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イベントレポート

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イベントレポート
公開日:2025/11/13

オールドレンズやフィルム / デジタルカメラの珍品名品を探索「池袋クラシックカメラ博 2025」レポート

Text & Photo : 鹿野貴司


2025年11月13日(木)から17日(月)まで、東武百貨店 池袋本店8階で「池袋クラシックカメラ博」が開催されている。主催は写真機商振興会で、出店しているのは全国の中古カメラ店やメーカーなど計15社だ。

取材をしたのは初日を明日に控えた設営作業中で、当然ながらガラスケースの中は商品がズラリ。前回はデジタル一眼レフやミラーレスカメラの品揃えが増えたように記憶しているが、今回は本来の姿に戻ったというべきか、大半がフィルムカメラ。プライスタグに高級車並みの数字が躍る珍品から数千円の実用品まで、古今東西さまざまなカメラが揃っていた。フィルムの価格は高騰しているが、そのぶんカメラの価格は落ち着いてきた感がある。

*商品は取材時の在庫です。中古商品は一点ものです。店頭ではすでに販売済みとなっている可能性があります。ご了承ください。


ライカR9(元箱付き) 158,000円
日東商事
1996年から世紀をまたいで販売されたライカRシステム最終形。独特なデザインはまるで岩から削り出したようでもあり、未来からやってきたカメラのようにも見える。シャッターの感触も今のデジタルカメラにはないもので、フィルムを詰めて撮影したくなる。



レイドルフ・ロードマットC-35
(ロードン50mmF1.9、トラベター35mmF3.5、ケース付き)
33,000円
日東商事
無骨だけどインパクト十分な西ドイツ製カメラ。距離計に露出計に焦点距離別のファインダーまで盛り込んだら、軍鑑部はまさかの二階建てに。



ニコンI型+ニッコール-H・C5cmF2沈胴
6,600,000円
カメラのヤマゲン
1948年3月に発売されたニコン(当時は日本光学)初のカメラ製品。製造台数は数百とされ、ほとんどがGHQや輸出に回された。したがって製造国の表記は「MADE IN OCCUPIED JAPAN」。少しだけ触らせていただいたが、レストア済みでシャッターや巻き上げの動きも滑らかだ。



カメラのヤマゲンでは元「カメラのきむら」で修理人として名を馳せた田口由明氏が所有していた、ニコンのパーツを販売していた。


ローライフレックス2.8GX ゴールドエディション60周年
835,200円
カメラのキタムラ/新宿北村写真機店
ローライフレックスが数台並んでいた中で、異彩を放っていたのが1989年発売のローライ60周年記念モデル。元箱のほか、専用クローズアップレンズ・ローライナーなど付属品一式も付いている。



ノクティルックス M f0.95/50mm ASPH.チタン
11,700,000円
カメラのキタムラ/新宿北村写真機店
一瞬「安い!」と思ったら、0をひとつ見落としていた。2023年、無垢のチタンで作られた世界限定100本のうちの1本。ちなみに未使用品だ。



【左】マミヤ35メトラ 9,000円
【右】ペトリFT EE+55mmF2+M42アダプター 10,000円
スズキカメラ商会
国産の手頃なフィルムカメラも。マミヤ35メトラは1958年発売。内蔵レンズの48mmF1.9というスペックにぐっとくる。ペトリFT EEはそれより時代も下って1969年。シャッター優先オートを組み込んだ一眼レフ。珍しい純正のPETRI-M42マウントアダプター付きで、これを探している人には買いだ。



【左】ゼンザブロニカC+ニッコールP75mmF2.8 49,500円
【右】ブロニカETRS(AE-IIプリズムファインダー)+ゼンザノン75mmF2.8 49,500円
カメラのゴゴー商会
どちらも5万円でお釣りがくるゼンザブロニカの2台。Cは1964年発売で、すでに発売されていた「S」の普及版。丸っこいデザインとニッコールレンズで今なお人気が高い。ETRSは1978年発売。プリズムファインダー付きで中判初心者にも使いやすい。



