリアに散らばり、それぞれ自由に撮影を開始した。館内は照明が落ちて暗く、被写体である金魚が常に動くため、露出・ピント・手ブレの管理が難しい。参加者は背面モニターを確認しながら設定を調整し、南雲氏から受けたアドバイスを参考に、上からの視点だけでなく下からのアングルや距離の詰め方などを試しながら構図を探っていた。

この挑戦的な環境について、LEICAのメールマガジンでイベントを知り初参加した参加者は「想像以上に難しかった。暗いし動くし、ブレないようにするだけで精一杯でした」と率直に話す。ただし南雲氏のアドバイスで、下からのアングルに切り替えたところ、「写り方が全然違った」と手応えを感じた様子だった。

別の参加者は写真学校出身で普段はキヤノンを使用しているが、今回のように別のブランドへ触れられる機会を求めて参加したという。初めての環境に戸惑いながらも、「ISOは固定するものという考えがあったが、オートを使って良い場面があることを知れた」と設定の考え方に新しい発見があった様子だった。

さらに、友人の参加をきっかけに訪れた参加者は、LEICAを触れるのは今回が初めて。高画素モデルを使った撮影について「クセはあるけれど“撮っている実感”がある」と興味深い印象を語っていた。南雲氏からは、影を扱う際の“俯瞰”や“あおり”といった視点の使い分けを教わり、「見え方が大きく変わるのが面白かった」と話す。

 
南雲氏は撮影中、展示エリアを巡回しながら参加者一人ひとりのカメラ設定や構図を確認し、その場の光に合わせて「角度を変える」「水面に映る鏡像を絡めて撮っても面白い」といった具体的な調整のポイントを直接伝えていた。暗く、被写体が常に動き続けるアートアクアリウムでは、設定や構え方の判断が難しいが、南雲氏の助言を受けることで参加者はその場で迷いを減らし、すぐに試せる余裕が生まれていた。

こうした現場での個別指導は、写真の学びとして非常に価値が高い。自分が構えている位置・光・状況を実際に見てもらい、そこで起きている現象に対してプロが的確に修正ポイントを示してくれる機会はそう多くない。特にアートアクアリウムのような複雑な光環境では、ちょっとしたアドバイスで写りが大きく変わりやすく、参加者にとっては実践的で得るものが多いと感じられた。


 

特別な空間でじっくりと撮影に取り組める、希少なワークショップ

さらに、本ワークショップではアートアクアリウム美術館 GINZAを貸切状態で利用できる。一般営業では撮影者が多く、位置取りや待ち時間が必要になることもあるが、今回は参加者数がコントロールされており、各展示にゆっくり向き合いながら試行錯誤できる環境が整っていた。光が変化し続ける美しい会場を、落ち着いて撮影検証できるのは大きなメリットだ。

南雲氏の個別指導と、美術館を安心して使える撮影環境。この二つが組み合わさることで、単なる“撮影会”ではなく、参加者が積極的に改善を重ねながら撮影に没頭できる学習機会になっていたと感じる。技術的な学びと、美しい空間での実践が同時に成立する点こそ、このワークショップの大きな魅力と言える。





また、会場にはLEICAの貸出コーナーが設けられており、これも本イベントならではの特徴だ。SLシリーズやQシリーズを実際の展示空間で試せる機会は貴重で、参加者の多くがまずここに足を運んでいた。とくに標準〜中望遠の単焦点は人気が高く、金魚をしっかり捉えたい参加者が50mmや75mmを選ぶ傾向が強い。暗く、光が変化しやすい館内では、機材の描写力や暗所性能がそのまま仕上がりに影響するため、LEICAの強みを“実写で確認できる場”になっていた。スタッフが操作や設定をサポートすることで、初めてLEICAに触れる参加者でもスムーズに撮影に入れるよう配慮されていた。



ワークショップの冒頭で、南雲氏はアートアクアリウムという会場の特性や、今回の撮影環境について次のように語っていた。

「アートアクアリウムは、色も光も動きも反射も、いろんな要素が一度に来るんですよ。大変ですけど、そのぶん本当に学びが多いんです。ここで撮れるようになると、他の撮影でも対応力が上がります。」
「音とか香りまで含めて空間が作られている場所というのはなかなか無いですよね。こういう“世界そのものを撮る”みたいな体験は、写真をやっている人にとってすごく刺激になると思います。」
「LEICAとの組み合わせは相性が良いです。唯一無二の空間と、唯一無二のブランドですし。とくにSL3-Sは暗所の表現が素晴らしく、ライカのサイトを通じて東京の月景色を世界に配信したときのカメラです。この会場みたいな光の環境とすごく噛み合います。」
「今日は難しい環境でしたけど、みなさんの表情はすごく良かったですね。苦戦しながらも、ちゃんと手応えのあるカットが撮れていて、“また来ます”という声も多かったです。」

アートアクアリウムでの撮影は難易度が高いが、その難しさを実践の中で解きほぐせる点が、このワークショップの最大の特徴だ。南雲氏の個別指導と、会場を落ち着いて使える環境が揃うことで、参加者は“撮りながら理解が深まる”プロセスを体験していた。
また、LEICAをリアルな光環境で試せる場としても価値が高く、暗所性能や焦点距離の選択が仕上がりにどう影響するのかを、実際の撮影条件の中で確かめられる点は他では得がたいものだ。

ワークショップ後はサイン会も実施



また、会場では南雲氏の新刊『ライカで紡ぐ十七の物語』の販売とサイン会も実施された。事前に予約購入した熱心なファンのほか、実際に撮影を終えたあとに本を手に取り、その場で購入する参加者の姿も見られた。撮影の学びとあわせて、著者本人から直接サインを受け取れる機会は、参加者にとって大きな付加価値になっていた。

技術と体験が同時に更新されていくこの形式は、単なるイベントではなく“撮影者の次の一歩”につながる機会として機能していた。今後の開催にも期待したい内容だった。

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