【左】シュナイダークロイツナッハ・クセノンエメラルド50mmF2.2 145,000円
【中】DJオプティカル NyctaLux 50mmf/1.0 118,000円
【右】LIGHT LENS LAB M 35mmf/1.4 A.A. “Titanium” 289,000円
焦点工房
新品を扱う輸入元だが、毎回さまざまな珍品を揃えてくる焦点工房。クセノンエメラルドはドイツ製産業用レンズを、数量限定でライカMマウントに改造したもの。一方DJオプティカルは熟練のレンズ職人・鋳鏡師DJ氏が持てる技術を注いだ大口径レンズ。そしてLIGHT LENS LABはライカ・ズミルックスM35mmF1.4アスフェリカル初代(11873)を分解・測定。現代のデジタルカメラに向けてアレンジを施した自信作とのこと。



ミノルタTC-1ブラック 330,000円
カメラのアート
熟練工によるハンドメイドで、まるで工芸品のような美しさを持つTC-1。珍しいブラックボディを見つけた。果たしてこの記事が公開されるまでショーケースに残っているだろうか。



【左】ニコンF3 65,000円
【中】ニコンF3/T 79,800円
【右】ニコンF3/Tブラック 110,000円
セキ写真
中古カメライベントの“定番商品”ともいえるのがニコンF3シリーズ。個人的には勝手に中古相場の指標にしているが、現状は一時期の高騰も落ち着いた感がある。しかしチタンのブラックは久しぶりに見た気が。



【左】リコーGR1s 66,000円
【右】オリンパスPEN W 62,700円
ペンギンカメラ
デジタルのGRは長らく抽選販売が続いているが、フィルムのGRも中古市場でなかなかの人気。これは少し安いなぁと思ったら、上面とファインダー内の液晶が不調とのこと。フィルムの残り枚数ならカンでわかるという猛者はぜひ。PEN Wは1964年発売で、レンズは25mmと他のPENよりやや広角寄り。かつて森山大道氏がこれでニューヨークを撮影したことでも知られ、個体数が少ないこともあって人気は高め。





鹿野貴司が注目したカメラ
スズキカメラ商会さんにあった「キヤノンAF35ML オートボーイスーパー」、11,000円也。1981年発売だから僕が今の息子(小学1年生)の頃のカメラだ。何が素晴らしいって内蔵レンズが40mmF1.9と、完全に僕好みの焦点距離、しかも大口径なのだ。当時は高感度フィルムも一般的ではなかったので、ボケ云々より暗いところでも撮れますというコンセプトだったと思うけど。





編集部スズキが注目したカメラ
カメラのヤマゲンさんにあった「ロモ・スメナ2」(13,200円)です。スメナ8M、いわゆる“スメハチ”はトイカメラの定番ですが、こちらはもっとクラシカル。1950年代後半〜60年代前半に作られていたそうです。ただ巻き上げのレバーやノブが見当たらず、どう撮るのかと思いきや…。なんと撮影が済んだフィルムを専用カートリッジに巻き取っていくのだそう。こんなに面倒な操作を、当時のソ連の人たちは疑問に思わなかったのでしょうか。



なお週末限定のイベントとして、15(土)・16(日)にはカメラジャンク品の販売も行われる。会場は混雑も予想されるが、ぜひ愛機や愛玉を見つけてほしい。
 

<開催概要>


「池袋クラシックカメラ博」

会期:2025年11月13日(木)から17日(月)
場所:東武百貨店 池袋本店 8階催事場(東京都豊島区西池袋1-1-25)
時間:10:00〜19:00

詳細はこちら
鹿野貴司(しかの たかし)

1974年東京都生まれ。多摩美術大学映像コース卒業。さまざまな職業を経て、フリーの写真家に。広告や雑誌の撮影を手掛けるほか、ドキュメンタリー作品を制作している。写真集『日本一小さな町の写真館 山梨県早川町』(平凡社)ほか。著書「いい写真を撮る100の方法(玄光社)」

ウェブサイト:http://www.tokyo-03.jp/
Twitter:@ShikanoTakashi

<著書>

いい写真を撮る100の方法